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記野直子の『最新北米市場分析』2015年11月号―ブラックフライデーの勝者は?

こんにちは。北米の11月度の市場データ速報が発表されました。今年最後のレポートです。期待の大型タイトルがたくさん発売されました。早速見て行きましょう!

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こんにちは。北米の11月度の市場データ速報が発表されました。今年最後のレポートです。期待の大型タイトルがたくさん発売されました。早速見て行きましょう!

■市場全体動向:年末商戦のど真ん中!

11月の市場全体は前年同月24億2,000万ドル(約2,900億円)2%アップの24億7,000万ドル(約3,000億円)。対前月比では約10倍近くの売上をあげています。しかもこの3,000億円という数字、日本の2014年度年間の国内家庭用ゲーム市場が3685.5億円(ファミ通調べ)を考えれば、単月でたたき出した北米市場の規模がいかに大きいかがわかるはず。12月はさらに大きな数字が見込まれています。

ハードウェアの売上は前年10億2,000万ドル(約1,220億円)から11億2,000万ドル(約1,340億円)へ11%アップ。ソフトウェアは前年11月度10億7,000 万ドル(約1,280億円)から 9億9,390 万ドル(約1,190億円)と7%ダウン。

ソフトウェアの売上ダウンは旧世代機(PS3/Xbox 360)向けのタイトルが昨年に比べて60%販売を減らしている(現世代機向けは37%アップ)こと、そしてNPDのデータ自体がデジタルダウンロードの数値を含んでいないことが起因していると考えられます。実際に盛り上がっている状況は後述するソフト動向でご確認ください。

アクセサリー(周辺機器)は、相変わらず好調で前年同月3億3,600万ドル(約405億円)から3億5,770万ドル(約430億円)へと6%の売上額アップとのこと。ハードウェアに関しては何も情報を出さない任天堂ですが、amiiboに関しての発表がありました。11月単体で120万のamiiboフィギュアを販売し、発売から現在まで米国市場トータルで1,100万体を売り上げたとのこと。『Disney Infinity』、『Skylanders Superchargers』『Lego Dimensions』なども含め、北米ではインタラクティブフィギュアがユーザーのコレクション願望を刺激しているようです。

いずれも10月度までの数字から跳ね上がっています。日本でもそろそろ名が知られてきた「Black Friday」があるサンクスギビングのセールは絶大で、ゲーム関連のみならず全米のありとあらゆる小売店がセールを行う月であることも覚えておきたいところです。

■ハード動向: 再びPlayStation 4が首位奪還!

10月度のハード売上のリーダーはXbox Oneでしたが、1ヶ月天下で11月度は再びPlayStation 4が首位を奪還しました。しかし、「現世代機(PlayStation 4/Xbox One/WiiU)トータルで11月単月において300万台以上が売れ、Xbox Oneは過去最高の11月度の売上台数を達成した」というマイクロソフトの発表などを鑑みると、単月でXbox Oneはどうやら120万台以上は確実に販売しているようです。

PlayStaion 4の発表がないので数字は明確にはなっていませんが、こちらも首位ですからこの120万台はクリアしているはず。少なくとも11月単体においてPlayStation 4/Xbox Oneあわせて250万台以上のハード販売を達成しているのです。恐るべし北米市場。日本のPlayStation 4のインストールベースが200万台弱と考えると、北米市場の現世代機の巨大な購買力がわかりますね。

前述した「Black Friday」や「Cyber Monday」(後ほど解説します)には時限付きでPlayStation 4、Xbox One双方とも300ドルポッキリでセールをしていて(その値段が延長されているようですが)、ユーザーの購買欲に拍車をかけてくれたようです。

2015年11月度の現世代機(PlayStation 4/Xbox One/WiiU)の売上は2014年11月、12月度合わせた販売台数をも超えている、とNPDがコメントしました。いかに新ハード販売が好調かということなのでしょう。発売から25カ月を経過するPlayStation 4およびXbox Oneは旧ハードPlayStation 3およびXbox 360の販売後25カ月後と比較すると47%増しで販売台数が推移している、という発表もありました。

11月の総ハード売上台数を見たときにWii Uも含めたこれらの現世代機が93%を占めていると考えれば、ほぼ新ハードへの移行は順調に進んでおり、来年以降は旧世代機へのソフト供給を見切る動きも容易に考えられます。

■ソフト動向: 怒涛のAAAタイトル発売ラッシュ!


2015年11月度のソフトウェアランキングを見てみましょう。

    1. Call of Duty: Black Ops III (PS3/PS4/X360/X1/PC) - Activision Blizzard
    2. Fallout 4 (PS4/X1/PC) - Bethesda Softworks
    3. Star Wars Battlefront (PS4/X1/PC) - Electronic Arts
    4. Madden NFL 16 (PS3/PS4/X360/X1) - Electronic Arts
    5. NBA 2K16 (PS3/PS4/X360/X1) - Take 2/2K Games
    6. FIFA 16 (PS3/PS4/X360/X1) - Electronic Arts
    7. Need for Speed (PS4/X1) - Electronic Arts
    8. Halo 5: Guardians(X1)- Microsoft
    9. Assassin's Creed Syndicate (PS4/X1) - Ubisoft
    10. Just Dance 2016 (PS3/PS4/X360/X1/Wii/Wii U) - Ubisoft

『Call of Duty: Black Ops III』が満を持して発売になりました。発売元のActivisionによると売上額、売上本数ともに発売初月として過去最高を達成した、とのこと。NPDも2013年以降に発売のタイトルの初月売上本数としては同タイトルが最高値をたたき出したとレポートしています。

また、NPDによれば、前作の『Call of Duty: Advanced Warfare』を大きく上回った初月売上とのこと。NPDや販売元が公表しないので正式なデータはありませんが、11月21日に発売された同タイトルは北米だけで約500万本を10日間程度で売り上げたと考えられます。

ひとつおもしろい結果として、『Call of Duty: Black Ops III』はPlayStation 4版よりもXbox One版の方が販売数が多かったということでしょう。E3でも会場を沸かせた『Call of Duty: Black Ops III』のPlayStation 4ベータ版優先やオリジナルDLCのニュースによりPlayStation 4有利か?と思われていたのですが、パッケージを買ったユーザーはXbox Oneのユーザーの方が多かったようです。歴史的に『Call of Duty』シリーズはXboxユーザーが多かったので名残とも言えるでしょう。また、NPDデータではハードウェア同梱版に入っている同タイトルはカウントされていないことも付け加えておきます。

2位の『Fallout 4』も前作を大きく上回るスタートを切っているようです。NPDによれば、『Fallout: New Vegas』に比べて 70%以上、『Fallout 3 』に比べれば9%以上の初月売上を達成したとのこと。全世界で950万人がベータ版をプレイした!と期待の高かった『Star Wars Battlefront』ですが、もちろん売上は好調です。NPDからも過去作『Star Wars: Force Unleashed』に比べて初月販売は21%アップです!とのコメントがありました。

『Star Wars Battlefront』は好調なのですが、11月17日に発売された直後から売上本数に関して「期待はずれ」感が聴こえてきました。まもなく大型映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』も公開されるのに、『Battlefield』シリーズのEA Diceが開発しているのに、なぜもっと売れないのか?ゲームの内容が薄いから?などなど北米では議論が繰り広げられています。

どうやら販売元のElectronic Arts が発売前に「2016年3月までに1,300万本くらい売っちゃうよ!」と強気の発言をしたことに起因しているようで、それを受けて小売店も大きな発注をかけた模様です。いざ売ってみたら思ったより売れなかった、ということらしいのですが……。

PCダウンロード版も含めれば相当数が売れているわけで、大したものだと感心したのですが、予想外と言われるのはやはり大型タイトルとのバッティングが原因でしょう。ひとりのユーザーが『Call of Duty: Black Ops III』、『Fallout 4』、『Star Wars Battlefront』を同時に進めることはほぼ不可能で、ひとつひとつクリアしていく、と考えれば映画の公開が今後に控えた『Star Wars Battlefront』はロングテイルで見るべきタイトルと考えられます。

ゲームタイトルを北米で売るには年末商戦に発売する!という話を良く聴きます。もちろん、AAAタイトルと直接対決する覚悟がある場合はこの限りではありませんが、最近はこの発想をおススメしません。AAAタイトルが並ぶこの時期に、大きなタイトルとバッティングしてしまうと埋もれてしまう、小売店で棚に置いてもらえない、などのチャンスロスが発生するからです。特にその時点で認知の低いオリジナルタイトルなどは、相当のプロモーションコストと期間を要すことだけは知っておくべきと考えます。

さて、ランキングの話に戻りますが、『Star Wars Battlefront』も含めてElectronic Artsが強い11月でした。『Need for Speed』もご立派ですが、やはりパーティシーズンに欠かせないスポーツタイトル『Madden NFL 16』や『FIFA 16』は本当に強いですね。セガから『2K』シリーズを引き継いだTake 2も『NBA 2K16』が相変わらず強い。昔はセガやコナミなど日本のメーカーさんたちもスポーツゲームをたくさん作っていたんだけどなぁと昔話を思い出しました!笑。

日本メーカーと言えば、任天堂が元気がありません。ハードの発表も含めあまり発表をしてくれなくなりました。ランキングに任天堂が入らないのはとてもさみしい気分になりますね。

Xbox One専用タイトル『Rise of the Tomb Raider』が ランクインしていません。出来も良く非常に期待されたタイトルだったのですが、マルチプラットフォームでのランキングにおいていかにシングルプラットフォームでの闘いが厳しいかということでしょう。ましてやホリデーシーズンの大きなタイトルが並ぶこの時期ですから、やはりプラットフォーム専用タイトルはチャンスロスを引き起こしかねないことはメーカーとしても考慮しておくべきでしょう。

さて、総括です。NPDのコメントによると2015年11月は現世代機(PlayStation 4/Xbox One/WiiU)向けソフトウェア販売が、過去最高と言われた昨年12月を34%も上回ったとのこと、『Call of Duty: Black Ops III』、『Fallout 4』、『Star Wars Battlefront』というAAAタイトルが北米市場を大きくアクセラレートしたことは間違いありません。

ソフトがハードを牽引するのはもちろんですが、ゲーム市場そのものをも引っ張っていくのはソフトパワーなのだと実感する11月の好調な北米市場でした。

いつも申し上げますが、NPDの売上数値はあくまでもパッケージで店頭に売られているものに限っているので、デジタルダウンロードを加えればさらに大きな数字であることは容易に想像がつきます。ソニーのPSN(PlayStation Network)における11月の販売ランキング(※販売額に基づく。下記参考)でもPS4、PS3ともに『Call of Duty: Black Ops III』、『Fallout 4』、『Star Wars Battlefront』がトップ3に輝いています。

    <参考>北米PlayStation Store: 11月セールスランキング
    PS4:
    1. Call of Duty: Black Ops III
    2. Fallout 4
    3. Star Wars Battlefront
    4. Need for Speed
    5. The Order: 1886
    6. Wolfenstein: The New Order
    7. Rocket League
    8. The Witcher 3: Wild Hunt
    9. Battlefield 4
    10. Assassin's Creed Syndicate

    PS3:
    1. Call of Duty: Black Ops III
    2. Minecraft: Story Mode - Episode 1: The Order of the Stone
    3. FIFA 16
    4. Battlefield 4
    5. Army of TWO The Devil's Cartel
    6. Minecraft: PlayStation 3 Edition
    7. Grand Theft Auto V
    8. Destiny
    9. J-Stars Victory VS+
    10. Castle Crashers

■「Black Friday」、「Cyber Monday」って何?


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Black Friday(ブラックフライデー)は米国で、11月の第4木曜日のThanksgiving Day(感謝祭)翌日の金曜日のことを言います。年末商戦の中でクリスマスと並ぶ大きなセールが行われる日です。朝早く、場合によっては前日夜中から多くの人が店頭の前に並び、開店と同時に商品争奪戦が行われている映像を見たことがあるのではないでしょうか。

では、なぜ「ブラック」なのでしょう?「ブラック」なイメージから?と思われがちなのですが、実は小売店が「黒字」になるからだそうです。私の知る日本でのイメージは「初売り」でしょうか。全米の小売店がセールを行うお祭り騒ぎの1日です。

一方、Cyber Monday(サイバーマンデー)はどうなのでしょう。同じく米国でThanksgiving Dayの翌週の月曜日のことです。これはオンライン、eコマースにおけるセールの開始日です。

え、月曜日?と思われがちですが、Thanksgiving Dayの休暇を使って旅行した人たちが家や職場に戻っていつも使っている高速インターネットを通じてオンラインで買い物を始める日、という位置づけのようです。実際に日本でもAmazonがCyber Mondayセールを行っていますね!

こういった小売店にはゲームを販売する小売店も含まれているため、各社イベントに合わせたキャンペーンを積極的に行っています。

さて、12月はセガから『Yakuza 5』 (PlayStation 3)、任天堂から『Devil's Third』(Wii U)など日本のタイトルが北米で発売されます。また、北米の消費欲がピークになる12月がどうなるのか、私も楽しみです。

それでは、今年も一年お世話になりました。2016年が皆様にとって良い年になりますように!
《記野直子》
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