『龍が如く8外伝Pirates in Hawaii』は伝説の極道・真島吾朗(記憶喪失中)がハワイの海賊となって財宝探しをするという、一見何を言ってるのかよく分からない筋書きですが、『極2』以来のプレイアブル「狂犬」で好き放題暴れられればそんな細かいことはすぐにどうでも良くなるでしょう。


ゲームはハワイ諸島の各地で見つかる宝物を回収するトレジャーハンティングがメインコンテンツですが、過去の記録を手がかりに埋蔵物を探し当てるトレジャーハンターは現実でも活動があり、沈没船から財宝を発見した人も少なからずいます。日本国内では徳川埋蔵金を長年追っている八重野充弘氏が有名ですね。一般的には一攫千金を狙ってお宝は山分け、なんてイメージが先行していますが、実際にそこに至るまでは複数の大きなハードルが待ち構えています。

まず陸上のどこかに埋まっている遺物を探す場合、土地の所有者に許可を得て発掘しなければ盗掘となるため、こっそり掘り出して独り占め、なんてことはやってはいけません。そして日本の法律上「お宝」……すなわち相続者がいないと見做される埋蔵物を発見した場合は、普通の落とし物を拾ったときと同様の「遺失物」として扱われるため、速やかに警察署へ届け出ましょう。

もしこれをせず勝手に持ち帰ったりしようものなら「遺失物等横領罪」「占有離脱物横領罪」のいずれかに問われ、発覚すればお宝は当然没収です。仮に持ち出したところで、そんな出所の怪しい物品を買い取ってくれる業者もないでしょうから、正当な権利を得るためには正当な手続きを取るのが肝心です。
基本的に半年間は警察の預かりで、相続者が名乗り出るのを待ちます。どこかの一族の末裔が出てくるなどがない限り、埋蔵品の「持ち主」が現れることはないでしょう。そのため見つかったお宝は土地の所有者と所有権を分配するのが通例です。
民法第241条
埋蔵物は、遺失物法の定めるところに従い公告をした後6箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを発見した者がその所有権を取得する。ただし、他人の所有する物の中から発見された埋蔵物については、これを発見した者及びその他人が等しい割合でその所有権を取得する。
そのため、発見した遺物を発見者単独で扱うことはできず、所有権を持つ当事者全員の同意が求められます。お宝は文化財としての価値もあるので、遺物として調査が必要になる場合もあります。お宝の周辺には少なからず過去の痕跡が残っていたりするので、基本的にはできるだけ何も動かさずに届け出するのが良いでしょう。文化財として認められれば帰属先は都道府県になり、発見者と土地の所有者で報償金を折半することでリターンを得られます。
近年では2022年に三重県の小学生が発見した遺跡が好例でしょう。少年達は山中で壷や鏡を発見しましたが、無理に掘り返さず写真だけ撮影して文化財の担当者に報告を行ないました。後日の発掘でこれらは墓の副葬品であることが判明し、平安時代の有力者が関わったと推察されています。
イギリスではこうした財宝の権利諸々を簡略化するために「財産法」を制定しています。これによると、300年以上前の貴金属や歴史的遺物は一旦全て王室の所有とし、発見者や土地の権利者は補償金という形で利益を得られます。正規の届け出さえ行なっておけば、王室の管理下で学術的な研究機関や博物館に渡り、所有権のトラブルも最小限に抑えられるというものです。

陸上ではこうした土地の所有者や調査の関係でリターンが少ないため、一攫千金を狙うハンターの多くがそれらの問題が少ない海中の沈没船を狙います。水中の場合は水難救護法に基づいて、警察署ではなく自治体への届け出を行ない、半年もしくは1年の公告期間の後は発見者単独に所有権が発生します。保管費などは自己負担にはなるものの、沈没船は収められている物品も相応の量で、持ち主が現れた場合でも1/3相当の報償金が出るのでリターンは地上よりも大きいと言えるでしょう。
一方で考古学的には水中の遺物は風化を免れている物が多く、トレジャーハントの手が入ると貴重な資料の散逸や、無理な物品の取り出しで遺構が破壊される懸念があります。国内でも水中の遺物は文化財保護法の対象にならない場合がほとんどです。
そうした「盗掘」を防止するため、2009年に発行した「水中文化遺産保護条約」によって、水没後100年以上経過した船などはむやみに引揚げることはせず、文化財として商業的に利益を出すことは禁止されました。あくまでも批准国の範囲内にはなりますが、発掘品を換金して一攫千金を狙うことは実質的に不可能になりつつあります。

かつては国家が後押ししてまで競われていたトレジャーハントも、アフリカや南米から持ち出された文化財の返還などで大きな禍根を残してしまいました。もしどこかでお宝を見つけることがあったら、余計なトラブルを生まないようまずは正当な手続きを踏みましょう。












