シリーズのアートの転換点『ゼルダの伝説 風のタクト』―“実質『時オカ』の続編”だからこそ盤石なストーリーを持つ名作をいまこそ振り返る【Nintendo Classics配信記念】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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シリーズのアートの転換点『ゼルダの伝説 風のタクト』―“実質『時オカ』の続編”だからこそ盤石なストーリーを持つ名作をいまこそ振り返る【Nintendo Classics配信記念】

アートもシナリオも謎解きも最高のド名作です。

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シリーズのアートの転換点『ゼルダの伝説 風のタクト』―“実質『時オカ』の続編”だからこそ盤石なストーリーを持つ名作をいまこそ振り返る【Nintendo Classics配信記念】
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『ゼルダの伝説』シリーズ全体のストーリーにおいて、もっとも重要だといえる作品は、依然としてNINTENDO 64『ゼルダの伝説 時のオカリナ』にほかなりません。

多くの作品と同様に、『ゼルダの伝説』も、J・R・R・トールキンからの影響を多分に受ける、ある意味ありがちなファンタジー作品としてスタートしています。しかし、媒体がビデオゲームであり、“遊び”を最優先するシリーズであったために、次第にその世界観はより独自性の強いものになっていきました。

『ゼルダの伝説 時のオカリナ』Nintendo Classics版。

『ゼルダの伝説 時のオカリナ』はそういったシリーズの設定を盤石なものにしたタイトルでした。はじめてこの世界の出生が明かされ、シリーズのキーアイテムである願いを叶える万能の力「トライフォース」に独特なセキュリティがあることが判明し、その結果展開されるドラマと7年の時間を行き来するストーリーによって設定は複雑化していきます。

結果、シリーズは本作を起点に3つの時間軸に分岐することとなり、のちに発売された資料集「ハイラルヒストリア」では公式に作品間の時系列が割り当てられました。シリーズ30周年の時にはさらに設定を更新した「ハイラル百科」という書籍も発売されています。

ニンテンドースイッチ2の発売と同日に「ニンテンドーゲームキューブ Nintendo Classics」向けに配信された『ゼルダの伝説 風のタクト』は、そんな資料集のない時代に発売された作品。なぜ冒頭で長々と『時のオカリナ』と時系列の話をしたのかというと、それは、『風のタクト』が『時のオカリナ』の続編といえるストーリーを有する作品だからです。

基本的に単体で完結していることの多いシリーズ作品の中で、『時のオカリナ』が前史にあることが前提になっている本作のストーリーはかなり希少。前提となる設定が盤石だからこそ、余韻を残す美しいシナリオを描ききることができた作品だと思っています。本記事では、シリーズが復権したいまだからこそプレイすべき傑作である『ゼルダの伝説 風のタクト』の魅力を紹介していきます。

クラシカルで“道具解放ベース”なゼルダをもう一度

『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』が切り開いた“オープンエアー”の遊びによって、『ゼルダ』は冒険に出る前にすべての謎解き用のアイテムが揃っているデザインに変化します。それ以前の『ゼルダ』シリーズは、ダンジョンの直前やダンジョンの中にて、新たなアイテムを都度入手して、謎に挑むというデザインになっていました。

そのため、各ダンジョンはテーマがかなりはっきりと定まっており、基本的に手に入れたばかりのアイテムをガンガン駆使して進んでいくゲームになっています。プレイヤーが自由に解法を導き出せる『ブレス オブ ザ ワイルド』とはことなり、定まった解法に対して定まったアイテムを適切に使う「鍵と鍵穴」の謎解きだからこその気持ちよさがここには残っています。

毎回、そのダンジョンのためだけに用意されたギミックが使い捨てにされていくこの贅沢さこそが過去の『ゼルダ』の魅力。アイテムが順次解放されていくことによって、少しずつできることが広がっていく感覚があるのも『ブレス オブ ザ ワイルド』と大きくことなる部分です。

シリーズのなかでも『風のタクト』独自なのは、やはり「大海原を船に乗って旅する」システムでしょう。タイトルにもなっている「風のタクト」というアイテムを使って、風の方向を操り、その風を帆に受けて広大な海を突き進みます。

実は、この大海原を移動できるシステムは、『ブレス オブ ザ ワイルド』の“オープンエアー”のコンセプトの前身にもなっています。プレイヤーは、実際にこの継ぎ目のない海を突き進んですべての島々にたどり着くことができます。

もちろん、これは各島々が離れた場所にあり、同時に表示しなくて済むからこそ当時のハードウェアの性能で実現できたことではあるのですが、たしかにここにはシームレスなフィールドそのものは実はこの時点で実現されていたのです。

『ブレワイ』のアートの前身でもある「さわれるアニメーション」

『風のタクト』の大きな特徴として、やはりトゥーン調のかわいらしいアートスタイルがあげられます。トゥーンレンダリングを採用したゲームとしてはかなり初期の例であり、今見ても色あせないアートスタイルを確立しています。

このアートスタイル、当時の任天堂は「さわれるアニメーション」というキャッチコピーを銘打っていました。そのコピーの名に恥じぬキャラクターの動きのダイナミックさ、表情の豊かさは今でも十分に見応えのあるものに仕上がっています。

特に、主人公であるリンクの表情はやはり豊富で、「いやそうな顔」、「覚悟を決めた顔」、「悲しい顔」、「笑った顔」などなど、テキストをしゃべらないキャラなのに、しゃべるほかのキャラクターよりも感情が伝わってくるかのようです。

リンクの表情をコミカルで魅力的なものにするため、眉や目が髪よりも前面に表示されるといった少し特殊な描画手法をとっているところにも注目です。操作時のリンクのアニメーションに関しても、地面のコリジョンに足裏が追従するIKが初めて導入されているなど、2002年当時としてはかなり最先端なアート、アニメーションの技術がいろいろと盛り込まれていました。

実をいうと、当時『時のオカリナ』の次の『ゼルダ』として、ゲームキューブの性能を活かしたリアルなアートが期待されていたため、『風のタクト』のアートは賛否が分かれていました。結果、ゲームキューブ最後のタイトルとなる『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』ではリアル寄りでダークファンタジー風味なアートが採用されています。

しかし、その品質の高さからファンの間でも次第に再評価が進んでいった『風のタクト』のアートは、WiiU『ゼルダの伝説 風のタクトHD』をきっかけに開発陣のなかでもふたたび評判となり、『ブレス オブ ザ ワイルド』のアートのベースとして採用されるに至ります。『ブレス オブ ザ ワイルド』で印象的な「コログ族」や「リト族」といった種族も『風のタクト』が初出です。

あらためて今回ゲームキューブ版『風のタクト』を遊びながら、本作のアートスタイルの素晴らしさをかみしめています。しかし、どうせならWii Uでよりきれいになった『風のタクトHD』のアートもみてほしかった……!今回の「Nintendo Classics」での登場によって、HD版の移植の可能性は遠のいたのかもしれないと思うとすこし残念。とはいえ、ゲームキューブの時点でここまでやっていたのか!と知る意味で本作から入るのもわるくないかも。

古き時代の人々が子どもたちに未来を託す物語

冒頭で、本作は『時のオカリナ』の続編といえるストーリーであることをお話しました。それは、オープニングにて、「時の勇者」とよばれる人物が人々を襲った魔王を倒し、王国を救ったという伝承がはっきりと語られていることからもわかります。

伝承の続きをお話しましょう。時の勇者が去ったあと、平和がおとずれたハイラル王国。その話がおとぎ話となるほどの時が過ぎたある日、魔王がふたたび復活をとげてしまいます。ですが、この時は時の勇者が現れることはありませんでした。なすすべのなくなった人々は神々に祈り、神々にこの世界の命運を委ねます。

……その後王国がどうなったのかはわからぬまま、伝承はそこで途絶えてしまいました。

当然ながら、この「過去のハイラル王国」がストーリーには密接に絡んできます。美しい大地と王国があった過去のハイラルと、すべてが海に覆われている今のハイラル。そして、過去に生きた人々と、今に生きる人々。過去の時代の大人たちが、今の時代の子供たちに未来を託す物語が『ゼルダの伝説 風のタクト』です。名作『時のオカリナ』の“さらに先”を描いた『風のタクト』のシナリオはいまだにシリーズ最高傑作だと思っています。

そして、そんなストーリーを彩るキャラクターたちもみんな魅力的。主人公のリンクはもちろん、ヒロインとなる勝ち気な少女「テトラ」や、相棒であるしゃべる船「赤獅子の王」、リト族の少女「メドリ」や、コログ族の「マコレ」など、各キャラクターは冒険の中でしっかりと多段階の活躍をみせてくれます。

メインキャラクターだけでなく、サブイベントに登場するNPCたちも一人一人性格やテキストが作り込まれており、海に沈んだハイラルの上で生き生きと暮らす人々が描かれています。

そして、シリーズでも屈指の人気を誇る『風のタクト』の「ガノンドロフ」のかっこよさは必見。主人公リンクがまだ非力な子供なのに対して、ヴィランのガノンドロフは肉体的にも精神的にも成熟しきっており、その対比が魅力的に描かれます。ガノンドロフが見せる、踊るような動きの二刀流がすごくかっこいいのですが、実はこの武術は『時のオカリナ』のゲルド族の文化に由来するものだったり……。

大ヒットとなった前作『時のオカリナ』のエッセンスを存分に取り入れるのは、その次回作としてはある種必然かもしれません。とはいえ、実のところ『風のタクト』を遊ぶために『時のオカリナ』を遊んでいる必要は一切ありません。

本作に『時のオカリナ』のキャラクターが登場することはないですし、上述した「過去のハイラル王国」も『時のオカリナ』のハイラル王国と完全にイコールではないのです。『時のオカリナ』の設定は、あくまで『風のタクト』をより魅力的に描くために都合のいいところを拝借しているだけ。ですが、元々盤石な設定を持っている『時のオカリナ』の設定を基盤としているからこそ、『風のタクト』のストーリーには隙がないと感じています。


その後ゼルダシリーズは『4つの剣』、『ふしぎのぼうし』、『夢幻の砂時計』、『大地の汽笛』、『トライフォース3銃士』と、『風のタクト』の生み出したアートをかなり長く使い続けることになります。特に、ニンテンドーDSで出た『夢幻の砂時計』は「風のタクト2」と言えるようなストーリーだったりと、『ゼルダ』チーム自体が『風のタクト』をとても気に入っていることがうかがえます。

あらためて今回プレイしてみても、本作はシリーズの中でも特に優れている点が多い作品だと感じています。魅力的なアート、音楽、キャラクターとストーリー、そして優れた導線を持つ謎解き。たまにはがっつりと上質なアクションアドベンチャーが遊びたいという人は、ぜひ傑作『ゼルダの伝説 風のタクト』を遊んでみてください。


ライター:お茶缶,編集:みお


ライター/ミンナニ ナイショダヨ お茶缶

任天堂タイトル中心に、けど色々手を出すゲーム好きな人。ベストゲームは『ゼルダの伝説 時のオカリナ』。

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編集/取材も執筆もたくさんやる、半ライター半編集 みお

ゲーム文化と70年代の日本語の音楽大好き。2021年3月からフリーライターを始め、2025年4月にGame*Spark編集部入り。

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