作曲家・たなかひろかず氏が貫く“レジェンド”たる流儀とは?『MOTHER』からインディーまで、楽曲制作の本質を語る独占インタビュー【BitSummit the 13th】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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作曲家・たなかひろかず氏が貫く“レジェンド”たる流儀とは?『MOTHER』からインディーまで、楽曲制作の本質を語る独占インタビュー【BitSummit the 13th】

「BitSummit the 13th」の会場で、レジェンド作曲家・たなかひろかず氏へ実施したインタビューをお届け!

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作曲家・たなかひろかず氏が貫く“レジェンド”たる流儀とは?『MOTHER』からインディーまで、楽曲制作の本質を語る独占インタビュー【BitSummit the 13th】
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「BitSummitのフィナーレを飾る!Musical Performance『Chip Tanaka』」でのたなか氏

日本最大級のインディーゲームの祭典「BitSummit the 13th(以下、BitSummit)」が、2025年7月18日から20日にかけて京都みやこめっせで開催されました。

Game*Sparkでは、同イベントにて『MOTHER』『メトロイド』『バルーンファイト』といった数々の名作ゲームのほか、アニメ「ポケットモンスター」の誰もが知る国民的アニソン「めざせポケモンマスター」など、世代を超えて、長く愛される楽曲を世に送り出してきた作曲家・たなかひろかず氏への単独インタビューを実施!

氏の音楽的ルーツであるレゲエとの出会いや、任天堂時代にサウンドエンジニアから作曲家へと至った経緯、そして厳しいハードウェアの制約下でのBGM開発への姿勢について、深くお話を伺いました。

また、インタビュー後にはDJ「Chip Tanaka」としてステージイベントに登壇し、BitSummit会場を大いに沸かせたたなか氏。現在の活動の手応えや、インディーゲームへの関わり方など、レジェンドの“今”に迫ります。

レゲエ、そして任天堂時代―音楽制作の原点

――本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、たなかさんの音楽的ルーツはレゲエと知られていますが、やはりご自身の中で一番大きいのはレゲエでしょうか?

たなか氏:そうですね。ロックも感情的ですが、レゲエにはもっとプリミティブな、根源的なエネルギーを感じたんです。

もうひとつ大事なのが、レゲエが世界的に盛り上がったのが1970年代の終わりから80年代にかけてということ。そのエネルギーが世界に放たれていくタイミングと、自分が20代でエネルギーに満ち溢れていた時期が、すごく合っている気がしたんです。

僕より少し上の世代がロックンロールに影響されたり、下の世代がヒップホップに感化されたりするように、自分の若いエネルギーがある時に出会った音楽に影響されるのだと思います。僕の場合は、レゲエが世界に広がっていくのと同時に、自分も社会に出て仕事をしていく、そのエネルギーのある時代とがっちり重なったのが、レゲエを好きになった大きな理由ですね。

――なるほど。では、ゲーム作曲家としてデビューした経緯をお訊きしたいです。

たなか氏:任天堂に入社した当時は作曲家としてではなく、サウンドエンジニアとして入りました。もともとは効果音のハードウェア設計などをやっていたんです。昔のゲームはそこまでリッチな音楽は必要とされていませんでしたから。

そこからファミコンが登場して、ゲームの世界がどんどん大きくなっていく中で、「お前、曲も作れるんじゃないの?」と言われるノリになってきて、楽曲も手掛けるようになりました。ファミコンが登場する前は、ゲームの音なんて「ピコピコ」だけだったのが、一気に世界が広がったわけです。

――ファミコンやゲームボーイ、アーケード版『ドンキーコング』など、当時はハードウェアの制約が非常に厳しかったと思います。その中での開発の面白さや、難しさはどのような点にありましたか?

たなか氏:それは仕事なので、特に困ったとか大変だとかいう感覚はほとんどないですね。例えばカレー屋さんをやるのに、100グラム2,000円の肉は使えないのと同じです。決められた条件の中で何を使うか、どうやってゲーム機を実現するかを考える。値段の制約があるのは当たり前なんです。

このゲーム機を1万円で売るなら、原価を何円以内に抑えなければいけない、といった計算が先にありますよね。その制約の中で、どうやって面白いものを作っていくかが我々の仕事でした。

周りの方からは「大変でしたね」と言われますが、それが仕事ですから。安いものを作るのが仕事なのではなく、売りたい値段より安く、かつ良いものを作るのが僕らの仕事なんです。

――まさにプロフェッショナルのお仕事ですね。たなかさんはこれまで『パルテナの鏡』や『メトロイド』『MOTHER』など、数々の名曲を手がけてこられましたが、特に思い入れの深いゲームや楽曲はありますか?

たなか氏:うーん、特にこれ、というのはありませんが、やはり『MOTHER』は制作に時間がかかりましたし、大きな経験でしたね。

それまでの作品は基本的にすべて社内で作っていたのですが、『MOTHER』はエイプという会社で、糸井重里さんをはじめ、たくさんの社外の人たちと出会い、東京で作りました。これまでとは全く違う環境で作ったという意味で、非常に印象深いんですよ。

「BitSummitのフィナーレを飾る!Musical Performance『Chip Tanaka』」でのたなか氏

DJ、そしてインディーゲームへ―今なおレジェンドとして走り続ける創作への情熱

――ありがとうございます。私にとっても、『MOTHER』はたなかさんをさらに好きになる、大きなきっかけのゲームです! 現在はDJ「Chip Tanaka」としてもご活躍中で、「フジロックフェスティバル」にも出演されています。現在の活動の手応えはいかがですか?

たなか氏:フジロックに出演できたのは大きな経験でした。もちろん、今をときめくアーティストたち……例えばKing Gnuのように、たくさんの人が集まるわけではありませんが、作曲家としての活動と並行して、こうして自分の活動ができるのはありがたいです。

来月もライブの予定がありますし、こうした大きなイベントに呼んでいただくこともあります。若い人たちの前でパフォーマンスできるのは、本当に光栄なことだと感じています。

――そんなBitSummitはインディーゲームの祭典ですが、出展している『Awaysis』では楽曲を提供されています。これまでの任天堂のタイトルとは違い、インディーゲームは売れるかどうかが未知数な部分も大きいかと思いますが、作曲する上での方針は変わるものなのでしょうか?

たなか氏:いえ、そこは全く区別していないですね! 大事なのは、ゲームディレクターが「こんな風にしてほしい」という要望に、きちんと応えることです。それは仕事の基本ですから。

任天堂のタイトルが何百万本売れるのに対して、インディーゲームはそこまでいかないかもしれない。でも、100本しか売れなくても成り立つ仕事だってあるわけです。そのゲームのファンがいて、楽しんでくれて、その対価で僕らの仕事が成り立っている。数の大小ではなく、その本質は何も変わりません。だから、作る上での区別は全くしていませんね。

――たなかさんがレジェンドと称されるわけですね。本日は大変貴重なお話をありがとうございました!


レジェンドと呼ばれ、国民的な楽曲を生み出しているたなかひろかず氏。Chip TanakaとしてBitSummitの会場を盛り上げた際、客席は満席ですさまじい集客率となっていました。公式YouTubeでは、そんなChip Tanaka氏のステージが見られるアーカイブも公開中です。

またGame*Sparkでは、インタビュー中にも登場したChip Tanaka氏が作曲参加している『Awaysis』のBitSummitにおける試遊レポート&開発者インタビューも掲載しています。たなかさんファンは必見のゲームなので、あわせてチェックしてみてください。



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ライター/編集:八羽汰わちは




ライター/多趣味オタク 八羽汰わちは

はちわたわちは(回文)Game*Spark編集部員、デスク担当。特技はヒトカラ12時間。

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