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『マリオカート8』“ドルフィンみさき”が生んだ伝説の一節「Mario Kart Lick」とは―世界を虜にしたサックスソロパートを紐解く

意外に知らない、『マリオカート』の音楽ジャンル。

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『マリオカート8』“ドルフィンみさき”が生んだ伝説の一節「Mario Kart Lick」とは―世界を虜にしたサックスソロパートを紐解く
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Mario Kart Lick」という言葉をご存知でしょうか。“Mario Kart”はもちろん、みなさんご存知『マリオカート』シリーズのことです。そしてLickとは、一般的に「舐める」を意味する英単語ですが、ここでは音楽での、ちょっとしたソロフレーズを指します。

つまり、Mario Kart Lickとは、『マリオカート』シリーズのサントラの、ある一部のフレーズのこと。実はこのMario Kart Lick、国内外の一部ゲーム音楽愛好家の間で、根強い人気を誇っています。

Mario Kart Lickが示すフレーズは、『マリオカート8』にて登場したコース「ドルフィンみさき」の楽曲、「ドルフィンみさき(海上)」に登場する、サックスのソロパート。本楽曲は「ドルフィンみさき」の明るい海の雰囲気にマッチした、サンバ的なブラジリアンリズムと、ジャジーで美しいサックスフレーズが魅力の1曲です。

作曲・編曲は「マリオカート8 メインテーマ」も担当した朝日温子氏。「ドルフィンみさき」のテーマは海上版のほかに海中、深海とバリエーションがあります。本稿では、その中でもサックスが主旋律を担当する海上版にフォーカスします。

なお、本曲は任天堂の楽曲配信アプリサービス「Nintendo Music」にて配信中。ぜひ記事を読みながら聴いてみてください。

◆「Mario Kart Lick」―即興的な爽やかさが光るサックスソロパート

注目したいのは、メインのメロディであるサックスパート。陽気にハネたリズムのメインフレーズは、曲の展開に応じて転調していき、プレイヤーの気分に盛り上がりを与えます。そして間にソロパートを挟みつつ、盛り上がりが最高潮に達したとき、ついに「Mario Kart Lick」が現れるのです。

「Mario Kart Lick」と呼ばれるソロパートは、ちょうどサビ部分でスタート。16分音符で刻まれるフレーズは、リズム隊の上を軽やかに駆け回りながら、爽やかな風のように吹き抜けていきます。

演奏自体は非常にテクニカルなものの、技巧的な側面よりも、聴いている側としてはその即興的な爽やかさの方が印象に残るのではないでしょうか。これこそが、「Mario Kart Lick」の魅力です。

このMario Kart Lickは、SaxologicというYouTubeチャンネルを運営する、サックス奏者のNathan Graybeal氏により2018年に投稿された動画で一躍世界的な注目を浴びました。

本動画は、記事執筆時点で約1,200万再生以上を記録しています。動画の内容は、Graybeal氏が『マリオカート8』をプレイ中、Mario Kart Lickの美しさに感動し、耳コピでの練習を重ね、ついにライブでのソロ演奏にてMario Kart Lickのフレーズを引用するというもの。

ちなみにフレーズを引用した際の演目はChick Coreaの「Spain」で、同曲はいわゆるジャズロックというジャンルにあたります。ジャズロックというジャンルは、後述する「フュージョン」とも強い関連性があり、「ドルフィンみさき(海上)」のサックスパートはまさにそれ。

また、同曲は「ドルフィンみさき」でも使用されていたラテン的なリズムがベースとなっており、楽曲構造としても近しい関係にあります。つまり、一見突飛に思えるMario Kart Lickの引用にも、しっかりとした文脈があるのです。

Mario Kart Lick、もとい「ドルフィンみさき」の楽曲は、本動画以前にも海外コミュニティにて強い人気を誇り、海外メディアKotakuでの『マリオカート8』発売後インタビューでもたびたび注目されていました。

また、海外掲示板のRedditにて「Dolphin Shoals(ドルフィンみさき)」と検索すると、発売後から今まで、長い間注目されていることもうかがえます。

さらに、2024年にはグラミー賞を受賞したジャズオーケストラバンド・The 8-Bit Big Bandによる演奏動画もYouTubeにて投稿されており、プロアマ問わず愛されてきたことがわかるでしょう。

Mario Kart Lickを吹いたのは誰?日本国内屈指のサックス奏者・勝田一樹氏

では、そんなMario Kart Lickを演奏したサックス奏者は一体誰なのでしょうか。それは、アルトサックス奏者の勝田一樹。フュージョンバンド「DIMENSION」やソロでの活動のほか、有名バンドとして知られるTUBEのツアーにほぼ帯同している、国内でも影響力の強いサックスプレイヤーです。

特にフロントマンを務めるDIMENSIONは、1995年にル・マン24時間耐久レースのテーマ音楽を制作したことでも有名。レースゲームである『マリオカート8』にて、“本職である”勝田さんが起用されていることも、全くうなづけるでしょう。

勝田さんが得意とするのは、先ほどから話題に上がる「フュージョン」です。先述したジャズロックと同じく、エレクトリックジャズから派生したジャンルで、ジャズの即興性と、バンドセッションによって緻密に組み込まれたグルーヴが魅力のジャンルです。

フュージョンは前述したようにレース中継などで多く起用されており、その影響から『グランツーリスモ』シリーズなど、レースゲームでもたびたび参照されています。即興的な疾走感と、キメキメのソロフレーズがレースでの緊張感を刺激してくれますよね。

Mario Kart Lickでも、ブラジル的な速いながらも陽気なリズム感と、サックスのフュージョン的なフレーズが豊かにマッチしています。

「ドルフィンみさき」は最新作でも健在!豪華ビッグバンドアレンジに

「ドルフィンみさき」のテーマは国内外問わずとても人気。そしてさらに、なんと最新作である『マリオカート ワールド』でも続投しました。よりゴージャスなビッグバンドによるアレンジを引っ提げ、新たな側面を見せてくれます。

同作は『マリオカート』シリーズだけでなく、『スーパーマリオ』シリーズの既存楽曲をアレンジしたBGMが豊富です。任天堂による「開発者に訊きました」のインタビューによると、アレンジ楽曲は新規で生演奏を行っているとのこと。楽曲を聴いてみると、たしかにリッチな聴き心地になっていることがわかります。


なお、同作での「ドルフィンみさき」が勝田さんによる演奏かは、ゲーム内クレジットに記載がないため現時点では不明です。しかし今回のアレンジでは、先述したようにビッグバンドによる演奏が魅力となっています。原曲にあったMario Kart Lickももちろん健在。

同アレンジではアルトサックスのみによるソロパートではなくなり、ソプラノサックスやテナーサックスとの合奏になっています。フレーズラストの痛快なロングトーンも、トランペットやトロンボーンなどの金管楽器がハーモニーを奏で、さらにリッチな仕上がりに。

『マリオカート ワールド』の仕様上、同アレンジは狙って聴くことが難しいものの、フリーランなどで流れた際は耳を傾けてみるのもよいでしょう。

そんなMario Kart Lickが魅力的な、「ドルフィンみさき(海上)」はNintendo Musicにて配信中です。これまで注目していなかった方も、ぜひ聴いてみてはいかがでしょうか。


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ライター:タキトウ ハル,編集:八羽汰わちは



ライター/ゲームも音楽も大好きな雑食ゲーマー タキトウ ハル

ローグライクとダンスミュージックが大好き。Redditのゲーマーコミュニティをよくチェックしています。

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編集/多趣味オタク 八羽汰わちは

はちわたわちは(回文)Game*Spark編集部員、デスク担当。特技はヒトカラ12時間。

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