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【BitSummit】ベン・ジャッド氏基調講演「日本のゲーム業界が終っているという声には納得していない」

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国内ファンからもベンベンのアダ名で愛されているBen Judd(ベン・ジャッド)氏は、2010年までカプコンに在籍し『マスターD復活計画』や新生『バイオニックコマンドー』を手掛けてきた元ゲームプロデューサー。現在はゲーム開発向けのエージェンシー会社Digital Development Management(DDM)日本支部の取締役を務めており、日本インディーにおいては西洋パブリッシャーと国内デベロッパーの架け橋を担う存在です。

■日本のゲーム業界が終っているという声には納得していない
Bit Summit当日はステージの司会も務め、自ら関西弁とフリップを使った小芝居で会場を終始楽しませていたJudd氏ですが、基調講演では一転してジャケットを身に纏い、ここ最近のゲーム業界では論争の火種となっている「日本のゲーム業界は終わっている」との主張に対し熱い弁を振るいました。

「私が子供で日本語を勉強した時、日本の文化の授業も受けていたのだけど、日本という国は小さい島国で資源が限られているにも関わらず、日本人の努力、創造力、柔軟性をもって経済大国になりました。日本の歴史でオイルショックが1973年、1974年にあったと思うんですけど、世界中の色んな国がダメージを受ける中で、日本は凄く小さくめっちゃオイルに頼って資源が少ない国なのに、実は他の国よりも一般市民の努力でなんとかインフレが一番少なく済んだんですよ。実はこのお陰でオイルばかりに頼らず、エレクトロニクスの力で国をパワーアップしようという考えが生まれてきたわけです。言ってみれば、これが日本のゲーム業界の始まりと言えるかもしれませんね」

トイレットペーパーの買い占め騒動などで知られるように、第1次オイルショックでは石油製品が尽きてしまうのでは無いかという大きな不安が国民に広がりました。“日本のゲーム業界が終わるのではないか”という風潮は、現在確かに一部のゲーム業界やコミュニティで広まっています。しかし同氏はオイルショックの時と同じように日本(のゲーム業界)が終わる事無く、むしろ危機をチャンスに変え、よりパワーアップしていくのではないかと続けています。

「今、“日本のゲーム業界はいろいろ終わってるよ”と、色んな声が聞こえてきてるんですね。私は自分のキャリアの中で、本当に色んな天才的なクリエイターと一緒に働かして頂いたことがあったんですけども、“日本のゲーム業界が終わってる”という声を聞く時に、申し訳ないですけど全く納得していないんですよ。恐らくオイルショックの時と同じように、日本人の創造力、パワー、努力によっては日本のゲーム業界は全然終わりゃしないし、むしろもっとこれからパワーアップしていくと期待しております」

■柔軟性、新しい考え、新しい対策は必要
一方で「まあでもオイルショックの時と同じように、柔軟性、新しい考え、新しい対策はどうしても必要になってくると思いますね」ともJudd氏は語り、小さな開発会社が自身の作りたいものを作りつつも、自社コンテンツとIPをどのような形で保持していくのかを考えていくことが必要となっている、現在のゲーム開発の事情を説明しました。

「カードバトルゲームばっかり作らされて、景気よくレベニューシェア(固定では無く配分率で利益を分ける契約)できないという悔しさがずっと続いていたら、それは日本の小さな開発会社のために何もならないと私は思います。私は現在ゲーム専用エージェンシーの日本支社の方で取締役を務めておりまして、今まで日本のパブリッシャー様からの当開発会社様の契約書を見たことがあるんですけども、本当に内容がとても不利だと思います。パブリッシャー様の言いなりになってるような内容ばっかりになってると思います。これは良く言われるのは委託、委託ですから上から色々言われるということですけれども」(会場内に居た周囲の開発者たち数人が無言で頷く)

この不利な契約サイクルから逃れる為のファースト・ステップとして、BitSummitのようなイベントに参加することは大事であるとJudd氏。Epic、Valve、Unity、Umbra Software、今回参加した日本を大事にしインディー開発者に心を寄せる企業やそのプラットフォーム&ソフトウェアと知り合い、連携を組むことは重要だと述べました。

■解決策はKickstarter、ベンチャーキャピタル、政府へ支援金の申請
またJudd氏は次なる問題への解決策として、北米と欧州にて昨今盛り上がりを見せるクラウドファンディングサイトKickstarter(※1)で開発資金を直接獲得するという方法についても触れています。Kickstarterではレトロゲーム的なコンセプトの成功率が高く、8bitやSFCゲームを好む会場参加者たちとは相性が良いことを指摘。日本からは直接プロジェクトの立ち上げは行えないKickstarterですが、Judd氏によればDDMと協力し、北米本社を経由してスタートアップしようとする開発も居るとのことで、国内に居を構えていてもKickstarterへの門出は開いているようです。

これに合わせJudd氏はベンチャーキャピタル(※2)も1つの手段として例に挙げましたが、日本のゲーム業界ではパブリッシャーのIPをデベロッパーが自社開発したと報告し辛い側面があり、ここをアピールしなければベンチャーキャピタルでお金を集めるのは難しいと説明しました。また更に別の方法としてカナダのようにゲーム開発に関して政府から支援金を受け取るという手段も提示しており、インストールベースの多いスマートフォン向けのゲームを作っている数社が、他国の開発会社と競えるよう政府に支援をして貰えるよう訴えるのも悪い話では無いとコメント。

Kickstarter、ベンチャーキャピタル、政府からの支援金、それぞれに特性や困難はありますが、どれも数千万円から数億円の資金を1つのプロジェクトで集めてきた実績のある手段であるとJudd氏は例を交えながら解説しています。

※1 クラウドファンディング: ネット上における資金調達の方法の1つ。プロジェクトを成し遂げるための資金(ゲームならば開発資金)をユーザーから幅広く求めるという企画。例えばKickstarterでは自ら目標額を設置しそれを期限内に超えることが出来れば、寄せられた資金を受け取ることが出来る。失敗した場合は資金提供は行われない(集まった資金はKickstarterが得るわけでなく、ユーザーによる支払い処理自体が行われない)

※2 ベンチャーキャピタル: ベンチャー企業に対する投資。プロジェクトに対し投資するクラウドファンディングとは違い、その企業自体に投資する

■海外パブリッシャーとの連携も可能、自社製品のアピール方法に考慮を
またJudd氏は、自身が日本支社の取締役を務めるDDMでも、日本の開発会社と海外のパブリッシャーを繋げて行ったプロジェクトの実績が幾つかあるとコメント。この方法ではタイトルを自由につけられるほかレベニューシェアも存在し、委託扱いでは無くコラボレーションのような感じでプロジェクトを支え合えるため、こういう手法を求めるならばDDMはサポート出来るだろうと謙虚なアピールと共にもう1つの手段を提示しました。

日本のゲーム開発にかける熱い思いを吐露しつつ、自社コンテンツとIPを上手く運用していく上で特にパブリッシング契約や資金調達方法に関する具体的な解説を行ったBen Judd氏は、最後に以下のようなコメントを残しジャケットを脱ぐと、また楽しい関西弁司会者へと戻って行きました。

「オイルショックは既に終わって、その危機からは乗り越えられたんですけども、歴史的な勉強は色々あると思います。本当に柔軟性を持って新しい考え方で、小さい開発会社はどうやって自身の商品をアピールするのか色々考えた方が良いと思います。最終的には皆はエンドユーザーの事はとても大事にしていると思いますので、そのエンドユーザーの為にも色々な方法で自分の商品をアピールして頂きたいと思います」



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《ishigenn》

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