気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、Soft Rains開発、PC向けに11月10日にリリースされたナラティブSF清掃シミュレーション『Ambrosia Sky: Act One』開発者へのミニインタビューをお届けします。
本作は、宇宙ステーションで発生した悲劇的な事故の後、宇宙空間にはびこる菌を清掃していくSFシミュレーション。プレイヤーは宇宙空間を探索し、機器を使って菌を除去していきます。全三部作となっており、本作はその第一章(Act One)。『Act Two』と『Act Three』は2026年中にリリース予定です。記事執筆時点では日本語未対応。
『Ambrosia Sky: Act One』は、1,700円で配信中。


――まずは自己紹介をお願いします。一番好きなゲームは何ですか?
JoelJoel Burgessです。Soft Rainsのスタジオヘッドを務めています。また、私たちの最初のゲームである『Ambrosia Sky』のレベルデザイナーでありクリエイティブディレクターでもあります。20年以上にわたって、AAAタイトルからインディーまで、様々な開発チームでゲーム開発に携わってきました。
これまでに遊んだ中で特にお気に入りのゲームのひとつが、『The Elder Scrolls II: Daggerfall』です。この作品は、ゲームというメディアが他のどんなメディアでも不可能な形で物語や世界を体験させてくれるという、計り知れない可能性を持っていることを強く実感させてくれました。その体験に触発されてゲーム開発を学ぶようになり、幸運にもキャリアの10年以上を『The Elder Scrolls』シリーズや『Fallout』シリーズの開発に携わることができました。
そして今、その経験をSoft Rainsのチームと共に『Ambrosia Sky』に活かせていることを、とても嬉しく思っています。
――本作の特徴を教えてください。また、そのアイデアはどのように思いついたのでしょうか?
Joel多くの人が、私たちのゲームを「清掃シミュレーター」と「FPS」を組み合わせた作品だと表現しており、その一風変わった組み合わせこそが、人々の興味を引く最初のポイントになっているようです。また、本作の音楽や独特なビジュアルスタイルも、このゲームを際立たせている要素として、ファンや批評家の皆さんがよく挙げています。
しかし、私個人の意見として『Ambrosia Sky』を本当に特徴的な存在にしているのは、クラシックな一人称アドベンチャーの世界設計、現代的なゲームプレイシステム、そして「死」というテーマの本質に向き合うストーリーを融合させている点だと思います。親しみやすさと奇妙さが同居する、この独特な組み合わせこそが、私が特に誇りに感じている部分なのです。
――本作の開発にあたって影響を受けた作品はありますか?
Joel『Ambrosia Sky』には、様々なメディアからの影響があります。小説家のジェフ・ヴァンダミアやベッキー・チェンバーズの作品、映画では「PROSPECT プロスペクト」や「アナイアレイション -全滅領域-」、そしてゲームでは『Spiritfarer』、『DEATH STRANDING』、さらに本作のナラティブディレクターであるKaitlin Tremblay自身が手がけた『A Mortician’s Tale』などです。
しかし、私たちにとって特に大きな影響を与えたものは、現実世界の様々な文化的な要素でした。以下はいくつかの例です。
音楽はGREJが作曲しており、口琴のような古代の楽器を取り入れています。これらの楽器は世界中の様々な文化に見られるもので、私たちは、土星近くの小惑星に入植した宇宙開拓者たちが、余った部品を使って独自の口琴を作り出したのではないか、と想像してみました。
同時に、私たちは菌類の持つ神秘的な性質にも強く惹かれました。宇宙空間でも生存できること、有害物質を分解する能力、菌糸を織り込んだ死装束としても使われること(訳注:「キノコの死装束」とも呼ばれ、人間の死後、キノコが遺体を餌にするという埋葬方法。土葬や火葬するよりも環境にやさしいと言われている)、巨大な生態系の中で情報を伝達すること…。個人的には、こうしたリサーチをゲームプレイや世界観構築のインスピレーションにすることが大好きです。
さらに、私たちは「死」そのものや「死にゆく人」を静かに支える人々の労働にも着想を得ています。多くの人にとって、このテーマは本能的に避けたくなるものですが、それでもなお、このような仕事に人生を捧げる人々の姿は、とても崇高なものでもあります。
本作のためのリサーチを進める中で、歴史や世界各地の文化において、数多くの感動的な事例を知りました。その中でも印象的だったのが、小島美羽さんです。彼女は孤独死清掃の仕事を、自身の解釈を通してアート作品へと昇華させ、日常の中では見過ごされがちな死に、敬意と可視性を与えています。

――本作の開発中に一番印象深かったエピソードを一つ教えてください。
Joel私たちは協力的な開発アプローチを大切にしてきました。私自身はクリエイティブディレクターを務めていましたが、多くの決断はチームの他のメンバーから生まれたものです。そのため、「本当に正しい方向に進んでいるのだろうか」と確信が持てない瞬間もありました。しかし、私が懐疑的だったアイデアの中からこそ、結果的に最高の要素が生まれたことも少なくありません!例えば、疑似重力システムやテザーは、その代表例です。
もう一つの例が、「バイオレメディエーション(生物浄化)」のシーンです。開発初期からいくつかの表現案を試していましたが、どれもしっくりきませんでした。そんな中、数人のメンバーが「イラストパネルを用いたシネマティックな演出」を提案してくれたのです。正直なところ、当初は上手くいくとは思っていませんでした。しかし、そのコンセプトを初めてチーム内でプレイテストした瞬間、これがとても力強い表現であることが分かったのです。
その時のビデオ通話のことは今でもよく覚えています。ごく初期のプロトタイプであったにも関わらず、感情的なインパクトが非常に強く、何人かはカメラをオフにしなければならないほどでした。優れた仲間を信頼することが、大きな創造的成功に繋がる…この教訓を私は一生忘れないと思います。
――リリース後のユーザーのフィードバックはどのようなものがありましたか?特に印象深いものを教えてください。
Joel私たちは、清掃システム、一人称パズル、そして物語を組み合わせたこの作品を、プレイヤーが本当に受け入れてくれるのかどうか確信が持てませんでした。しかし、昨年11月にPC向けに『Act One』をリリースした際、私たちが作り上げたものを理解してくれただけでなく、『Act Two』で物語がどう続いていくのかを心待ちにしてくれているプレイヤーが多かったことに、とても感動しました。
――ユーザーからのフィードバックも踏まえて、今後のアップデートの方針について教えてください。
Joel間違いなく、私たちの最優先は『Act Two』です!DaliaとClusterの物語に関心を寄せてくださっているプレイヤーの皆さんに感謝するとともに、その続きを次回の大型アップデートでしっかりお届けすることが、私たちの使命だと考えています。
――本作の日本語対応予定はありますか?有志翻訳は可能ですか?
Joel日本のプレイヤーの皆さんに向けたローカライズを実施したいと考えており、その進め方について現在検討しています。有志翻訳についてのご相談や、「『Ambrosia Sky』を自分の母国語で遊びたい」というご要望がある方は、ぜひ私たちのDiscordサーバーに参加し、直接ご連絡ください。
――本作の配信や収益化はしても大丈夫ですか?
Joelもちろんです。プレイヤーの皆さんが私たちのゲームを配信したり、収益化してくださることをとても嬉しく思います。そのような場合は、ぜひ教えてください。お気軽に共有していただけるとありがたいです。
――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。
Joel 2024年、私は初めて日本を訪れました。ビジネスミーティングを目的に、東京ゲームショウに参加したのです。初めての日本訪問ということで楽しみにしてはいましたが、あくまで仕事での渡航であり、しかも一人旅…滞在日数もほんの数日間でした。そんなこともあり、現地で出会うワクワクや熱量の大きさを心の準備なく迎えることになってしまったのです。
東京ゲームショウの一般公開エリアで感じた盛り上がり、そして東京の様々な場所の散策…そのすべてが想像以上でした。この経験を通して、日本文化におけるビデオゲームの存在感をあらためて深く理解することができ、同時に、日本のファンの皆さんに受け入れてもらえる作品を作りたいという気持ちが強く湧き上がってきたのです。
『Ambrosia Sky』、そして今後のSoft Rainsのプロジェクトが、その目標を達成できることを心から願っています!
――ありがとうございました。


◆「注目インディーミニ問答」について
本連載は、リリース直後のインディーデベロッパーにメールで作品についてインタビューする連載企画です。定期的な連載にするため質問はフォーマット化し、なるべく多くのデベロッパーの声を届けることを目標としています。既に900を超える他のインタビュー記事もあわせてお楽しみください。








