近年存在感を増している中国発のゲーム、その中からまた新たな注目作が登場しました。中国時代劇の人気ジャンルである武侠ものを題材にした『風燕伝:Where Winds Meet』は探索とアクション戦闘をバランス良く楽しむアクションアドベンチャーで、広大なオープンワールドに配置された人物やオブジェクトのインタラクション、危険な地下遺構の探索、集団戦や強敵との対決など、様々なアクティビティを通してプレイヤーそれぞれによる武侠のスタイルを追求していきます。基本無料スタイルでありつつもソーシャルマルチの要素は控えめにして、シングルプレイのアクションRPGに集中して遊べる設計です。
お馴染みの軽功や多彩な武器種も備え、武侠アクションでやってみたいことのスタンダードを一通り揃えた本作は、中国時代劇の主役気分を味わわせてくれる自分だけのオープンセットなのです。


本作の舞台は宋代初期の建隆3年(962年)、趙匡胤の建国から間もない時期で、中国史では「五代十国」という多国が乱立する分裂の時代に当たります。原題の「燕雲十六声」も五代十国に関する「燕雲十六州」に由来し、契丹人の国「遼」と「北漢」も宋に敵対する国として名前が登場します。プレイヤーは己の腕ひとつで渡世する武侠の世界「江湖」に飛び込み、村を焼き払った謎の集団を追う旅に出るのです。江湖や宋については以前の記事でも紹介しているので、そちらも参考にしてください。



フィールドに採用されているのは郊外農村部の清河流域と、宋の首都にして世界最大級の都市開封(汴京)。イントロダクションとなる物語の第1章は5時間みっちりとドラマチックな展開が繰り広げられ、上質な配信ドラマを見ているような満足感でした。アウトローの世界らしく容赦なく人が死ぬ上に、怪しげな呪術の要素も登場して、歴史ドラマとダークファンタジーが良い塩梅の伝奇ものと言って良いでしょう。

戦闘システムはシンプルな剣戟アクションにまとまっており、属性や武器の有利不利などは特になく、相手の動きを見て対応することに特化しています。難易度を下げても、敵の攻撃を無防備に受け続けているとあっという間に倒されてしまうので、基本的には先ず防御、受け流し、回避で受けるダメージを減らし、隙を突いてこちらから攻めに転じます。


十数人に取り囲まれて一斉に攻撃される状況も珍しくなく、画面外からの飛び道具もシグナルを見て弾けるので、アクション映画のイメージでとにかく弾くことを優先した殺陣が求められます。攻撃の受け流しは相手の体勢を崩して、一定の蓄積でよろけた相手には強力な一撃が発動し、強敵相手にはこれが最も大きなダメージ源です。

他のプレイレポートではソウルライクと表現されていましたが、剣戟のスピードは『SEKIRO』や『Ghost of』シリーズのチャンバラに近いと感じました。限定的ながら受け流しを自動化する補助機能もあるので、見切りの殺陣を初心者でも余裕を持って楽しめます。勿論むやみに空振りしてもただ格好悪いだけなので、ある程度の修練は必要ですね。


第1章が終わると本格的にエリア全体の探索に移りますが、オープンワールドへの導線になるのが、様々な技の教えを請う「師」を探す道程です。メインシナリオは到達したレベルによって解放されていくのですが、本作ではレベルを上げただけではほとんどの技は使えないままです。天から勝手に技が降りてきたりはしないので、武術書や人からの伝聞を頼りに、どこの誰から習うべきかを調べた上でようやく行き先が分かる仕組みになっています。

江湖に割拠する流派(門派)に入門して武術を教わるのが通例ですが、入門にいきなり「誰か適当に人を斬ってこい」などととんでもない要求をされることも。所謂バフを得る「心法」は流派に依らないサイドクエストから得るものも多く、メインシナリオのインターバルにはこれらの修得を目標にしてオープンワールドを巡ることになるでしょう。
同様に地図上でクエストの起点になるアイコンはほとんど伏せてあるため、多くのクエストはトラブルの現場に通りすがることから発生します。「長い道中で予期せぬ揉め事に遭遇する」というシチュエーションが自然と成立する設計になっているので、流浪の武芸者らしい旅路が存分に楽しめます。


ちょっと寄り道かと思いきやとんでもない場所に飛ばされたり、隠された大きな秘密を発見したり、サイドクエストの奇想天外さはある意味メインクエスト以上に驚きをもたらしてくれるでしょう。


武侠の渡世は単に武器を振るうだけではありません。時には機知を使って解決に導くことも必要です。クエストの選択肢では話術や医術のみにゲームに挑むこともあり、話術ではAIとのテキストチャットで自由会話をすることも可能です。これらに必要なスキルは「生業」として武術の腕とは別に修得します。医術などは素人が下手に手を付けても余計に悪化させるだけなので、どの生業に特化するのかでもプレイヤーのスタイルの違いが出てくるでしょう。


建築や釣りなどのんびり過ごせるコンテンツも。

プレイヤー自身が乱暴狼藉を働くことも受容しており、馬を奪ったりむやみに人にぶつかったりしているとNPCそれぞれに設定されている好感度が下がり、やり過ぎれば官憲に追われる状況に。勿論獄に入れられてしばらくは出ることができません。元来無法者である武侠であるからこそ、悪人ロールプレイの許容も「らしさ」を与えてくれるスパイスです。

人物の好感度をAIチャットなどで上げると様々な贈り物を貰えるようになります。こうしたAIの要素は今後のスタンダードになりそうですね。


マルチプレイはメインシナリオのためのレベル上昇には必須ではなく、レアな武具などの収集などエクストラ要素を求めるときに参加するくらいでしょうか。「ソウルライク」なプレイヤー―からのヒントもありますが、マルチプレイの義務感はそれほど感じさせない程度に抑えています。

爽快な弾きを主体とした戦いと併せて、本作は「かっこいい流浪の武侠」になりきるためのシステムが整備されており、ゲームの試練として攻略するよりは、武侠小説の主人公を演じる舞台として楽しむと、本作の魅力を最大限引き出せるように思います。アクション映画を観てなんとなく剣を手に取りたくなった覚えはありますか?そういう人にこそこの『風燕伝:Where Winds Meet』を遊んでもらいたいですね。
『風燕伝:Where Winds Meet』は、PC(Steam/Epic Gamesストア)/PS5向けに11月15日配信予定です。











