ゲームと一口に言ってもジャンルからプレイ時間まで多種多彩で、面白さや魅力の軸も様々です。何百時間もかけて遊ぶ作品もある一方で、数分でクリアできるものもあります。
ただし、「10分でクリアできる3Dアクション」となれば、話は少し変わってきます。例えば、ステージクリア型のアーケードライクな3Dアクションであっても、クリアまでのステージはいくつもあり、短めでも30分や1時間はかかるものがほとんどでしょう。
ところが、スタイリッシュな3Dアクションを展開する『34EVERLAST』は「ゲームループ最短10分でクリア」を掲げており、仕事で疲れて帰ってきた大人でも楽しめるようなゲームスタイルを提案しています。
公開されている映像もかなり特徴的で、果たしてどんなゲームなのかと興味を募らせていたところ、「東京ゲームショウ2025」に『34EVERLAST』が出展されると聞き、早速足を運びました。その試遊体験のレポートと、開発者であるOGAMI氏:へのインタビューを併せてご覧ください。
■疾走感にシビれ続けた10分間と、最後の画像に驚かされた試遊レポート

『34EVERLAST』は主人公の少女を操作し、3Dで表現されたステージを駆け抜けて最奥を目指すアクションゲームです。この世界自体がかなり謎めいており、ナビゲーター的な存在の「ルナ」がプレイヤーを導いてくれます。
試遊の冒頭で、ルナと会話を交わすADV的なパートもありましたが、プレイの大半を占めるのはアクションパート。遥かな高みに放り出されますが、翼のようなものを広げて飛行し、最奥に向かってまずは飛び続けます。


本作の特徴のひとつと言えるのが、この飛行も含めた疾走感。奇怪な建造物がいくつも浮かぶ空域を、驚くほどのスピードで翔け続ける速度感は相当なもので、体感ゲームではないのに見ているだけで息が詰まりそうなほどです。
もちろん、その疾走感は心地よさに直結しており、問答無用にこの世界に引き込まれていきます。また、高速移動の心地よさは空中だけではありません。空中移動の合間に降り立つフィールドでは、両足で駆け抜けるハイスピードなダッシュも味わえます。


こうした移動を繰り返して奥へ奥へと進みますが、フィールドでは敵とのバトルが発生することも。今回の試遊体験では、まず巨大な2体の敵が戦い合う状況に遭遇し、そのどちらかを倒すようルナに促されました。
バトルもスピード感があり、重さよりも速さ、そして爽快感を重視しているように感じます。攻撃のエフェクトも気持ちよく、敵の攻撃も視覚的に強調されているため、攻撃にせよ回避にせよ分かりやすく、アクションに慣れていれば戸惑うことはなさそうです。


こうした高速移動とバトルを繰り返して先に進むと、到達点らしき場所に着地。ここでギミックを攻略するとADVパートに移行し、ルナと会話した後に辿ったルートを振り返ります。
最奥に向かって進むゲームですが、ルートは決して1本道ではなく、状況に応じて展開が分岐するため、プレイを繰り返しても単調にはならなさそうです。ルート分岐も視覚化されるため、次のプレイに向けて参考にするのもアリでしょう。


また条件が整うと、この後に「ジャガーノート」と呼ばれる敵との戦いが発生します。道中の敵よりも手ごわく、残念ながら敗北を喫してしまいました。
疾走感からバトルまで濃密な体験でしたが、かかった時間は10分前後。キャッチコピー通り、短い時間で濃縮したゲームプレイを味わうことができました。

一方で、製品版全体は相当なボリュームがあることも判明。プレイ終了後、製品版で想定しているボリュームが画面に表示されたのですが、試遊版を仮に1ステージとすると、その30倍を超えるステージ数を確認できます。
確かに、1ルートのプレイはクリアまで約10分でした。しかし、『34EVERLAST』で待っている体験は10分どころではありません。短さと長さを両立しようとしている『34EVERLAST』は、果たしてどんなゲームなのでしょうか。
■「あの時に遊びたかったゲーム」が、『34EVERLAST』開発のきっかけ

―― まず最初に、『34EVERLAST』を開発しようと思った背景や着想についてお聞かせください。
OGAMI氏:僕は10年ほど鉄工所を一人で経営していて、ありがたいことに仕事は常に忙しく、帰宅するのは夜の10時や11時。土日も休めない生活が続いていました。
それでもゲームがやりたくて買ってはいたんですが、最近の作品はチュートリアルが長くて、面白いところにたどり着くまで30分や1時間かかることが多いんです。気づけば次の新作が出て、積みゲーになってしまう……。そういう「不完全燃焼感」がずっとあって。
だから、「平日の夜、寝るまでにクリアできて“やった!”と満足できるゲームがあればいいのに」と思ったんですが、当時はそういう作品があまり見当たりませんでした。そこで「じゃあ、自分で作ってみよう」と。
――動機はまさに「自分が遊びたいゲームを作る」だったわけですね。ただ、当時は仕事がお忙しかったと思うのですが、開発時間はどう捻出されたのですか?
OGAMI氏:ちょうどそう考えていた時期にコロナ禍がありまして、一時的に仕事がストップしたんです。そこで、「じゃあ今こそやろう」と思って。仕事用の機械を動かしながら、CAD用のPCで開発を始めました。
――コロナ禍で生まれた空き時間で、ゲームを「やる」のではなく「作る」方を選んだのですね。
OGAMI氏:そうなんです。作ってみたら思った以上に楽しくて、どんどんのめり込んでいきました。

――そこから「疲れた大人でも短時間で遊べるゲーム」というコンセプトが生まれ、『34EVERLAST』に繋がったわけですね。
OGAMI氏:働く大人にとって一番大事なのは、「終わりが見えること」だと思うんです。
このゲームを1時間遊んだらちゃんと区切りがつき、「今日遊んで楽しかったな」と思いながら気持ちよく寝られる。そんな満足感を大事にしました。
――そのために、本作は疾走感やテンポを意識されたのでしょうか。
OGAMI氏:ええ。ボスも理不尽に強いとストレスになるので、歯ごたえはありつつ基本は“快感重視”。もっとやり込みたい人向けには、複雑な分岐や謎解きを用意しました。
――実際に触らせていただいて、プレイヤーが「気持ちいい」と思えるような工夫が随所に盛り込まれているように感じました。疾走感やアクション表現、さらに分岐も明確になっているので、「視覚化」がひとつのテーマなのかなと個人的に捉えています。
OGAMI氏:そうですね。僕自身映画が好きで、本を読むより「見て理解できる」ほうが好みなんです。だからアクションも派手にして、何か起きているのか一目で分かるようにしました。
――誘導役のキャラクター(ルナ)もフルボイスなので、文字を読まなくても耳で聞いて理解できますしね。
OGAMI氏:そうした仕組みは『スターフォックス64』の影響が大きいんですよ。仲間が会話しながら進むテンポ感、分岐の多さ、1プレイが短いこと。あの体験を、自分なりに再現したかったんです。
――確かに、『スターフォックス』で忙しく動きながらも仲間とのやり取りが楽しめる感覚に近いかもしれません。
OGAMI氏:物語も「見ながら、同時に体験できる」ようにしています。また、どんな動きをしても自然と絵になるようにカメラが動くようにしています。プレイヤーに気づかれないようにしつつ、気持ちよくなってもらえるように。

――今回の試遊版は限られた内容ですが、製品版はどのくらいのボリュームになりそうですか?
OGAMI氏:はい。体験版の数十倍以上の内容を予定しています。大きな世界が3つあり、それぞれに分岐も用意しているので、相当遊べると思います。
――1日1プレイのスタイルだと、相当長く楽しめそうですね。
OGAMI氏:そうですね。しかも繰り返しプレイしていくとキャラクターの会話や展開が変化していきます。
ちなみに、僕自身が「忙しい時に抱えていた悩み」を3つの世界に反映させています。例えば、他人からの目線とか、親のしがらみとか、夢を諦めたこととか。そうした悩みを抱えたキャラクターが、周回を繰り返して変化していき、プレイヤーが少しずつ新しい視点を得られるようにしています。
――悩みを抱えたキャラクターが、繰り返しの中で変化していくのは、さながら「人生の縮図」ですね。
OGAMI氏:自分の経験を比喩的な世界に置き換えているので、キャラクターたちの選択や答えを見届けてもらえればと思います。

――忙しい人にとっては短時間で遊べて、長く遊べば新しい視点を得られる。長短それぞれのサイクルで楽しめる仕掛けが、『34EVERLAST』に仕込まれていると。
OGAMI氏:1日のサイクルでは気持ちよく終わり、長く遊ぶことで別の発見がある――そんな二重の楽しみを提供したいと考えています。
――製品版の完成が楽しみです。これからリリースまでの間に、ブラッシュアップしたいポイントなどはありますか。
OGAMI氏:アクションと謎解きがまだ中途半端なので、コンセプトに沿って磨きたいです。あとは、分岐の存在も分かりやすく提示していく予定です。
――それでは最後に、本作を待っているファンへメッセージをお願いします。
OGAMI氏:発表から長く時間がかかってしまい申し訳ないのですが、その分、非常に厚みのある作品になっております。ぜひご期待ください。
――本日はありがとうございました。

『34EVERLAST』は、PC(Steam)向けに発売予定です。











