気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、Bitmap Galaxy開発、PC/Mac/Linux/PS5/PS4/Xbox Series X|S/スイッチ向けに5月15日にリリースされた建築パズルゲーム『PRESERVE : 自然の守護者』開発者へのミニインタビューをお届けします。
本作は、自然環境をテーマにしたリラックスできるパズルゲーム。プレイヤーは植物や動物を巧みに配置して自分好みの完璧な共生関係を作り出し、活気に満ちた生態系を繁栄させます。日本語にも対応済み。プレイレポも掲載中です。
『PRESERVE : 自然の守護者』は、1,900円で配信中。


――まずは自己紹介をお願いします。一番好きなゲームは何ですか?
Alexander 私たちBitmap Galaxyは、ヨーロッパの国スロバキア出身の7人からなる小さなゲーム開発スタジオです。私たちは、ポジティブで、芸術的で、魅力的なゲームを作ることに重点を置いています。
私の名前はAlexander Buzgoで、ゲームデザイナーです。主な柱となる設定のデザイン、メインシステムとコアゲームループのデザイン、類似ゲームのリサーチをしています。その他には、アーティスト、プログラマー、コンポーザーへの最適なリファレンス提供なども担当しています。
チームメンバーのほとんどがニンテンドースイッチを所有しており、『スーパーマリオ』や『ゼルダの伝説』シリーズタイトルのトーン、システムな多様性、洗練されたレベルを高く評価しています。
私個人としては、これは非常に厄介な質問です。『シヴィライゼーション』のタイトル(主に5と6)は何千時間もプレイしていますが、PCゲームで最も好きなのはローグライクのデッキビルダー『Slay the Spire』でしょう。
――本作の特徴を教えてください。また、そのアイデアはどのように思いついたのでしょうか?
Alexander 本作は、自然を何レイヤーにも渡って構築していくことで、景観の良い地図やジオラマを作る、リラックスできるビルダー&パズルゲームです。まず、地形を変更し(雨、川、地殻変動)、次に植物を配置し、生息地を作成します。その後、動物を好みの生息地に配置します(動物を多様に組み合わせるとボーナスポイントが得られます)。最後に、自然の神秘を地図上に配置します。この単純化されたレイヤーの自然構築は、本作の特徴的なシステムです。
思いついた経緯については、読者にもっと広い文脈でお話させてください。COVIDパンデミックが起こる前、私たちのスタジオはピクセルプラットフォーマー『YesterMorrow』を開発していました。そして開発の最後の半年の間にパンデミックが発生したのです。私たちは自宅から仕事をし、ゲームを完成させ、2020年11月5日にリリースしました。しかし、期待したような売り上げにはならず、すぐに新しいプロジェクトを立ち上げなければならなかったのです。
私たちはその後1年半をかけて、ユーモラスなストーリーのローグライト採掘プラットフォーマー『RandoMine』というゲームに取り組みました。このゲームは20ヶ月以内に完成させることに成功しましたが、パブリッシャーが適切なリリース時期を見つけることができず、この作品は実際にリリースされることはありませんでした。
しかし、私たちはもっと多くのものを作りたいと思い、チーム内で話し合った結果、私がいくつかのピッチデッキ(訳註:事業計画やアイデアをプレゼンするための資料)を作成することとなりました。そして、次のプロジェクトには3つの基本的なルールを課すこととしたのです。まず、六角形か正方形のグリッドを使用すること。ゲームプレイはゆっくり、できればターン制であること。そしてポジティブな感情を伝えることができること、です。
パンデミックのロックダウン期間中、私は自分を落ち着かせるために、自然を題材にしたリラックスできるゲームをたくさんプレイしていました。また、『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』のハイラルの探索にも多くの時間を費やしていました。家に閉じこもらなければならないことを、無意識のうちに理由づけしていたのでしょう。
そして、開発者仲間やパブリッシャー候補にピッチデッキを送ったところ、本作のアイデアがほぼ満場一致で好まれたのです。
――本作の開発にあたって影響を受けた作品はありますか?
Alexander はい、特に『Dorfromantik』と『ISLANDERS』は、どちらもリラックスできる建築ゲームで影響を受けました。前者はパステル調の六角形のマップが視覚的に美しく、後者はマイルストーンと有限サイズのマップに基づく得点システムがとても心地よく、私たちを驚かせました。
『Dorfromantik』をプレイしていたとき、私は一度六角形のタイルを置くと二度とそのタイルに触れないことに気づきました。この小さな発見から、ある思考プロセスが始まったのです。「もし、マップ上に何層にも物を配置できたらどうだろう?まず草を置き、その上に森を置き、その中に鹿を置くことができたらどうだろうか?」
また、『Dorfromantik』のマップは果てしなく続き、ゲームのスタートは楽しいのですが、タイルを置くたびに配置の選択肢が増えるため、次第にゲームが退屈になっていきました。それに比べると、『ISLANDERS』の小さくてコンパクトで有限なマップのテンポは、はるかにダイナミックでエレガントでした。そこで、もうひとつの疑問が生まれたのです。「30分間プレイして、視覚的に楽しいジオラマが完成するようなゲームを作れないだろうか?」
その他にも、美しいカラフルな街を作るための遊び心満載のツール『Townscaper』や、不毛の惑星を緑豊かな楽園にテラフォーミングするゲーム『Terra Nil』からもヒントを得ています。

――本作の開発中に一番印象深かったエピソードを一つ教えてください。
Alexander 本作の開発はごく普通で、特に印象的なことは何もありませんでした。しかし、犠牲にしなければならなかった要素のひとつを挙げることができるかもしれません。
開発の最初の年、私たちは本作をよりエコロジカルなものにしたいと思いました。そのため、私たちは汚染というものをゲームに組み込んだのです。汚染されたタイル(埋立地、石油流出、スモッグ、核廃棄物など)は使えなくなるので(放っておくと拡大する可能性もある)、特別なアクションを使って綺麗にする必要がありました。私たちはかなり長い間この要素がある状態で開発をしていましたが、最終的には面白くないと認めざるを得ませんでした。汚染を綺麗にするのは忙しなく感じられ、ポジティブな感情も伝わらず、汚染は拡大する可能性もあり(プレイヤーのマップを破壊する可能性がある)、魅力的なものにすることができなかったのです。ですから、せっかく作ったにもかかわらず、この要素はすべて廃棄されました。
――リリース後のユーザーのフィードバックはどのようなものがありましたか?特に印象深いものを教えてください。
Alexander 今のところ、非常に好意的なフィードバックをいただいています。穏やかな雰囲気、パズル、音楽、ビジュアルに楽しみを見出していただき、リラックスしてくつろいでいただけることは、私たちにとってこの上ない喜びです。現在、Steamでは92%のポジティブなフィードバックをいただいています。
否定的なレビューのほとんどは、現在サポートされていない言語を使用しているプレイヤーや、ゲームの難易度を誤って判断したプレイヤーからのものです(ゲームが簡単すぎるという意見もあれば、非常に難しいという意見もあります)。
最も印象に残っているプレイヤーの一人は、スウェーデン出身の年配の女性で、Steamの早期アクセス中に本作をプレイし始め、次第に私たちのプレイヤーコミュニティの柱になっていきました。彼女は本作が大好きで、素晴らしい提案をたくさんしてくれます。さらに、彼女は非常に礼儀正しく、常に他のプレイヤーを手助けしてくれるのです。このように活動的で前向きなプレイヤーがいることは、すべての開発者にとって幸せなことであり、チーム全員を代表して彼女に感謝したいです。
――ユーザーからのフィードバックも踏まえて、今後のアップデートの方針について教えてください。
Alexander 現在、4つのプレイ可能なバイオームがあり、それぞれ異なるメカニズムを持っています(大陸/サバンナ/海洋/ジュラ紀)。私たちは5つ目のバイオームを準備中で、その間にコミュニティからの提案に耳を傾け、QoL機能を準備し、バグを修正しています。
――本作の配信や収益化はしても大丈夫ですか?
Alexander はい、大丈夫です。
――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。
Alexander 開発の初期段階から、日本をモチーフにしたバイオームは、本作に美しく意味のある追加になるだろうと常に感じています。いつの日か、この夢を実現するためのリソースが得られることを心から願っています。ご支援ありがとうございます!
――ありがとうございました。


◆「注目インディーミニ問答」について
本連載は、リリース直後のインディーデベロッパーにメールで作品についてインタビューする連載企画です。定期的な連載にするため質問はフォーマット化し、なるべく多くのデベロッパーの声を届けることを目標としています。既に700を超える他のインタビュー記事もあわせてお楽しみください。