7月15日、Steamで19世紀アメリカ飲食店経営シム『Saloon Simulator』の配信が始まりました。

時は南北戦争直後。とあるきっかけで莫大な借金を抱えてしまった主人公は、町のサルーンの店主として働くことになります。ここには地元住民だけでなく旅行者やカウボーイ、保安官、そして流れ者の犯罪者もやってきます。そんな彼らに酒や食事を提供しながら、犯罪にも手を染めていくというオープンワールド一人称シミュレーターです。
Steamでは「非常に好評」と評価されているこの作品には、西部開拓時代のアメリカが細かく描写されています。
東から西へ進んでいった白人たち

19世紀後半のアメリカは、白人が先住民を追い散らしながら西へ西へと開拓地を広げていった時代です。
この時代、既に西海岸のカリフォルニア州はアメリカ合衆国に組み込まれていました。しかし、アメリカの東から西への移動に陸路を選択した場合、それは先住民の居住地を横断するという意味を含んでいました。白人にとって、これは(自業自得とはいえ)命懸けです。殺意満々の先住民が荷馬車を襲撃してきます。
最も安全なのは、東海岸から船を使って移動する手段。しかし、この時代にはパナマ運河がまだありません。南米大陸最南端のマゼラン海峡をぐるりと回るしかなく、カリフォルニア州へ着くには何ヶ月もかかってしまいます。
そうした問題を解決するため、合衆国の白人たちは西部のさらなる開拓を実行しました。
1860年4月から翌61年10月まで、ミズーリ州セントジョゼフからカリフォルニア州サクラメントまでの約3,000kmのルートをつなぐ速達業者「ポニー速達便」というものがありました。できるだけ若くて体重の軽い騎手が馬で重要配達物を運ぶというもので、途中には180もの中継地があり、そこを駅伝方式でリレーしていく仕組みのサービスです。1960年のアメリカ大統領選挙の結果を東から西へ伝えたのも、このポニー速達便でした(カリフォルニア州へ速達が到着するのに1週間かかっています)。
そんな勇猛果敢な配達業者がたった1年6ヶ月でサービスを終えた理由は、西部の開拓が進んで電信拠点が設けられるようになったからでした。言い換えると、合衆国の白人たちは電信や鉄道網を敷くために西部の先住民居住地を我が物にしていったのです。
バーテンダーの仕事って、すっげぇ面白い!

常に銃を腰からぶら下げている数百人数千人の荒くれ者が、馬に乗って土地から土地へ駆け回っていたのがアメリカの西部開拓時代と言えます。そんな荒くれ者共が活動の拠点にするのが、どの町にも必ず一つはあるサルーンでした。
「町」といっても、日本のような市街地を連想してはいけません。日本の町や集落は、魚の鱗のように常に隣接し合っていて、その隙間は殆ど見当たりません。しかし、アメリカの町とは「隣町まで街道を車で2時間」という具合です。町の郊外は何もない砂漠か草原で、それ故に町のサルーンとは旅人にとってはオアシスのようなもの。
「おいオヤジ、ウイスキー&サイダーを作ってくれ。比率は2:1、氷を入れてマドラーでかき混ぜろ」

カウボーイにそう言われ、店主は言われた通りの配合の飲み物を作っていきます。ウイスキー2オンス、サイダー1オンス、氷を落としてマドラーでかき混ぜて……。そうした作業を、ゲーム内で一から実施できます。
これがすっげぇ面白い!

飲み物を入れるグラスにも種類があり、最初のうちは標準的な大きさのグラスとショットグラスの2種類。大きなグラスでウイスキー&サイダーを飲んだあと、ショットグラスでウイスキーをストレートであおる……というカウボーイも珍しくありません。こ、これが本場のカウボーイの生態なのか!?
このままサルーンの経営だけでもいいんじゃね?

サルーンにやって来る客の大半は荒くれ者。そのため、店内では喧嘩もしょっちゅう起こります。
負傷してぶっ倒れた客を近所のクリニックに運んだり、運悪く天に召された奴を棺桶の中に収めてやるのも店主の仕事。床についた血は、雑巾で綺麗に拭き取りましょう!

サルーンの仕事をしながら曰く付きの死体を隠蔽したり、バールを持って荷馬車を襲撃したりしてお金を稼ぎ、借金を返していく……というのがこのゲームの大まかな流れですが、ただ単にお客に酒を提供するだけでも結構面白い! その合間に料理を作って作り置きすれば、テーブル席に腰を下ろしたお客に食事を出すこともできます。
彼らが一度の楽しみに出すお金は、せいぜい20セントとか15セントといったところで、サルーンの仕事ではドカンと稼ぐことはできません。しかし、飲食店シムとしては本当によくできているため、筆者は時間を忘れてバーテンダー稼業に没頭してしまいました。

Steamのレビューには「お客がひっきりなしに来るせいでストーリーをなかなか進められない」という声もありますが、筆者はこれくらいがちょうどいいと感じています。バーテンダーの仕事、本当に楽しい!!

そんな『Saloon Simulator』は、PC(Steam)で2,100円で販売されています。
日本語対応はまだ施されていませんが、中学校で習う程度の英語力があれば何とかプレイできると筆者は感じています。あまりに暑過ぎる2025年の夏を自宅で過ごす上で、ちょうど良い相棒になり得る良作です。













