かつてはさまざまなビデオゲームを発売し、現在はジグソーパズルやカードゲーム、それらの雑貨などを販売していることで知られるおもちゃメーカーの「やのまん」。2025年はやのまんが発売したRPG『アレサ』シリーズ35周年ということもあり、さまざまなイベントを開催しています。
また、やのまん公式Xアカウントでは同社の過去のゲームの資料を報告していて、その中でシミュレーションRPG『フェーダ』の“幻のPS版”リメイクが発掘されたと話題になりました。筆者は同シリーズのファンでもあるので、その驚きと喜びで『フェーダ』を紹介する記事を書きました。
そして縁とは不思議なもので、今回『フェーダ・リメイク!』PS版を実際に遊んでみないか?というお話をいただきました。これはもう嬉しいを通り越して「自分なんかでいいんですか!?」となったのですが、ファンとしてこれ以上の幸福はありません。
本稿では、『フェーダ・リメイク!』“幻のPS版”の体験レポートをお届けします!
『フェーダ』シリーズについて
『フェーダ(FEDA : The Emblem of Justice)』は、1994年にスーパーファミコン用ソフトとして発売されたシミュレーションRPG作品です。開発はクライマックスの関連会社であるマックス・エンターテイメントが行い、キャラクターデザインは『シャイニング』シリーズや『ランドストーカー』などで知られる玉木美孝氏が務めています。
本作の舞台となるのは、ヒューマンとウルフリング・エルフ・ドラゴニュートなどの亜人類が暮らす大陸ミルドラス・ガルズ。ヒューマンと亜人間で勃発した「ミレニアム・ナイトメア戦役(千年戦争)」によってヒューマン勢力は敗れ、やがて大きな力を持つ亜人類勢力バルフォモーリア軍が一大帝国を形成した後に本編がはじまります。


主人公ブライアンは、ヒューマン族でありながら帝国の治安執行部隊として働く人物。ある日の作戦で、あまりに非道なやり口で無実の民を襲う上官の姿を見て離反、友人であるウルフリングのアイン、フォックスリングのドーラとともに脱走兵となり、やがて大きな戦いと陰謀へと立ち向かう姿を描いています。
ゲームとしてはいわゆるターン制シミュレーションRPG形式で、敵と味方が1人ずつ交互に行動していくシステムが特徴。また、ミッションでは敵の全滅以外にステージ目標が用意されていて、なるべく敵を倒さないことで部隊の「リブラ値」が変動し、加入する仲間や展開も変化していきます。





1996年にはセガサターンでリメイク版『フェーダ・リメイク!』が発売。そして、同作のプレイステーション向け移植を目指したのが今回紹介する“幻のPS版”です。また、1997年にはシリーズ続編となる『フェーダ2(FEDA2:WHITE SURGE the PLATOON)』も発売されています。
9月末日、幻のゲームと対面
時は9月末日。筆者は住処の岩手県から新幹線に乗り、はるばる東京へとやってきました。お目当てはもちろんPS版『フェーダ・リメイク!』をプレイすることで、プレイ用のプラットフォームがプレイステーション開発機・デバッギングステーションであるため、万全の環境としてイードの会議室を提供してもらいました。
感動の対面を果たしたPS版『フェーダ・リメイク!』は、公式Xアカウントにて紹介されていたそのもの。ライターとして活動を始めた時は、まさかデバッグステーションに触れる体験ができる日が来るとも思っていませんでした。さっそく配線をつなげて起動確認をしたところ、無事にモニターにやのまんのロゴが映し出されました。



筆者はオリジナル版およびセガサターン版リメイクをプレイ済みです。オープニングではセガサターン版同様のアニメーションが流れ、物語を盛り上げています。オープニング後はプレイステーション用にセーブデータを制作……今回、私物のメモリーカードを持参したのですが、これとんでもなく貴重なデータ入りのカードになったな。

本来ならオープニング後は、ブライアンが上官に逆らって投獄された後に脱走する、最初のミッションがあるのですが、このPS版では該当のミッションは飛ばされていきなりエリア1からゲームが始まりました。そのため、2人目の仲間であるドーラが加入するイベントもありません。




ゲームにおいて、一口に「開発版」と言っても、その言葉が指す範囲は幅広いです。ほぼ完成しているものからまだまだ開発中、といった内容のものまでがあります。今作の場合は明らかに後者で、先のミッションの割愛も含め、色々な不足点や不具合も頻発しました。次項では、そういった部分を含めてゲームプレイの様子を紹介したいと思います。



エリア1は(なんとか)遊べました
『フェーダ』は各エリア(ステージ)で章が別れていて、プレイヤーはマップを移動しながら戦闘やイベント、買い物などを行いながら自軍の強化とストーリー進行を進めていきます。リブラ値を上げるためには、ストーリーに沿った戦闘でいかにして敵を倒さないかを考えることも重要です。
最初のマップでは、移動後すぐに戦闘が始まります。ここでのミッションは「敵を無視して目的地に到達する」ことで、敵も強くないので基本的には移動するだけで多少ダメージをくらいますが、問題なく到達可能です。まずはリブラ値を上げた序盤のイベントが見たいので、敵を倒さずに進みましょう……。



しかし、ここでミッションクリア後にフリーズするトラブルが発生。仕方ないのでリセットして今度は敵を全滅させたのですが、今度は無事に進行しました。ただし、他のシナリオでならミッション達成でのクリアであっても問題なく進行することがあったので、再現性があるのかどうかは不明ではあります。

順調に敵を全滅させてステージを進めていきましたが、なぜか殲滅してもリブラ値が下がらずに無事に最初の村に到着。主人公を助けてくれた少年・トムの姉であるエリス(CV:小森まなみさん)は“敵を全滅させてリブラ値が低いと仲間にならない”キャラクターなのですが、このあたりのフラグ管理も完全ではないようですね。





最終的にはエリア1は無事にクリアできましたが、次のエリア2では村に入った時点でループしてしまいます。ここから全くストーリーが進まず、残念ながらプレイできたのはエリア1のみという結果でした。ただし、ムービーなどはしっかりとサターン版準拠になっていたと思います。



とても貴重な体験でした
今回の“幻のPS版”体験にあたり、筆者も色々なプレイングを試しました。その結果、開発版であることでの多くの不具合や、恐らく設定されていない部分にも多く触れることが出来ました。次からは発見したことを紹介していきますが、これは当然開発版のものと理解した上であり、作品を貶める意図はないことをご理解ください。
最初はキャンプ場の怪異です。フィールドでキャンプを張ることでセーブや編成などができるのですが、セーブしようとするとOPのセーブ選択画面に戻されるという不具合が発生。さらに、ドーラに話すとなぜかカオスルートで仲間になる破戒僧・リョウカンとの会話が発生しました。当然彼は現時点で仲間として存在していません。


また、あくまでステージをプレイするための状況ということなのだと思いますが、幾つかのイベントがないために、トムが助けてくれるシーンなどを見ることもできません。他にも必殺技を撃つ際にブライアンが真っ白になったり、途中からムービーが無音になったり、ゲームは進行するものの、抜けている・欠けている部分はたくさんあります。
少し困ったのが「建物から出られない」現象でした。フリー移動の際に村に入り、とある建物に入ったのですが、出口に行ってもマップに戻れず、(セーブが出来ないため)仕方なく最初からプレイしたシーンも有りました。プレイ面で言うと、本来はアインとブライアンを狙うAIの敵の挙動も少し違っている印象を受けました。



『フェーダ』は最初のエリアからリブラ値で加入する仲間が異なる仕様もあり、当時のタイトルとしてはかなりフラグ管理などが厳しかったのではないかと思います。前述のとおりエリア2は進行できなかったため、時間の許す限りエリア1でのプレイを様々な方法で試してみましたが、本作が持つ複雑な仕様を踏まえたうえで、移植作業はかなり難しいものだったのだろうと感じました。
“幻のPS版”は決して「ほぼ製品版」のような、ファンが夢想したような都合の良いものではありませんでしたが、それでも今回、このような恐ろしく貴重なロムをプレイする機会を得られたことをファンとして嬉しく思います。



『フェーダ』シリーズが好きな筆者にとって、幻の移植版をプレイできる夢のような体験でした。セガサターン版をベースにしていると思われるPS版は、遊べる範囲では、間違いなく『フェーダ・リメイク!』であり、豪華声優陣によるボイスなども一部堪能できました。
貴重な開発版を触る機会を提供していただいた、やのまんさんには心から感謝しています。そして実際に開発版に触れた中で、やはり多くの面で“幻のPS版”だったのだなあと思い、移植作業などの難しさを感じさせられました。

ちなみにプレイ中は編集さんに「ここは実際だとこうなって」のような話もしつつ、ゲームの魅力を紹介しつつ遊べたのがとても楽しい時間でした!願わくばやのまんから発売された『アレサ』『フェーダ』はもちろん『ソングマスター』などの作品も、現行機で遊べる日がくればいいなあと望んでおります……!












