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【コラム】サッカーゲームにおける“リアル”とは?『FIFA 15』が提示したひとつの答え

シリーズ最新作『FIFA 15』。その特徴は「より“リアル”に」という言葉に集約される。サッカーゲームに関わらず「リアル」という言葉はしばしば使われるが、本作ではそれをどのように捉えているのか。

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先日発売されたサッカーゲームのシリーズ最新作『FIFA 15』。本作は新世代機にフォーカスした初めての作品であり、その特徴は「より“リアル”に」という言葉に集約される。サッカーゲームに関わらず「リアル」という言葉はしばしば使われるが、本作ではそれをどのように捉えているのか。


|サッカーゲームは、「サッカー」を超えられない。

ゲームにおいて、「スポーツ」ほど漠然としたジャンル名はないかもしれない。FPS、アクション、パズルと違って、そこにゲーム性を示すものは何もない。いや、スポーツが「身体を使う」意味を含むなら、体感ゲームやモーション操作こそがスポーツであり、それ以外はむしろスポーツではないとさえいえる。

スポーツゲームは現実のスポーツに近づけることで進化してきた。これはゲーム以上に、現実のスポーツへの憧れや愛情があるからこそであり、スポーツを追体験する道具としてスポーツゲームは有用だった。そして多くのサッカーファンにとって、実際にピッチに立って戦う選手としてよりはむしろ、その選手たちの活躍を見るものとしてサッカーは愛されている。


仮に選手としてのリアルを追求するなら、おそらくは体感ゲームになるだろう。たとえばモーション操作(実際、サッカーゲームにおいても足を使うゲームはあった)。極限を追求するならバーチャルシミュレーターになるかもしれない。仮想空間でスタジアムとピッチと選手を再現し、現実さながらに体を使うゲーム。果たしてそれをプレイしたとき、我々ふつうの人間はサッカーのリアルを感じられるのだろうか。

一般的なサッカーゲームはその初期から、その形をほとんど変えずここまで来ている。コントローラーでボールホルダーを操作、パスで操作対象を変えつつ、最終的にボールを相手のゴールに入れる。「自陣から敵陣へユニット(選手)を動かしながら攻め込む」、最近ではチーム全体の戦略・戦術や、ユニットの能力値なども反映されるようになっており、ゲーム的にはスポーツというよりむしろ「RTSーリアルタイム・ストラテジー」というのが正しいかもしれない(逆に、現実のサッカーこそRTSだという見方もできる)。


|私は、選手だと思ったら、TVを見ていた。

サッカーゲームは実際にピッチに立つ選手という部分と、それを見るファンとしての部分の両方で進化してきた。あらゆる動作を再現しようと選手の操作は複雑になり、現実に存在するスター選手たちがそのままの姿でゲームに登場するようになっていった。TV中継のように実況がついたのは後者の進化のひとつだが、そこでゲームをしている自分は、TV中継を見ている視聴者なのか、実際にピッチに立つ選手なのか。「おれは TVの前で試合を見ていたと思ったら いつのまにか選手をしていた」ーー。あるいはその逆。

新世代機によるグラフィックの向上も手伝って『FIFA 15』では、徹底的にTV中継に“寄せた”演出を行っている。ピッチを移す画角、選手の入場、リプレイ。ゴールシーンでは、喜びを爆発させるゴールゲッター、そこに抱きつくチームメイトをアップで映した後、うなだれる相手ゴールキーパーの表情のカットを入れる。ゴールリプレイの後には誇らしい表情で自陣に戻る選手と、スコアが動いたことを示すテロップ。単なる背景から、より表現豊かになった観客たち、精彩になった選手のモデリング。もちろん実況・解説はTVならではの要素だ。

「まるでTV中継を見ているかのようだ」ーーこの賛辞は、選手としてのプレイヤーにとまどいを与えていく。

サッカーファンが触れる機会の最も多いTV中継こそが、リアルを感じさせるものだ、と仮定してみる。ゲームは基本的にTV(を含むモニター)を通じて行うものであり、それがTV中継にリアルを感じる理由のひとつになるかもしれない。

TVで試合を見ていて「いやそこは右サイドに展開してからワンツーのちにクロスだろ」とか「細かいパスしてないでバイタル一発ミドルいれとこうぜ」とか「下がり過ぎだ前線からチェックしてショートカウンター狙え」とか「FKまたこいつが蹴るのかあいつの方が可能性ある」といった視聴者の欲望を形にする機会を与えてくれるのが、サッカーゲームだ。そこでプレイヤーは、「選手でもなく視聴者でもない、あるいは選手でもあり視聴者でもある(神とまではいかない)超越者」だ。


|シャビを、ネイマールを超える者。

TV中継のような視点による、シャビを上回る視野の広さと、細かい操作系による、ネイマールを超えるボールコントロール、深みを増したチームマネージメントによる、(※W杯での)ファンハール監督さながらの名采配、そのすべてを手に入れられる可能性がある、その万能感こそがこのゲームの核である。そして、自らのゴールが即時に実況の雄叫びとともに、TVの演出を通じて讃えられるというのは、実際の選手ではありえない体験だ(ピッチに立つ選手はTVを見ながらシュートをうたない)。

超越者の視点から、実際にサッカーをしているような感覚でなく、現実のサッカーを見ているような感覚で選手を操作する。それが決定的になったのが『FIFA 15』だ。「サッカーとしてリアル」であることよりも「サッカーゲームとしてリアリティ」がある方を選択した、といっていい。どちらがゲームとしておもしろいか、の判断はここではしないでおく。

「サッカーゲームにおけるリアルとは、見るものとしてのリアリティである」。ゲームをプレイするものにとってなじみのあるTV中継というフォーマットで、グラフィックの向上による視覚的なリアリティを積み重ねる。超越者としての私は、華やかな演出の中で一流の選手としてゴールを決めていく。


かつて「すべての選手(プレイヤー)が実際にいる人間(プレイヤー)」を達成した「BE A PRO ONLINE」でひとつのリアルを追求し、今回「新世代機の能力を存分に活かしたグラフィックでTV中継を再現」したことでもうひとつのリアルを追求した。視聴者と選手という矛盾、ゲームのサッカーと現実のサッカーの齟齬を、リアリティという名の波状攻撃で中央突破していく、それが『FIFA 15』なのである。

さて、これまでに何回「リアル」という言葉を使っただろうか?
《Kako》
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