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【コラム】『ハースストーン』で勝つために必要な能力とは? 日本人準優勝のAPAC地区予選を密着取材

10月1~3日に台湾・台北で開催された『ハースストーン』世界大会のアジア太平洋地区予選で日本のKno選手が準優勝を果たした。今回はKno選手の活躍を中心に他の選手のエピソードも交えつつ、『ハースストーン』の選手に求められる能力について述べてみたい。

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■最弱のクラスを使った男、Pinpingho

今度は別の観点から『ハースストーン』の実力を考えてみたい。以下は各選手が大会に持ち込んだ3クラスと、その統計だ。


今大会で各選手が選択した3クラス

    各選手の使用クラス統計
    ドルイド:8
    ウォーロック:4
    ウォリアー:3
    メイジ:3
    パラディン:3
    ハンター:2
    シャーマン:1
    プリースト:0
    ローグ:0
ご覧の通り8人全員がドルイドを使っており、圧倒的な人気である。「今の環境でドルイドに有利を付けられるクラスはほとんどいない。良くてもせいぜい52、3%ぐらいの勝率だろうね」とKranich選手は言う。「完璧な手札が揃ったときの爆発力でドルイドの右に出るクラスはない。必殺のコンボもあるから不利な状況でも逆転勝利の可能性が十分にある」のだとか。


試合前は和気藹々のKno選手(左)と韓国のTaesang選手(中央)、Kranich選手(右)。しかし勝負は別だ

『ハースストーン』の大会ルールでは「3つのクラスからなるデッキを用意して対戦」するため、ドルイド以外にも2つのクラスを用意しなければならない。大半の選手はウォーロック、ウォリアー、パラディン、メイジといったクラスを第2、第3のクラスとして選択していた。そんな中でも、一風変わったクラスを持ち込んだ選手がいる。2年前のベータテスト時代から台湾のトッププレイヤーとして第一線で活躍するPinpingho選手だ。


Pinpingho選手が今大会に持ち込んだのは「最弱のクラス」と称されるシャーマンである。戦えないクラスではないのだが、今大会で猛威を振るう爆発力や必殺のコンボが存在しないのである。TGT後にGame*Sparkが行った国内トッププレイヤー座談会でも、参加した3人全員が討論中「シャーマン……」と言葉に詰まっていた。

Pinpingho選手はそんなシャーマンを9月中旬の台湾予選に持ち込んで準優勝。今大会にもやはりシャーマンを使って本戦出場権を獲得し、その選択の正しさを証明してみせた。


Neilyo選手(左)との代表決定戦に臨むPinpingho選手(右)

「相手と同じデッキで戦うのは嫌なんだ」とPinpingho選手は試合前日に話す。「自分と相手の差が現れにくいからね。デッキが同じだとプレイングと運の勝負になる。シャーマンが強いとは言わないけど、ドルイドには強いから今の環境では戦えると思う。僕の3つのデッキはすべてドルイドに有利が付くように構成するつもりだ」。


大会2日目の夜は台湾の選手・実況解説陣とディナー

『ハースストーン』のもう1つの実力に「環境を読む」という力がある。たとえば強いドルイドに人気があり、全プレイヤーが使用するのであれば、「ドルイドに確実に勝てるデッキ(現実にはそんなデッキは存在しないが)」を用意すれば勝率が上がるわけだ。逆に、一般的に弱いとされるデッキでも流行っているデッキに強ければ勝率が上がる。Pinpingho選手はその読みを見事に的中させ、本戦への出場権を手にした。


台湾のChilly選手(左)、Pinpingho選手(中央)、今大会で中国語の解説を務めたEason氏

とはいえ「全世界のプレイヤーによって証明されているデッキ」を使わず、自己流のデッキを選択するのには勇気がいる。Kranich選手は「大会に自分のデッキを持ち込む意義」をこう言って強調した。「シャーマンを持ち込んだ彼(Pinpingho選手)の選択はとても面白い。僕もシャーマンは好きなクラスだから色々なバリエーションを試していたが……大会に持ち込むことはしなかった。この点でPinpinghoは"世界最高のシャーマンプレイヤー"と言える。"大会で結果を出したプレイヤーと、そもそも大会に持ち込まなかったプレイヤー"ではやはり格が違うよ」。

■大会の主役は選手

勝負以外にも選手がやることは多い。試合前日の「国際記者会」では各ゲームメディアが招待され、台湾Blizzad CEOのEddy Meng氏や選手がインタビューに答えた。

試合前日の「国際記者会」。スポーツでは普通だがゲームの大会では珍しい

台湾Blizzard CEOのEddy Meng氏。3年間東京で働いた経験があり日本語も流暢だった。剣道も3段の腕前だとか

その後はスタジオで試合開始前に放映される、各選手の「登場動画」を撮影。スタジオは一般メディアが立ち入れない場所だったので残念ながら写真はお見せできないが、完成後の動画は台湾BlizzardのYouTubeチャンネルにて次のようにアップロードされている。


Kno選手登場動画

Kno選手のパスには「Pro-Gamer」と書かれてていた。しかし関係者によると「特別な意図はなく、世界大会予選に出場するレベルのプレイヤーは習慣的に全員こう呼んでいる」のだとか


開幕式では台北の青年音楽団によるBlizzardの各ゲームのライブ演奏が行われた。その様子はこちら

「大会の花形である選手をクローズアップしたい」という印象だ。どんなに予算をかけて巨大な会場を作っても、対戦する選手がいなければ何もならない。その意味では「選手への配慮」も重要だろう。Blizzardは期間中「選手を観光地に案内してご馳走する」といった活動も行っており、選手に「大会に出て良かった」と思ってもらいたいようだった。


大会日程終了後、選手たちはBlizzardのスタッフにより台湾の観光名所「饒河街夜市」に案内され、名物料理をご馳走になった。開催国の文化に触れられるのも代表選手の楽しみだ

■11月の『ハースストーン』世界大会へ

最後に、Kno選手がこれから出場する世界大会について改めて紹介しておこう。開催場所は米国アナハイムのBlizzardの一大イベント「BlizzCon 2015」、日時は日本時間11月7日~11月8日。しかし『ハースストーン』はじめ各ゲームのグループステージの試合はそれより1週間以上早く、「オープニング・ウィーク」として日本時間10月29日~11月1日の午前1時開始予定であるため、留意しておきたい。配信情報は『ハースストーン』の公式Twitterなどに掲載されるはずなので、Kno選手を応援したいファンはチェックしておいてほしい。


試合で選手がカードを引くたびに歓声を上げる観客たち。世界大会でもこのような風景が見られるはずである
《nemuke》
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