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【RETRO51】バーチャルボーイ VS. オキュラス・リフト VS. SUDA51!人間の視覚を奪う新たなドラッグ

今回のRETRO51では、VRの先祖とも言えるバーチャルボーイと、最先端のOculus Riftにスポットライトを当て、須田剛一氏にそれぞれのゲームを同時にプレイしてもらった上で、初めて触れた時の印象、VR技術によるビデオゲームの未来など大いに語ってもらいました。

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今年3月、Facebookによる電撃的な買収でさらなる話題を集めることになったOculus Rift(オキュラス・リフト)。ヘッドトラッキングと3Dを組み合わせたHMDは、これまでにない没入感を体験させてくれます。はたまた1995年に任天堂から発売されたバーチャルボーイは、商業的にはいまひとつでしたが、その先鋭的な試みはゲームコンソールとしてのVR(ヴァーチャル・リアリティ)の先駆として評価できます。

今回のRETRO51では、VRの先祖とも言えるバーチャルボーイと、最先端のOculus Riftにスポットライトを当て、須田剛一氏にそれぞれのゲームを同時にプレイしてもらった上で、初めて触れた時の印象、VR技術によるビデオゲームの未来など大いに語ってもらいました。

ビンテージ感あふれる90年代の3D表現から一気に没入する現代のVRへ


最初はバーチャルボーイです。編集部では『マリオズテニス』、『バーティカルフォース』、『レッドアラーム』、『T&E ヴァーチャルゴルフ』の4本を用意しました。まずは定番ということで任天堂の『マリオズテニス』を遊ぶことに。せっかく箱付きのソフトを用意したこともあって、須田氏は丁寧に封を開け、説明書も熟読します。

説明書と共に細かな注意書きも入っており、「部屋の中で遊びましょう」や「カイゾク版に注意」というインストラクションからは当時の雰囲気が感じられます。カートリッジはゲームボーイのものより一回り大きく、接触部分に保護キャップがついています。須田氏はヒューマン在籍時代にバーチャルボーイに触れるも、ソフトを見るのは初めてだそうです。

カートリッジを差込み、さっそく本体の電源を……と探すもすぐに見つかりません。電源ボタンはなんとコントローラーの部分にあり、手元で操作する形式になっているのです。用意が整ったらディスプレイの角度を調整して、ようやくプレイ開始です。


『マリオズテニス』はマリオテニスシリーズの原点であり、マリオやルイージ、ヨッシーといったお馴染みのキャラがテニスを行います。視点はやや低い位置からコートをプレイヤーの背後から眺めるタイプ。須田氏は慣れないコントローラーで操作に苦戦していました。バーチャルボーイのコントローラーは当時としては珍しく、左右に2つの十字キー、グリップ部分にトリガーがあり、計6つのボタンが付いています。サウンドチップはゲームボーイとほぼ変わらず、正統派かつビンテージなチップチューンが楽しめます。

「ワンゲームは取りたいな」、「えっわかんないなこの距離感!」、「だぶるふぉるとぉ~」と一人盛り上がる須田氏ですが、正直、周りで見ている人の置いてきぼり感は否めません。HMD全般の問題ですが、プレイヤーが何しているのかギャラリーからはまったくわからないのです。PCに接続するOculus Riftはその点はまだいいのですが、バーチャルボーイがウケなかった理由の一つを実感したようです。


次にプレイしたのはT&Eソフトのローンチタイトル『レッドアラーム』。内容はかなりモダンな3Dシューティングで、ワイヤーフレームで描かれた宇宙船や敵キャラクターはミニマリズムな美しさがあり、爆発エフェクトも非常にクール。3Dデータから描画されていることもあり、カメラ視点も自由に動きます。

せっかくなのでT&Eの技術力をもう少し見たいということで、3本目もT&Eの『T&Eヴァーチャルゴルフ』になりました。操作系は通常のゴルフゲームを踏襲したもので、クラブや方向、打点を選べ、ストロークを放ちます。背景、ボールの動きなど、細かなところに3Dが利用されています。ゴルフゲームなのに画面はすべて赤いというやや異様な雰囲気ですが、未来を感じると言えなくもありません。

次はOculus Riftです。Oculusは既に相当数の対応ゲームが出回っていますが、ここではOculus向けに開発された無料のものをいくつか試しました。


最初にプレイしたのは『Titans of Space』という惑星間ツアーシミュレーターです。首を自由に動かすことで、360度の宇宙空間と巨大な惑星を体感できます。特に太陽の大きさが圧倒的であり、これまでの映像表現にはなかった存在感が伝わってきます。操作がほとんどない分、逆に広い視野角の3D映像とトラッキングがいかに強力であるのかが実感できます。

次にプレイしたのはホラーゲームの『Alone』。ゲーム内のリビングのテレビに向かってゲームをするというメタ的設定が斬新です。テレビ内のゲームを進めることで、プレイヤーがいるリビングに異変が起こります。須田氏はそのホラー演出を評価し、声を出して驚いていました。

最後は、1人称視点のアドベンチャーゲーム『Windlands』。マインクラフト風の世界を自由に動き回ります。移動速度は速く、足場から足場へとジャンプするとOculus特有の浮遊感が感じられます。高い場所から落下するとミスとなるようです。「うわー落ちるー」、「翔べぇ」と須田氏の反応は、これまで以上でしたが、数分遊ぶだけで疲れを感じてしまったようです。

早すぎたバーチャルボーイ!今、遊ぶなら間違いなくT&Eソフト!


――お疲れ様でした。まずはバーチャルボーイの思い出などを話していただけますか?

須田:すごく昔ですが、ヒューマン時代にバーチャルボーイソフトの開発をする話があったのですよ。開発キットが会社に来て、当時、実際に触りました。社内ですごく盛り上がり、みんながひと通り遊んで、それで満足してしまうんですよね。

そのあと、開発チームはあったのですが、残念ながら発売に至らなかった。確か耳がでかいダンボみたいな犬が空を飛ぶゲームだったと思います。『ドラゴンズ・アース』の小池ちゃんが企画したゲームで、タイトルは思い出せなかったですね。あっ、今「ヒューマン+バーチャルボーイ」で検索したら出てきましたね。なんとタイトルは『空飛ぶヘンリー』(笑)。

――可愛らしいゲームですね。須田さんはまったく開発には関わってないのですか?

須田:開発というか当時、ヒューマンには企画課というのがありました。そこに大勢のプランナーがいて、その中の同僚が小池ちゃんだったんですね。そして、彼の企画に社内のプログラマーがアサインされるわけです。多分、プロトタイプまでは出来ていました。社内でデモもやっていましたからね。ですが、やはり市場の状況が良くないということで開発を途中で止めたのだと思います。

――須田さん自身はバーチャルボーイで何か作りたいと思わなかったのです?

須田:
まったく何にも思いませんでした。

――(笑)。

須田:当時はファイプロを作っていたので、忙しかったですね。後は自分の企画を立ち上げたかったので、どちらかというとPlayStationで作りたかった。

――確かにバーチャルボーイが発売された95年は、スーパーファミコンの時代が終わり、既に次世代機戦争に入っていますからね。ある意味、一番、混沌とした何が出てくるのかわからない時代だったと思います。


須田:PlayStationにはとても期待していましたね。技術が完全に置き換わり、3Dが主体になっていくというのは魅力に感じました。ツールも変わっていきました。ヒューマンでは絵作りは、X68000の専用エディタで作っていたのです。それが完全に3D専用のツールに置き換わります。当時は次世代機向けのCG制作のために、シリコングラフィックスの高価なPCを会社でたくさん導入していました。なので、機運が変わるのを肌で感じていました。

――そんな中、どうしてバーチャルボーイは未来のゲーム機にならなかったのでしょうか?

須田:未来を先取りしていて、早すぎた部分もあると思います。それこそ20年経った今、奇しくもProject MorpheusやOculus Riftの形で復活してきたわけです。こういう風に3D という発想が20年後に再来すると思わなかった。その点、任天堂さんは3Dへの飽くなき挑戦を続けていますよね。遊びとしては平面から始まって、その後はダブルスクリーン、さらに3Dと進化をさせてきた。なので、バーチャルボーイは革新的で前衛的挑戦ではあったと思います。

――価格が安いのも任天堂らしいですね。バーチャルボーイはご存知の通り、横井軍平さんが開発しましたが、当時このLEDディスプレイが安価になったそうなんです。そういう安い素材を流用するのは、横井さんらしい発想です。

須田:1万5千円ですからね。安いですよ。

――では今日、プレイしたゲームの感想をお願いします。

須田:まず、ご本家の任天堂の『マリオズテニス』はいわゆる擬似3D でしたね。背景は立体的で美しいのですが、慣れるまで距離感を掴むのが難しいです。それに比べると、その後に遊んだT&Eのゲームが圧倒的に秀でていました。こちらはバリバリ3Dで、カメラもぐるぐる動きます。しかもこれPOLYSYSという自社エンジンなんですよね。


――T&Eソフトの『レッドアラーム』は本当に素晴らしかったですね。

須田:これは完全に3D ゲームでしたよね。1995年でこれはすごいですよ。『スターフォックス』と同時期にここまでの3Dシューティングを作るなんて。ぜひとも再発見してサルベージしたい。

――シューティングですが、探索要素もありますよね。

須田:そうですね。直線に進行するのではなく、途中で止まったり、横に入ったりして謎を解いていく。演出もキレキレでした。単にSTGをバーチャルボーイで作ったのではない作品の匂いがプンプンします。サウンドもエフェクトも本当にかっこよくて、『REZ』の先祖なんじゃないかと。ワイヤーフレーム好きにはたまんないですよ。名作認定されていて当然のゲームです。

T&Eは最後の『T&E ヴァーチャルゴルフ』も美しかったですね。ゴルフゲームの操作系は完成しているため、どれも同じ感じがしますが、傾斜や軌道の計算など物理的な挙動はちゃんとしていますね。

――興味がある方にはバーチャルボーイを買って体験してみて欲しいですね。

須田:ただ出荷台数が世界で約126万。希少なハードなので、なんとか急いでサルベージしてほしい。

――あとソフトは全部で19本しかないんですが、揃えるのは大変かもしれない。編集部は今日のために秋葉原のレトロゲームショップに行ったのですが、5つしか品揃えがなかったらしいですよ。

須田:まじっすか(笑)。

――しかも、スペースインベーダーのソフトは新品では3万5千円もしました。Amazonの新品は7万円以上の値が付いています。

須田:
そのくらい希少価値があるんですね。やっぱりスペースインベーダーにはインベーダーのコレクターがいるんでしょうね。でも今回はT&Eソフトを推しましょう。バーチャルボーイやるんならT&E!その後はスパイク・チュンソフトに吸収されたそうですが。

視野角の剥奪は人間の脳をハックする?Oculusから垣間見えるVRの未来


須田:ところで京都のBitSummitには行きましたか?あの時に大賞をとったのがOculusのゲームだと聞いたのですが。

――Viteiの『MODERN ZOMBIE TAXI DRIVER』ですね。BitSummitは3日間参加しましたが、あれはすごかったですよ。疲れていた日に試したせいか、3D酔いで吐きそうになりました(笑)。内容は『クレイジータクシー』のようですが、後ろを向くと乗っているお客さんも見えるんです。そして、運転したときの体感がヤバいです。GTAなどでめちゃくちゃな運転をしてクラッシュするのは、普通、楽しいじゃないですか。でもこのゲームでドリフトを決めようならば、擬似的な重力をものすごく感じて本当に腹にくるんです。本当の車酔いみたいに気持ち悪くなります。

須田:そのゲームはまだ遊べないんですか?

――まだリリースしていませんね。他にもBitSummitにはOculusを利用したゲームがいくつかありました。Oculusの面白いところは、もともと開発キットも含めて早い段階からオープンにしていることです。個人でも買えるし、すぐに開発も始められます。この点は本当に革新的で、単なる見かけ以上の問題として、それこそバーチャルボーイとはぜんぜん違いますね。

須田:確かにそれは珍しいですね。

――ではOculusとVR全般について聞きたいと思います?須田さんは初めてOculusを触ったのはいつですか?

須田:1年前くらいですかね。国内のイベントでエピック・ゲームズさんが出展していたんですよ。最初はローラーコースターに乗るデモをやったのですが、想像以上に感覚を持っていかれたのでこれはヤバいと思いました。高さや平衡感覚も感じました。高いところで足元を覗いたときは、ゾワっとしました。

その時にどなたからか聞いた話なんですが、波打ち際に自分がいて、少しずつ水の中に入っていくデモがあるらしいのですよ。そうすると水の中に入った瞬間、息を止めてしまうらしいです。音や映像で即座に息が出来ないって反応してしまうんです。溺れる声などを入れたら、本当に危険らしいです。

そもそも僕がVRやビデオドラッグを知った時に思い出したのが、原案・脚本ジェームズ・キャメロン、キャスリン・ビグロー監督の映画『ストレンジ・デイズ』ですね。映画は世紀末が舞台で、他人のが記憶・五感をディスクで販売しています。それを神経接続すると、バーっとその感覚が体験できるんですよ。それが殺人だったり、セックスだったりするわけですが、ある種の電子ドラッグ、ビデオドラッグとしてそのディスクが闇で流通しているんです。

僕が初めてVRを知ったとき、この世界が到来したなと思いました。怖さも感じます。

――そもそもビデオゲームの一つの理想には、疑似体験があったと思いますが、今まではそこまでのものは存在しませんでした。

須田:でもOculus Riftはもう装置としてある程度それを実現できる代物。Oculus Riftの視野角はまだ狭いですが、だんだんと広がって、さらに軽量化され、人間の全視覚がすっぽりと収まってしまうんじゃないかと。そうなるともうその世界から出られなくなるんじゃないですかね。


――ところで須田さんはOculus Riftで何か作りたいものはありますか?

須田:純粋なシューターを作りたいです。いわゆる戦争ものではなく、20年前に流行った電子銃を使った室内でやるサバイバルゲームみたいな遊び場であり舞台装置。最初にロビーがあって登録して、部屋に入っていく、そこまで再現しつつとてつもなくシンプルなものを。

正直、すべてのビデオゲームを視野をジャックされて体験してみたいですね。それくらいOculusなどのVR技術とビデオゲームの相性は良いと思います。今回、ソニーのProject Morpheusも登場したわけですから、ビッグタイトルが来る可能性もありますね。

――とりあえずはトロに会えるようになりますかね(笑)。

須田:どこでもいっしょですね(笑)。他にもミリタリーFPSは登場しますよね。それが『CoD』なのか『BF』なのかわからないですが。2K Gamesなんかが出してくる可能性もあるでしょう。

――そういった海外のゲームでOculusを活かせそうなものはいろいろありますが、逆に日本のタイトルでは何が良いと思いますか?

須田:初音ミクと添い寝ができるというのが既にありますよね。定番だなーって思いました(笑)。電脳ガールと一緒に遊ぶ、参加する、応援する。この流れはやはり強いですし、ファンべースのニーズが高いと思います。だから、インディーゲームでもProject Morpheusの形でも、いろいろなゲームが出てくると思います。

あとOculus Riftは基本的にはPCゲームですよね。そうするとセクシャルな、バイオレンスをテーマとしたヤバいものもがたくさん出てくるんじゃないでしょうか。いよいよビデオドラッグの時代に突入したのではないかと。ビデオゲームドラッグの時代というか。

――実際にOculusRiftをプレイしている人を傍から見ると、かなりイッちゃっている人に見えますよね(笑)。あれは不思議なんですが、視覚を奪っているだけなのに、脳全体をハックされているように見えるんですよ。実際に攻殻機動隊などでも、電脳をハックされたという描写のためにHMDをつけているシーンはあったように思います。

須田:結局、視野を奪われると脳がハックされるんじゃないでしょうか。僕はさっきまでプレイしていて思いましたが、OculusRiftを装着してちょっとでも動いて視覚が追従して動いた瞬間、脳が完全に切り替わるのですよ。だから脳をハックするには、視覚と聴覚を奪うだけで十分。さらに嗅覚なども入れて、3Dが4D、5Dと増えていく。OculusRiftは既に4Dに突入しているんじゃないですか。

――では最後に今回、バーチャルボーイとOculus Riftを体験してもらった須田さんは今後のVRの将来をどう見ていますか?

須田:結局、20年間、バーチャルボーイからブランクがあったわけじゃないですか。いわゆる視覚をジャックしてゲームを遊ぶという任天堂の挑戦。これが20年間の跳躍でビデオゲームドラッグにまで到達したなと感じます。Oculusなどを遊んだ人が感じるのは、いわゆるHMDとビデオゲームの相性の良さです。親和性というレベルじゃなくて、そもそもHMDはビデオゲームのためにあるんじゃないかと。

そこの魅力は作り手としても圧倒的ですよ。同時に、そこはかとない恐ろしさを感じていることも確かです。強烈な装置ですから。
今後はPlayStationにもProject Morpheusがあるので、僕もチャレンジしていきたいと思います。まだ構想も含めて考えている最中ですが。

――わかりました。本日はありがとうございました。
《Shin Imai》
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