「メタスコア90点超え」、現代のゲーマーにとってこの上なく甘美なフレーズです。年間で数本の傑作にしか達し得ない評価でありますが、2026年初の作品は『Mewgenics』でした。
『The Binding of Isaac』、『Super Meat Boy』といずれもインディーゲーム史に残る名作を作ってきたEdmund McMillen氏が、Tyler Glaiel氏とタッグを組んだターン制ローグライクです。両氏のタッグはこれで4作目、ハードコア精密プラットフォーマー『The End Is Nigh』以来となりますが、元々は2012年に発表されたゲームであり、14年間の苦節を経てのリリースとなります。
本記事では、『Mewgenics』のプレイレポをお届けします。ストアページによれば200時間超のボリュームを誇る本作を10時間プレイした内容となっています。
馴染み深いターン制タクティクス
まずは、ゲームプレイの中心である戦闘から入りましょう。クオータービューの正方形グリッドと、高低差こそないものの『タクティクスオウガ』で確立されたスタイルで、日本のSRPGゲーマーには馴染み深いものでしょう。もちろん、敵味方ともに行動順、移動範囲および攻撃範囲が表示され、位置取りの駆け引きが重要になります。敵味方ともに様々な攻撃手段を持っていますが、味方の場合は移動時に通常攻撃の範囲が自動表示され、攻撃スキルを選ぶとその範囲が表示、敵の場合はあり得る攻撃範囲の合算が表示されるため、検討が容易な点は助かります。


ダメージ計算式についてですが、基本的に表示されているダメージがそのまま相手に通ります。やりとりする数字の桁も一桁から始まるため、一挙手一投足で相手を倒しきれるか、こちらが倒されないかの計算が立てやすく戦術性が高いと言えます。とはいえ、様々な要素で命中率、回避率、クリティカル率やダメージ自体の幅も出てくるため、ランのはじめは細かな計画性が重視され、徐々に乱数性との戦いになっていく設計です。これはローグライトでよくある、序盤から乱数性が高いが故のどうしようもなさへの対処としてはスマートです。

体力が0になったユニットはパーマデスではありませんが、戦闘中の蘇生手段は限られており、戦線復帰はほぼありません。戦闘終了時に少量の体力とともに蘇生するものの、体の一部をランダムで負傷し、対応するステータスが永久低下するため、極力倒されない立ち回りが重要です。状況によってはパーマデスもしますが、その場合はランダムイベントで仲間が補充される可能性があります。なお、全滅するとネコはすべてロストし、冒険失敗です。

ステージに応じて、固有の環境要素が存在します。たとえば下水道ステージであれば、定期的に水が流れ、強制的に動かされるとともに障害物にぶつかってダメージを受けたり、炎上の状態異常が鎮火したり、はたまた裏目に出たりと、相互作用は多岐に渡ります。また、地面に置いているコインを拾ってカネを稼いだり、食料を拾って回復したり、はたまた罠を仕掛けて能動的に敵を引っかけたりと、環境要素を用いた駆け引きも多岐に渡ります。他にも、エリア全域に効果をもたらす天候の要素も存在します。

戦闘終了後は、パーティのうち一匹がレベルアップします。基礎ステータスの上昇とともに、ローグライト定番の抽選された選択肢からアクティブまたはパッシブを選択、または一定レベルでは大幅なステータス上昇が発生します。単体で強力なものもあれば、一見ピーキーながら組み合わせ次第で破壊的なビルドとなるものもあり、このあたりはローグライトとしては定番ながらしっかりした作りです。

選択する能力は汎用のみならずクラスごとに固有のものが多くあり、クラス選択が肝心となります。本作は最大4人パーティーで、冒険開始時に各ネコに首輪をつけることでクラスを選択します。クラスによって筋力特化、知力特化などステータス傾向もあるため、ネコの個体値と初期スキルに応じて選ぶことになります。

初期クラスは4種類ですが、進行に従って徐々に増えていき、各クラスの能力も解放されていくため、最初から膨大な選択肢という混沌に埋もれるということはありません。ストアページによれば10種類以上のクラス、各クラス75種類の固有能力と、並大抵のローグライトの数倍のボリュームが待っています。

総じて、馴染みやすく計画を立てやすい戦闘システムをベースに、膨大な選択肢と相互作用の中から最適なものを選び抜く、入りやすく奥深いものとなっています。昨年はThe Game Awardsで『ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ』がBest Sim/Strategy Game(ベストシム/ストラテジー)部門を受賞しましたが、戦闘面では延長線上にある一作と言えるでしょう。
ちなみに、この手のゲームといえば不利な状況や悪い乱数を引くとリセットしてやり直す手段が古くから存在します。無論、著者も実行しました。三度ほど繰り返したところで『どうぶつの森』シリーズのリセットさんのパロディキャラ、Mr. Resettiが登場し、「現実世界でお前をヒドい目に遭わせる(婉曲表現)」と極めて強い言葉で脅迫を受けたため、二度と行っていません。

典型的なマップ進行
戦闘ばかりが冒険ではありません。マップはノードで各マスが繋がれた『Slay the Spire』以来の伝統的なものです。ドクロが戦闘、?がイベント、宝箱でアイテム取得となっていますが、特徴的なのは分岐の少なさでしょう。著者がプレイした限り、難易度が高いが報酬も大きいハードルートに進むか否かしか分岐は存在しません。戦闘が複雑で要素が多い作品なので、ここで悩まずにすむのは好印象です。

イベントは様々ですが、たとえばステータスを参照して成否判定を行うという古式ゆかしいTRPG由来のものがあります。海外のストラテジーではお馴染みですね。また、単純に選択肢を選ぶというものもありますが、一見して何が正解かは分からないものも多いです。内容としてはコミカルで笑えますが、結果に応じてステータス増減、バフ/デバフ付与、アイテム取得、はたまたネコに特殊な属性がつきボス戦でまさかの展開が起こるなど、かなりTRPGめいた自由なものとなっています。

マップの最後にはボスが待ち受けており、無事に倒せればステージクリア、家への帰還です。

ボスは高いステータスを持つだけでなく、1ターンに数回行動し、各々が特徴的な振る舞いをするため、ザコ戦以上に行動予測が鍵を握ります。むしろ、その行動特性を利用してハメることもできますし、ためてきたアイテムをありったけ費やしてボコボコにするのもよいでしょう。各ステージで複数設定されたボスからランダムに抽選されるため、こちらも周回ごとに飽きさせません。ただし、マップ上で画面外のコマを見ることはできず、どのボスが登場するかは通常予測不能です。運悪く対処不可能なボスに当たり、全滅する場合もあるでしょう。


深遠なるネコ繁殖シミュレーション
成否はともあれ、冒険が終われば家への帰還です。まず、一度冒険に連れ出したネコは帰宅すると引退し、二度と冒険には出られません。つまり、次の冒険のためにできればパーティー最大数の4匹分のネコを確保しなければなりません。ネコを増やす方法は大きく二つ、野良と子作りです。野良は一日に一匹、新たなネコが家に訪れるというものですが、子作りは戦闘と並んでこのゲームの遊び所です。

家では様々なことが行えますが、ひとまず一日を終えると夜にいくつかイベントが発生し、その一つが子作りです。そのもののシーンを貼ることはしませんが、露骨な交尾のアニメーションとともに、成功すれば子供が生まれます。なお、このアニメーションは設定でオンオフを切り替えられるため、苦手な方は予めオフにしておくとよいでしょう。ただし、ネコごとに性別、性的嗜好が設定されており、そもそも交尾が成立しない場合もありますし、しても子供が生まれない場合もあります。

子供が生まれた場合、親のステータスの一部から高い方や、スキルを引き継ぎます。このあたりの仕組みは明示されておらず、著者もまだまだ理解しきれていません。ですが、少なくとも、ゲームが進行するに従い強力な初期ステータスを持つネコが求められるのは明らかで、屍を越えてゆく繁殖は重要な要素となるでしょう。また、家系図も存在するため、近親交配のような要素もあるのかもしれません。


「ポケットモンスター」シリーズを彷彿とさせる要素ですが、思えば本作は怪しい博士に起こされ、三匹のネコから好きなものを選ぶ場面から始まったのでした。

家をリフォームして永続強化
冒険から持ち帰れるリソースは、ネコ、食料、アイテム、カネです。食料は、一日にネコの数だけ消費され、なくなるとネコが餓死するリスクがあります。尽きる前に次の冒険へ出かける準備を整えるのがよいでしょう。
アイテムは装備箇所ごとにカテゴリ分けされており、戦闘中に効果を発揮します。900種類以上と莫大な種類を誇る要素ですが、ここで肝心なのは、二度冒険に持っていくと壊れるということです。つまり、強力なアイテムをずっと使い回すことはできず、永久強化要素とは呼べません。また、冒険に失敗すると持ち出していたものはすべてロストします。

カネは食料やアイテムの購入にも使えますが、重要なのは家具です。本作にはハウジング要素があり、家具によって増減するステータス次第で夜に発生するイベントが左右されます。

たとえば快適度を上げると子作りが発生しやすくなるのですが、下げるとケンカが発生しやすくなります。ではケンカは悪いことなのかと言うと、一概にそうとも言い切れません。というのも、ケンカに勝利したネコはステータスがアップするためです。そのため、あえて快適度が低い部屋を作ってネコを放り込み、蠱毒のような状態を生んで強力なネコを育て上げることもできます。無論、その逆で子作りが捗る繁殖部屋も作れます。他には、家の魅力度を上げると、やってくる野良ネコのステータスが高くなります。
こうした家の発展に欠かせないのが、近隣住民の協力です。人々はネコを欲しており、提供することで様々な恩恵を与えてくれます。アイテムのストック数上限、部屋数、はじめは隠されている情報の開示などなどです。引退したネコのキャリアとして種ネコが第一に挙げられますが、天寿を全うする前に提供したほうがお得です。

住民たちは個性豊かなキャラクター揃いで、たとえば妻との間に子供ができない男は、慰めとして子ネコを要求してきます。

ネコの死体を求める男は、冒険失敗でネコをロストしたとき、死体と引き換えにカネや食料を提供してくれるなど、こうしたゲームメカニクスを人物表現として描いている点は見事です。Edmund McMillenといえば生きることの悲劇性をブラックユーモアたっぷりに描いてきた開発者ですが、本作はかつてない膨大なテキスト量の数々に毒のあるジョークやパロディが豊富に込められており、ファンを喜ばせてくれます。本作はまだ日本語対応しておりませんが、すでに対応予定で動いているとのことで、翻訳を待ってからプレイすると良いでしょう。

こうして思うがままに家づくりを実現しても、要注意。一定の日数ごとに強力なボスが襲撃してきます。来る日は示されているため、冒険を終えて鍛えられた引退ネコを揃え、装備を調えて撃退しましょう。なお、敗北すると家のネコは皆殺しです。

ネコをテーマに多様なメカニクスを融合させた果てしないローグライト
総じて、Edmund McMillenらしいゲームであり、そして三度生み出された傑作と言って差し支えないでしょう。ネコというコンセプトで手際よく様々なメカニクスを組み合わせ、要素ごとのボリュームも規格外、細かな調整まで施されたターン制戦術ローグライトです。
著者は10時間のプレイで第一幕を終え、セーブデータの達成率では13%。一般的な三幕構成として、以後もさらに複雑化していくことを思えば、200時間以上のゲームプレイというのは、決して誇張ではないのでしょう。そう信じさせるだけのものがあります。容赦ないブラックユーモアでネコが次々と死んでいく点に注意ですが、そこが問題なければ広く勧められる一作です。
『Mewgenics』は、PC(Steam)向けに配信中。2月25日まで10%オフ 3,060円で購入できます。











