【RETRO51】メガドライブの隠れた名作『ヘルツォーク・ツヴァイ』―25年前に存在したRTS/MOBAの原点 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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【RETRO51】メガドライブの隠れた名作『ヘルツォーク・ツヴァイ』―25年前に存在したRTS/MOBAの原点

SUDA51とレトロゲームを探訪する連載企画「RETRO51」。これまでアーケード、ファミコン、バーチャルボーイ、Xboxと様々なレトロゲームを扱ってきましたが、今回はメガドライブの登場です。

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【RETRO51】メガドライブの隠れた名作『ヘルツォーク・ツヴァイ』―25年前に存在したRTS/MOBAの原点
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SUDA51とレトロゲームを探訪する連載企画「RETRO51」。これまでアーケード、ファミコン、バーチャルボーイ、Xboxと様々なレトロゲームを扱ってきましたが、今回はメガドライブの登場です。メガドライブは1988年に発売されたセガ製コンソール。セガ・マークIIIの後継機として登場、スーパーファミコンやPCエンジンなどのライバルと一時代を築きました。海外ではジェネシスの名前で販売、北米では2000万台以上の売上を記録しています。

セガのプラットフォームということもあり、アーケードゲームの移植に恵まれました。また搭載チップMC68000が当時のPCで利用されていたこともあり、PCゲームメーカーのコンソール機参入のきっかけにもなりました。今回紹介する『ヘルツォーク・ツヴァイ(Herzog Zwei)』もPCゲームメーカーの名門テクノソフトの作品です。

『ヘルツォーク・ツヴァイ』は1989年にリリースされたシミュレーションゲーム。当時には珍しいリアルタイム制を採用しており、現代のRTSやMOBAの起源にあげられることもあります。プレイヤーはお互いに戦闘機を操作。拠点でユニットを生産して相手ベースに進軍します。リアルタイムの戦略要素とシューティングを組み合わせたような内容は唯一無二。ぜひとも現代のRTSやMOBAプレイヤーにも知ってほしい名作です。

■戦場には一切チュートリアルはない



ゲームを開始すると渋い戦車の画像。非常に簡素ですが、戦争の雰囲気はヒシヒシと伝わってきます。ゲームモードはキャンペーン以外に画面を分割しての対戦プレイもあります。残念ながらコントローラーを2つ用意できなかったため、今回はキャンペーンモードを体験しました。

ゲーム内には操作やルールの説明もなく、手探りのプレイです。基本的にプレイヤーは1体の可変戦闘機を操作。MOBAにおけるヒーローユニットのような存在です。他のユニットは自陣の工場で生産。生産時にユニットのタイプと行動を指令します。

ユニットの種類はタンク、戦闘バイク、対空自走砲、砲台、歩兵、戦闘ボート、補給車とバリエーション豊富。指令はかなり単純化されており、特定地点を防衛、ローミング、敵拠点へ進軍など7つを割り当てできます。またユニット生産には費用がかかります。ゲーム内の資源は資金の1種類だけですが、この資金を増やすためにもより多くの拠点を占領する必要があります。



ゲームは1対1の対戦で、相手の本拠地を破壊したら勝利。現代のMOBAのように3対3、5対5というわけではありませんが、ゲームの流れは非常に似ています。まずはお互い自陣から近い中立拠点を占拠。歩兵を4ユニット潜入させると拠点は占拠できます。自陣を展開すると敵陣に攻め込みます。攻撃系のユニットを配備するか、戦闘機で自ら乗り込むかは自由。ただしユニットの輸送は戦闘機でひとつひとつ行う必要があります。

飛行時には燃料を大量に消費するため、遠い敵陣にユニットを送ることはできません。そのため、中継地点となる拠点をしっかりと確保する必要が出てきます。このあたりの戦略性はかなりうまく作られています。またユニットには地上と飛行の概念があり、それぞれ攻撃の判定が異なります。そのため、自機の戦闘機ではタンクなどの地上ユニットに対して攻撃不可能。ロボット型の地上ユニットに変形して戦います。

初プレイ時はユニットの生産方法に頭を悩ましました。ユニットは占拠した拠点ならどこでもできますが、必ず拠点の中心部に戦闘機を待機させ、ユニットを一つずつ受けとる必要があります。初回プレイではこの仕組が理解できず、どんどん相手に責められてしまいました。敵のユニットに対して戦闘機単体で対応してもすぐに燃料切れ。うまくユニットを生産して効率よくプレイする必要があります。

■リアルタイムだからこその戦争感



操作とルールを把握した後、もう一度、最初からやり直しました。まずは歩兵ユニット生産、輸送して中立の基地を占拠します。アイコンで表示されるユニットの指令は、慣れるまでかなりわかりづらく、説明書が手放せません。また「敵の本拠地に進軍する」といった便利な指令を与えたユニットは非常に高価。コストをうまく管理しながらバランス良くユニットを生産する必要があります。

中立拠点の奪い合いが終わると、中盤戦へ。各地点で戦闘が発生します。戦況はミニマップでもある程度、把握可能。ユニットを防衛として配備することもありますが、あえて拠点を放棄して相手の本拠地を目指すことも可能。とはいえ、中継地点を失うと、ユニット配備にも遅れます。この辺の駆け引きはRTSらしさがあります。

――思った以上に難しいですね。ちゃんとルールを把握しなければ勝てません。

須田:
1面からこれですからね。序盤は拠点を奪い合い、中盤からは各拠点での攻防。難しいですが、よく出来ている。遊びごたえ半端ないですね。

――須田さんはRTSプレイしますか?

須田:
リアルタイム系はあまりやらないです。極めるのが大変ですからね。どうしてもソロプレイに流れてしまう。

――このマップは既に占領されている場所がありますね。どこを攻めればいいのかな。

須田:
中央の小島が重要な拠点のようですね。

――あ、今度は自機が殺られる。

須田:
自機が殺られた時の時間のロスは大きいですね。

――そうですね。この辺はMOBAのリスポーンタイムにも似ています。ユニットの生産にも時間がかかる。一分一秒を惜しむ必要があります。

須田:
メニュー開いている間も容赦なく殺しにきますからね。完全なリアルタイム。いやこの戦争感は半端ない。名作ほまれ高い。

――対地対空の概念もあり、ユニットの差別化もよく出来ています。

須田:
あそこには船のユニットもいますよ。地形によって使い分けをする。本当によく出来ている。



――コントローラーさえあれば対戦プレイができたのですが、CPU戦でも画面分割できるようなのでやってみましょう。

須田:
始まりましたね。相手の動き速いですね!

――超慣れた動きです(笑)。でも対戦画面だと相手の動きを見ることができます。これは参考になります。

須田:
CPUは中立の拠点を攻めています。ひたすら歩兵輸送を往復しています。これが定石のようですね。あ、今やっとタンクを作っています。

――敵ユニットが攻めてきた。これは自機でさばきます。

須田:
ベースは削られたら修理できないですか?

――できませんね。それができると終わらない(笑)。みるみるユニットに包囲されています。

須田:
無駄がない動きしますね。

■確かに感じたMOBAの香り



――この手のゲームは効率性が命ですね。CPUは結構、良い動きします。

須田:
StarCraft』などもこういう感じですか?

――基本的にはそうですが、もっと複雑です。本作は操作するユニットがひとつなので、どちらかというと『League of Legends』などのMOBAに近いです。

須田:
なるほど。

――古い作品ですが、技術的な制約から操作ユニットはひとつである必要があったのでしょう。『StarCraft』などのRTSはユニットをすべて直接指示します。本作は操作ユニットがひとつである分、輸送も自機でやらなきゃいけない。しかしながら、結果として現代的なRTSの雰囲気が感じられます。

須田:
本作はコンソールにあわせてコントローラー操作という点も良いですよね。とっつきやすい。ゲームプレイも本当に面白い。勉強になります。紹介するに値する超名作です。



――本当ですね。思った以上にRTSらしさがありました。当時「アクティブシミュレーション」と名乗っていましたが、確かにRTSの起源。

須田:
ユニットの動きやCPUの動きも当時としてはかなり良いですね。以前、グラスホッパーを立ちあげた頃に、テクノソフトさんにシミュレーションゲームのプロトタイプを見せてもらったことがあります。100体ほどのAIをバラバラに動かすという内容でしたが、やはりテクノソフトはすごいと思った記憶があります。当時からAI技術は非常に優れています。

――STGの『サンダーフォース』シリーズも技術的な面でもかなり高く評価されていました。

須田:
テクノソフトは1999年に活動休止なったようですね。ただ主要スタッフはその後、様々な形で活躍しています。『ONE PIECE』のシリーズで有名なガンバリオンさん、『マリオパーティ』のシーエイプロダクションさんなどはテクノソフトの方が設立したそうです。

■初期コンソールにあったRTSの可能性



――日本ではRTSの人気はそこまでありません。どちらかと言えば、『ファイアーエムブレム』や『スーパーロボット大戦』といったターン制が人気です。

須田:
やはりゲームプレイが忙しくないからでしょう。『ファミコンウォーズ』などもターン制でした。

――スーパーファミコンやメガドライブの頃までは日本にもいくつかリアルタイムの戦略ゲームはありましたが、その後に続きませんでした。例えば最近『野犬のロデム』を制作したラショウさんの『ボコスカウォーズ』。原始的ですがRTS的な要素を持っています。また非常にマイナーですが『カオスシード~風水回廊記~』も今で言うタワーディフェンスのようなゲームでした。

須田:
しかしながら、やはり日本はターン制が人気強いですからね。RPGなどでもターン制が根強い。

――そうですね。最近のRPGはかなり境界が曖昧になってきましたが、ターン制の方が馴染んでいるようです。逆に須田さんは『信長の野望』や『三国志』といったターン制のシミュレーションはやらないんですか?

須田:
やらないですね。『スーパーロボット大戦』くらいです。『スパロボ』はやっぱりロボットだから、昔からやっていました。最近は10年くらいやっていなかったんですが、去年復帰しまして3DS版をプレイしましたよ。



――ターン制のシミュレーションはもう完成されていますよね。だから昔と変わらず遊べます。唯一、グラフィックスと演出だけ進化していく。

須田:
本当にそうですね。それ以上、進化しても複雑になって面倒になる。自分は好きなのでハマりますが、すごく時間がかかる。ひとつのマップ何度もやり直して、失敗するとリセット。あの時間の無駄がボディブローで効いてきます(笑)。

――ターン制は基本的にソロプレイで何十時間とかけますからね。その点、本作のようなRTSは対人戦に魅力があります。セーブも無いから安心です(笑)。

■簡素な世界観の中で光るゲームデザイン



――それに対してキャンペーン自体はかなりドライ。シナリオもなく、ひたすらにマップをクリアするだけです。やはりゲームデザインに重きを置いた作品ですね。

須田:
説明書の絵もこれだけですからね。一応、キャラ設定もあります。ルードヴィッヒとヴァールサカァの対決です。ここからイメージを増幅させる他ない。

――とってつけたような絵ですよ。ヒロインや部下もまったくいない(笑)。この2人が戦闘機に乗って1対1の戦争をしているんですかね。それはそれで熱い設定。

須田:
赤側が一応主人公ですね。反乱軍という設定です。あれ、なんか黄色のユニットもありますよ。

――これは色があせただけですよ(笑)。

須田:
そうか(笑)。当時は画面を直撮りする他ないですからね。それにしてもこの印刷。テクノソフトギャルズクラブというものも掲載されていますが……。



――説明書はともかく、内容で勝負です!今日プレイして面白かったところはどこですか?

須田:
やはりAIがしっかりできているからこそのリアルタイムの面白さです。自分がプレイしているのと同時に相手が動いている。その戦争感が半端ない。ターン制だと順番で回ってきます。そういう約束事を無視して、いかに効率的に攻めるか。これは熱いですね。今の時代も十分通用します。むしろ、今の時代の方がニーズにあっている。

――ただ日本ではあんまり知られていません。セガジェネシスは海外の方がポピュラーなハードだったので、海外でRTSの歴史では必ず名前があがります。

■Mechへ引き継がれるロボット魂



――ところで本作はロボットへ可変できる戦闘機でした。

須田:
そうそうマクロスみたいな。

――最近では日本のロボットの影響から海外ではMechという名前でロボットものが結構増えています。

須田:
なるほど。『トランスフォーマー』などの影響で根付いてきましたか。

――『パシフィック・リム』などもありました。

須田:
ガンダム』もそのうちアメリカで人気でるんじゃないかと思っています。

――確かに『ガンダム』は意外に人気ないですよね。物語が日本らしいせいなのか。

須田:
そこはもう伝え方次第です。戦争、戦記として伝えた方が良いでしょう。あそこまで良く出来ている戦争ものはありません。実際、この前にイタリア人にそういう話を力説しました。


――ロボットもの自体は好きですか?

須田:
もちろん、大好きです。『ガンダム』はリアルタイムで放送は見られませんでしたが、アニメ誌ではリアルタイムで追っていました。今でもバンダイのロボット魂を大人買いしています。つい最近は『閃光のハサウェイ』に登場するペーネロペーというモビルスーツ予約しました!メカとしてのモビルスーツが好きですね。近未来近代兵器としての魅力があります。



――しかしながら、最近はロボット系のゲームは少なくなりましたね。

須田:
確かにマンガもロボットものは子どもにウケないとは聞きます。

――アニメは今でもロボットものがありますが、ゲームは減りつつあるように思います。2000年代には『アーマード・コア』、『ゾーンオブエンダーズ』など結構な人気がありました。現代はむしろ海外のインディーなどでロボット系ゲームを良く見ますね。タイのインディーゲーム『Project Nimbus』といった作品もあります。

須田:
最近は『タイタンフォール』もありましたよね。

――中でも『AirMech』というゲームはMechをフィーチャーしたRTSでほとんどのシステムが『ヘルツォーク・ツヴァイ』と一緒なんですよ。海外のインディーゲームですが、それくらいインスパイアされています。PCのFree-to-Playで展開されていて、今後はユービーアイソフトがパブリッシャーとなって国内でPS4/Xbox One向けにリリースされます。

須田:
なるほど。

――だから『ヘルツォーク・ツヴァイ』のようなロボット系MOBAもありかもしれません。もちろん『StarCraft』にもMechの要素はありますが、よりヒーロー的なロボットをフィーチャーしたものが見たいですね。巨大なロボットが登場するとか。

須田:
変身や合体するのもいいですね。

――それも含めてぜひとも読者の皆さんには『ヘルツォーク・ツヴァイ』をプレイしていただきたいです。

須田:
本当に名作でした。
《Shin Imai》
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