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デジタルボードゲーム『Gremlins, Inc.』プレイレポ―権謀術数巡らせて激動の争いを制せ

2016年3月11日より、Steamにて販売開始した『Gremlins, Inc.』は対戦型デジタルボードゲームです。簡単なルールながらも対戦型ボードゲームの魅力を十分に引き出した本作のプレイレポをお届けします。

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ゲーム開始前には手札の交換もできる。有用な手札が引けることを願っておこう
  • ゲーム開始前には手札の交換もできる。有用な手札が引けることを願っておこう
  • マップ画面。マイナスのお金マークもドクロも手紙も点在する水色の建物も全てマイナス効果マスという恐ろしさ
  • 移動に使うと特殊な効果を発動できるカードも
  • 各主要施設を示したマスでは今持っている勝利点や票をお金に変えたりサイコロを回してランダムにお金を得たりできる
  • 主要施設で使えるカードの例、カード左下に書かれたマスで使用でき、カード名の上に書かれた分のお金や勝利点を得ることができる
  • カードの中には主要施設で使うためにはお金や票を消費するものも多い、要求量が大きくなるほどカード効果も高い。継続効果を持つものも
  • 移動時に他のプレイヤーと同じマスに止まってしまうと戦闘に。より大きな金額を提示したほうが勝利、敗者は哀れ刑務所行きに…しかし勝者の提示金額はそのまま没収されるため場合によっては大打撃を与えることも
  • 左で檻に入っているのが刑務所入りのしるし、ゲーム中盤以降では常時数人が入れ替わり立ち替わり刑務所入りする大惨事にも…


2016年3月11日より、Steamにて販売開始した『Gremlins, Inc.』はターン制ストラテジーゲーム『Eador: Genesis』などを手がけたデベロッパーAlexey Bokulev氏がゲームデザイン担当の対戦型デジタルボードゲームです。簡単なルールながらも対戦型ボードゲームの魅力を十分に引き出した本作のプレイレポをお届けします。

悪徳こそ正義!悪戯好きな妖精たちの世界を舞台にNo.1を目指せ!

本作ではプレイヤーは悪戯好きな妖精“グレムリン”の有力者の1人となり、彼等が住むスチームパンク調の街を駆け巡り、指定された期限内で街の各スポットで様々な発明や建築に投資したり、政治活動や工作などを通じて最も成功を収めることが目的となります。しかし“グレムリン”のやり方はいささか過激。汚職ワイロは当たり前、対戦相手を次々と刑務所に放り込み、果ては地獄の悪魔とも契約してまでトップを目指すのが彼等の流儀。予期せぬ不幸も次から次へと舞い降りて、非常にスリリングなプレイとなっています。

初めから最後まで波乱万丈、一発逆転だって夢じゃない!

ではゲームのプレイに移ってみましょう。ゲームが開始されるとプレイヤーたちにはいずれかのキャラクターがランダムで割り振られ、それに応じたマスからゲームを開始することとなります。


ゲーム開始前には手札の交換もできる。有用な手札が引けることを願っておこう

まずは手持ちのカードを消費してそれに記載されたサイコロの目を使って移動することとなります。これによりある程度の戦略性を持って移動が可能となっており、後述するカードの連続使用や道中のリスク管理と合わせて腕の見せ所です。有用なカードはサイコロの目も有用な傾向があり、移動を優先するか計画のためにカードを維持しておくか、といった所も重要です。


マップ画面。マップのゆうに7割超が全てマイナス効果マスという恐ろしさ

カードと行き先を選んだら移動開始です。移動を経てマスに無事到着したら、その時の手持ちのカードの内、その場所で利用可能なカードを使って、お金や票、勝利点を得たり、ライバルの妨害を行うことが出来ます。

中でも特筆したいのは移動系カード。これはただ移動するだけでなく、移動先で連続して別のカードの使用も可能にしてくれます。複数のカードを連続使用することで通常では難しい高得点を一挙に得ることすらできるのは爽快です。ライバルを様々なカードで妨害する際も、移動経路や現在の所持金などから果たして誰が最も危険なのかを推理していかないとノーマークだった相手に出し抜かれて大打撃…などということにもなりかねません。逆にライバルの計画を見事に水泡に帰せしめた時などは黒い笑いが止まらないことでしょう。


移動に使うと特殊な効果を発動できるカードも


各主要施設を示したマスでは今持っている勝利点や票をお金に変えたりサイコロを回してランダムにお金を得たりできる

しかしここで注意です、多くのマスは通過したり止まったりすることで様々な不利益をプレイヤーに課してくることとなります。

実はこのゲーム、任意に止まれる主要施設を示したマス以外の道中ではプラス効果を持ったマスは一部に限られており、道中は常に大小様々なリスク満点。それらの多くは金銭を支払うことで無力化できますが、金銭の入手法も大半は主要施設マスに限られています。常に次善の策を確保しておきたいところですが、二兎を追って一兎も得ず、などという結果にもなりかねず、プレイヤーを悩ませてくれます。


主要施設で使えるカードの例。カード左下に書かれたマスで使用でき、カード名の上に書かれた分のお金や勝利点を得ることができる


カードの中には主要施設で使うためにはお金や票を消費するものも多い。要求量が大きくなるほどカード効果も高く、継続効果を持つものも

中でも注意したいのは赤いドクロのマス。ここを通過してしまうと大きなマイナスイベント“不幸”が発生し、時に自分のみでなくプレイヤー全員に大打撃を与えてしまうこともあるのです。赤いドクロのマスは大きな効果をもたらす主要施設の直前や直後には必ず存在しているため、目的地に到着する前に哀れ刑務所行き、マップを刑務所マスまで強制移動の上数ターン浪費…ということも。中には全員の所持金が即座に半額になってしまう、などというイベントもあり、計画が完遂されるその瞬間まで気が抜けません。

更には“不幸”を受けやすくなる悪評が貯まる代わりに、マップ上で発生したワイロを自由に受け取れ、道中のマイナスのマスの大半も金銭の支払なしに無効化できる“知事”や、条件が厳しい代わりに全員がいつでも発動可能な効果抜群の“カオスカード”、使用条件が緩く効果も高いが何らかの妨害カードの効果などで所持が露見した場合即刑務所行きの“犯罪カード”の存在もゲームに彩りを与えます。


移動時に他のプレイヤーと同じマスに止まってしまうと戦闘に。より大きな金額を提示したほうが勝利、敗者は哀れ刑務所行きに…しかし勝者の提示金額はそのまま没収されるため場合によっては大打撃を与えることも


左で檻に入っているのが刑務所入りのしるし、ゲーム中盤以降では常時数人が入れ替わり立ち替わり刑務所入りするのが日常茶飯事に…


刑務所では選択した態度と入った期間に応じて増える刑務所ランクに対応したカードを引くことができる。良い態度だと残りターンを短縮して釈放されることも多い。悪い態度の場合刑期が伸びたりするが、刑務所内ランクを早く上げ有利なカードを引きやすくなる


“不幸”の例。敵に自分の手札がバレてしまう上に、“犯罪カード”をもし持っていれば即逮捕に…


こちらも“不幸”の例。全員から悪行ポイントの数x10のお金が没収される。大半のプレイヤーの悪行ポイントが溜まったゲーム中盤以降だと全員の計画が狂いかねない恐ろしさ


比較的マイナス効果の少ないカードもあるものの、目的地を目の前にしながら引き離されてしまったりしたりも…

そのようなゲームを二転三転させるアクシデントの存在が全てのプレイヤーを常に計画通りとはさせず、更にゲームを面白くしています。

何より重要な点として、これらの点により多くのプレイで大半のプレイヤーが最終盤まで常に一発逆転のチャンスを持っているということが挙げられます。プレイヤーにストレスを与えるマイナスイベントの筆頭である刑務所も、長期戦では居続けることでランクが上がり金銭や勝利点を生み出すことになる、とただのマイナスイベントでは終わらせない配慮が目立ちます。


ゲームも中盤を過ぎてどのカードを残してどのカードを移動に使うか悩みどころ。カード名の背景が赤色のカードが“犯罪カード”


妨害カードの例、行きづらい地獄でないと使えないものの相手の勝利点をなんと-5してしまう、これで筆者は1位から脱落することに…


こちらも凶悪な妨害カード、お金-200、勝利点-2、刑務所行きをそれぞれ任意のプレイヤー(重複可能)に与えることができる

ボードゲームにおいて勝敗がほぼ決した状態で延々とプレイすることになるのは苦痛にもなりやすいだけに、それを防止しながらも不測の事態からの復帰法も決して少なくなく、更には常にプレイヤー同士が意図するかしないかに関わらず足を引っ張り合う形となるため、先行しているプレイヤーのストレスも決して必要以上に高めないことに成功しているように見えるのは本作の素晴らしい点でしょう。

ルールも今まで書いたものだけでも基本的なプレイが可能なほど単純明快なものとなっており、複雑なルールを見ると尻込みしてしまうような人でも気軽に楽しむことが出来ます。


ゲーム終了、筆者はスタートダッシュが逆効果となり惜しくも4位に。1位と2位を分けたものは2位のプレイヤーが相手の勝利点を下げるカードを終盤に別の有力なプレイヤーに用いてしまったことのみ。このゲームらしい接戦でした

豊富なルールで短期戦から長時間プレイまで。対CPU戦も完備です

本作では「特定ターン数に達するまで」「勝利点が一定に達するまで」「ゲームプレイ時間が指定した時間に達するまで」といったルールが用意されており、1時間ピッタリで終わるものから5時間を優に超える長時間プレイまで都合に合わせて楽しむことが出来ます。

波乱万丈なゲーム自体の楽しさはどのルールでも変わらず、本作の魅力を損なうことがない点も大きな魅力です。しかしながら、プレイヤーが取れる戦略はゲームのルールによって変わってしまう部分がもちろんあるため、プレイヤーを揃えるのが難しい長時間プレイの楽しみが味わいづらいのは贅沢な悩みながらも、本作の数少ない欠点でもあるかもしれません。

ただしプレイヤーが居ない時は特定状況からゲームを開始するシングルプレイモードや、BOTを参加者に加えたマルチプレイを行う事も可能なので、人間相手ならではの緊張感はないものの十分遊ぶ事はできるのがありがたい所です。

ネット対戦ではありがちな、アクシデントでいずれかのプレイヤーが途中退出してしまった場合なども復帰するまでBOTが代わりにプレイしてくれるので一安心です。


チャットは存在していないが顔アイコンや定型文で意思表示することができる。アニメーションで可愛く表現されている


別のプレイにて。初ターン“不幸”マスでまさかの初手逮捕!決して珍しいことではないのがまた恐ろしい


今後の展開にも期待です

開発元の発表によれば本作は既に20000本以上を売上げたとのことで中々好調な滑り出しなようです。

継続した本体のアップデートだけでなく、早くも初DLC「The Masquerade」の夏前の発売が予定されており、更には今後ネット環境不要でも遊べる完全シングルプレイヤー版もリリースされるとのこと。今後の展開にも期待できそうです。

対戦型のボードゲームならではの駆け引きや推理要素、敵を出しぬいた爽快感を、統一感のある美しいアートワークに乗せて簡単なルールで楽しませてくれる、そんな本作『Gremlins, Inc.』は、SteamにてPC/Mac/Linuxを対象に1,680円で販売中です。

《Arkblade》

関連業界のあちこちにいたりいなかったりしてる人 Arkblade

小さいころからPCゲームを遊び続けて(コンソールもやってるよ!)、あとは運と人の巡りで気がついたら、業界のあちこちにいたりいなかったりという感じの人に。この紹介が書かれた時点では、Game*Sparkに一応の軸足を置きつつも、肩書だけはあちこちで少しづつ増えていったりいかなかったり…。それはそれとしてG*Sが日本一宇宙SFゲームに強いメディアになったりしないかな。

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