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中華ゲーム見聞録:実際の中国漁船虐殺事件が題材のADV『One-Way Ticket / 単程票』登場人物は全員日本人?

漁船「魯栄漁2682号」で実際に起きた虐殺事件を題材にしたADV『One-Way Ticket / 単程票』のプレイレポートをお届け!中国産なのに登場人物は全員日本人?

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中華ゲーム見聞録:実際の中国漁船虐殺事件が題材のADV『One-Way Ticket / 単程票』登場人物は全員日本人?
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「中華ゲーム見聞録」第5回目は、中国産サバイバルADV『One-Way Ticket / 単程票』をお届けします。

本作はZodiac Interactive、HeyBox Interactiveが配信、Light & Digital Technology(光和数字科技有限公司)が開発をそれぞれ担当。中国遠洋漁船「魯栄漁2682号」上で起こった暴動、そしてそれに伴う虐殺事件をモチーフにした作品です。実際の事件では、出港時に33名いた乗員のうち港に帰還したのは11名のみ。しかもそのうちの主犯格5名は死刑、猶予付き死刑が1名、ほか3名も懲役刑を食らったという壮絶なものでした。

実際に起こった魯栄漁2682号での虐殺事件


『One-Way Ticket』の舞台となる船

「魯栄漁2682号惨案」と呼ばれるこの事件が起こったのは2011年のこと。イカ漁を行う魯栄漁2682号はすでに半年以上の航海をし、チリ近海に来ていました。労働時間が長いうえに厳しい労働環境。しかも保障されたはずの最低賃金が詐欺まがいの契約で支払われず、といったリアル「蟹工船」状態。劉貴奪を始めとする船員たちが不満を言い始め、中国に戻って裁判をするため、船長室で船長を脅して船を乗っ取りました。
※参照記事は維基百科騰訊評論壹読毎日頭条等。

ところがコック長が反乱に気づきました。包丁を持って船長室に無理やり押し入ろうとしたところ、船員の一人がはずみで殺害してしまいます。これが引き金となり、一連の虐殺が始まりました。劉貴奪たちは、中国に戻ったとき殺人罪に問われないよう、協力的でなかった船員たちを殺し始めます。しかも船という閉鎖空間にいるため、やがて仲間同士が疑心暗鬼に陥ってしまい、同士討ちを始めるといった始末。

船が日本の近海まで来たとき、劉貴奪たちは日本への密入国を計画。しかし船に浸水が起き、助けを呼ばざるを得なくなりました。彼らは日本の海上保安庁に保護され、中国に送還。あとは先ほど述べたように、劉貴奪ら主犯格の5人が死刑となりました。

『One-Way Ticket』の街中のシーン

この事件、船員たちはもともとは契約内容に不満があり、中国へ戻って裁判をしたいだけでした。最低賃金に加え、取ったイカの重さで追加料金が払われるという契約だったのですが、船長は「最低賃金はあくまで“漁ができなかったとき”の保障。漁ができた場合、獲れた量に応じて代金を支払う」と言い出しました。

漁獲量あたりで支払われると、報酬は最低賃金よりも少なくなってしまいます。反乱を起こしたくなるのも無理はありません。このような詐欺まがいの契約書を作った会社が、事件後なんのお咎めもないというのが一番の問題のような……。もやもやした気持ちを引きずりながら、『One-Way Ticket』に目を向けてみます。

ゲームは日本産……?



Steamストアの表記によれば、ゲームの使用言語は中国語(簡体字)のみ。しかしバナーやタイトル画面には『ワンウエーチケット』および『シングルチケット』の日本語ロゴが。イラストも日本っぽい。

まさか「日本で開発されたゲームの海外向けバージョン」では……とも思えました。しかし、中国の事件をベースにしたようですし、開発も中国の北京にある会社です。だとしたら、なぜ日本語?とりあえずゲームを始めましょう。


プロローグが始まりましたが……日本語しゃべっとるやん!しかも登場人物全員日本人やん!舞台も日本やん!……えっと、どういうことでしょうか。やはり日本産なのでしょうか。中華系のゲームを紹介する連載なのに、いきなり破綻してしまっているのですが。

しかし調べてみたところ、やはり中国産であることは間違いないようです。中国産なのに、舞台設定も言葉も日本のもの。わけがわかりません。ゲームを始める前にいきなり謎が深まりました。

ゲーム中の航海日誌。日本語が書かれています

ネタバレを避けたいがため、ゲームを始める前に関連記事の検索はしたくないのですが、企画の意義にも関わりかねないので調査開始。いろいろ調べてたどり着いたのが「触楽」というサイトの10月12日の記事。こちらの情報によれば、「閉鎖空間での秩序崩壊はどの国でも起こりえる。キャラクターを置き換えても、出来事が変わることはない。そして、ノベルゲームは日本産が多い。日本人にしてもプレイヤーはすぐ適応できる」とのこと。わかったような、わからないような……。

美しく描かれた日本の風景

さまざまな中国サイトの掲示板やコメントなどを見ると、「日本人にすることによって、魯栄漁2682号事件の先入観を持たずにプレイできる」という意見がいくつかありました。事件自体がゲームのネタバレなので、これは案外納得できるかもしれません。

日本向けの販売を視野に入れていたり、ただ単に開発者が日本好きなだけ、といった可能性も有り得ます。ゲーム中の日本の風景も理想郷的に美しく描かれていますし。まあ、ゲームが面白ければなんでもいいとも思います。とにかく始めましょう。

主人公は無職



先ほどのムービーシーンで海に沈む夢を見た後、主人公はハッと目を覚まします。そこは自分の部屋。そして誰かがドアをノックしています。ここでの選択肢は「ドアを開ける」「無視する」。ドアを開けましょう。


すると外には怖そうな大家さんが!しかも怒っています。どうやら主人公は大学卒業後に仕事が見つからず、家賃を滞納しているとのこと。大家は立ち退きを命じます。「すぐに仕事を探します。来月は絶対に家賃を払います」とひたすら謝る主人公。しかし本当に背景が奇麗ですね。


家賃はなんとか来月まで待ってもらえました。部屋に戻ると、芽衣という人からメッセージが。彼女でしょうか。すごく心配しているようで、何通もメッセージを送っています。

メッセージの一番下には、借金返済の催促が。主人公は借金もしているようです。ここで選択肢「芽衣に電話する」「外に出る」。人間関係を知りたいので、電話をしましょう。


……留守電になっていました。仕方がないので外出。ここでまた日本語ボイスによる独白が入ります。主人公は「牧野叶」。芽衣は牧野の彼女です。牧野は何度も就職に失敗し、両親にも失望され、社会に自分の居場所がないと思いこんでいるようです。

セーラー服を着た彼女



外を歩いていると、友人の青木が現れました。九州の実家に戻っていたのですが、大学の証明書を取るために戻ってきたとのこと。家賃が払えない話をすると、「いい仕事を紹介してやる」と言い出しました。以前も青木に仕事を紹介してもらったのですが、雇い主に騙されて給料が支払われませんでした。


前回のことで懲りたので、もう信用できません。しかし青木は「次の仕事は絶対大丈夫。地元でも多くの人が儲けてる」と言います。ここで時間制限付きの選択肢。「話を聞いてみる」「そんな仕事はやらない」。ここは話を聞いてみましょう。

青木が言うには、「九州の港はいま人手不足だ。親父の知り合いの船長に紹介してやる」とのこと。なんでもここ数年は魚がよく獲れ、船員たちは大もうけ。独立して自分の船を持つ者が増えたため、船員が足りないようです。

儲かるのはいいのですが、遠洋漁業だと半年は戻ってこられません。文句を言うと、「そういう態度だからいつまでも就職できないんだろ。船の上なら家賃もかからない。俺もそこで働くつもりだから、とりあえず一緒に船を見に行こうぜ」と青木。友人も一緒なら、と行ってみることにしました。


夜、牧野は芽衣に電話し、これまで冷たい態度を取ってきたことを謝ります。セーラー服を着ているということは、芽衣はまだ高校生なのでしょうか?と思ったら、同級生でした。大卒でセーラー服……?スマホ画面は高校時代の写真でしょうか。

それにしても芽衣さん、優しい女性です。無理をしないよう牧野に何度も言います。牧野は芽衣さんのためにも自分のためにも逃げることをやめ、どんなにつらくても漁船に乗ることを決めました。今度こそ就職です!


場面は変わって、芽衣さんの家。普通にセーラー服を着てました。お仕事的な何かでしょうか。ただ単に開発者が「日本人女性と言えばセーラー服」と思っているだけかもしれません。日本人にも「中国人女性と言えばチャイナドレス」と思っているフシがあるのでお互い様かもしれません。三蔵法師が女性だったり、沙悟浄が河童だったりする国ですから。近年は「ニンジャスレイヤー」なる作品もありますし、面白ければいいのです。

ついに就職する主人公


九州到着。友人・青木がお出迎え

牧野の就職先、地平線号


九州の港に着くと、さっそく青木のお出迎え。古そうな船が就職先のようですが、セーラー服を着て頑張っている芽衣さんのためにも、ぜいたくは言っていられません。

青木は牧野をその場に待たせ、船へ行って船長に話をつけてきます。港には警察がいて、あたりにいる船員たちに聞き込みを行っている様子。いったいなんでしょうか?不穏な空気です。

気になっていると、青木が戻ってきました。船長はいまいなくて、代わりに副船長が会ってくれるとのこと。それに今晩、船に住んでもいいそうです。「一度船での生活を体験してみて、本当に半年暮らせるのか判断すればいい」と青木。もっともな話なので、そうさせてもらいましょう。


船のタラップの前には、副船長の飛鳥田がいました。船の名前は「地平線号」。牧野を見て、「そんなに痩せてて、仕事は大丈夫か?」と言われます。期待外れだったようで、あまり歓迎されていない様子。青木が「こいつ、痩せてるように見えて力はありますから」とフォロー。副船長は他に仕事があるので、青木に船の案内を任せて去っていきます。

地平線号を探索!



甲板に上がると、佐伯という男が登場。紳士っぽくて漁船に似合わない服装ですが、ところどころ汚れがあるのがなんともリアル。佐伯氏も何日か前に、友人とともに船員になったとのこと。親切な人で、船内を案内してくれました。


船内を一通り案内してもらった後、佐伯氏の携帯に電話が掛かってきました。どうやら友人からのようです。「用事ができたので、あとは自分たちで回ってくれ」と言い残し、去っていきました。


厨房へ行ってみると、怖そうなコックがいました。「厨房のものに触るな。用事がないならさっさと出ていけ!」と怒鳴られ、牧野たちは退出。感じの悪そうな人です。


休憩室へ行くと、雨森伸山という船員がいます。佐伯氏と同じように場違いな格好ですが、やはり服には汚れが。牧野を見て、ちょっと驚いた顔をしました。知り合い?

しかし牧野は初対面の様子。雨森の話によれば、彼は船員歴はそこそこあるようです。それにしても会話の間、牧野をじろじろと見ています。なにか様子がおかしいですね。聞いてみると、「なんでもない。若い連中が船に来るのが珍しかっただけだ」と言います。うーん、なんなんでしょうか……。

第一の殺人……?


甲板脇の通路にいた無口な船員


船内の探索は終えたので、甲板に出ます。通路では無口な男と遭遇。この人も船員のようです。やはりいろいろな経歴の人たちが集まっている様子。甲板上層に上がると「JP2682」の文字発見。実際の事件の舞台となった「魯栄漁2682号」と数字が一致します。主人公は「この数字、どこかで……」と言い出しました。しかし思い出せません。


展望ではイケメンなメガネ男子が登場。売れっ子の犯罪小説家のようです。なぜこの船に?しかも船員?「君の物語を期待してるよ」と意味深なことを言って去っていきました。しかも青木はイケメン小説家を見て顔面蒼白。知り合いでしょうか。聞いても「酔って気分が悪くなっただけ」としか言いません。


船全体の探索を終えたころには、夕方になっていました。目の前に広がる美しい海の景色。最初は船員になるのが嫌でしたが、飛びこんでみたらそうでもなさそうです。どんなことでも体験してみないと実情はわからないもの。家で鬱々するよりは全然マシだ、と牧野は思います。

就寝前に怪談話を始める青木


その日の夜、寝る前に青木が、船にまつわる幽霊の話を始めます。修学旅行気分ですね。そこへ突然、「人殺しだ!」との声。駆けつけてみると、厨房で会った感じの悪いコックがいました。いったいなんなのでしょうか?


ここで船長登場。「殺人なんかどこで起きてるんだ!船で危機感を煽るような真似はするな!」とコックを叱りつけます。そしてそのままどこかへ連れていってしまいました。あのコック、大丈夫でしょうか?

出港のとき



それから二週間、牧野は船員のライセンスを取るため、船内の機材の使い方や漁の仕方などを一通り学びました。ライセンス試験には問題なく合格。今回の出港は、半年で320万円の最低賃金が保障されます。これで借金も返せるはず。


出港当日、青木が来ません。電話を掛けてもつながらず。結局船は港を出てしまいました。「なにやってるんだ、青木のやつ」と牧野が悪態をついていると、佐伯氏が登場。友人の藤原を紹介してくれます。しかし友好的に接する気はないようで、さっさとどこかへ行ってしまいました。感じ悪いです。佐伯氏が代わりに謝罪。あんなやつと友達になれる佐伯氏のコミュニケーション能力は大したものです。


佐伯氏と話をしていると、メカニックっぽい姿の老人、古尾谷が登場。もう一人の副船長です。「これまで挨拶できなくてすまなかったな」と感じのよい人柄。それから「船艇の倉庫から、旗の入った箱を取ってきて欲しい」と頼まれました。牧野の初仕事です。

新メンバーたちの登場


船底の倉庫に少年の姿が


船底の倉庫へ行くと、少年が隠れているのを発見しました。なぜこの漁船に子どもが?話しかけようとしたら、逃げてしまいました。とりあえず箱を持って甲板に戻ります。

「これから会社の船がやってきて、追加の船員をこの船に乗せる」と副船長が言います。「なぜ一緒に乗らなかったんですか?」と聞くと、「おまえの知ったことではない」とのこと。この船、なにか違法なことをしているのではないでしょうか。不安です。

新しい船員の到来


新たに来た船員を迎えに行くと、そこには見慣れた顔が。雨森の兄貴です。一緒に乗ってたのではないんですね。軽く挨拶を交わします。それから見慣れない男たちや、以前出会った無口な男もこの船に乗りこんできました。これで船員が勢ぞろい。船長が皆に挨拶をします。


「お前たちが犯罪者だろうと、どんな経歴だろうと、知ったことではない。私が要求することはただ一つ、400トンのマグロだ」。マグロ漁船だったのですね。

しかし、船員の面子がやたら個性あります(色気はありません)。古尾谷老人もみんなに挨拶をします。「この船で一番大事なのは、身の安全だ。海上にはさまざまな危険がある。無事に航海を終えられるよう気を配れ」。本格的な海の旅が始まります。

船上の生活


新しく加わった船員の桐生。常にヘッドホンを付けている


航海まもなく、さっそく揉め事が。例の佐伯氏の友人・藤原と、新しくやってきた船員の大館がケンカを始めました。雨森の兄貴も巻き添えを食らって、甲板の雰囲気は最悪。佐伯氏とは違い、藤原はトラブルメーカーですね。


お昼ご飯の時間。コックの岩田さんがやさしく迎えてくれましたが、またもや藤原が「ここじゃこんな貧乏くさいもん食わせるのかよ」と言い出しました。もうこいつ海に投げこんでもいいのでは。佐伯氏が止めに入りますが、先ほどの筋肉ムキムキ男・大館まで絡んできて、どんどん険悪に。

結局、古尾谷老人と佐伯氏のフォローによって場が収まりました。しかしあと半年もこんな連中と一緒にやっていけるのか不安です。そういえば「人殺しだ!」と叫んだあのコックはどこへ行ったのでしょう?


陸から離れたはずなのに、なぜか携帯に着信が。出てみると、青木からの電話。なんでも祖母が車にはねられたので、行くことができなかったと言います。しかしなんだか感情が籠っておらず、様子がおかしい。やがて電波が切れてしまいました。

船内の密航者



翌日、牧野は船酔いで気分が悪く、仕事どころではありません。雨森の兄貴が介抱してくれました。結構優しい人ですね。すると厨房でなにか騒ぎが!行ってみると、密航者が2人隠れていました。しかもそのうちの1人は、牧野が以前船底の倉庫で見たあの少年です。


女性は結城というようです。終電に間に合わなくて箱に入って休んでいたら、船に積み込まれてしまったとのこと。船長は「嘘もいいかげんにしろ!すぐに船を呼んで陸に送り返す。燃料代は自分で払え!」と怒っています。しかし結城は「お金がない。タダで仕事を手伝うからこの船に居させて」と頼みます。古尾谷老人は「そんな簡単に言うあたり、なにか目的があって乗り込んできたのだろう。ライセンスもない女子供を乗せたら船ごと捕まる。降りてくれ」と言います。


そこで結城は、船長を少し離れたところまで連れていき、ひそひそ話を始めました。船長の表情が変わり、結城を船に乗せることを許可します。なにを話したのでしょうか。

当然古尾谷老人は反対しますが、副長の飛鳥田が船長に同調。藤原や大館は、獲物を狙う狼のように結城を見て舌なめずりしています。野郎ばかりの船上に突如現れた女性。トラブルの原因になりそうです。

パーティー中の一波乱



夜、甲板を散歩していると、佐伯氏に会います。格好が漁師らしくなっていますね。「人殺しだ!」と叫んだあのコックですが、佐伯氏の話よると、あのあと錯乱して海の中へ跳びこんだそうです。

幸い、コックは救助されました。しかし航海に同行するのは無理だと船長が判断し、家へ送り返しました。もともと精神疾患があったようです。ちなみに、実際の事件でも出港前に同じことが起こりました。


航海も一か月以上が過ぎました。明日はいよいよ漁場に到着です。英気を養うため、夜は甲板でバーベキューパーティー。ところが酒に酔った大館が岩田コックとケンカし、ナイフを持ち出して斬りつけようとします。しかし酔っていたので狙いが外れ、事なきを得ました。

船長は怒り、大館に「明日、この船から降りて日本に戻れ!このあたりは漁場だから、乗せてくれる船などいくらでもある」と言います。さらに藤原が大館を煽ってややこしいことに。しかし大館は船から降ろされたくない一心で、先ほどの狼藉を謝ります。

契約詐欺



この日は大漁。食事も休みもなしで夜まで働かされます。当然船員からは不満が出ますが、「この時間を逃したら、もうこんなには獲れない」と言われて強制労働。しかしやはり無理があったので、順番に食事に行くことに。「誰と行きますか?」と質問が出ますが、ここまでまったく接触のなかった結城女史と少年を選びます。


食事をしながらいろいろと話をします。結城女史の職業はフリーのカメラマン。雑誌などにもよく投稿しているとのこと。それが半年もかかる航海に乗りこんだということは、やはりなにか裏がありそうです。少年のほうは悠人。孤児院にいたのを、結城女史が引き取ったとのことです。


翌日になると、事件の本題である賃金の話が出てきました。契約書は詐欺まがいのもので、最低賃金320万円を保障しておらず、マグロ1キロに対して45円を支払うとのこと。これは反乱起こしてもかまわないかと。筋肉マン・大館はやる気満々です。

しかし雨森の兄貴、「まあまあ、落ち着け。暴力は駄目だ。まずは抗議からだ」と大館をなだめます。ここで雨森に誰がついていくかの選択。牧野か、佐伯氏か。コミュニケーション能力の高い佐伯氏のほうがよさそうですが、状況を知りたいのでここは自ら行きましょう。


船長に抗議をしますが、「最低賃金など保障した覚えはないぞ。証拠はあるのか?」と言います。船員のライセンスは船長が預かっているので、日本へ引き返して裁判をしようにも、どの船も彼らを乗せてはくれないでしょう。「お前たちはどこにも行くことはできん。ここでまじめに働け」と船長。普通に腹が立ちますが、これ実話なんですよね。ひどい話です。

船の乗っ取り計画開始



いったん甲板に戻って作戦タイム。雨森の兄貴は「知り合いにいい弁護士がいる。日本に戻れば裁判に勝てる。他の船に乗せてもらえないなら、この船を乗っ取って日本に戻るしかない」と言います。しかしやはり暴力はよくないし、リスクもあります。「もうしばらく考えよう」とのことで、いったん解散。


乗っ取り計画を着々と進める雨森の兄貴。使えそうな船員にスカウトをかけていきます。この上杉というオタクっぽい人は電子回路や機械に秀でていて、船の燃料計算もできるとのこと。そしてなぜか「花澤香菜の歌が好き」と脈絡なく言い出します。開発者がファンなのかもしれません。雨森に「そんなこたぁどうでもいい!」とのツッコミ。上杉は、船の乗っ取りに加わる勇気はないようです。


そして来たるべき12月25日、ソロモン諸島の首都・ホニアラで給油したのち、ついに雨森の兄貴が動き出します。牧野に対して、「まもなく船を乗っ取る予定だ。お前も参加するか?」と改めて聞いてきました。ここで究極の選択。「参加する」「しない」。牧野の取った行動は……。

実際の事件と同様、この船上で惨劇が起こるのか。雨森、佐伯、大舘、藤原、結城、悠人、船長たちの運命はいかに。生きて帰り、芽衣と再会できる日は来るのか。ここから先はあなた自身が選択し、物語の結末をその目で確かめてください。

リアリティのある船上生活ノベル


「魯栄漁2682号」の惨劇をモチーフにした本作。事件の詳細をあらかじめ読んでいたため、モチーフどころか事件そのものを追体験するような内容でした。反乱を起こした人たちの気持ちも理解できました。一つのきっかけから虐殺にまで発展してしまうあたり、閉鎖空間での人間不信は本当に恐ろしいものです。

実際の事件と本作との違いは、やはりそれぞれの人物がさまざまな過去を背負っており、それがきっちりと描かれていることでしょう。全方向にケンカを売る藤原にもそれなりの過去があります。また、船上での生活にはリアリティがあり、「マグロ漁船に乗るとこんな感じなのか」というのがよくわかりました。本当に大変で危険な仕事です。地上では簡単に治せる怪我や病気も、船上ではどうにもなりません。漁師さんたちには敬服します。

現在のところ本作は中国語(簡体字)のみに対応。インストール時に言語で英語が選べますが、ゲームを開始すると中国語になります。将来的に英語が入るということでしょうか。しかし、登場人物は日本人ですし、音声はすべて日本語。将来的に日本語版を出すのも難しくなさそうです。物語は、船の乗っ取りが始まってからかなりスリリングな展開になります。日本語版が登場したらぜひ遊んでみて、現実に起こった「魯栄漁2682号」の事件を追体験してみてください。

製品情報


    『One-Way Ticket / 単程票』


    開発・販売:Light & Digital Technology、
    Zodiac Interactive、HeyBox Interactive
    対象OS:Windows
    通常価格:520円
    サポート言語:中国語(簡体字)のみ
    Steamストアページ:https://store.steampowered.com/app/856370/OneWay_Ticket/

※本記事で用いているゲームタイトルや固有名詞の一部は、技術的な制限により、簡体字を日本の漢字に置き換えています。
《渡辺仙州》

歴史・シミュ・ボドゲ好き 渡辺仙州

主に中国ものを書いている作家。人生の理念は「知られていない面白いもの」を発掘・提供すること。歴史・シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、「マイナーゲーム.com」「マイナーゲームTV」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「西遊記」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」「天邪鬼な皇子と唐の黒猫」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。

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