中華ゲーム見聞録:個人開発のハイクオリティーFPS『Bright Memory - Episode 1』開発者インタビュー | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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中華ゲーム見聞録:個人開発のハイクオリティーFPS『Bright Memory - Episode 1』開発者インタビュー

「中華ゲーム見聞録」第19回目は個人開発にもかかわらずハイクオリティーなインディーFPS『Bright Memory - Episode 1(光明記憶:第一章)』の開発者インタビューをお届けします。

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中華ゲーム見聞録:個人開発のハイクオリティーFPS『Bright Memory - Episode 1』開発者インタビュー
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「中華ゲーム見聞録」第19回目は前回に引き続き、たった一人で開発したハイクオリティーFPS『Bright Memory - Episode 1(光明記憶:第一章)』の開発者へのインタビューをお届けします。

本作はFYQD Personal Studio(中国名は「飛燕群島個人工作室」、もしくは「飛燕群島工作室」)によってSteamで1月12日に早期アクセス版が配信され、13日には売り上げ2万本を突破。Game*Sparkで掲載した記事でも、読者の皆様から大きな反響がありました。開発者のFYQD(飛燕群島。FYQDはそれぞれの漢字の発音の頭文字)氏は仕事の合間を利用し、Unreal Engine 4(以下「UE4」)を駆使してたった一人で本作を開発したとのことです。ゲームの内容に関しては前回の記事を参照してください。また本記事に使用されている画像はFYQD氏から提供されたものです。

『Bright Memory - Episode 1』のトレイラー

トレイラーにおいても、まるでAAAゲームのような風格が漂う本作。このようなハイクオリティーなゲームをたった一人で開発したのは驚きですが、「いったいどこまで一人で開発したのか」、「外部人員の手伝いはなかったのか」、「音声についてはどうしたのか」、「キャラクターデザインは」、「アセットやプラグインはどれだけ使ったのか」、「ゲーム開発のノウハウはどうやって得たのか」などなど、詳細について知りたい方が多いのではないかと思います(筆者もその一人です)。気になる質問を投げかけたところ多くのコメントを頂けたので、以下にインタビューを掲載します。



――まずは自己紹介をお願いします。

FYQD氏:日本の読者の皆さま、初めまして!私は中国のインディーゲーム開発者、FYQD(飛燕群島)と申します。本作は仕事の空いた時間を利用して一人で開発したもので、インディーゲーム会社自体はまだ存在していません。

――本作の開発開始までの流れやきっかけを教えていただけますか?

FYQD氏:本作は私の開発した2つ目のゲームです。最初の作品は『WarStrom』と言い、私が15歳のころ、学業の合間に開発したFPSです。2014年、ちょうど高校卒業時に完成しました。それからUE4の無料化もあり、私はUE4に大きな期待と注目をしていました。

UE4をいじったり勉強したりしていたある日、突然アイディアが降ってきました。私は一週間かけてそのアイディアの基礎設計をし、それから一歩一歩開発を続けていきました。私にとってゲーム開発は、完全に没頭することのできる趣味のようなものでした。お金儲けがしたいわけではなく、AAAゲームの表現手法を追求することが好きだったからです。またその過程によって、自分自身の芸術に対する修養を向上させるのに役立つと思いました。


2015年8月、私は本作のデモ版開発に取りかかりました。最初はモバイル版とVR版を作ろうと考えました。開発費とゲーム規模があまり大きくならないと思ったからです。しかし当時のスマホ市場には高性能の機種が比較的少なく、開発の過程で画質と最適化を一定のレベルまで到達させるのが困難でした。それでも最終的にはiOSでデモ版を完成させ、それからVR版に取りかかりました。

しかしVR版の開発は非常に困難で、資金も足りません。6000元(約10万円)を投じてOculus一式を買いましたが、開発の途中で様々な難題にぶつかりました。まず、VR酔いの問題。それに3Dのユーザーインターフェースといった、これまでに触れたことのないシステムなど。何カ月か開発を続け、結局中断することになりました。皆さまの目にしているPC版はその後、2017年5月に開発を始めたものです。開発期間は1年以上になります。

――15歳のころからFPSの開発を始めていたとのことですが、プログラミングやゲーム開発のスキルはどのように習得しましたか?

FYQD氏:すべて独学です。要するに私個人の趣味でやっていたことです。学びながらいろいろ試してみたりデモを開発してみたりなどしていました。学校でもプログラミングの授業はありますが、専門学校ではないので、ゲームの作り方を教えてくれるわけではありません。学校でゲーム開発について学べることはほぼゼロです。

――本作には音声が収録されていますが、どのような過程を経て制作されたのでしょうか?

FYQD氏:4名の声優さんに協力してもらっています。とくに主人公の女性のセリフが多いですね。当時はどうやって音声を入れたらよいのか、アフレコ作業に関する経験がまったくありませんでした。そこで、アフレコをやってくれそうなスタジオをネットでいくつか探してみました。あのころは本当に、このようなドラマ部分の音声をどうすればいいのかわからなかったのです。

あと、価格の問題もありました。第一線のスタジオは非常に高価で、一般人が到底支払えるような金額ではありませんでした。結局どうすることもできず、以前ゲーム会社で一緒に仕事をしたことのある音響の方に教えを乞い、最終的には国内第三線のスタジオを見つけることができました。比較的低価格でアフレコ作業を完成させることができたのです。

――本作のプログラミングなど、外部人員の手を借りた部分などはありますか?

FYQD氏:本作のリソース統合や開発など、すべて一人で完成させました。他の人に開発の協力依頼をしたことはありません。なぜならゲーム開発は、私にとっては製品を作る作業ではないからです。仕事の合間の楽しみとして行っているだけなのです。

――現在のゲーム開発環境はどのようなものなのでしょうか?

FYQD氏:実のところ、開発環境はこれといった特別なものはありません。現在勤めている会社のそばに普通の部屋を借りて、そこで開発しているだけです。本作はUE4を使って開発を行っています。

――専門的な話になりますが、本作を開発するにあたってアセットやプラグインはどれぐらい使っているのでしょうか?

FYQD氏:本作の植物や木々は、UEのストアからアセットを購入して使用したものです。また一部の地面はQuixel(テクスチャ制作ツール)の素材を使用しています。プラグインについては将来的に導入する可能性はありますが、現在の早期アクセス版までの段階ではまだ使用していません。

2017年に公開された主人公の画像。髪型が現在のものと異なっています

現時点の早期アクセス版をクリアするとアンロックされる「School Shelia」コスチューム

主人公など人物については、自分でデザインした部分もあれば、素材を購入してパーツの一部として組み合わせた部分もあります。しかしすべての外部素材は必ず二次修正や加工をし、自分の考えるスタイルに改修して使用しています。

――本作の特徴を教えてください。


FYQD氏:やはりコンボシステムですね。プレイヤーは様々なスキルを使って敵を空中に浮かせ、追加コンボを叩きこむことができます。このときのプレイヤーの操作は、ゲーム側でリアルタイムに評価されています(画像右上)。

それとステージ設計ですね。目の前で起こる出来事は短いですが、ステージ設計においては基本的に10秒間隔で驚きのある新たなイベントが発生するようになっています。例えば洞窟に入ったとき、足元にガイコツが転がっていることを奇妙に思っていると、すぐに前方から敵が襲ってきたり、また洞窟から出て一息ついたところで、水中から死体が浮かび上がってきてプレイヤーを驚かせるなど。これらイベントはどれも短いものですが、すべて長い時間をかけて入念に設計したものです。

――本作はどのようなことから着想を得たのでしょうか?また、影響を受けた作品はありますか?

FYQD氏:本作の初期のアイディアは、あるシーンを思いついたことからでした。もし未来の軍隊が古代へ行ったらどうなるか。主人公が未来の武器を使って古代の兵士たちと戦い、相手はその武器が理解できないといったシチュエーションです。また、古代兵士の大軍を相手したらどうなるかなど。

これらのアイディアを実際のゲームに落としこんだとき、新しい要素が必要だと感じました。主人公がずっと銃ばかり使っていると単調すぎますしね。影響を受けた作品ですが、様々なゲームからアイディアを得ています。例えば『Shadow Warrior』、『バイオショック インフィニット』、『Bulletstorm』、『ディスオナード』などです。

――本作の日本語対応予定はありますか?

FYQD氏:あります。将来、多言語版を開発するときに、日本語を加える予定です。またできれば日本語音声も入れたいと思っています。

――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。

FYQD氏:今はまだ日本語が入っていませんが、日本の読者の皆さまが私のゲームに注目してくださっていることを大変嬉しく思っています。私はつい最近Steamの本作ストアページのアクセスデータを見てみましたが、国別アクセス数の第3位は日本でした。できるだけ早く多言語に対応したいと思います。

――ありがとうございました。



まだ早期アクセスながらAAAゲームの風格を持つ本作。今回のインタビューで開発者のFYQD氏から様々な興味深い話を聞くことができました。日本語版の予定もあり、今後も武器やスキル、追加ステージなど数多くのアップデートがあるとのこと。本作のようなハイクオリティーなゲームを開発したFYQD氏の、これからの活躍に期待したいと思います。

製品情報



※本記事で用いているゲームタイトルや固有名詞の一部は、技術的な制限により、簡体字を日本の漢字に置き換えています。
※本記事で用いている画像はFYQD氏から提供されたものです。転載は禁じられています。
《渡辺仙州》

歴史・シミュ・ボドゲ好き 渡辺仙州

主に中国ものを書いている作家。人生の理念は「知られていない面白いもの」を発掘・提供すること。歴史・シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、「マイナーゲーム.com」「マイナーゲームTV」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「西遊記」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」「天邪鬼な皇子と唐の黒猫」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。

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