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スクエニ和田会長が語る「世界を覆うF2Pの波とローカライズ戦略の指針」−China Joy 2013

中国・上海で7月24日から2日間、ゲーム開発者向けカンファレンス「CGBC(China Game Business Conference)」が開催され、分科会の「SNS & Social Game Summit」で日本企業9社が登壇。基調講演をスクウェア・エニックス取締役会長和田洋一氏ら4名がつとめました。

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中国・上海で7月24日から2日間、ゲーム開発者向けカンファレンス「CGBC(China Game Business Conference)」が開催され、分科会の「SNS & Social Game Summit」で日本企業9社が登壇。基調講演をスクウェア・エニックス取締役会長和田洋一氏ら4名がつとめました。

CGBCは7月25日から4日間開催される中国最大級のゲーム見本市「チャイナジョイ」の併設カンファレンス。和田氏は「F2Pモデルのローカライズとは」と題して講演し、F2P(基本プレイ無料・アイテム課金型)のビジネスモデルが世界的に主流になっていくことと、ゲームローカライズの基本的な考え方について指針を示しました。

はじめに和田氏は世界における消費者購買力の推移について紹介し、過去10年間で日米欧以外の市場での購買力が上昇し、今後逆転していく見通しを示しました。また2002年のゲーム市場は全世界で約2兆円だったが、2012年に約6兆3千億円に拡大したことを示しました。この大きな原動力となったのが、従来のパッケージビジネスに加えて、新たに一般的になったF2Pというわけです。

10年前も世界中で『FF』シリーズのファンがいたが、その多くは海賊版でプレーしていたと語る和田氏。なぜなら当時はパッケージビジネスが中心で、ゲーム市場といえば日米欧のことを指していたからです。ところが、こうしたサイレントマーケットがF2Pによって市場化された結果、全体のパイが拡大。今やF2Pは日米欧でも拡大し、いわば『FF』ブランドのF2Pゲームが「逆輸入」されて、日本でも遊ばれている状況だといいます。

「F2Pは地域的なものでも、一過性のブームでもありません」と和田氏は語り、今後斬新的にF2Pの波が全世界を覆っていくこと。そして世界のゲームシェアが購買力の差と同じになっていくと語られました。ちなみに2030年でのシェア1位はインドで、以下中国、欧州と続き、日本は他の地域に埋没していると予想されています。

ただし、これによって作り手は必然的に、国内市場だけを考えているわけにはいかなくなりました。海外展開のローカライズについて、真正面から向き合う必要が出てきたというわけです。もっとも、まだ同社にもハッキリした方法論は存在しないようで、「ここでは自分の経験と印象だけでお話します」とコメント。今後さらに情報を集めて、市場の勝ちパターンに変換していきたいと抱負が語られました。

さて、和田氏はローカライズを「(1)言語や知識」「(2)アートと世界観」「(3)ゲームメカニズムとジャンル」「(4)UI」「(5)コミュニケーションデザイン」「(6)マネタイズ」の6種類に分類しました。その上で各要素について(1)(5)(6)はローカライズすべきだが、(2)(3)(4)はローカライズすべきではない(世界共通でOK)という認識を示しました。

まず言語については最低限ローカライズすべきで、RPGのようなテキスト文量の多いジャンルでも、現地でローカライズすればコストが抑えられること。また知識(文化的に支障のある表現など)面についても修正が必須だとしました。

コミュニケーションデザインは「まったりプレーや協力プレーが好きな日本人」「対戦好きの韓国・中国」に加えて、サッカーが好きなラテン系地域では「チームプレーによる対戦」が好まれるという見解を示しました。「鉄の団結で裏切り厳禁、その上で他のチームを狩りまくる」というわけです。そのうえで、地域ごとに好まれるコミュニケーションを促進させるためのゲームデザインや機能を付け加えていく必要があると語りました。

マネタイズについてはApp Storeをはじめ、一見すると全世界で共通の配信プラットフォームができているように見えて、課金決済の部分では国ごとに大きな違いがあると指摘。きちんとお金を回収するための算段はしっかり作り分ける必要があるとしました。

一方でアートと世界観については、全部グローバル仕様にしなくてもいいし、そんなものはどこにもないと指摘。「日本的すぎる」キャラクターやアートでも、それを「エキゾチックな表現」として受け入れられる土壌が広がってきたとコメントしました。一方で「中国で日本の戦国時代のゲームを出しても売れないのは、中国の人に日本の戦国時代に関する背景知識がないから。日本で三国志や水滸伝のゲームが売れるのは、その反対」と分析。「世界観と知識の議論は別モノとして分ける必要がある」と釘を刺しました。

またゲームメカニズムやジャンルについても「あまり関係ないのではないか」とコメント。各国別に人気ジャンルの偏りはあるが、実際はその国の中で特定のゲームメカニズムやジャンルを好む層が細分化されて存在すること。また「ハリウッド映画でアクションが多いのは、アクションが万国共通だから」などと言われることはあるが、ゲームは良い意味で敷居が高く、ゲームに対して前のめりでユーザーが接してくれるので、国別の人気ジャンルを意識するよりも良いゲームを作る方が先だとしました。

最後にUIについては「ローカライズしてはいけない」と指摘。せっかくスマートフォンやタブレットで操作系が万国共通になっているのに、地域ごとに操作性を変える必要性はないとコメントしました。「弊社ではコントローラーで操作できるゲームを作りたがるが、タッチやボイスでどのようなゲーム体験を提供できるか考えるべき」(和田氏)。その上で最後に「今日は印象だけで話したが、これをきっかけにもっとローカライズについて議論を進めて、業界を盛り上げていきたい」とまとめました。

また質疑応答では「これまで弊社ではグローバル戦略とよくいっていたが、定義が間違っていて、日米欧しか見ていなかった」と反省の談も飛び出しました。その上で「中国は非常に重要な市場でABCのSランクだが、単独で挑むことはない」とパートナー戦略の必要性を強調。直前に中国市場でリリースされた『拡散性ミリオンアーサー』がApp Storeの無料ランキングで2位になったことについても「パートナーが素晴らしかった。単独で挑んでいたら無理だった」と語りました。

世界の購買力シェア推移予測

ビジネスモデル別売上高

ローカライズすべきもの、そうでないもの

ローカライズすべきもの、そうでないもの
《小野憲史》
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