ジグソーパズルなどで知られる老舗玩具メーカー・やのまんは、1990年にシリーズ第1作が発売された『アレサ』の35周年を記念したトークライブを、2025年8月9日に開催します。また、ディスクユニオンより8月20日に公式サウンドトラックも発売されます。
日本アートメディアが手がける『アレサ』シリーズは、これまでゲームボーイで3作品、スーパーファミコンで3作品が発売されています。アレサ王国を巡り、主人公達の冒険や活躍、敵の恐るべき陰謀などを描いた作品で、ゲームボーイ版ではマテリア、スーパーファミコン初期2作ではアリエルという女性主人公が仲間たちとともに困難に立ち向かいます。
8方向に移動可能で自動的に障害物を避ける「ファジーシステム」や、敵モンスターを捕えて戦闘に用いる「カプセルモンスターシステム」など、1990年当時のゲームボーイ作品としては画期的な要素を多く採用。世界観や物語も続編でしっかりと描かれるなど、今なお語られることもあるRPGシリーズです。

本稿では35周年を迎えた『アレサ』シリーズの紹介を行っていきます!
意欲的なシステムが多いGB3部作
◆『アレサ』(1990)
シリーズの始まりとなる第1作『アレサ』。かつて平和だった「アレサ王国」は、魔王ハワードに襲われ滅亡し、王と王妃の間に生まれた2人の娘の1人は攫われ、1人は魔の手から逃すために川に流されます。そして月日は流れ、ハロハロの町で育てられた少女・マテリアが自身の素性を知り、妹を取り戻す旅が描かれます。
ゲームとしては敵を倒してレベルアップしながら目的地を目指す、オーソドックスなRPGです。戦闘はなかなか難易度が高く、仲間が加入するまでは複数相手の戦闘ではあっという間にやられてしまいます。戦闘中にアイテムが使えず、3人目の仲間「ドール」が加入するまで魔法も使えない(特定条件でマテリアも使用可能)というのも大きな要因です。




印象的なのが「キャッシュディスペンサー」の存在で、最初無一文のマテリアはCDでお金を借りなければ武器を買うこともできません。こちらは続編『アレサII』まで登場するのですが、以降は登場しません。また、ゲーム内で重要なイベントアイテムの多くは“街のショップで買う”必要があります。
ゲームプレイを快適にする要素も多く、どこでもセーブ/ロードができたり、初期から町にワープするアイテムを入手できたり、システムで移動速度をアップすることも可能です。また、一定レベル以上になれば敵と地域のエンカウントしなくなります。「ファジーシステム」での移動も含め、移動でストレスを感じさせません。



ゲーム内での“次の目的”を提示するシステムが搭載されているのも『アレサ』シリーズの特徴です。驚くべきなのは、ゲームボーイ時代でテキストに漢字を多く使用している点。やや癖が強いところもありますが、とても意欲的に独自の要素を盛り込んでいる記念すべき作品です。



◆『アレサII』(1991年)

続編『アレサII』では、前作から引き続きマテリアの物語が描かれます。前作で仲間とともに妹を助け出したマテリアは、王位を妹に譲り、育ての親とともに再びハロハロの町で暮らしていました。しかし、魔王を倒し平和を取り戻したのもつかの間、世界の姿を自在に変える「アレサギ」が奪われたことで、新たな冒険の旅が始まります。
システム面で前回からの多くの部分を踏襲しつつ、グラフィックや新たな仲間の加入などの要素を大幅にパワーアップした本作。システム進行のヒントが、前作のマテリアの独り言から仲間への相談という形式になったことで、キャラクターの個性という面でも大きく強化されています。





そして本作で導入されたシステムに、戦闘中に装備品が壊れるというものがあります。修復する方法はあるのですが、レベルが低い状態で壊れるとピンチに陥ることも珍しくありません。道中のダンジョンも難易度が高いものが多く、かなりやり応えのある作品となっています。今作はレベルアップでHPが回復する仕様なのは大きな助けです。
横スクロールで探索する町があったり、マップ上で拾ってランダムでアイテムを獲得する「マジックカプセル」があったりと、今作でも独自の要素を組み込んだゲーム性は健在。物語としても完全に前作の続きで、前作登場キャラクターの活躍や、今作で追加されたグラフィックなども楽しめます。




◆『アレサIII』(1992年)

1992年に発売されたゲームボーイ版最終作『アレサIII』では、マテリアとドールが過去の世界へと移動して冒険する物語が中心となります。今作では4人パーティー制が導入されたことにくわえ、一時的に別パーティーで行動するパートがあるなど、これまでに無かった要素も搭載しています。
物語としては、マテリアが過去のアレサ王国へと移動して、自身の両親とともにシリーズの謎や秘密を解き明かすという内容。お馴染みの相談システムでキャラクターの雰囲気を掴めますし、これまで登場したキャラクターなども登場して世界観をより掘り下げているのも嬉しいところです。




戦闘に関しては、通常時はバランス調整されているのですが、クリティカルヒットにあたる「テクニカルヒット」の倍率が強烈で、序盤の敵が何故か200ダメージ以上を叩き出すことも。もちろんそんなものを喰らえば即死です。逆にプレイヤー側がボス相手でもとんでもないダメージを出すこともあります。
「ファジーシステム」「カプセルモンスターシステム」などのシリーズ要素はもちろん健在です。ちなみに『アレサ』シリーズは通例として隠しアイテムがあり、なかには「キャラクターのレベルを最大にする」というものも。これらを探し出すのもシリーズの楽しみのひとつですね。





これまであった「キャッシュディスペンサー」がないことや、宿の看板が「HOTEL(Oがハートマーク)」から「INN」に変更してしまったのは、少しだけ残念な部分。こういったちょっと雰囲気が異なる要素も魅力ではあったのですが……。


RPGとして洗練されたSFC版!唯一のARPG作品も
◆『アレサ』(1993年)

スーパーファミコン向けに発売されたシリーズ第1作『アレサ』です。本作では、ゲームボーイ版と異なる時間軸での世界が舞台で、主人公はマテリアから森で暮らす少女アリエルへと変更。アリエルが巻き込まれる数奇な運命をたどりながら、新たな物語が展開していきます。
スーパーファミコン版のシリーズは、これまで以上にファンタジーRPGらしさが強めです。プラットフォームが変わって表現が増えたこともあり、キャラクターのグラフィックはもちろん背景や戦闘風景などもとても印象深いものになっています。ストーリーもわかりやすく、相談システムのおかげで迷いづらいのもシリーズの特徴をうまく活かしています。



アリエル編の大きな特徴は、戦闘で前後左右4ヶ所から敵が出る可能性があるということです。『アレサ』シリーズは基本的にターン制戦闘なのですが、今作は他の方向にいる敵も攻撃してくるので、運が悪いと大量の敵から集中攻撃される可能性もあります。とはいえ、仲間の回避率が高く、全体攻撃もあるのでそこまで苦労はしません。
新たなシステムとしては、ゲーム内で敵を倒して入手するルーンを消費して装備を作る「ミクストフォーム」があります。これで作れる装備品は基本的に強力で、道中ほとんど装備品を更新しなくても良くなる可能性もあります。アリエルが回復を含め魔法をメインとするキャラクターなのですが、これで製作した装備で守備を固めると序盤は安定します。





なお、シリーズ皆勤賞のキャラクターとしてドールが今作でも登場します。ドールはその出自から特別なキャラクターで、シリーズの顔とも言っていい存在です。ゲーム内でもアリエルと“効果は同じでもスペルが違う呪文”を使うなど、世界観へのこだわりが最高ですね!





◆『アレサII アリエルの不思議な旅』(1994年)

こちらも前作の続編作品で、前作で対峙した帝国の野望を阻止したアリエルの新たな冒険の物語が描かれます。システムとしてはほぼ前作の内容を踏襲した上で、拡張された「ミクストフォーム」など、いくつかの点で遊びやすさや、やり応えが増しています。
前作では非表示だった敵へのダメージ表記や、敵の残りHP状況などの情報が追加されて戦闘が遊びやすくなったのも大きな特徴です。さらに、戦闘時にコマンド記憶するようになったので、いちいち選ばなくても魔法使いキャラクターが攻撃魔法を使いやすくなるなど、細かな点でのシステム改善が目立ちます。




『アレサ』シリーズは歴代で移動面で快適で、戦闘やUIなど各種システムが洗練された本作はとにかく全体的な遊びやすさがアップしています。ストーリーとしては完全に続きものであり、冒険の舞台は異なっても多くの仲間キャラクターが続投していることで、前作以上にこれまでの仲間の魅力や強さなどもしっかり描かれています。
3作にわたって続いたマテリアの物語に対して、アリエルの物語は本作が最終作です。物語としては続編を匂わせる展開もありましたが、やのまんがゲーム事業から撤退したこともあり、実現は難しいことだったのだと思います。




◆『リジョイス アレサ王国の彼方』(1995年)

1995年に『アレサ』シリーズとして現行最終作として発売されている『リジョイス』では、再びマテリア時代の世界が描かれます。主人公は悪ガキグループのリーダー・トレノで、とある人物の依頼で像を盗み出したことをきっかけに、冒険に旅に出かけていく物語が描かれます。
本作はシリーズ初となるアクションRPGで、トレノはシリーズに登場する魔法の書「フォースの書」と魔石の力を駆使して、魔法で敵と戦います。各地を巡りながら敵を倒して経験値やお金を稼ぎ、自身を強化して手強いボスに挑む、というオーソドックスなスタイルです。





シリーズ皆勤賞のドールももちろん登場しますし、仲間との相談システムなど『アレサ』シリーズの基礎部分はしっかりと引き継がれています。また、本作ではコントローラーを2つ使うことで、パーティーメンバーを使用した2人プレイにも対応しているのも大きな特徴です。
ただし、完全に新規主人公であることもあり、シリーズとしてはやや特殊な作品であることは否めません。また、トレノを含むグループ「リジョイス」がゲーム序盤に窃盗・詐欺・強盗(未遂)、そして“取り返しのつかないこと”などをしたり、トレノがやや強情な性格であったりするので、気になる人もいるかも知れません。





アクションRPGとしてはレベルアップが早く、特殊な攻撃やアクションもあるので面白い作品です、ただし、ゲームボーイ版『アレサ』初代を踏襲しているのか(?)、なぜかボスとの戦闘中にアイテムを使えないというという仕様があるのがストレスになって、なんとももったいない……!





『アレサ』はゲームボーイでも早い時期に出たRPGであり、当時から快適な移動を実現する「ファジーシステム」や戦闘でモンスターを使役する「モンスターカプセルシステム」など、独自のシステムを組み込んだうえで、続編を含め印象深い作品でした。
そんな『アレサ』シリーズ35周年を記念してイベントを行うというのは、とても喜ばしいことです。やのまんはすでにゲーム事業から撤退していますが、公式XではシミュレーションRPG『フェーダ』のPS版リメイクの開発版が発見されたといった、往年のゲームファンを喜ばせる情報も定期的に発信してくれています。
レトロゲームということもあり、現在『アレサ』シリーズを入手・プレイすることは難しいかもしれません。何かしらの形で、さまざまな名作をプレイできる事があれば嬉しいですね!
『アレサ』シリーズ35周年を記念したトークライブ「真やのまん伝説~アレサスペシャル~」は、2025年8月9日11時より新宿ロフトプラスワンにて開催予定です。配信なし、チケットも残り本当にわずかということなので気になる方は要チェックです。
真やのまん伝説~アレサスペシャル~











