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好評の舞台裏を直撃!世界観設定とレベルデザインの意図に迫る『ENDER LILIES』開発者インタビュー

『Hollow Knight』『Dead Cells』なども開発のヒントにされたそうです。

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2021年1月よりSteamにて早期アクセスが開始され、6月から7月にかけて正式リリースされたダークファンタジー調の2DスクロールアクションRPG『ENDER LILIES: Quietus of the Knights(エンダーリリーズ: クワイタス オブ ザ ナイツ)』。

本作では「死の雨」により滅びた王国「果ての国」を舞台に、教会で目を覚ました少女リリィが、不死の騎士とともに世界を探索しながら強敵に立ち向かい、滅びた王国の謎を解き明かしていきます。

この度Game*Spark編集部は、本作ゲームディレクターの岡部氏とメインゲームデザイナーの横山氏にお話を伺う機会を頂きました。本作はどのように企画から開発に進み、リリースに至ったのでしょうか。また、本作の特徴である世界観や主人公のリリィはどのように生まれたのかをお聞きしました。それでは、さっそく見ていきましょう。


――本日はよろしくお願いします。最初にお二人が開発で担当された内容を教えてください。

岡部氏 『ENDER LILIES』のディレクターとして、プロジェクトの監修やゲームを企画する際のコンセプトを作りました。シナリオや世界観の構築を行なったほか、元々はデザイナーだったのでデザインラフや絵コンテを作ったり、UIデザインや組み込みをしたりと担当業務は多岐にわたります。企画部分に関しては、リードゲームデザイナーが僕と横山、それに加えて、メインプログラマーのアミル、計三人で全体的なゲームの設計をしていきました。

横山氏 私はメインゲームデザイナーの役割で、ゲームのルール作りやバランス調整、レベルデザインを主に担当していました。

――ありがとうございます。続いて『ENDER LILIES』の開発が始まったきっかけを教えてください。

岡部氏 アドグローブ(Binary Haze Interactiveの親会社)の小林社長からこれまで培ってきたゲーム開発だけでなく、パブリッシュもしたいという話があり、オリジナルの企画を立ち上げようと話をいただきました。僕がもともと別のプロジェクトで2Dタイトルをやっていた知見を活かして『ENDER LILIES』に近い企画を提案しました。2Dのゲームを作ってみたいというだけでなく、国内の市場環境を見ていてSteamなどでインディーゲームの流れが来ていると感じたことや、『Hollow Knight』『ソルト アンド サンクチュアリ』といった2Dのメトロイドヴァニアが非常にヒットしているところを見て「自分たちにもできるんじゃないか?」と考えました。

――Steamには良質な2Dアクションがたくさんありますね。お二人は普段から2Dアクションゲームを遊ばれるのでしょうか

岡部氏 『Hollow Knight』や『Ori and the Will of the Wisps』など、ゲーム性としては『GRIS』のような雰囲気ゲーと呼ばれるものや、『Little Nightmares』のようなアドベンチャーゲームに寄った作品を遊んでいて、ここ3~4年は自分たちが2Dアクションを作ることも加味してプレイしていました。『キャッスルヴァニア』 のような昔やっていたようなゲームが、 Steamで今になっても売れているんだなという驚きもありました。

横山氏 私も2Dアクションゲームが好きで、昔から『キャッスルヴァニア』シリーズや『メトロイド』シリーズをやっていました。そういうゲームを作れるチャンスでもあったので、開発にも楽しんで参加しました。ローグライクも好きで『Dead Cells』が特に好きですね。『ENDER LILIES』のゲームアクション性や操作感は『Dead Cells』を最も参考にしていてリスペクトしています。

特に『Dead Cells』のアクションにおけるストレスの無さやアニメーションのスムーズさ、攻撃と回避のゲーム性は昨今の2Dアクションゲームでトップクラスなんじゃないかと思っています。こういったタイトルは大手のゲーム会社だとなかなかプロジェクト化しづらいところがあるので、インディっぽい規模で『ENDER LILIES』を作れたのは幸運だったと思います。

「雨が降りやまない世界」や「果ての国」の世界観、リリィのかわいらしいデザインについて聞く

――国内外の良質なタイトルを遊んでおられるのですね。『ENDER LILIES』の話に戻りますが、先ほど企画を出されたとお聞きしましたが、実際に開発を始めた時には、今の世界観はできていたのでしょうか。それともチームで話し合いながら世界観を作っていったのでしょうか

岡部氏 「雨が降り止まない世界」や主人公の設定などはもともと自分がやりたかったこととMiv4tさんの描かれた、少女がいて周りに騎士がいるという構図のイラストがありまして、そのモチーフを企画書に盛り込んだ結果、ビジュアルのイメージがある程度固まった状態で今回の開発では、作りたいものを作るというコンセプトを最後まで貫くことができました。

横山氏 絵や世界観、キャラクターが最初に決まり、メトロイドヴァニアのルールに落とし込んだ形で、まずは世界観や雰囲気を固めてそれらを強みにできるよう開発を進めました。ほかにもMiliさんの音楽はこの作品の強みなので、イメージを壊さないようにしつつゲーム性とうまくバランスを取ってレベルデザインをしました。

――「果ての国」という一つの世界を作って、ゲーム内の世界をさらに作っていったわけですね。

岡部氏 最初は、マップやギミックに関しては何も考えていなかったんですが、マップの上部に城がある、景観として雨が降っているからマップ下の方は水が溜まり、恐ろしい世界になっているなど、メトロイドヴァニアを作る上でわかりやすいモチーフやキーワードをどういう風に変化させるか決めました。メトロイドヴァニアはマップ探索が楽しくないといけないと思っていて、探索の楽しさを実現する世界観を構築しました。それとは別に、開発の作りやすさも重視して、背景やアセットは世界観にマッチしているだけでなく、作りやすさやボリュームも増やせるかどうかも判断基準にしました。

――世界観と開発の両方を考えながら作っていったのですね。雨は『ENDER LILIES』の重要な要素になっているのでしょうか

岡部氏 雨は、マップ全体に影響を及ぼすキーワードの1つで、雨宿り地点のセーブポイントや滝を登るギミック、水中アクションなど、雨から連想できる内容を盛り込みました。「悲しみに満ちた世界」を作りたいというイメージのもとで「雨」はぴったり合いました。

――レベルデザインについて「雨」を意識された点はあるのでしょうか

横山氏 水中という要素は探索のバリエーションを増やすことができるし、雨と相性がいいと思ったので取り入れました。水中でストレスなく動いてバトルができるようにデザインしています。レベルデザイン面にも「雨」や「水」の要素をしっかり取り入れられたと思っています。

――ストレスなく動くという点に気を使われたのがよくわかります。快適な操作性を実現されていらっしゃると思いました。

横山氏 プログラマーのアミルが本当に優秀でして、ストレスのない操作と基本設計を彼がかなりやってくれました。

――実際の開発ではどれくらいの規模で『ENDER LILIES』を作られたのですか?

岡部氏 プロトタイプ段階では、自分、横山、メインプログラマーのアミル、アートディレクターの上田、デザイナー3名の計7人で3か月から4か月ぐらいかけて開発しました。

量産フェーズでは、コアメンバーが10名ぐらいに増えましたが、プログラマーはほとんどアミル1人で、企画は僕と横山の二人にサポートで企画が1名参加したので、増えたメンバーの半分以上がデザイナーでした。

横山氏 私がほとんどの仕様作成、レベルデザイン、データ調整を担当していて、デザイナー以外はほとんど増えずに最後までなんとかやりきりました。思った以上に小規模で、少数精鋭だったんじゃないかなと。

――意外と少人数だったのですね。

岡部氏 少数精鋭で意思疎通がしやすかったので、僕が指示を出すフェーズが少なく作ったものをチェックするのも最小人数でスピーディにできたのが大きかったです。

デザインの量産フェーズでは、外部の会社にも協力をしてもらいました。マップの量産などもスムーズに進みましたし、最初のコンセプトをブレずに進めることができたと思います。一度大きなひっくり返しがあったんですけど、プロトタイプ以降は最後まで大きな変更なく進みました。

あとは早期アクセスでゲームを公開できたことも、僕達がやっていることが正しいかどうかの判断ができてよかったと思います。よくあるのは、開発途中で迷ってしまうことですが早期アクセスでプレイヤーから評価をいただけたので、この方向性でいいんだと確認しながら開発できました。

――よくある「これ、本当に面白いのかな?」っていう疑問ですよね。

岡部氏 それは最後まで悩みました。早期アクセス版として、開発途中のゲームを出すことでマイナスになるのでは?とも思いましたが、プレイヤーの反応を見られたのはよかったです。

――先ほどの「大きなひっくり返し」とはどういうものなのでしょう?

岡部氏 『ENDER LILIES』を立ち上げた時に、イラストのイメージをもとにダークファンタジーを作る予定でしたが、予算規模の関係もあって最初に提案した企画はメトロイドヴァニアでなく横スクロールのアクションゲームで、ビジュアルも近未来の廃墟で主人公像も全く違うものでした。それを見た小林社長から元々の企画だったものにしたいという話があって、作り直しました。


《HATA》
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