
『Psychonauts』や『Costume Quest』で知られるDouble Fine Productionsの新作『Keeper』を先んじてプレイさせていただきました。
どこか不思議な島を舞台に、灯台と鳥がタッグを組み、静かで壮大な冒険を繰り広げます。複雑な操作はなく、ノンバーバルで誰でも楽しめるゲーム体験に仕上がっていました。
なお、今回のプレイレポートの執筆に際しては、ダウンロードキーを提供いただいています。
言葉はなく、行き先はなく、ただひとつの灯台と一羽の鳥が島を巡るアドベンチャー
舞台はどことも知れぬ島。海の上を飛んでいた鳥のトゥイグが、謎の瘴気に襲われ、古い灯台に不時着するところから始まります。なんとその灯台は突如自我に目覚め、四つの足を生やして動き始めました。かくして灯台とトゥイグは島を巡る旅に出ることに。


操作はとてもシンプル。(Xboxコントローラ基準で)Aボタンでダッシュ、右スティックで灯台の光を任意の方向に向け、Xボタンでトゥイグの操作です。光は邪魔な木の根っこを燃やしたり、オブジェクトに当てることで仕掛けを解いたりすることができます。
また、トゥイグの操作も、特定のものを取ってきてもらったり、ある物をつついてもらったりと、その場その場に応じたアクションを勝手にとってくれるので、どの操作が何だったのかということで悩むことはありません。必要なタイミングになれば画面下部に表示されます。

ゲーム自体はほとんどウォーキングシミュレーターか一本道のポイントアンドクリックアドベンチャーに近いです。歯車を回したり、からくりを解いたりするパートもありますが、何度もやり直さないと正解が見えてこないようなシーンはありません。
その反面、歯応えのあるパズルや、頭を捻って考える謎解きを欲しているプレイヤーには物足りなく感じるかもしれません。

灯台と鳥というコンビなだけあって、本作はオプション画面などのUIを除き、テキストや会話は一切ありません。環境音とBGM、そして灯台と鳥が奏でるような小気味良いSEだけがゲーム全体を包み込んでおり、年齢や国籍を問わずプレイすることができます。
それでいながら、鳥が道中で卵を見つけるなど、言葉に頼らないナラティブが存在しており、ハッとするようなシーンに出くわすこともあるでしょう。

グラフィックは美しく、それでいてユニークです。正直、本作の白眉はここにあるかと思いました。
絶海の孤島というロケーションではありますが、ひとつとして同じ背景は存在せず、どこもかしこも見たことがないアートスタイルで、まったく飽きません。

それでいて超現実的であり、あまり見かけないような色彩感覚で描かれているところもあり、美術に造詣の深い人でも十分に堪能できるでしょう。
本作のクリエイティブリードであるLee Petty氏は元々Double Fine Productionsでアートディレクターを務めてきた人物です。アート主体のゲームデザインであることが一目でわかる作りをしており、もはや美術のためにゲーム世界が存在しているといった具合です。
カメラワークも、クレイアニメのように被写体を可愛らしく見せるミニチュア感のあるアングルから、昨今のAAAタイトルで使われる全景を見渡すような撮り方まで、実にさまざまです

ゆえに、謎解き同様ゲームプレイ自体はライトを当てるかトゥイグに何かをしてもらうか……、要は右スティックとXボタンをガチャガチャしていれば終わることが多く、かなりライトな作りをしています。
アドベンチャーゲーム全般に言えることかもしれませんが、特筆すべき新しいゲームメカニクスは見られないため、あくまで雰囲気や旅情を楽しむ作品だと思って割り切ってプレイする必要があるでしょう。

しかしながら、抜群のセンスで彩られた世界に没入し、ヘンテコだけど愛らしい灯台を揺らして旅をするゲーム体験には、唯一無二の魅力を感じました。
あまりアクションパズルが得意でない方や、自然でしつこくないアドベンチャーが好きな方には、心にしっかりと響くゲームに仕上がっているかと思います。
¥5,500
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)













