【終戦80年】戦前・戦中・戦後の「理不尽」を描いた戦争題材ゲームをプレイしてみた | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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【終戦80年】戦前・戦中・戦後の「理不尽」を描いた戦争題材ゲームをプレイしてみた

戦後80年。言い換えると、たった80年前の日本は地獄の世界大戦の只中にあったということでもあります。

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戦後80年。言い換えると、たった80年前の日本は地獄の世界大戦の只中にあったということでもあります。

近代以前、戦争の当事者は常に貴族か職業軍人でした。しかし、「一般市民を計画的に徴兵する」という仕組みがヨーロッパで確立されると、戦争は次第に「総力戦」の形になっていきます。日本人にとって、第二次世界大戦はそれまでに経験したことがないほど大規模な総力戦。そして、日本はその総力戦に敗北しています。

「全国民が一丸となって戦う」ことが標榜された総力戦は、しかし矛盾と理不尽のつぎはぎが施された奈落の光景でもありました。「総力戦の本場」ともいえるヨーロッパでは、戦争へ向かう国民の熱狂と開戦、戦火により破壊、そして荒廃した都市の復興までをワンセットとし、それが何度も繰り返されてきました。

近代以降の戦争とは、理不尽が新たな理不尽を呼ぶ現象です。

今回は第二次世界大戦のヨーロッパを舞台にした3本のゲームをプレイしながら、戦前・戦中・戦後の「理不尽」を体験していきたいと思います。

レジスタンスになってナチスに抵抗する『Through the Darkest of Times』

Through the Darkest of Times』は、ナチス時代のドイツにおける、レジスタンスの活動を率いて様々な妨害工作を行うという内容のゲームです。

1933年、アドルフ・ヒトラーが首相に就任すると、それまで「理想的な民主主義国家」と言われていたワイマール共和制ドイツは一変しました。思想や言論、表現の自由は一切なくなり、国政議会も様々な主張を繰り広げる多数の政党は活動停止に追い込まれます。一党独裁時代の始まりです。

それに反対の声を挙げ、ドイツ市民に「ナチスの危険性を伝える」のが『Through the Darkest of Times』の主人公の目的です。

印刷用紙を購入し、それを使ってポスターを生産して市内に貼っていく……と、言葉にすれば非常に簡単です。しかし、ナチスが恐れるのは、自分たちとは思想の異なる者が紙を入手すること。それに対しても秘密警察ゲシュタポの監視の目がつきます。

また、どのような行動をするにしても必ず資金が必要に。それを秘密裏に開催した集会でカンパという形で集めていくのですが、あまり活発にレジスタンス活動をするとゲシュタポの家宅捜索に遭い、真夜中にコートの男が自宅のドアをコンコンとノックする……という恐怖の光景が繰り広げられてしまいます。令状なしの逮捕や家宅捜索は、独裁国家では当然のように行われるのです。

こういった理不尽に対抗するためのレジスタンス活動ですが、一方でこの活動がナチスとヒトラーに、どれだけのダメージを与えているのかは誰にも分かりません。

というより、冷静に考えてみると、このゲームの中で行われるレジスタンス活動は象の皮膚に縫い針を突き刺すようなもので、少々の痛みは与えられるだろうけれど象を倒すまでには絶対に至らない……という程度。では、なぜここまでして命懸けのレジスタンス活動をしているのか? この活動に足を突っ込むこと自体が、新たな理不尽ではないのか?

そのようなことを、プレイヤーはゲームの最中につい思案してしまうのです。

空軍の支援なしで連合国の艦隊と戦う『UBOAT』

戦前に芽生えた理不尽は、国民の熱狂的な支持の下で始められた戦争においても……いえ、戦争が始まったからこそさらに肥大化していきます。

潜水艦戦闘シム『UBOAT』にも、そうした理不尽が描かれているのです。

このゲームを1939年、即ち開戦当日からプレイしていくと、潜水艦に搭載されるテクノロジーが日を追うごとに進化していく様子が窺えます。当初は目視と他の艦からの通信だけで知るしかなかった敵輸送船団の位置も、高性能レーダーを搭載することにより、迅速に察知することができるように。

ですが、最先端の技術を研究しているのはイギリス軍やアメリカ軍も同じ。Uボートの位置を確実に捉えるソナー、飛行機に搭載された照明装置リー・ライト、そしてロケット推進の爆弾……。次々と投入される新兵器が、プレイヤーに襲いかかります。

ただし、それ以上に辛いのが「敵の戦闘機や爆撃機はやって来るのに、味方の戦闘機はまったく見かけない」という理不尽な仕様です。

もっとも、これは史実通りの描写で、特に大戦中期以降は、ビスケー湾でも北海でも地中海でもドイツ空軍は制空権を失っていきます。Uボートの乗組員から見れば、空を飛ぶものはみんな敵の飛行機という状態です。「太っちょゲーリングは何やってるんだ!?」と悪態をつきたくなる状況が、終戦まで続きました。

あれだけ国民の大歓声に後押しされて始めた戦争なのに、いざ始まってみると友軍との連携が全く取れていないという状況。こちらが窮地に陥っても、誰も助けてくれません。これが戦時中の兵士を襲った理不尽です。

戦争で荒廃した都市を復興する『WW2 Rebuilder』

理不尽は終戦後も続きます。

戦争が終わると、爆撃や砲撃、市街戦闘で荒廃した街を復興させる仕事が生き残った人々を待っていました。もはや残骸と化した建物を撤去し、限りある資材で新しい建物を作っていくという作業です。これを再現したのが、『WW2 Rebuilder』というゲーム。

瓦礫を撤去し、そこから使える材料を取り出し、レンガの壁を組んだり線路を直したり、新しい高層建築物を建てたり……ということをひたすら行う内容です。時には不発弾を処理しなければならないことも。

ジャンルとしては建築を楽しむビルダー系ゲームに組み込まれるかもしれませんが、『WW2 Rebuilder』には例えば『マインクラフト』にあるような「こんな立派な建物を時間をかけて作った!」という爽快さは一切ありません。

あるのは、「何で自分はこんな辛くて地道な作業をしなきゃいけないんだ?」という疑問と苦痛です。

輸送中の弾薬の爆発事故で破壊された駅を修復する作業も、「駅がこんなに綺麗になった! 万歳!」ではなく、「軍の愚かな判断が駅を破壊した。これは避けられた事故だ」という思いばかりが浮かび、ゲーム内容もその感情を後押しするかのように「事故が発生した時の回想」を容赦なく差し込みます。

プレイヤーがやることは、言い換えれば「理不尽の後始末」です。そこに達成感は生まれず、ただただ「破壊される前の街並みはこんな感じだったのかな」と、灰色の想像を巡らせることしかできません。

NHKの今期朝ドラ「あんぱん」と共通するメッセージ性

以上、戦争がもたらす理不尽が十二分に描写されている3作品を紹介しました。

これらの作品に込められているメッセージ性は、現在NHKで放送されている連続テレビ小説「あんぱん」に共通するものがあると考えているのは筆者だけでしょうか。

「あんぱん」は、それまでの朝ドラ以上に「戦争の描写に力が入れられている」と評価されています。日中戦争や太平洋戦争だけでなく、何と第一次世界大戦の西部戦線の戦場も描かれていました。

ヒロイン「朝田のぶ」の実家でパン屋を開業した「屋村草吉」ことヤムおんちゃん(演者は阿部サダヲさん)は、若い頃にパンづくりの修行のためにカナダに渡航。しかし、待っていたのは日本人義勇兵になり、地獄の欧州大戦にイギリス兵として送られるという残酷な運命を持っているキャラクターです。

「俺の周りには、撃たれて動けない仲間が大勢いた。助けなんか来ねぇ。どんどん死んでった」

第一次世界大戦の日本は早々に戦略目的を達したため、殆どの日本人は総力戦の惨禍を経験せずに終わりました。その中でヤムおんちゃんは、西部戦線の塹壕の中で総力戦がもたらす破壊、矛盾、そして理不尽を骨の髄まで味わった数少ない日本人だったのです。

ヤムおんちゃんがその到来を危惧した「理不尽の波」は、日本列島を廃墟にしてしまいました。

我々現代日本人は、そんな恐るべき「理不尽の波」を食い止める知恵や知識を獲得するに至ったのか――。80年前の廃墟の光景は、今も我々に重大なことを問いかけ続けます。


あんぱん

(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
賜物 あんぱん 主題歌 Tamamono / RADWIMPS (Piano Version)

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ライター:澤田 真一,編集:八羽汰わちは

ライター/ゲーム×社会情勢研究家です。 澤田 真一

「ゲームから見る現代」をテーマに記事を執筆します。

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編集/多趣味オタク 八羽汰わちは

はちわたわちは(回文)Game*Spark編集部員、デスク担当。特技はヒトカラ12時間。

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