ソウルライクとデッキ構築。Steamにはこの手の良作がごまんとありますが、ついにそれらが手を結ぶ日がやってきました。
『Death Howl』は、『フロストパンク』で知られる11 bit studiosが販売するストーリードリブンのソウルライク・デッキビルディングRPGです。ちなみに開発を行ったThe Outer Zoneは過去に『Mind Scanners』というディストピアを舞台にした時間管理シミュレーションを制作しています。
人気ジャンルのドッキングでありながら、その完成度はかなりのもの。シビアな世界観やストーリー、雰囲気のあるビジュアルもあいまって、時間を忘れて没頭できる作品に仕上がっていました。
あの子を返して……悲しみを抱いた母が主役のデッキ構築史上最も悲痛な旅路
舞台はなんと紀元前6000年のスカンディナヴィア(北欧)。まだ文字も発明されていないであろう大昔です。
主人公のローは息子のオルヴィを亡くした母親です。息子の影を見た彼女は、いつしか精霊界に迷い込んでしまいました。そこで彼女はヘラジカのナントクに出会い、彼から4体の大精霊の存在を教わります。かくして彼女は、我が子を“死”から取り戻すために、精霊界を旅することになるのでした。

マップ画面はクォータービューであり、探索して戦闘やイベントを解決してより強いカードを集めていくという、いわゆるデッキ構築系ゲームの王道を往くものです。
敵の位置は固定であり、戦闘エリアに近づくとターン制かつグリッドベースの戦闘が発生します。
ローが1ターンのうちにできることは、5つのマナが尽きるまで移動かカードを使用することです。移動は1マスにつき1マナ消費しますがカードは要りません。逆に攻撃はマナが余っていてもカードがなければできない、という仕組みです。いわゆるSRPG的な戦闘をカードで行う形式であり、これ自体は割と見慣れたメカニクスでした。
強力なシナジーやコンボが用意されていてそれを見つけて組んでいく……というよりは、グッドスタッフのレアカードでいかに敵を効率よく捌けるかを求められます。これはむしろSRPGファンに刺さる作りでしょう。アイコンもわかりやすく、やたら効果説明の長いカードもないので、すんなりバトルに入っていけました。

本作のユニークな点は、これがソウルライクであること。そして同時に、ローグライトではないという点にも注目です。先述しましたが、本作は(チュートリアルである真ん中のエリアを終えたら)四つのエリアを自由に攻略していくストーリードリブンのRPGなんです。
『Death Howl』のマップは、邪悪な精霊が待つ戦闘エリアと、聖なる木立という回復エリア、クエスト・イベント・隠されたロケーションなどを示すその他のアイコンという三種類のアイコンが乗っています。
ローは敵を倒すと、いくつかの素材とともに、死の咆哮(Death Howl)というリソースを入手します。このリソースを聖なる木立に持っていくことで「涙の滴」という経験値に帰ることができ、ローが強くなっていくわけです。
また、死の咆哮と素材を組み合わせることで新しいカードをアンロックすることもできます。

そしてそして、もうお分かりかと思いますが、敵との戦闘に負けてしまった場合、すべての死の咆哮をその戦闘エリアに落としてしまうので、拾いに行かなければなりません。
また、聖なる木立で回復なり経験値変化を行うなりすると、倒した敵がすべて復活します。この辺がソウルライクなんです。
つまり、戦闘自体はカードを使ったSRPGで、経験値や敵復活の処理がソウルライク的であると、そういった形になっています。

こうして見るととんでもなくハードルが高い感じがするかもしれませんが、実はむしろいわゆるローグライトよりも優しい面もあり、ようは稼ぎ(レベル上げ)ができるわけです。
ザコ敵も強敵も落とす死の咆哮の量はほとんど変わらず、とりあえず聖なる木立の近くで何度か戦闘すれば、涙の滴はそこそこ溜まっていきますので、そんなにシビアな感じはしません。むしろまったく同じ敵と戦わないでクリアすることはないかもしれません。
ゆえに、レベル上げがあまり好きではないユーザーにとっては、ちょっと面倒に感じる瞬間はあるかも……?

とはいえ、奥のほうで手に入るレアカードをアンロックするには、強敵の素材が必要なうえに、そもそもいくら死の咆哮を稼いだところで、ロー自体が強めの特殊能力が使えるようになったり、特殊なカードが貰えたりするくらいで、すぐに天井はやってきます。手前でレベ上げしてあとは無双! という感じには決してなりません。
また、普段は見つけた聖なる木立にいつでもファストトラベルできるのですが、道中で発生するクエストを解決している最中はその機能が制限されるので、ミッションを行っている緊張感はちゃんと担保されています。

ただ、一瞬の判断が命取りになるアクションベースの本家ソウルシリーズなどに比べると、戦闘エリアに入らなければいつでも帰還できる本作は、そんなにソウルライクか……? というと首を傾げてしまいました。しかも聖なる木立もそこら中にあるので、大量のリソースを落として絶叫……なんてこともありません。
たしかにメカニクスは似通っていますが、どちらかというとゲームボーイなどでよく発売していたカードバトルRPGのプレイフィールに似ており、ちょっとずつ着実に強くなっていくデッキを見てニヤニヤする楽しさがありました。

それぞれのエリアには専用のカードが用意されており、他のエリアで強くしたデッキを使おうとしてもコストが上がってしまう仕様があるので、どのエリアから挑んでも同じように苦労するところはGOODです。
ローグライトのプレイフィールを想像すると違和感を覚えるかもしれませんが、カードバトルRPGの醍醐味と、しっかりした戦略性は常に感じられる非常に出来の良いデザインです。

静謐で、ゆえに怖ろしい精霊界 他に類を見ない北欧伝承の世界を旅しよう
本作の魅力はカードゲームだけではありません。その芳醇な世界観やストーリーテリングにも注目しましょう。
本作は北欧の民俗伝承などをベースにしているようですが、その雰囲気はまさに唯一無二。インディーゲーム業界はオリジナリティに溢れた世界観のタイトルが山ほどありますが、その中でも別格のユニークさを誇っているように感じました。

まずUIがとてもシンプルです。カードやトーテム(装備品)といったゲーム内でインタラクトできる要素はひとつのプルダウンリストにまとまっており、ひし形のアイコンで描かれていて、とてもスタイリッシュ。
しかも、トーテムやマテリアル(素材)にはそれぞれ細かくロアが刻まれており、彼らの生活や宗教観が見え隠れします。どのロアも6000年前という設定のリアリティが保たれていて、古代人らしい素朴な生活が窺い知れるのも良かったです。

敵となる邪悪な精霊たちも、怖ろしさと可愛らしさが同居しており、たいへん素敵です。こちらのアーマーを無視して攻撃してくる「スナカミムシ」なんていうオーソドックスなやつもいるかと思えば、空を漂う虫歯「ヤミウスバ」なんてのもいます。翻訳も素晴らしいですね。
ボス戦ではそこそこ大きな精霊と戦うこともありますが、皆が想像するような強靭な神々とのバトルという感じではありません。一貫して厳かで寒々とした雰囲気が保たれていました。
道中で発生するクエストもなんともかっこよく、燃える木のうろから逃げ出してしまった小鳥を誘導して戻してあげたり、精霊同士の争いを沈めてあげたものの、以前より空虚な気持ちになってしまった……と悲しまれるだけだったりと、妙に寓話的です。
岩波少年文庫で子ども向けの神話を読んだときのような、教訓ともほら話とも取れる文体をイイ感じにトレースできており、これには参りました。こんなシナリオ、書けるものなら書いてみたい!

ローがただただ我が子を探し求め、邪悪であるとはいえ精霊界を荒らして回っているのも、あまりに悲痛で見ていられません。その様子が凍てつくような鋭いサウンドとともに描かれ、極寒の地に生きる彼らの気持ちが浮かび上がってくるようでした。

ゲームでは神話世界や神々が描かれることはしょっちゅうですが、愛らしくも恐ろしい精霊たちとの争いをこんな小さなスケールで描くのはかなりオリジナリティを感じました。(筆者が読んできたエンタメでもっとも近い印象を覚えた作品をあえてあげるなら『蟲師』です)。
ローの旅路がどういった結末を迎えるのか、ぜひともその目で確かめてみてください。
タイトル:『Death Howl』
対応機種:Steam/PC(Microsoft Store/GOG.com)
※PS5、Xbox Series X|S、Nintendo Switch版は2026年2月19日発売予定
記事におけるプレイ機種:Xbox Game Pass(PC)
発売日:2025年12月9日
著者プレイ時間:10時間
サブスク配信有無:Xbox Game Pass
価格:2300円(2025年12月24日まで2070円のセール中)※製品情報は記事執筆時点のもの
よくできたカードバトルRPGと、怖ろしくも可愛い精霊の世界に魅了されるスパ!











