
『野田ゲー』シリーズ総監督かつゲームクリエイターであり、言わずと知れたお笑いコンビ・マヂカルラブリー、そしてトレーニングジム「クリスタルジム」の発案者でトレーナーとしても活躍する野田クリスタルさん。
その多彩な才能とエンターテイナーっぷりを発信している野田さんは、京都・みやこめっせにて2025年7月18日から7月20日まで開催された日本最大級のインディーゲームの祭典「BitSummit the 13th(以下、BitSummit)」に参戦されていました。FANY GAMESブースでは『スーパー野田ゲーMAKER』を出展するだけでなく、『野田ゲー』の大人気ゲーム『つり革』スマホ版を来場者と一緒に遊ぶなど、ゲームファンたちからも大人気。
さらには『ベヨネッタ』『大神』などの生みの親としても知られる神谷英樹さんとのステージイベント「神谷英樹×野田クリスタルが語る、ゲームの未来とは?」にも登壇し、インディー業界についてやゲームを作る姿勢について熱く語られました。
ゲーム好きが高じて独学でプログラミングを覚え、ゲームを生み出す。Game*Sparkは、そんなゲーマー&ゲームクリエイターである野田さんへ単独インタビューを実施! 本稿では、ステージイベントの内容も踏まえ、『スーパー野田ゲーMAKER』に込めた思いや、自身のクリエイター観、そしてインディーゲームの未来について、熱く語っていただいた様子をお届けします。

プレイヤーの創造性に驚き―誰でもゲームが作れる『MAKER』は自分のためでもあった
――本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、2024年12月19日に発売された『スーパー野田ゲーMAKER』についてお伺いします。これまでの『野田ゲー』とは異なり、本作ではプレイヤーがゲームを作る側に回るという大きな変化がありましたが、発売からしばらく経ち、プレイヤーが「野田AI」で制作した様々なゲームをご覧になっていかがですか?
野田クリスタルさん(以下、野田さん):世の中には面白いゲームを作る人がたくさんいるんだなと改めてわかりましたね。正直に言うと、このゲームは自分のためでもあったんです。僕自身、絵が描けないですし、1人でゲームを作っていると、なかなか作るゲームの幅を広げられなかった。
だから、「自分が簡単に作れる開発ツールがあったらいいな」という気持ちがあって。「じゃあ、作るツールを作っちゃおう」と一石二鳥な気持ちでした。
ゲーム作りで一番大変なのは、完成させることだと思うんです。でも『MAKER』はまず“完成”から入る。最初に1本のゲームが作られた状態から、自分でテコ入れしていくスタイルなんです。だから、どんなに締め切りが迫っていても「ゲームを出せない」ということはない。時間をかければかけるほど面白いものが作れるし、途中でも面白いゲームとしてプレイできるのが本作の魅力ですかね。
ユーザーの作ったゲームは、遊ぶたびに毎回すごいなと思います。当初、こちらが作れると思っていたゲームジャンルの垣根を、ユーザーはアイデアで超えてくる。僕らが意図していなかった脱出ゲームとかを作ってくるので、「もはや怖いぞ」という段階に入ってきています。
――野田さんはBitSummitの神谷英樹さんとの対談ステージにも登壇されました。神谷さんも「面白いものを作るのが最優先」とおっしゃっていましたが、アクションゲームメインで制作されている方なので、野田さんとは少し作っているゲームが異なりますよね。対談を経て、ご自身の今後のゲーム制作に影響を受けそうな部分はありましたか?
野田さん:結局のところ、ゲームを作る上でぶち当たる壁は、会社の規模とか関係なく同じなんだなとわかりました。あんなに大きなタイトルのゲームでも、最初から全てのビジョンが見えている人なんていない。作りながら見えてくるものがあって、それによってエンジニアや他のスタッフが困る、というのは「あるある」なんだなと。
――ステージでは、「お笑いはネタの抜き差しがすぐにできるけれど、ゲームは時間もお金もかかる」とおっしゃられていたのが印象的でした。
野田さん:対談を経ても、本当にそう思います。アイテムやキャラクターを1人追加するのに、お金……人件費や制作費がいくらかかるんだとか。生々しい話をしちゃってますけどね(笑)。
――今回のBitSummitに関連して、「日本最大級インディーゲームの祭典!BitSummit ×17LIVE PRアンバサダーになろうsupported by スーパー野田ゲーMAKER」も行われていました。こちらはまさに後日新キャラクターをアップデート=差し込みで追加するというイベントでしたね。
野田さん:本当はアップデートなんてない方がいいんですよ。今の時代の流れとしてありますけど、「アップデート前なのでボリューム少ないです」って言われても、それは制作者側の都合じゃないですか。プレイヤーからすると「最初から全部入れとけよ!」って話で。でも、そういう時代なんですよね。
目指すは“当たり前”のゲーム制作ツール―Flash文化とインターネット黎明期への想い
――私もいちユーザーとして、とてもよくわかります(笑)。『MAKER』は、「野田AI」と “対話するだけ”で誰もがゲームクリエイターになれる可能性を秘めていますが、実際にこのゲームがきっかけで「インディーゲームを作ろう」というユーザーの声を聞いたことはありますか?
野田さん:まだ発売から1年も経っていませんが、将来的に『MAKER』でゲームを作った経験が、本格的なゲーム制作に結びついたというユーザーが現れたら嬉しいですね。
僕はFlash系の影響が大きいのですが、そのFlashがサービスを終了してしまった今、代わりのツールとしてかつてのように『MAKER』で気軽に作ってもらえたら。当時は個人でプログラミングを学ぶか、Flashでゲーム作るかの2択みたいな感じだったので。
究極的には、ゲーム会社がCMで「このゲームはUnityで作りました」なんて言わないのと同じで、『MAKER』がゲームを作るためのツールのひとつとして、当たり前の存在になれたら一番嬉しいです。
――『野田ゲー』シリーズ公式サイトがインターネット黎明期のようなデザインになっているのも、Flashのお話と通じるものを感じます。若い『野田ゲー』プレイヤーには伝わらないネタかもしれませんが、あえてあのデザインにしようと思った理由はなんですか?
野田さん:あれもレトロブームと同じ感覚ですね。そろそろ平成初期から中盤くらいのインターネットを懐かしいと思う時代かなと。僕が初めてホームページを作った「魔法のiらんど」とか、匿名掲示板でレスバトルしていた頃の、僕の思い出が詰まっています。

ボカロ、次世代機……尽きない探求心と『野田ゲー』、そしてインディーゲームの未来
――ご自身の趣味といえば、「ボーカロイド」もお好きでいらっしゃいますよね。ボーカロイドは誰でも音楽クリエイターになる可能性を秘めているソフトウェアですが、今後『野田ゲー』にボカロ要素を取り入れる考えはありますか?
野田さん:一度試そうとしたことはあるんですよ、「野田ボカロ」。僕の声をユーザーが自由に読み上げてくれるソフトが『MAKER』に入ったら面白いなと思ったんですけど、ボカロはそんなに甘くなかった(笑)。断念しましたが、いつかは実現したいですね。
――野田さんのお声がすごく好きなので、期待しています! 野田ボカロだけでなく、『野田ゲー』シリーズ第4弾の構想はありますか?
野田さん:『MAKER』は特定の『野田ゲー』第◯弾に入るものではなく、この先もずっとアップデートしていくものです。まずは大型アップデートとなる「バージョン2.0」を盛り上げていきたい。それとは別にBitSummitで大会も開催した『つり革』のように、今後のモバイル展開も考えています。
その中でも、一番はニンテンドースイッチ2で何ができるかを探っていきたいですね。まだどうやって開発できるのかもわかっていませんが、できることは多そうなので。
――BitSummitはまさに“インディーゲームの祭典”ですが、昨今、インディーゲームとそうでないゲームの垣根が曖昧になっているとよく感じます。野田さんはインディーゲーム好きでもあられますが、この変化についてどう思われますか?
野田さん:「インディーの定義」は、僕もずっと尋ねているくらい難しい問題です。元々は個人開発を指していたと思いますが、今や全てを1人で作っている人はほとんどいない。だからといって数十人規模で作っていたらインディーじゃないのかと言われても、そういうわけではなさそうな気もしてきちゃいます。
お笑いで言う「地下芸人」みたいなもので、明確なバッジがあるわけじゃなく、雰囲気でインディーと語られることが多い。だから、無理に明確にしなくてもいいんじゃないかなと思います。ゲームのデザインやスタイルの話として捉えればいいのかなと。難しい話ですよね。
ただ、こういうBitSummitのようなイベントが、ある種の“定義”を作っていくんだろうなとは思います。ここに置いてあるのがインディーゲームなんだ、という。
――BitSummitも、年々注目度が増しています。どんどん市場規模が拡大しているのも、まさに『MAKER』のようにゲーム開発への参入の入口が低くなったからですね。神谷さんとの対談ステージでは、「吉本ではゲーム開発者を募集中です」ともおっしゃっていましたが……。
野田さん:結局、僕は“青春”したいんですよ。お金を渡して「作ってください」という関係性じゃなくて、同僚として一緒に切磋琢磨したい。時には喧嘩もして、完成したらみんなで握手して「良かったね」って言えるような、そういう関係が理想なんです。
――実現できるようにお祈りしています。最後に、Game*Sparkの読者に向けてメッセージをお願いします。
野田さん:『スーパー野田ゲーMAKER』は、未来のゲームクリエイターへの“架け橋”になったらいいなと思っています。このツールをガンガン使ったら、別に「『MAKER』で作りました」なんて言わずに自分の作品として発表したっていい。そこからさらに興味を持ったら、Unityとか色々なツールに広がっていくのが一番良いんじゃないでしょうか。まずは気軽にゲーム作りに触れてみてほしいです。

――本日はどうもありがとうございました!
野田クリスタルさんが総監督を務める『スーパー野田ゲーMAKER』は、ニンテンドースイッチ向けに発売中。野田さんのゲーム業界への想いを聞いて、ゲームクリエイターへの道を切り開こうと思った方は、早速遊んでみてくださいね。本稿が少しでもゲーム業界参入への“架け橋”となれば幸いです。









