2025年7月18日から20日にかけて、京都・みやこめっせで開催された日本最大級のインディーゲームイベント「BitSummit the 13th(以下、BitSummit)」では、Serafini Productionが手掛けるホラーアドベンチャー『BrokenLore』シリーズも出展。
タイトルはGame*Sparkが過去にプレイレポートをお届けした『BrokenLore: UNFOLLOW』と『BrokenLore: DON'T WATCH』のふたつで、前者は共同パブリッシングを担う松竹ゲームズ、後者はSerafini Productionのブースで試遊台が用意され、連日に渡って世界中のゲームファンが詰めかけました。
そんなBitSummit会期中に、Game*SparkではSerafini Productions代表のセバスティアーノ(Sebastiano Serafini)氏へインタビューを実施。イタリア出身で5か国語を操り、モデル、ミュージシャン、そしてゲームデザイナーと多方面に活躍する同氏の考えから、2025年に精力的な展開を見せる『BrokenLore』シリーズに纏う独特の魅力を紐解いていきましょう。

出演者も直面している問題だから……繊細なテーマを選択した理由
ーーまずは『BrokenLore: UNFOLLOW』を中心にお話しいただきたいのですが、本作で“いじめやSNSによる精神衛生への悪影響”という、繊細なテーマを採用した理由はなんでしょうか?
セバスティアーノ氏:ゲームに出演してくれているインフルエンサーのAkidearestさんを含めて、私の周りの友達が直面していることだからです。彼らにはたくさんのファンがいるものの、同時にストレスも抱えています。
SNSでのポストに対して、いくら好意的なコメントが寄せられても、そのなかに悪意のあるコメントが紛れていれば、投稿主に残るのはネガティブな感情になってしまうものです。
そして、最近の若者のなかで起きていることですが、SNSを通して自分より豊かな人生を送っているような人を目にしてしまうわけです。それが問題の種になることも少なくありません。そのような“表面上では見えない恐ろしさ”は、他のメディアでは難しいですがゲームでなら表現できると考えました。
ーー確かに、SNSを通じて他人の生活が羨ましいと感じてしまうことはありますね。
セバスティアーノ氏:羨ましく感じるポストは、その人が実際に送っている生活ではなく、見せたい一部を切り取ったものに過ぎません。しかし、見ている側にその意識がないから「私より幸せそう」「私も追いかけなきゃいけない」という思考になって、“他人と比べながら生きる世界”を作り出してしまいます。
ーーそういう問題に直面されているインフルエンサーを、実際にゲームに登場させようと考えた経緯は何ですか?
セバスティアーノ氏:もともと、そういった問題に直面しているインフルエンサーを起用することで、彼らの目線を通してリアルなゲーム体験を提供できると思ったからです。主人公は実在の人物をモデルにしていませんがね。
『BrokenLore』が放つリアリティある“恐怖”の源とは?
ーーテーマの奥深さは一貫しつつ、『BrokenLore』シリーズの魅力はリアリティのある恐怖体験ですよね。そのこだわりについても訊かせてください。
セバスティアーノ氏:こだわりについては、アピールしたいポイントを落とし込んだデザインを徹底している点でしょうか。例えば、ずっとお腹を空かせている首が長いクリーチャーがいるのですが、それは“摂食障害”を表現しています。ゲームはキービジュアルから始まるものなので、そこはよく練り上げるようにしています。
それと、僕は日本の妖怪が好きなんです。だからこそ“引きこもり”をテーマにした『BrokenLore: DON'T WATCH』では、百目を登場させました。人目を浴びるのが嫌な引きこもりにとって、最も恐ろしいクリーチャーだと考えたからです。ただ怖いだけではなくて、特定の人に刺さる恐怖というものを意識してデザインしています。

もうひとつ大事なのは、『BrokenLore: DON'T WATCH』ではゲーム序盤でクリーチャーが現れないことです。その代わりに、主人公を取り巻く問題を見ていくことに恐怖を感じられるようになっています。そのようにして、ゲームが伝えたいテーマやメッセージをプレイヤーに印象付けるようにしているんです。
ーー『BrokenLore: DON'T WATCH』に登場した百目しかり、日本の妖怪に触れたきっかけはどのようなものですか?
セバスティアーノ氏:昔の作品になってしまうんですけど「ゲゲゲの鬼太郎」や「妖怪人間ベム」、それと「犬夜叉」など(笑)。あとは大学で勉強していた「源氏物語」などを通してですね。
最近は「百々目鬼」という妖怪が気になっていて、今度ゲームに登場するかも……!です。なにか悪いことをすれば、自身の身体に悪いことが返ってくるというのが恐ろしいですよね。
ーーそれは期待してしまいますね……!話は変わりますが、『BrokenLore』シリーズとして今後の展望はあったりするのでしょうか?
セバスティアーノ氏:例えば『SIREN』シリーズのように、一度ゲームクリアできれば大体のストーリーが掴めて、さらに細かく把握したければシークレットエンディングを目指す……という風に、個々の視点や人間関係を繋ぎ合わせることでストーリーの全貌が見えてくるような作品づくりを、これからも『BrokenLore』のコンテンツをたくさんリリースしていくなかで展開していきたいです。
ーー作品づくりといえば、直近では『Ghost Frequency』も手掛けられていましたよね。
セバスティアーノ氏:『Ghost Frequency』は2~3週間で作られたゲームなんです(笑)。あるYouTuberと僕の友達が中心になって立ち上げたPIT GAMESが進めていたもので、実はSerafini Productionsとしては大きく関わっていません。『BrokenLore』と比べれば、少ないリソースで作られた作品なので、あそこまでウィッシュリストに追加されるとは思っていませんでしたね。
ーーとはいえ、想定以上の反響はあったわけですよね。今後もそのような作品のパブリッシングだったり、積極的にサポートをしていったりという考えはありますか?
セバスティアーノ氏:いまはパブリッシングに関して松竹ゲームズさんと連携していて、すごく合っているので……としか言えないですね。
ーーなるほど。『BrokenLore』シリーズは松竹ゲームズとの共同パブリッシングをされていますよね。
セバスティアーノ氏:日本の妖怪をはじめ、歌舞伎や能などの日本の伝統芸能を大学で勉強していて、日本の芸能界で働いていたこともあったので、もともと“松竹”という会社について認知していたんです。なので、同社が松竹ゲームズというブランドを手掛けていると知ったときは驚きました。
ーー同社から得られるサポートについては、どう捉えていますか?
セバスティアーノ氏:すごく歴史ある会社なので、一緒にやっていることで日本社会から信用を得られます。それと、確立されているホラーゲームというジャンルにおいて、取り扱うテーマや制作方法などで既存作品とは異なるアプローチをしている『BrokenLore』シリーズは、伝統ある組織のなかで、新しい取り組みをしている松竹ゲームズさんとマッチングしていると思います。
ーーそして今回のBitSummitでも、松竹ゲームズのブースで『BrokenLore: UNFOLLOW』を出展されていました。ユーザーの反響はいかがでしたか?
セバスティアーノ氏:良かったと聞いています。私から実態を言えないのは、ほとんどミーティングエリアから離れられないからです(笑)。なかには私を探してくれる人もいるそうなのですが、会えないのがすごく悲しいですね。
「FOLLOW」と「UNFOLLOW」には大きな違いがある
ーー新作ゲームについて新たにお話できることはありますか?
セバスティアーノ氏:直近でリリースを予定しているのは『BrokenLore: FOLLOW』『BrokenLore: UNFOLLOW』です。「FOLLOW」と「UNFOLLOW」には大きな違いがあるのですが、ほとんどの方が気づいていないようです。
ネタバレになってしまうのでハッキリと言えないのですが、「UNFOLLOW」の「UN」を主人公のアン(Anne)に置き換えると、アンの「FOLLOW」になりますよね。そしてそれらには「LOW」という単語も含まれています。そういう細かな要素から2タイトルの違いが推理できるはずです。
ーーそのようなダブルミーニングがタイトルに込められているのですね。多角的な展開を仕掛けている『BrokenLore』だからこそのアプローチに感じました。
セバスティアーノ氏:私がもともと作ろうとしていたのは単発企画で、ハロウィンに合わせて、マネジメントしているインフルエンサーが出演する作品を作ってみようと思ったのがゲーム制作の始まりだったんです。それがまさか『BrokenLore』シリーズとして、フランチャイズ規模にまで広がるとは思っていなかったですね。
それも日本のプレイヤーが遊んでくれるおかげでもあるので感謝しています。私は人生のほとんどを日本で過ごしたので、舞台だったり設定だったり、毎日見てきた日本のエッセンスが詰まった作品をこれからもリリースしていくと思います。
ーーゲーム制作において“知り合いが出演する”というのは、セバスティアーノさんにとって大事な要素なのでしょうか?
セバスティアーノ氏:そうですね。ちゃんと演技ができる人なら、ですが(笑)。
ーー(笑)。個人的には、そのスタイルにゲームクリエイターの小島秀夫さんとの類似性を感じました。
セバスティアーノ氏:それは怒られるかもしれない(笑)。友人の多くは「ゲームに出たい!」と思ってくれますし、僕も「出したい!」と思っているのが一番の理由ですね。友人だから出演料が高額でないという側面もあります(笑)。
とはいえ、その代わりにできることは協力するようにしていますね。例えば、僕は『BrokenLore: DON'T WATCH』のエンディング曲など作曲活動もしているので、そういう形で彼らのサポートをすることもあります。

ーーありがとうございます。今後のスケジュールとしては『BrokenLore: FOLLOW』『BrokenLore: UNFOLLOW』の2025年内リリースが決まっていますが、現在の開発状況はいかがでしょうか?
セバスティアーノ氏:続報については、「東京ゲームショウ2025」のタイミングで発表できると思います。コンソールでも同時リリースする予定で、対応機種はPS4/PS5/Xbox Series X|S/Xbox Oneです。
ーー東京ゲームショウに合わせての発表はとても楽しみですね!最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
セバスティアーノ氏:まずはGame*Sparkさんへ。毎回記事を書いてもらっているのでありがたく思っています。新しいプレスリリースを送るときは、ちゃんと書いてくれるのかな?っていつもドキドキしているんですよ(笑)。
ゲームファンの方々に向けては、いつもアクティブにゲームを遊んでくれてありがとうございます。これから私たちが手掛けるゲームがたくさんリリースされるので、ストーリーをぜひ最後まで楽しんでほしいです。また東京ゲームショウ2025でお会いしましょう!

セバスティアーノ氏率いるSerafini Productionsが開発を手掛ける『BrokenLore: FOLLOW』『BrokenLore: UNFOLLOW』は、Steam/PS4/PS5/Xbox Series X|S/Xbox One向けに2025年内のリリースを予定しています。続報については、2025年9月25日から開催される東京ゲームショウ2025に合わせての発表を待ちましょう。














