
6月5日、ニンテンドースイッチ2のローンチタイトルとして『スプリット・フィクション』が発売しました。
本作は『It Takes Two』でThe Game AwardsのGame Of The Yearを獲得したジョセフ・ファレス氏のスタジオHazelight Studiosの最新作。本作も彼らが得意とするふたりプレイ専用のアクションゲームです。
筆者はすでにPC版をクリアしており、とても楽しんだのですが、このたびニンテンドースイッチ2版を試してみたところ、スイッチ2でもこのゲームの輝きは再現されていました。
今回のプレイレポートを書くにあたり、EAよりダウンロードキーを提供いただいています。

これぞアイデアの大洪水! 1秒たりとも退屈しない最高のドタバタアクション
本作の主人公は、SF作家志望のミオと、ファンタジー作家志望のゾーイというふたりの女性です。彼女たちはある出版社に招かれたのですが、現地には巨大なマシーンが設置されており、半ば強制的に実験に参加させられてしまいます。

ミオは違和感を覚えて出版社に歯向かいますが、結局ふたりは同じマシーンの中に閉じ込められてしまいました。ミオとゾーイは毒づき合いながらも、自分たちが考えたSF世界とファンタジー世界を行き来し、出口を探していくことになります。
やがてふたりは、そのマシーンが作家のアイデアを勝手に抽出するための装置だと気づきます。果たして彼女たちはふたつの世界から無事に脱出し、出版社の極悪非道な計画を止めることができるのでしょうか。

正直、新人作家のアイデアを(新人賞の受賞作だけならまだしも)そこまで出版社が欲しがる理由はわかりませんし、出てくる世界を見る限り、文章表現を主とする作家のアイデアというより、絵で魅せる漫画家やゲームクリエイターのそれという感じもしますが……。
とはいえ、前作『It Takes Two』の冷めた夫婦関係についてずっと見させられるよりも、これくらいリアリティラインが低いほうが、ノリノリで笑いながらプレイできたのも事実です。最初は冷静だった出版社のお偉いさんが、ふたりが暴れるせいでどんどん余裕がなくなっていくのを見ていると笑えますし、中盤から話題に上り始めるふたりのパーソナルなお話には、ちょっと心が動きました。

ストーリーに対する無粋なツッコミはさておき、ゲームプレイの出来は極上です。
本作は『It Takes Two』同様に画面分割プレイを採用しており、左半分がミオ、右半分がゾーイです。ミオの考えたSF世界と、ゾーイの考えたファンタジー世界を交互に行き来し、マシーンが時折見せるグリッチに飛び込んでいきましょう。
これまた前作同様に、それぞれの進行ルートには別々の仕掛けが用意されており、ふたりで協力しなければクリアできない構造になっています。

片方がボタンを押しているあいだだけもう片方の眼前にあるドアが開いたり、片方がビークルを操縦しているあいだ、もう片方は銃座に乗って敵を撃ったりと、それぞれ忙しなく動き回ることになります。
どのギミックもSF・ファンタジー世界によくある代物でありながら、見ればすぐにルールや遊び方がわかるものばかりで、アクションゲームが苦手な人でも解くことができるでしょう。この手のマルチプレイヤーの協力型ゲームは、ゲームに対する習熟度が離れすぎていると申し訳ない気持ちになってきますが、そこまで異様に難しくて複雑なギミックはありません(多少、エイム力や入力精度を求められるシーンもありますが)。

加えて、そんな面白いギミックやアイデアを、ほんの数十秒でぶん投げて、もっとスゴい仕掛けを逐次投入するのがこのスタジオ。本作もそこは抜かりなく、他の追随を許さないほど大量の“面白い”が押し寄せてきます!
それでいて、ビジュアル表現もこだわっており、映画的なダイナミックなカメラワークで魅せてくれたかと思えば、世界やキャラが鉛筆描きのスタイルになったりと、視覚的に楽しい仕掛けも満載です。ジョセフ・ファレス氏の元映画監督というキャリアがここにも活きているのでしょう。

前作のゾウのぬいぐるみを引きちぎるような露悪的すぎるシーンもなく、大人から子どもまで安心して楽しめるシーンが、最初から最後までたっぷりと詰まっています。特に最終盤のレベルはとんでもなく出来が良く、ビデオゲームにおける表現の時計を進めたと言っていいほどかっこいいものでした。「ゲームってこんなことができるのか!」と息を呑むこと間違いなしでしょう。
スイッチ2でも問題ない? おすそ分け通信やゲームチャットで深まる友情
重ねて言うと、筆者はPC版でクリアしており、今回改めてニンテンドースイッチ2版で序盤を遊びました。なので、本記事のスクリーンショットはすべてニンテンドースイッチ2版を使用しています(ゲームチャット画面が映っているスクリーンショットは、キャプチャーボードの画面を撮ったものです)。

PC版に比べると少し画質は劣りますが(特に髪の表現など)FPSレートは問題なく、終始楽しく遊ぶことができました。
ちなみに本作は、おすそ分け通信・フレンドパスにも対応しています。それぞれ仕様が違うので解説しておきましょう。
おすそ分け通信というのは、ニンテンドースイッチ及びニンテンドースイッチ2に搭載されている機能です。本作に関しては、誰かひとり製品を購入していれば、もう片方の人がソフトを買っていなくても、ローカル通信で一緒に遊ぶことができます。
フレンドパスというのは前作『It Takes Two』にも搭載されていた機能で、こちらも誰かひとりが製品を購入していたら、もう片方の人がネット接続さえしていれば、買わなくても一緒に遊べるという機能です。

どちらも、購入者がゲームを閉じてしまったら、もう片方の人は起動できなくなります。重要なのは『スプリット・フィクション』のおすそ分け通信はローカルにしか対応していないので、オンラインで遊びたい場合はフレンドパスを使いましょう(なお、クロスプレイにも対応しているため、もう片方の人が何のハードを使っていようと一緒に遊べますのでご安心を)。

もちろん、ニンテンドースイッチ2の標準機能であるゲームチャットをしながら遊ぶことも可能です。これがあれば、スムーズに友達と感動を共有できますね。
あらゆる機能やハードに対応し、いよいよ隙がなくなってきた傑作『スプリット・フィクション』。10時間以上の長い旅ではありますが、絶対に心に刻まれる素敵な冒険になること間違いなしです。大事な人とともに、ミオとゾーイの物語を最後まで見届けてください。