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「あなたがお金で投票するもの」 Cliffy Bが議論の過熱するアイテム課金について持説を展開

March 01, 2013(Fri) 22:44 / by Rio Tani

元Epic GamesのゲームデザイナーCliff Bleszinski氏が、自身のTumblrで、度々議論の的になるゲームのアイテム課金(Microtransaction)の是非ついて、非常に長文の持説を投稿し、ゲーマーに向けて疑問を投げ掛けています。

以下、全文。

ビデオゲーム業界といえど単に“業界”であることに変わりはない。

それは資本主義世界の中に存在していることを意味し、当然ながら自由市場だ。そこではあなたが気に入った好きなものにお金を費やすことができるし、反対にそのお金を使わないでいることもできる。

製品を提供しているのは営利目的の企業であり、制作、取引、そして素晴らしいゲームをある究極的な目的の下で発売している。ひとつはお金、次に栄光のために。

そういった企業が株式市場で公開取引される時、彼らは株主への責任を負うことになる。つまり、株主の持つ株式の価値を高めるため、四半期ごとに、たくさんのお金を儲けなければならないのだ。

インフレによる調整を踏まえれば、あなたが購入するゲームの価格は、実際のところ以前よりも安くなっている。映画と比較した、あなたがゲームで得られる1ドル当たりの楽しめる時間の割合は言及するまでもない。

高品質なゲームを制作するためには、数千万ドルもの予算が必要で、広告費を加えれば最大で1億ドル以上に達する。トリプルAコンソール市場においては、テレビCMだけで莫大な費用を支払う必要があり、ローンチイベント、グッズ販売、あるいは非常に高額な広告会社で流行りのバイラル企画を実行するといった、様々な広告企画があるのは言うまでもない。そればかりでなく、市場はかつてないほど物が溢れ、平均的なユーザーにとっては、過去の人類の歴史になかったほど多くの娯楽の選択肢がある(私や妻もゲームのローディング画面中にTwitterやRedditを見ている)。

別の考慮すべき点としては、多くのゲーム開発スタジオが、サンフランシスコのベイエリアといった生活費が並外れて高い地域にあるということ(シアトルですら最近はかなり物価が高い)。彼らのような才能あるアーティスト、プログラマー、デザイナー、そしてプロデューサーは、皆に愛されるゲームを作るために時間を費やす一方で、生活し、家族を養う必要がある(得てしてヒップスターやブーメランチャイルド世代には忘れられがちなことだが)。

ネット上でアイテム課金(Microtransaction)に関するたくさんの議論を目にした。最近は罵るような言葉も見受けられる。ゲーマーは、パブリッシャーやデベロッパーが“はした金を巻き上げている”などと憤慨している。“何も分かっていない巨大な悪の企業がお金を奪おうとしている”ことに怒りの矛先を向けているのだ。

はっきり言っておこう。EAが“悪者”扱いされるのはもうウンザリだ。Redditの“Scumbag EA(卑劣なEA)”と“Good Guy Valve(善人Valve)”のミームはでたらめだと思う。

勘違いしないでもらいたいが、私はゲイブとその仲間がすることほとんどを強く支持している(友人がいるので、少し前にネットで話題になった『Portal』のカスタムタレットも買ったのを覚えているだろうか)。しかし、Valveが他社と同じようにビジネスであることをゲーマーがなぜか認識していないことに驚かされる。Valveが『Team Fortress 2』で100ドルの婚約指輪を販売したらなぜか“クール”で、EAが同じようなものを売ろうとしたら“悪”と見られる。もう分かったかと思うが、あえて言わせてもらうと、Valveは素敵であると同時に、可能な限り多くのお金を稼ごうとしている企業でもある。

彼らは単に会社のイメージコントロールに優れているだけだ。

お金を儲けてビジネスを運用するのは本質的な悪ではない。それによって雇用や成長が生まれ、食卓には食べ物が並ぶ。この国は起業家精神の上に建てられた。もちろん、基本的な企業倫理においても明白な問題点はあるし(Googleで“フォード・ピント事件”を検索)、企業が顧客に還元すべき必要性もあるが、それは今このブログで語ることではない。

皆はOriginを叩くのが大好きだが、十分長い時間が経って、Steamも酷かったことを忘れている。当時しばらくは誰も真剣に利用していなかった。何年も前に、GDCでゲイブが私の昔の同僚にそれを披露した時、彼らは軽蔑の目を向けていた(今になって笑っているのはValveだけ)。Valveは何年も費やしてサービスを現在のような優れた形に仕立て上げた。にも関わらずネット上の人々はそのことをすっかり忘れて、自社のオンラインサービスを立ち上げようとしているEAを叩いている。あってはならないことだが、彼らはデジタル分野における計画の将来を見据え、“サービスとしてのゲーム”という動きに乗り込もうとしているのだ。

『Gears of War 3』で武器スキンを購入できるようにして、ユーザーの怒りがEpicに向けられた時のことを思い出す。私は怒ったファンにTwitterでこう答えた。「敵から余計に目立つ、オプショナルかつ見た目だけの武器スキンを、あなたが買わないのは結構なこと」と。するとどうだろう、批判があったにも関わらず、それは飛ぶように売れた(実際の売上も見た)。

あなたがEAを好まないなら、彼らのゲームを買わなければ良い。彼らのアイテム課金が嫌いなら、お金を費やさなければ良い。単純なことだ。EAには賢い人間がたくさん働いていて(やぁ、フランク、JR、パトリック!)、儲かっていないことを試みようとはしないだろう。儲かれば実行する。アナリストのチームがいて、ユーザー動向の背後にあるデータや、あなた方ゲーマーが苦労して稼いだお金をどのように消費するか、調査しているのは確かだ。

この件について、今まさにGAFやIGN/GameSpotフォーラムで激怒しているようなら、聞いてほしい、あなたは声だけ大きい少数派だ。毎年『Madden』と『GTA』だけを買うような普通のユーザーは、何も知らないし、気にもかけていない。彼らはゲームに追加で少しのお金をつぎ込むのを「別にいいだろ?」と言って問題にしないだろう。

先日私が話したように、その意味で市場は動乱状態にあり、古いビジネスモデルが進化したり、成長したり、消え去ったりしている。誰も答えは本当に知らない。“基本プレイ無料モデル”またの名を“4,000ドルつぎ込むのも自由なモデル”は、否が応でも定着し、誰もがスマーフベリー(携帯ゲーム『Smurf’s Village』の課金アイテム)を買ってる! あらゆるデベロッパーが新しいモデルの謎を解明しようと躍起だ。あらゆるコンソールゲームには絶え間ないDLC配信が必要不可欠。なぜなら、そうでもしなければすぐに買取に出されるか、レンタルされるだけだから。コンソール分野においては、手段を選ばずディスクがトレイに残るようにしなければならない。私はかつてGameStopのビジネス手法に腹を立てたことがあるが、正直に言おう、彼らはタワーレコードやSam Goodyの隣にいる。それはもう時間の問題だ。

もしも全ての人がゲームを中古で買うようになったら、ゲームは無くなってしまうだろう。あなたが金欠なら強要するつもりはないが、実際、私は子供の頃に新聞配達をしていて、中古ゲームをこれでもかというほど買い漁りたかった。だが、皆の大好きなゲームを作り、出資する人々がそうした問題に直面した時、考えうるクリエイティブな手段をビジネスに取り入れて生き抜き、利益を出さなければならないことを理解する必要がある。

「ゲームにアイテム課金がある」というのは全くもって巨大な一般論であり、あいまいな発言だ。何が買えるのか? 外観だけの帽子? それともお金を注いでリーダーボードのトップに行きたい? もっとでかい銃? ギャンブルについてはどうか?(まるでGTAとAssassin's CreedとBorderlandsを全てオープンワールドゲームだというのと同じ事。)実際はどれを指しているのか? Zyngaの商法がけち臭く感じる? いいだろう。好きになれない? じゃあプレイするな。Pay to Win(お金をかければ勝てるモデル)が嫌い? あなたには製品から手を引いたり全く手を触れない自由がある。

月額課金のある『World of Warcraft』で有料ペットが売られているのに、誰もBlizzardを責めていないようだ(コンソールゲームに絶え間ない有料DLCはあるのは信じられん!)。幼少時代、私が超絶任天堂ファンボーイだった頃、新聞配達のバイト代が入る度に、任天堂のシリアル、フィギュア、ポスター、Nintendo Power(雑誌)まで、あらゆる任天堂グッズにお金を注いだ。なぜなら、私は任天堂が自分にとって何を意味するかを気に入り、その魔法をもっと届け続けて欲しいと願ったから。

皆がアイテム課金のなかった“古き良き時代”に戻るべきと言うが、アーケードが元祖の小銭喰い虫だったのを忘れている。それらのゲームはクリアできないような難易度でデザインされており、プレイヤーはお金を払い続けることになる。昔のMidway関係者に設計技術を聞いてみたら良い。『Mortal Kombat 2』の最後から2番目のボスはラスボスより強い。時としてラスボスを見たら満足というゲーマーもいるからだ。初代『Total Carnage』に“Pleasure Dome”は存在しなかった。『ドンキーコング』が死ぬほど難しのにはワケがあった(Kill Screen is Coming Up!)。

私はこれまで一緒に仕事をしたほとんどの仲間に対して、なぜこの業界に入ったかを包み隠さないようにしている。ひとつは素晴らしい製品を作るため。この媒体が他の何よりも好きだから。次に注目されるため。過去に自分が巻き起こした悪名を楽しんでいる。そして最後はもちろんお金を稼ぐこと。お金で幸せは買えないが、いつも行きたかった旅に出たり、家族を養ったり、期日通りに支払いをするための、素敵な潤滑油であることは間違いない。

結局、重要な点を述べるのに話が一周してしまった。あなたがゲームや販売方法を気に入らないなら、それらにお金を支払うべきではない。

投票はあなたのお金によって行われるのだ。

今週、EA幹部のBlake Jorgensen氏が、Morgan Stanley Technology, Media and Telecomカンファレンスで、「今後全てのゲームにアイテム課金を導入する」「ユーザーはそれらを楽しみ受け入れている」という趣旨の発言をしたことが、海外コアゲーマーの集まるフォーラムなどで取り沙汰され、批判的な声が多数寄せられる事態に。

Cliffy Bのブログポストは、こうした熱を帯びるユーザーの反響に向けられたものと認識でき、EA、強いては業界全体における追加課金モデルへの取り組みを庇護する考えと取れる内容だったため、さらに輪をかけて議論を過熱させる結果となっている様子。単純に「良い」「悪い」だけでジャッジできない多様な側面のある問題だけに、答えが出るにはまだまだ時間がかかりそうです。(ソース: Clifford Unchained)

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