インディーデベロッパーのUtu Studiosが贈る、ローグライク・デッキ構築カードゲーム『ぼくのカードのほーがきみのよりすごいもん!』が、10月7日にPC(Steam)向けに早期アクセスを開始しました。
本作は本記事執筆時点で233件のユーザーレビューが集まり、そのうち約93%が好評とする「非常に好評」ステータスを獲得。早期アクセス開始直後より着実に勢いをつけています。Game*Sparkでは以前先行プレイレポートを掲載しましたが、今回は本作の開発者であるUtu Studiosにメールインタビューを行いました。本作のユニークなシステムから可愛らしいグラフィック、そしてタイトルのローカライズ秘話など、ここでしか聞けない話を訊いてきました!
開発のきっかけは「ごっこ遊び」だった

――Utu Studiosについて、軽く自己紹介をお願いします。
Tara氏(サウンド・マーケティング):私たちはUtu Studiosという、フィンランド出身の5人組インディーゲームチームです。”心暖まること”をテーマにしたゲームをもっと世に出したい、そしてより自由に自分たちのクリエィティブを発揮したいという思いから、自分たちのゲームスタジオを立ち上げました。私たちのゲームでプレイヤーを元気づけ、それを通じて世界を少しでも明るくできればと願っています。
――まずは、本作開発のきっかけについて教えて下さい。
Tara氏:約1年前の9月、別のゲームプロジェクトのデモの開発を終えて、次のプロジェクトについてブレインストーミングをしていました。自分たちで発売できる、もう少し小規模なものを作る必要があると考えていたんです。
1日かけてアイデアを出していたのですが、なかなかしっくりくるものがなく、そんな時に子どもたちの遊び方や、自分たちが子どもの頃どう遊んでいたかという話になったんです。「僕のドラゴンブレスが君のお城を溶かすぞ」とか、「でも僕のお城には炎を防ぐスーパーシールドがあるんだ」、でも「ドラゴンにはシールドも溶かすスーパーメガファイアブレスがあるんだぞ!」みたいな、想像力以外に限界のない、ごっこ遊びですね。それをゲームにするというアイデアにワクワクしました。

無限の想像力と子どもらしい驚き、そして自分でそれを形にできる可能性を盛り込みたかったんです。どうすればそれが実現できるか考えているうちに、カードにステッカーを貼るというアイデアが浮かびました。その後、より具体的なゲームメカニクスの仕組みを見つけるためにプロトタイプを作り始め、それが『ぼくのカードのほーがきみのよりすごいもん!』になりました。
――ごっこ遊びがそのままインスピレーションになったんですね!日本の子どもたちも「僕の想像力の方がすごい!!」といった感じで同じような事をしていたと思います。実際わたしもそうでしたし。
Tara氏:そうなんです!世界中のプレイヤーから、このゲームが自分の子ども時代を思い出させてくれる、プレイしていると懐かしい気持ちになると聞いて、本当に心温まる思いです。
これまでにない、デッキ構築型ローグライクを目指して
――本作の開発において影響を受けた作品はありますか?
Tara氏:チームメンバー全員がゲームの好みが違い、異なるゲームやジャンルをプレイしてきたので、開発中は多くのゲームが話題に上りました。このゲームに関しては、例えば『Dicey Dungeons』『Inscryption』『Slay the Spire』『The Bazaar』、そして様々なボードゲームについて話し合いました。特に、デッキ構築ゲームの熱心なプレイヤーとして、このジャンルにもっと自由度をもたらしたいと考えていました。
――デッキ構築型ローグライクからの影響はやはり強いのでしょうか?
Tara氏:はい、先ほど挙げた作品たちは、同じデッキ構築型ローグライクを代表するゲームなので、必然的に強く影響を受けました。他のデッキ構築型ローグライクから影響を受けないのは非常に難しいのですが、だからこそ、このジャンルの他作品の中でどう差別化を図るかを考えたかったんです。

――本作のダメージシステムは、デッキ構築ゲームの中でもユニークです。天秤のように駆け引きをするゲージシステムなど、骨太ながら遊びやすい仕組みに感じました。こうしたメカニクスは、どのような発想から生まれましたか?あるいは、リファレンスなどはありましたか?
Joni氏(ゲームデザイン・プログラミング):従来のヒットポイントやダメージシステムから離れて、私たちのテーマにより合うものにしたかったんです。たくさんブレインストーミングをして、最終的に、子どもたちが綱引き的な設定で「かっこいいカードを見せ合って、相手の好意を勝ち取ろうとする」というアイデアに惚れ込みました。何度もプレイテストを重ね、様々なメカニクスを試して、本当に良い感触のものを見つけました。この綱引きタイプのシステムは、本当によくできたなと感じています。
「プレイヤーをよりハッピーにする」ポジティブなデザイン哲学

――また「かっこいいカードを見せ合う」というアイデアで言うと、プレイヤーがカードを使用したとき、ライバルたちは「わあ、すごい!」といった顔で反応してくれるのも、プレイしていて非常に嬉しく感じました。
相手にすごいカードを出されてネガティブな反応になるのではなく、お互いに褒め合うデザインになっているのが魅力です。そうしたポジティブな方向性はカードゲームに限らずどんなゲームでも稀ですが、やはりこうした視点は重要視したのでしょうか?
Oona氏(アート):最初から、私たちの作品が会社のミッションである、「良い行いをテーマにしたゲームを作り、プレイヤーにポジティブな影響を与える」という目的に沿うよう、チーム内でたくさん確認を取りました。
どちらのカードがより優れているかの対決ではありますが、友達同士でじゃれるような競争なので、応援したくなったり、願わくば試合後にプレイヤーもより幸せな気持ちになってほしいんです。そして、相手に自分の方がかっこいいカードを持っていると納得させようとするテーマにも合っています。
Lauri氏(ゲームデザイン・プログラミング):それに、プレイヤーのカードはライバルのものより優れてるから、プレイヤー自身も彼らが驚いてくれることを期待しちゃうんです!
――確かに、わたしもプレイしていて「このカードすごいでしょ?」とか、「そのカードすごい!!!」って思わず言っちゃったこともありました。
Lauri氏:ああ、それは嬉しいですね!
誰もが子供時代を思い出せる、可愛くて多様なビジュアルデザイン
――本作は可愛らしいグラフィックも特徴です。特に日本のプレイヤーにとっては、カートゥーンのような可愛らしさではなく、子供向けの絵本のようなグラフィックがより身近に感じられたと思います。本作のアートワークは、どのような方向性で開発されていったのでしょうか?
Oona氏:アートでの私の目標は、子ども時代の夏の懐かしい感覚を描くことでした。子どもの目を通して世界を見ているような、子どもの頃はすべてがとても鮮やかでワクワクして見えたような感覚をゲームで感じてほしかったんです。特に、カードを出すときに虫が飛び散り、ドラゴンが急降下し、ワニが飛び出すのを想像している様子を見せることで、子どもたちの想像力を活き活きと表現したかったんです。そして何より、これが私自身のアートスタイルなんです!
――Oona氏自身のスタイルが本作に影響を与えているんですね!
Oona氏:はい、このプロジェクトで2Dアーティストは私だけなので、自分の好きなように全部描けるんです。

――多種多様なライバルたちも魅力です。民族性やジェンダーに関わらず、さまざまな子どもたちがプレイヤーとカードバトルをしてくれます。そして、子どもたちの「好きなもの」がそのままデッキに表れているのが魅力だと感じました。こうしたキャラクターデザインに関して、なにか力を入れた点はありますか?
Oona氏:キャラクターをデザインする際、子どもたちがどう着飾りたいかを考えました。プリンセスや恐竜のコスチュームを着たいのか、単純に自分の好きなものを身につけたいのか。だから各キャラクターについて、その性格やお気に入りのものが見た目から分かるようにしました。また、キャラクターたち自身にも、本当に多様性を持たせたかったんです。世界中のプレイヤーが私たちのキャラクターの中に自分自身を見出し、遊び場でカードゲームをする友達グループの一員だと感じられるように。
Tara氏:ビジュアルのキャラクターデザインはゲームデザインに影響を受けるし、その逆も然りです。デッキとプレイスタイルに強いアイデンティティを持つライバルが欲しくて、そのアイデンティティをアートと会話でより補強するのが正しいことだと感じました。ある時はステッカーのセットをデザインしてから、どんなキャラクターがこの種類のステッカーを使うだろうかと考えました。一方でキャラクターデザインを先に考えてから、そのキャラクターのステッカーを考える場合もありましたね。

――素晴らしい開発スタイルですね!彼らの会話も魅力的ですが、そうしたアイデアもキャラクターデザインから生まれたのでしょうか?
Tara氏:キャラクターデザインが会話のベースにもなっています!例えば魔法使いの衣装を着ている「ルナ」というキャラの場合、テーブルトークRPGやファンタジーゲーム、読書などに夢中なキャラクターが欲しくて、そしてこういった興味を持つ人が友達と何について話すだろうかと考えました。ゲーム内のストーリーイベントも、キャラクターの興味に関連する楽しい会話の引用を入れる機会になりました。
――遊び場で彼らが何を話すか、という関係性について考えているんですね!
『ぼくのカードのほーがきみのよりすごいもん!』ローカライズ秘話
――本作のローカライズについても伺いたいです。日本のプレイヤーとしての視点では、まさに小学生の言いそうな言葉遣いのタイトルが魅力的です。ローカライズはLevel Up Translationが担当していますが、これは開発側のアイデアなのか、それともLevel Upからのアイデアなのか、お聞きしたいです。
Oona氏:実は、タイトルの翻訳について助けてもらうために、私の友人に連絡したんです。私たちの親友の一人が日本語を話せるので、彼女は、自分の友達の日本人たちとタイトルのアイデアについて話し合って、いくつかの選択肢をくれました。その中から、私たちのお気に入りを選んだんです!だからこの素晴らしい日本語タイトルがあるのは、私の親友と、その友達のおかげなんです。
Tara氏:日本語タイトルの最後の「もん」が私たちには完璧に感じられました。
――本当にそのとおりだと思います。
「5人でスタジオを設立するのが夢だった」
――続いてUtu Studiosについて。設立のきっかけはどんなものだったのでしょうか?
Tara氏:私たちは一緒にゲーム開発を学び、当時から既にいくつかの小さなゲームを一緒に作っていました。チームの相性がとても良く、この5人で一緒に働くのが本当に好きだったので、いつしか自分たちのゲームスタジオを立ち上げるのが夢になりました。勉強を終えた後、私たちはフィンランドのゲーム業界で、それぞれ会社で約10年間ほど働いて経験を積み、その後Utu Studiosの下で再び集まりました。
――すごく胸の熱くなるエピソードです。本作は少数のメンバーで開発されているとお聞きしました。少数開発での重要なポイントを教えて下さい。
Tara氏:お互いのコミュニケーションには本当にオープンで、たくさんフィードバックし合うようにしています。お互いに助け合い、普段のスキルセットとして外部での仕事もする準備ができています。小さなチームなので柔軟でなければなりません。そして最も重要なのは、お互いを信頼し、全員が最善を尽くしていると信頼していることです。スタジオ内では全員が平等です。
Lauri氏:また、小さなチームでは自分の個性やスタイルを見せる機会があります。その個性を見せるのを恐れないようにしていますね。
Tara氏:そしてチームの規模についてはやはり強調したいです。小さなチームというのは、コミュニケーションにおいて大いに役立ちます。チームが大きくなりすぎてメンバーがお互いをあまりよく知らなくなると、よりコミュニケーションが難しくなりますよね。だから小さなチームであることも強みなんです!
――ゲーム開発における最高の関係性だと思います!
Oona氏:はい、私たちは全員友達なので、本当にお互いを大切にし、気にかけているんです!
――本作のライバルみんなのようなお友達なんですね!

『FF』シリーズや『ポケモン』からの影響も!
――ちなみに、日本のゲーミングシーンはチェックされていますか? また、影響を受けた作品などあれば教えて下さい。
Joni氏:私の史上最高のゲームは『ファイナルファンタジーIX』で、他の『ファイナルファンタジー』シリーズもとても好きです。
Oona氏:私にとって、絶対的なお気に入りのゲームシリーズの一つは『パタポン』です!ゲーム開発者として本当にインスピレーションを受けました。
Tara氏: 私も『ファイナルファンタジー』シリーズの大ファンです。日本の作品で私に影響を与えたタイトルはたくさんあると思いますが、FFは間違いなく最初に思い浮かびます。『FF8』『FF9』『FF10』が本当に好きで、『FF14』も積極的にプレイしています。『暁月のフィナーレ』にはすごく泣かされました。 子どもの頃に『FF8』と『FF9』をプレイしたのは、本当に懐かしい思い出。
Tuukka氏(プロダクション・テクニカルアート):『龍が如く』シリーズと『メタルギアソリッド』シリーズの両方は本当に楽しみました。あと小さい頃の『スーパーマリオブラザーズ3』のようなクラシックも!
Lauri氏:懐かしい思い出といえば、子どもの頃ゲームボーイカラーの『ポケットモンスター青』が大好きでした。たくさんプレイして、隠し要素のヒントを雑誌で読むのが楽しかったです。カートリッジは今でもデスクの横の棚に飾ってあります!
――皆氏それぞれの好みが分かりますし、それぞれのお気に入りタイトルがこのタイトルに影響を与えていると感じました。特に『ポケモン』、『FF9』、『パタポン』などは、本作と近しい雰囲気を持っていますよね!『龍が如く』も...もしかしたら?でも遊び心のあるミニゲームがあって、それは同じかもしれませんね。
キャラカスタマイズ機能や今後の展開も!

――本作の、今後の展開について教えて下さい。
Tara氏:私たちは今も、本当にワクワクする新機能の開発を続けています!新しいステッカー、対戦相手、ボス、デッキ、ゲームモード、その他すべてのコンテンツに加えて、フィーチャーしたい機能がいくつかあります。カード強化におけるツールを追加し、プレイヤーキャラクターのカスタマイズも追加する予定です。また、プレイヤーがお気に入りのカードとデッキを保存して、コレクションできる方法も提供したいと思っています。バグの修正も続け、フィードバックを得てゲームバランスの改善も続けます。
――それは素晴らしいですね!キャラクターカスタマイズも多くのユーザーが待っていると思います!
Tara氏:はい、非常に要望の多い機能です。私たち自身、ゲームをプレイしながら自分のキャラクターをカスタマイズしたいので!
――最後に、日本のプレイヤーへメッセージをお願いします。
Tara氏:日本のプレイヤーの皆氏から受け取ったすべての愛と好評なコメントに本当に感謝しています!ゲームを発表したとき、最初の大きな関心は日本から来ていたので、本当に感謝しています。ゲームがまだ初期段階だった頃、それが本当に私たちのモチベーションになり、前進する助けになりました!最初に私たちのゲームに気づき、最初の後押しをくれた日本のゲームコミュニティ「IndieFreaks」に感謝したいです。また、ゲームを配信したり動画を作ってくれた皆氏にも感謝します。私たちはそれらを見ていて、私とOonaが楽しいストーリーをすべて翻訳してチームの他のメンバーに伝えています!
――ありがとうございました!
今回インタビューさせていただいたUtu Studiosは、まさに本作から飛び出てきたかのような遊び心のある親友同士で、互いに信頼を持った関係性であることが伺えました。だからこそ、本作のようなポジティブで、プレイヤーの心を押し上げてくれる作品が作れたのだと感じています。本作の今後の展開にもより期待したいですね。
そんな『ぼくのカードのほーがきみのよりすごいもん!』は、PC(Steam)向けに早期アクセス版を配信中。なお、日本語表示にも対応しています。












