【GC 2016】『Vainglory(ベイングローリー)』開発会社COOが語る同作の課題と未来―Kristian Segerstrale氏独占インタビュー | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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【GC 2016】『Vainglory(ベイングローリー)』開発会社COOが語る同作の課題と未来―Kristian Segerstrale氏独占インタビュー

Game*Sparkでは、現在モバイルゲーム界で大きな盛り上がりを見せているMOBAタイトル『Vainglory』の開発会社であるSuper Evil MegacorpのCOO、Kristian Segerstrale氏(以下、Segerstrale氏)にドイツで開催されたgamescom 2016にて直撃インタビューを敢行しました。

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【GC 2016】『Vainglory(ベイングローリー)』開発会社COOが語る同作の課題と未来―Kristian Segerstrale氏独占インタビュー
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ドイツはケルンにて8月17日から21日のスケジュールで開催されたイベントgamescom 2016。Game*Sparkでは、現在モバイルゲーム界で大きな盛り上がりを見せているMOBAタイトル『Vainglory(ベイングローリー)』の開発会社であるSuper Evil MegacorpのCOO、Kristian Segerstrale氏(以下、Segerstrale氏)に直撃インタビューを敢行。先日アップデートが発表された新ヒーロー「サムエル」の使い方から、同社が考える『Vainglory』の未来まで根掘り葉掘り聞いてきました。

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――『Vainglory』のブースは大盛況のようでしたがこのgamescomでのリアクションはどんな感じですか?

Segerstrale氏:現在まで最上の状態で居させてもらってると思います。つい昨日アップデートを発表したばかりですが、会場で生の反応を見る限り、新しいヒーローの「サムエル」は非常に好意的にプレイヤー達に受け入れられたみたいです。あとでプロチームのプレイもあるから是非見ていって欲しいですね。そこでサムエルも活躍してくれると思います。

――その模様はTwitchで全世界に配信されるんですか?

Segerstrale氏:勿論Twitchでも配信されますが、この会場に満員の観客が詰めかけてくれます。「SK Gaming」らがプレイするとともに、地元のプレイヤーチームも沢山来てくれると思う。僕らは常にローカルのコミュニティと会って彼らの考えや話を聞き、意見を交換するのが大好きなんです。

――昨日発表されたアップデートに関してですが、新ヒーローのサムエルについて何か補足情報等を頂けますか?


Segerstrale氏::サムエルはとてもアグレッシブなヒーローです。DPS(毎秒ダメージ)は現在のところ全ヒーロー中で最高、ということはチームにとって非常に使い勝手のいいツールなんですよ。しかしながら、それは彼にとっても足枷となります。何故ならDPSの高さから前線へ出るアグレッシブなスタイルとならざるを得ない。常にチームの前線に立ち、また敵への範囲攻撃とHP吸収の両方の効果を合わせ持つダーククラウドが発揮出来るようになると、今度は前線の戦士として、さらにアタッカーの軸としても休む暇のない立ち回りを強いられる。加えて、今回ゲームに初めて登場したスリープのスキルも持っている。スリープはこれまでのスタンとは違い、スリープ攻撃を食らった敵プレイヤーを戦闘外へと追いやれる。攻撃の集中化を考えると非常に使い勝手のいいキャラクターなんです。ところが、彼は打たれ強くはない。彼が倒れることによって同行してきた仲間が逆に危機に陥ることもある。その辺のメリットとデメリットを十分理解して使うべきヒーローだと言っておきたいです。

――『Vainglory』のローンチから現在までを振り返って、どのような進化や改善を遂げてきましたか?

Segerstrale氏:ローンチの時には我々はコアゲーマー体験を目標としていました。コアなゲームをやり倒したゲーマー仲間3人が集まって遊べるモバイルゲーム、タッチスクリーンに慣れ親しんだ世代のプレイヤーがどっぷり浸れるコアなゲーム体験ですね。我々オールド世代はPCとゲームコンソールでしたが、現在のゲーマーの主流はタッチスクリーン世代ですよね。その世代のプレイヤーが集まって何時間でもどっぷり遊べるゲームを作ろう、そう目指して開発したのが『Vainglory』でした。そしてそのコンセプトは大正解で、ローンチしてすぐ巨大なコミュニティが出来上がり、一気に莫大なユーザーを獲得した。ところが『Vainglory』は簡単なゲームではない、何せコアなゲーム体験を目指して開発された硬派なゲームなので。多くの新規プレイヤーが飛びついてはみたものの、コアゲーマー以外はお断りな敷居の高さを感じたことだと思います。

そこでこの過去6ヶ月、我々は『Vainglory』をより楽しく理解しやすくなるよう改善を続けてきました。例えばチュートリアルやAIを拡充させ、BOTを使って一人でも練習出来るようにしたり。ヒーローの特性を学びやすいように2~3体のBOTを使って対戦出来るようにしたりなど。対人戦に入る前にじっくり学習することが出来るモードと言う訳です。それから「クエスト」。「クエスト」を遊ぶことによって遊び方やコツのビデオが見れたり、オブジェクトを解くことで自然とシステムや必勝法が理解出来るようになる。さらに「大乱闘モード」も新設しました。通常20分以上かかるゲームに対して、このモードなら7~8分で勝負がつく。ゲームのモードとしても、ヒーローの特性や立ち回りを学習するのに向いています。これら全てのモードは全てゲームとしての質を高め、またユーザーを楽しく遊べるよう導くために、準備したものです。勿論それとは別に新しいヒーローやスキン等、ユーザー全体が楽しめる改善は常に続けています。

――開発者として現在の一番の課題は何でしょうか?

Segerstrale氏:どうやってプレイヤーに対人戦の楽しさを理解して貰うか、ですね。『Vainglory』は面白いゲームだという自負はありますが、一人ぼっちで遊んでいてはそうでもない。しかしプレイヤーの環境によっては、共に遊ぶ仲間を獲得するのが困難だったりしますよね。最良のチームメイトを見付けるなんて至難の業です。実のところ、現在我々がもっとも注力しているのはそこなんです。ゲームの面白さを分かり易く伝えることも大変大事だけど、それよりももっと楽しいことである「仲間と協力して敵チームに当たること」を分かって貰うのはさらに大変だと思っています。どのモバイルゲームと比べても『Vainglory』は共闘感を感じられるゲームだと思う。だからゲームを通じて仲間を探せるシステムを、より拡充出来ればと努力を重ねているところです。

――逆に現在プレイヤー側から一番望まれていることは何でしょう?

Segerstrale氏:彼らはいつも新ヒーローを欲している!かな(笑)。それからこれは僕らも常に課題としてるんですが、フェアでクイックなマッチメイキングだと思う。友達と共闘して勝利した時はこの上ない喜びですよね。でも負けた時は大きなフラストレーションになる。酷くボロ負けした時はどうなるだろう?そう、人間関係の危機ともなりえる。そうならないためにも、フェアなマッチメイキングは絶対に必須な要素ですよね。それからネットワークの安定性も望まれていることの一つです。皆が皆ネット環境の良いところに居るとは限らない。だから僕らはどのようにネット接続をより高速に、且つより安定性を維持させられるかを、ゲームを通じてプレイヤーに教えているんです。例えばゲーム内にPINGインジケーターを実装したり、どのようにすれば安定した接続を得られるか、チュートリアルを見れるようにしているんです。僕らは常にコミュニティの意見に耳を傾けています。彼らの意見を聞き、一番のフラストレーションを理解する、そしてその問題原因を出来るだけ早く取り除くように心がけています。


――日本でも先日RAGEという『Vainglory』のe-Sportsイベントが開催されて盛り上がりを見せましたが、ここヨーロッパでの『Vainglory』の人気はどんな感じでしょう?

Segerstrale氏:RAGEは見ましたよ。とても盛り上がってくれて、僕らも興奮しました。実は日本での大成功は少し意外でもあった。僕らのゲームが日本のプレイヤーにそこまで受け入れられているとは考えていませんでした。日本のローカルスタッフが素晴らしい仕事をしてくれたものと思っています。また気持ちよく盛り上がってくれたオーディエンスにも感謝を送りたいです。この9月3日に日本対韓国の国際大会もやるんですが、それもとても楽しみです。ヨーロッパについては既に多くの有名なe-Sportsチームが取り組んでくれていて、毎週末にトーナメントが繰り広げられているんです。参加チームは数百以上だと聞いています。ヨーロッパでの人気は、より安定して成長していますよ。これはローンチの成功から予測出来てたことなので、予想外の驚きはありませんでしたが、日本での大成功は何よりも嬉しかったですね。

――e-Sportsにおけるモバイルゲームの強みとはなんでしょうか?

Segerstrale氏:モバイル機器を使ってe-Sportsをやる利点と言うと、一番はコストですね。今の時代スマートフォンやタブレットは皆持っている。『Vainglory』を始める為に何かを用意する必要がないんです。PCやコンソールは先ず本体を入手するところから入るでしょう。スポーツで例えて言うと、アイスホッケーとサッカーを比べるようなものです。アイスホッケーを始めるには何よりスケートリンクがいる、防具一式がいる、パックがいる、そしてやっと始められる。けどサッカーなら「おい、ここにボールが1個あるから蹴ろうぜ!」で始められるでしょう?PCやコンソールのゲームと『Vainglory』が決定的に違うのはここですね。始めるのに決定的にイージーなんです。

――Super Evil Megacorpが『Vainglory』以外のタイトルに着手する可能性はありますか?

Segerstrale氏:今のところは『Vainglory』に全力で集中しています。今は『Vainglory』が3年、5年、10年のターンでプレイヤーに楽しんで貰えるように努力していきたい。その為にもPAY TO WINは排除しないといけない。本当のスポーツでは金を払ったって勝てる訳じゃない。金で買った勝利なんて本質的な楽しさじゃない。本質的で普遍的な楽しさは「友達と共闘して勝つ」、そして「練習して勝つ」、それらが勝利の大きな喜びになります。それをプレイヤーに伝えていくため、そしてそれを維持していくためにも、今は他のタイトル開発ではなく『Vainglory』の維持と拡充に全力を尽くしたいと思っています。勿論将来的には良いゲームを沢山作りたいと思っています。でも今は、応援してくれている沢山のコミュニティの為にも全力でそれに応えたいんです。そしてより楽しく、より激しく、よりフラストレーションは無くして、全世界のプレイヤーを『Vainglory』に引き込んでいきたいと思っています。

――ニューヒーローやマップのヒントは何かありませんか?

Segerstrale氏:ロアを読め!としか言えないです(笑)。僕らは常にロアにそのヒントを隠しています。ロアには隠れたメッセージが必ず盛り込まれている。だから君がロアをちゃんと読んでくれたら、そこから未来に何が起こりうるかを推測出来るはずです。


――日本の『Vainglory』ファンにメッセージをお願いします。

Segerstrale氏:最初に、「ありがとう」。日本のコミュニティは常に正しいフィードバックを送り続けてくれている。僕らがまだ未熟な状態にも関わらず辛抱強く付き合ってくれていたんです。お礼という訳じゃないけど、僕らも日本のコミュニティが大きく盛んになってくれるよう、日本のスタッフとともに頑張っていきたいです。例えばファンアートなんか是非僕らに送って欲しい。僕らもファンの皆の気持ちに応えていきたいと思っています。

――本日はどうもありがとうございました。
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Super Evil Megacorp(とっても邪悪な巨大企業)の名前に反して、製品やユーザーに対する誠実で真摯な姿勢と、仲間やコミュニティと共に育っていきたいという明るい希望が垣間見えるインタビューでした。モバイル向けMOBA『Vainglory』はiOSとAndroidにて配信中です。
《パムジー》
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