ValveのYanis Varoufakis氏、雇用と解雇とその利益を語る | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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ValveのYanis Varoufakis氏、雇用と解雇とその利益を語る

Valveといえば場外での動きも見ものの1つ。とくに先月はいくつか動きがありましたが、今回はValveの駐在経済学者(Economist-in-Residence)、Yanis Varoufakis氏が同社の雇用についてポッドキャスト番組EconTalkで語りました。

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Valveといえば場外での動きも見ものの1つ。とくに先月はいくつか動きがあり、まずハードウェア部で開発に携わっていたJeri Ellsworth氏が解雇されました。Steam Boxはちゃんと完成したのか?というSteamerの心配を他所に、続いて"大きな意思決定"に基づき最大25名ものレイオフを断行。続いて、先日BAFTAフェローシップ賞に輝いたGabe Newell伯自らGlaDOS口調の半ば火消しめいたコメントを残しています。

さて、ここで思い出してみたいのが昨年6月の出来事。Valveはギリシャのゲームと畑違いな経済学教授Yanis Varoufakis氏をスカウトしていました。バーチャル通貨"Steam Wallet"に関するアドバイザーとして白羽の矢が立ったものと思われていましたが、そんなVaroufakis氏がここにきて矢面に立っています。肩書きは駐在経済学者(Economist-in-Residence)。

Varoufakis氏はEconTalkのポッドキャスト番組に出演。収録時間は1時間と強、Valveの雇用についても語りました。EconTalkはジョージ・メイソン大学教授Russ Robertsが主催する週刊配信で、プロの経済学者などを招くこともある経済番組です。

以下は、情報元Gamasutraに抜粋された部分からの拙訳です。

雇用プロセスについて

じつに単純だ。廊下ででも、どこかの会議室でも、どこでもいいがちょっとお喋りすればいい。お喋りの結果我々は公然と、必要と思われる追加のソフトウェアエンジニア・アニメーター・アーティスト・ハードウェア開発者として合流させることになる。また、我々にできることして、Valveの他の同僚たちにメールを送り、ヒエラルキーの中に何者の同意を得ようとしないような人を実際に求める調査委員会(serch committee)を形成するために招待することがある。ただヒエラルキーがないというだけだ。

そして我々は自発的に調査委員会を形成する。それから、対象者にまずはSkypeで面接する。テストに通過し、顔を突き合わせた個別の面談になってから会社へ招き入れる。これで本当に参加したいと思っていない者はいなくなる。

しかるに、日中、たいていは一日がかりの作業で、その人物を雇うべきか否かを結論が出るまでメールで徹底的にやりとりする。結論とは、事実上誰も特定の人物を採用することへ反対しなくなることだ。

給与額はどのように決められるか

デタラメだ。給与のメカニズムは非常に大きな幅のあるボーナスを基準としている。だから契約は通常最小の支払い区分となっており、大小の差はあれど慣習によって確立されたものだ。この契約で変わっているのは、同僚による評価プロセスがどれだけ残っているかであり、非常に複雑だ。相互評価の様々な層が含まれている。

Microsoftなどのような企業においては、通常ボーナスは給与の8・15・20%くらいのものだ。先程言ったように、Valveではボーナスは青天井だ。ボーナスが基本給の5倍、6倍、10倍に達することもある。

Gabeは最初からこうした考え方だった。彼はビジネスパートナーのコミュニティを求めており、誰かの上司になったり、あるいは周りの誰かに上司になってもらったりすることを望んではいなかった。

解雇された人々について

すでに起こったことだ。私は事実を見てきた。そしてそれが酷いことではありえない。まず最初に、誰かの不採算性あるいは会社の他の人たちと折り合いが悪いことが発覚したとき、様々なコミュニケーションを行う。

多くの場合、生産的でないからだとか、善良でないからだとかといった単純な理由で適切でないというわけではない。しかし、上司のいない環境でただ充分に機能できないということは理由になりうる。解雇が計画または議論されている人物と同僚の間でひと通り議論していき、ある時点で当該人物が留まるべきという結論が出てこなかった場合、魅力的な提案が特定の個人に提示されるだろう。通常、それが友好的な別れ方だ。

しかし、上司がいなかったらたるんでしまうのではないか?

理解してもらうにあたり重要な点だ。つまり自発的な注文ベース(order-based)の企業は、自らの存在を管理する社会規範を信じる個人が構築する巨大な空間に依存しているということだ。獣の性質と同様、隠れてこそこそやることはないし、あまりよからぬことをやらかそうとする者に限って煙幕を炊こうとするものだ。

Valveの人間のほとんど、いや全員は、何かを成すために優秀な能力をして抜擢された者ばかりだ。通常、入社前は他の場所でそれぞれの分野においてトップだったものばかりなのだ。

チームはたった2つのプラグの脱着で変える

機動力こそが企業において重要な資産であり、誰もがそう認識している。全員のデスクにはホイールがついている。たった2つのプラグでデスク同士が接続されており、他のチームへ異動する必要が発生したら、プラグを外すだけだ。

私は確信していた。何かに気づくのに充分なほど長く会社にいたわけではないが、組織に馴染むことができず、結果的に会社から追いやられていくという状況は確実に存在していた。しかし、そうした動きの大部分を通じて全体の能率に貢献しているし、Valveで働けることに個人的な喜びを感じてもいる。

配線も自由な職場。

一連のリストラ騒ぎを踏まえると読める行間が多すぎて困りますが、まず額面通りに取れる部分から。Valve社全体が、ツリー状の権力構造をしておらず、管理を必要とするような人材を必要としていないうこと。また、Gabe Newell氏自身も大組織にありがちな妙な「政治」を同様に嫌っているようです。さらに自発的な行動を社員に求めるスタンスについては以前リークされた新入社員向けハンドブックでも明らかにされています。社風について今更多くを語る必要はないでしょう。

給与のメカニズムは確固たるものはなく、成果給の色合いが強いようです。実際にどれくらい派手な給与明細を貰った人がいたのかは不明ですが、一発当てれば大きい業界である以上、特別不自然なルールではないでしょう。

最後に挙げられていたフットワークの軽いチーム編成については、しばしば「アレを作ってた彼は実はコレも作ってた」話を聞くことですし、これもまた理に適ったものといえます。疑問といえば、2つのプラグでデスクを繋ぐことそのもののメリットがどれほどのものか、といったところです。

「Valveは言っている、失敗を恐れてはならないと」

さて、ここからは憶測込みです。大前提として、大きな意思決定(large decisions)と大いなる浄化(great cleansing)の正体は不明ですし、実際に何があったのかは外からではほとんど見えません。

極端に単純化すれば、採用のスキームが「皆に気に入られるかどうか」で、一方解雇のスキームの1つは「皆に嫌われたかどうか」ということになります。25名もの嫌われ者が内部で同時多発的に発生したとは考えづらいですが、いずれにせよGabe伯またはValve社と反りが合わなくなった人物が多数いたと推測しても差し支えないでしょう。

もう1つの解雇理由について、「上司がいない環境」への適応力が挙げられています。つまるところ自己管理能力が欠落していたから、という指摘でしょう。単純に生産性が低いからクビといった類の人事でないと明言していますが、Valveの自由闊達な組織構造で自律できない者は失格、ともとらえられます。ただ、これについてはそもそも自己管理とは何たるかの定義が曖昧である点に注意が必要でしょう。

また、わざわざ何故この状況下で給与体系について言及するのか?について。あくまでも成果に応じた報酬を支払うものだ、という主張は、裏を返せば当然成果が伴わなければカネは払えない、ということ。問題はこの「成果」の部分で、えてして多人数がかかわる大規模なプロジェクトでは、責任の所在以上に功績の出所も不透明になりがちです。こうした部分が軋轢を生んだのではないか?という邪推もあながち的外れとも言い切れないかもしれません。

Great Cleansingとはこんな感じでしょうか。

ただ、前向きに解釈できる部分もあります。当事者の一人Jeri Ellsworth氏が「あー。今日クビになったわ。新しいエキサイティングなプロジェクトの時間ね。(Yup. Got fired today. Time for new exciting projects.)」とツイートしているあたり、ただ自棄っぱちになった個別の25人が蜂起したというより、Valveの外で何かしら動こうとしていることは確かなようです。

ちなみに、Valveの全社員は2012年段階で400名ほど。まあ、人材が流動的な海外、しかもゲーム業界なのですから、人事異動や組織再編で、しかも25人やそこらが抜けたところでValveの運営やゲーム開発に特段の影響はないでしょう。Gabe Newell氏が冗談めかしたコメントをするのも巌の如き不動心と余裕の表れに違いありません。

◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆

※誤字脱字を修正しました。コメントでのご指摘ありがとうございます。(ソース: Gamasutra , イメージ: Penny Arcade) 【関連記事】
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《Gokubuto.S》
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