2024年のThe Game Awards、『Balatro』のオーケストラ演奏を涙とともに聞きながら思ったものです…これから、私たちの人生に『Balatro』よりも夢中になれるローグライトがあるのだろうか、と。
振り返ってみれば杞憂もいいところで、やはり新たな命は芽吹くもの、人類の創造性への信頼を高める結果となりました。2025年にリリースされた中毒的ローグライト5作を振り返るとともに、現在地を総括してみたいと思います。
『Megabonk』
『Vampire Survivors』×『Risk of Rain 2』=『Megabonk』。ウマいものとウマいものを掛け合わせれば、ウマいものができる…そんなカツカレーのような一作。自動攻撃しつつ敵の群れをかいくぐり、お馴染み三択から強化を重ねるゲームプレイながら、1ステージ10分と制限時間は短く、残り6分と3分で大群が出現し中ボスも現れるなど、とにかくせわしなく楽しませてくれます。

思えば、中毒的ローグライトとは短いサイクルで計画→実行→評価→改善のPDCAサイクルを回し続ける極めて生産的な営みであり、ゲームプレイ全体の制限時間を短くしつつサイクルの濃度を上げていくという進歩を遂げているジャンルです。本作もその例に違わず、とりわけ森ステージの立体的なマップは抜群の出来映えです。
昔ながらのバニーホップが有効なためジャンプ連打で高低差のあるマップを駆け巡るのですが、どの高所から攻め、時間節約のために落下ダメをどこまで許容し、どの敵の群れを飛び越えるのか、という立体ならではの意思決定を常に求められます。この『Risk of Rain 2』的なマップ探索とボス捜索がほどよい塩梅で緊張感を与えてくれ、濃密な快楽をサクサク何度も味わわせてくれます。

まだまだ味のある粗さもありますが、リリース時から度重なるアプデでより快楽重視に調整されているため、とにかく一度試してみてもよいでしょう。
『BALL x PIT』
ブロック崩しローグライト。『BALL x PIT』を一言で説明するならば、そう表現するより他にないでしょう。ですが、この大穴は語り尽くせないほどに計算し尽くされた深淵が広がっており、入った者を掴んで離しません。二つの特殊ボールを融合させて新たなボールを生み、融合ボール同士から生まれる限定ボールまであるなど、多種多様なビルド構築は類を見ませんし、拠点作りにファーミング、各操作キャラの恒久的レベルアップ、さらに時間経過で自動的に素材を稼げる放置ゲーム的な面も顔を覗かせ、果ては自動でプレイして稼いでくれるキャラまで登場します。

驚異的なのは、これだけの要素がそれなりにまとまっているという調整度合いです。はじめこそ尽きぬ鉱脈を叩き回っていくのですが、一周目をクリアするころには気がつくでしょう。本作は、技術介入余地が極めて少ないゲームであると。多少のブロック崩し的なエイムや、ビルド知識はあるものの、実はどう足掻いてもほぼ確実にクリアできるよう調整されています。
そのミソは数多ある強化要素に死にアイテムがほとんどなく、操作キャラのレベリングにより続けるうちに自ずとステータスは上昇し、あまり腕前を問いません。あとは自動操作で稼いでエンディングを見るもよし、次々と敵が強化される二周目以降に挑むもよしです。しかし恐らくは、リリース前からかなり入念にテストプレイを行い、パラメータを調整した結果なのではないでしょうか。極上のおもてなしとしてのローグライクを求めるのならば、右に出るものがありません。

さらに、4周目ぐらいから敵の強化速度が激しくなるため、特定の破壊的ビルド以外でのクリアが困難となり、いかにしてその手順を組むかという新たな遊びが始まり、もう抜けられません。
『CloverPit』
『Balatro』×『Buckshot Roulette』。そう公言され世に送り出された『CloverPit』は、どちらとも違う異形のスロットローグライトを見せてくれました。各ステージごとに決められた目標額を目指してギャンブルに興じるという点は『Balatro』ライク、より遡るならばその元ネタである『幸運の大家様』ライクなゲームプレイで、ローポリのグラフィックに奇妙に語る謎の存在との戦いに負けたときのブラックなオチは『Buckshot Roulette』を確かに彷彿とさせます。

ローグライトとして見たとき、序盤の引きの影響が極めて大きく、戦えるビルドも限られ、スロットという性質もあり、運の要素が強いものとなっています。リセマラ推奨と言ってよいでしょう。連チャンが始まったときの興奮は確かに強いものの演出の長さもあり、実は絶え間なく熱狂が続くというタイプのゲームではありません。むしろ、このソリッドシチュエーションホラーのような状況からの脱出を目指す、アドベンチャーゲーム的な味付けが面白く、トゥルーエンド探しが楽しいものです。

とはいえ、青天井につり上がるスコアを追究するのも一興であり、中毒性は確かにあります。
『Nubby's Number Factory』
古き良き『Peggle』からパチンコの魅力を学び、ローグライトとして『Peglin』や『Balatro』を参考にし、ビジュアルに『Hylics』をひとまぶし。大雑把に説明すると、こうして『Nubby's Number Factory』が生まれました。過去のパチンコローグライトに比べ釘の数を減らしエイムコントロールという技術介入余地を広げるとともに、眺める時間を少なくしたのが本作の発明です。また、マウスひとつで手軽にプレイできるため、ながらローグライトにも最適と、隙のない中毒性を生活にもたらしてくれます。

また、本作を特徴付けているのが、釘に当たるたびに数字が倍増あるいは半減するという仕組みです。基本的に半減し、0になると釘が消滅するのですが、ビルドによっては数字を倍増させられます。こうして当たる度に倍増する釘同士を連鎖できれば破壊完了、クリアです。ただし、それまでの過程は長く設定されており、手数もかかるため、どう構築していくかが腕前の見せ所。慣れたプレイヤーのためのチャレンジ要素も完備されており、無限に続けたいという需要に応えてくれます。

本作は現時点では日本語対応していませんが、最新のアナウンスによれば有志翻訳ベースで対応予定とのことです。衝撃に備えておきましょう。
『黄泉に落ちても麻雀』
『Balatro』の数ある発明のひとつに、チップ×倍率という計算式と、倍率を加算または乗算できる強化要素が挙げられるでしょう。以後、数多のフォロワーを生み出しましたが、この一点において本家本元を越える火力を手にした一作が『黄泉に落ちても麻雀』です。基本点×翻数×倍率という計算式と、麻雀というモデルの性質は、爆発的な中毒性を生みました。なお、本来の麻雀を知っている必要はありません。麻雀の知識があれば多少の役には立つものの、本作のルールはほぼ完全に独自ルールであり、きちんとチュートリアルも存在します。

まず、計算式上、翻数が大事になります。『Balatro』のように役を強化することはできず、ドラも存在せず青天井ルールのため、翻数が高い手を目指す必要があります。そしてリーチ必須で、リーチ後はアガリ数のステータス分までアガれます。たとえば、アガリ数が4なら4回までで、その合計点で相手の点数を上回れば価値です。進めていくと相手は容赦なく20回程度アガることも珍しくないため、こちらも受けが広くアガりやすい手役を作らねばなりません。
とはいえ、これは『黄泉に落ちても麻雀』。対局前のデッキ構築で牌を偏らせることも、対局中に牌を変えることも自由自在。ブッ飛んだ麻雀マンガに出てくるようなアガリを叶えられます。麻雀は多様な楽しみのあるゲームですが、とにかく強い役を作って高い手をアガるという最も気持ちいい瞬間だけを延々と味わえるのです。

リリース後のアプデでなんと日本語フル音声に対応し、今後も続々と新キャラクターが登場する本作。さあ、黄泉に落ちましょう。
総括
さて、こうして顧みると大きく三点の流れが見えてきました。
一つ目、ゲームループの短縮および時間あたり意思決定頻度の増加。今プレイすると『Vampire Survivors』の30分という制限時間はずいぶん長く感じられ、終盤にどうしようもない死に方をすると切なくなるものです。短く濃く快楽を追究する方向で設計された作品が増える傾向にあり、これは今後も変わらないでしょう。
二つ目、視覚効果の向上。昨年の冬は、『Balatro』で計算式が燃えあがるたび心に火が灯ったものです。今年の冬は、光の点滅や光線を用いた効果や、巨大な文字表示、派手なカットインなどがなければ、もう温まらなくなってしまいました。一方で、こうした演出の強化は、ともすれば待ち時間の増加にも繋がるものです。この二律背反を乗り越える一作に期待したいものです。
三つ目、ストーリー性の強化。伝統的にストーリーは全くないか、とってつけたようなものが多いジャンルでしたが、変化が生まれつつあるように思います。本稿では取り上げませんでしたが、『StarVaders』のようにストーリーの強いローグライクも本年出ており、あるいは『CloverPit』のトゥルーエンド探索のような要素をミックスした作品が、今後ぼつぼつ出てくるのではないでしょうか。もしくは、多数の操作キャラが存在する作品では、ロアを用いて環境ストーリーテリングをすることも可能でしょう。前ふたつに比べると飛躍のきらいはありますが、今後ストーリー面を強化した作品が出てくると嬉しいものです。
いずれにせよ、無限にプレイできるゲームをこれからも遊んでいきましょう。













