2021年11月12日(金)に発売が開始された『グランド・セフト・オート:決定版:トリロジー』。
このトリロジーでは、グラフィックやゲームプレイが改善された『グランド・セフト・オートIII』『グランド・セフト・オート: バイス・シティ』『グランド・セフト・オート: サン・アンドレアス』の3タイトルのリマスター版をプレイすることができます。
この3タイトルは、日本でもオリジナル版がPS2やXbox、PCといったプラットフォームでカプコンより発売されており、当時プレイしたというゲーマーも多いのではないでしょうか。しかし、PS2版―特に『サン・アンドレアス』はCEROレーティングの影響やカプコンが行った規制により、オリジナル版から表現が変わった、もしくは削除されたものが少なくありません。(参考リンク)
本シリーズのクライムアクションというジャンルの性質上、一時期社会問題として取り上げられるほどに問題視されていたこともあり、表現規制についてCEROやカプコンを一概に責めることはできません。しかし、やはりオリジナル版から変わった点・削られた点はどうしても気になったのも事実で、ゲームプレイにも影響を及ぼす規制事項も存在しました。
今回発売されたトリロジーは、パブリッシャーがカプコンからRockstar Gamesの親会社テイクツー・インタラクティブ・ジャパンに代わり、コンソール版はCEROレーティングを通過して区分Z(18歳以上のみ対象)として発売されています。
本稿では、リマスターされ改めて発売された『サン・アンドレアス』日本語版では表現がどう変化しているかを、オリジナル版含む3機種で比較します。
今回の比較には、オリジナルPS2版、リマスターPC版、リマスターニンテンドースイッチ版(以下、リマスターSwitch版)の3機種を使用しています。
頭部破壊表現
銃で頭部を狙ったときなどに起こる頭部破壊表現を比較します。
PS2版
PS2はロックオン式なので狙うこと自体が難しいですが、頭部が破壊される表現はありません。
リマスターPC版
頭部を破壊することができます。銃で撃つと頭が弾ける表現はやはりインパクトがありますね。
リマスターSwitch版
PC版と表現に差異はありません。
倒れた敵への追い打ち
近接攻撃の際、倒れた敵に対して行える追い打ちの表現を比較します。
PS2版
敵への追い打ちはできません。ついでに、死体に銃を撃ってビクンと身体が跳ねる表現もカットされています。
リマスターPC版
敵への追い打ちが可能で、死体を撃つとビクンと跳ねる表現もしっかりと残っています。
リマスターSwitch版
PC版と同じです。
銃で撃つと即手配が付いてしまう
銃や武器でNPCを攻撃した際の手配度の付き方について比較します。
PS2版
銃器や武器類で敵を攻撃すると警官に見られていなくても即手配がついてしまいます。これにより、様々なミッションの難易度が上がってしまいます。
リマスターPC版
一人以上殺した後に数発NPCに射撃を当てると手配が付いてしまいます。
リマスターSwitch版
PC版と同様です。
倒してもお金を落とさない
オリジナル海外版では一般人やギャングなどのNPCを倒した際お金を落とします。場合によってはちょっとしたお小遣い稼ぎにもなります。
PS2版
人を倒してもお金を落としてくれません。ゲームプレイの難易度がぐんと跳ね上がるわけではありませんが、人を襲うメリットは減ってしまいます。
リマスターPC版
しっかりお金を落としてくれます。
リマスターSwitch版
PC版と同様です。
轢殺時の表現
車で轢いたときの表現を比較します。
PS2版
轢き殺すことはできますが、それ以上の表現はありません。
リマスターPC版
「クシャ」っというような音が鳴り、タイヤに血がべったりと付着。そのまま走ると道路に血を塗りたくりながら走ります。
リマスターSwitch版
PC版と同様です。血が付着した面とそうでない面で走行時の痕が変わるという細かい仕様になっています。
焼死体
ミッション「Burning Desire」などで見られやすいNPCの焼死体の表現を比較します。
PS2版
焼け死ぬことはありますが、生きていたときと同じ姿です。
リマスターPC版
黒焦げの炭のようになってしまいます。欠損は大丈夫でもこの表現は堪える…という人も多いかもしれません。
リマスターSwitch版
PC版と同様。
売春婦派遣ミッション
「人材派遣ミッション」は、タクシーミッションなどと同じ職業ミッションです。2人の売春婦を交互にお客様のもとに送り、時にはお金を払わないヤンチャなお客様を処刑します。
PS2版
カプコンサポートサイトに「性的描写の含まれる、ストーリーに直接関連のない職業ミッションの削除」と記載があるように、このミッションは削除されています。
PC版
車両"Broadway”に載ることでタクシーミッションなどと同じ要領でプレイができます。オリジナル海外版には10ミッションこなした後、売春婦からお礼として性行為をしてもらえるという要素があったようですが、リマスター版では発生しません。
リマスターSwitch版
PC版と同様。クリア時のご褒美イベントも発生しません。
カーセックス
街中で露出度の高い女性NPCの近くでクラクションを鳴らすと「イイことしない?」と尋ねられます。肯定的な返事をし、女性を車に載せ人気の無い場所で停車すると行為を開始できます。
PS2版
カーセックスは可能ですが、車がギシギシと揺れるだけです。
リマスターPC版
なんと、PS2版と同様車がギシギシ揺れるだけです。なお、Nintendo Switch版は表現が規制されていないためPC版特有のバグにより発生していない可能性があります。
リマスターSwitch版
女性の喘ぎ声やCJのボイスが流れます。また、Joy-ConのHD振動でクライマックス時の「ブルブル」という感触が伝わってきます。
デートイベント「コーヒーのお誘い」
本作にはガールフレンドとの恋愛イベントが用意されており、一緒にデートに出かけることができます。
愛情度が一定以上になると、彼女から「ウチでコーヒーでも飲んでいかない?」と誘われます。これに肯定的な返事をすると、直接描写は無いもののガールフレンドとの性行為が発生します。(オリジナル版当時、Modや改造ツールを使う必要はあるものの、ゲーム内に直接描写が含まれていたとして社会問題になりました。「ホットコーヒー問題」として知られています。)
PS2版
コーヒーに誘われますが、性行為時の声はカットされ家が映されるのみで終わります。
リマスターPC版
コーヒーに誘われます。カーセックスと違い、こちらはガールフレンドとCJの声が流れます。
リマスターSwitch版
こちらも同様です。二人の声もバッチリ流れます。
薬物に関する表現
本作はギャングたちが深く関わるストーリーなので、もちろん薬物に関する表現が出てきます。ミッション「Body Harvest」などのカットシーンで見られる薬物表現を比較します。
PS2版
「ヤク」などの単語は出てきますが、薬物をパイプで吸うシーンなどはカットされており、若干カットシーンに矛盾が生じます。
リマスターPC版
カラフルなパイプを用いてしっかりと使用しています。
リマスターSwitch版
PC版と同様の表現です。パッケージにカンナビスが描かれた筒も置いてあります。
コンバインでの轢殺
最後に、今作でもトップクラスに残酷な表現である、コンバインでの轢殺の表現を比較します。
PS2版
轢くことはできますが、残酷描写は全面的にカットされています。
リマスターPC版
人がミンチになって出てきますが、血煙と火花によって見づらくなっています。
リマスターSwitch版
PC版より血煙が抑えられているのか、よりミンチになった様が見やすくなっています。
今回の比較では、CEROレーティングを通過しているコンソール版とPC版に表現の差異はほとんどないことが分かりました。本記事だけではすべての規制事項の比較はできませんでしたが、プレイしている際に目立つ大きな表現は大方比較できたのではないでしょうか。
『GTA:トリロジー』は様々な問題を抱え、品質の低さをRockstar Gamesが直々に謝罪するという難のあるバージョンではありますが、オリジナル版日本語環境でもっとも遊びやすいであろうPS2版と比べ、表現が最もオリジナル版に近いのも事実。ローカライズに関してはカプコンが販売していたものとほぼ同一であり、ローカライズは当時のまま、品質の高いものとなっています。本記事が表現比較の参考になれば幸いです。