
先日、『アーマード・コア』シリーズへの独自の視点からの言及をきっかけに、多くの日本人から「ロボゲー・ロボアニメ詳しすぎな外国人」として知られるようになったオリー・バーダー氏。実は、氏はゲームやアニメを中心として日本サブカルを海外に長年伝えてきた記者であり、様々なタイトルにかかわってきたゲームクリエイターでした。
弊誌の取材に対して、そんな氏がこぼした最近の悩みと言えば「ロボゲーを作らせてくれるスタジオが見つからない!」ということなのだそう。そこで、本稿では、氏の文章を通じて、氏のもつ「ロボゲー・ロボアニメ」への視点や美学の一端をお伝えしていきたいと思います。
1999年当時、ロンドン・アニメ・クラブで知り合った友人から、新作のプレイステーション用ゲームについて教えてもらいました。私がきっと興味を持つだろうということで紹介されたその作品は『オメガブースト』というタイトルで、しかも河森正治氏がデザインに関わっていると聞き、私は迷うことなく日本からの輸入を決意しました。
それより数年前、私は『アーマード・コア プロジェクトファンタズマ』がイギリスでは発売されないことを知り、UK版のプレイステーションを手放して、日本版の本体を購入しました。それ以来、ほとんどのゲームを日本版で遊ぶようになりました。確かに、セーブデータを引き継ぐために初代『アーマード・コア』を最初から遊び直す必要はありましたが、日本のプレイステーション向けゲームをすべて楽しめるのであれば、それは十分に受け入れられる代償でした。
そのような経緯もあり、日本版のプレイステーションを持っていたのは正解でした。というのも、『オメガブースト』には当時としては新しいコピー対策が施されており、友人から強く勧められていた私は、とにかく早く輸入する必要があったからです。
その頃までに、私はすでにプレイステーションやセガサターン向けの3Dメカゲームを数多く遊んでいました。プレイステーションの『機動戦士Ζガンダム』や『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』は正直なところ期待外れでしたが、セガサターンの『機動戦士ガンダム外伝 THE BLUE DESTINY』シリーズは非常に出来の良い作品でした。
また、『ガングリフォン』のような作品にも親しんでおり、『マクロス デジタルミッション VF-X』については、苦労しながらも一通りプレイしました。もちろん、『アーマード・コア』の大ファンでもありましたので、日本製3Dメカゲームの全体的な傾向については、当時すでによく理解していたつもりでした。
しかし、日本から届いた『オメガブースト』を実際に遊んだとき、私はまるで未来から来たゲームに出会ったかのような衝撃を受けたのです。
メカ系宇宙戦闘における独自のアプローチ
『オメガブースト』がもたらした最大の革新は、360度すべての方向へ自由に移動できる機動性と、敵の間をすり抜けながら滑らかにロックオンしていく操作感にありました。進行しながら次々と敵を捕捉し、私の大好きな兵器である誘導レーザーによる、美しい「板野サーカス」を無防備な敵に解き放つことができたのです。
日本には数え切れないほどのロボットアニメ作品が存在するのですから、このような空中メカ戦闘のアプローチを、誰かがもっと早く思いついていても不思議ではないと思われるかもしれません。しかし、実際には『オメガブースト』がその先駆けでした。
当時、いくつかのイギリスのゲーム雑誌が本作を取り上げ、「レールシューティング」と表現していましたが、それは率直に言って的外れな評価だったと思います。
実際のところ、タイトルにもなっているオメガブーストは、プレイヤーが意図的に止まらない限り、常に前方へ推進し続けます。そのため、新たな敵集団をターゲットにすると、機体は自然にその方向へ向きを変え、移動しながら周囲の敵を次々とロックオンしていくことになります。
操作体系は驚くほど直感的で、当時の他のアニメ調メカゲームが、すべて時代遅れに感じられるほどでした。
しかし、本当に圧倒的に格好良かったのは、「ヴァイパーブースト」を発動した瞬間だったのです。
『レイズナー』への愛あるオマージュと、卓越したメカデザイン
「ヴァイパーブースト」は本作の主人公機に搭載された特殊な兵装で、プレイを重ねることで「ヴァイパーブースト」のゲージが徐々に溜まり、一定量に達すると解放できるようになります。発動すると、オメガブーストの機体は青く発光し、オートパイロット状態で複数の敵に突撃していきます。
1999年に初めてこの演出を目にしたとき、私はこれが「蒼き流星SPTレイズナー」に登場するV-MAX攻撃へのオマージュであるとは知りませんでした。ただ、敵艦隊に向かってヴァイパーブーストを解き放つ体験そのものが、純粋に非常に格好良いと感じていました。
しかし最近になって、ゲームのプログラム内部で、このヴァイパーブーストの演出が「VMAX」とコメントされていたことを知り、このレイズナーへのリファレンスが意図的なものであったことが明確になりました。
『オメガブースト』に強く惹かれた理由の一つが、河森正治氏によるメカデザインです。私はすでに『アーマード・コア』での氏の仕事を高く評価していましたので、彼がデザインを手がけた新たなメカゲームが登場したことに、大きな喜びを感じました。

数年後、私が「フォーブス」誌の取材で河森氏にインタビューを行った際、当然のように『オメガブースト』について多くの質問を投げかけました。その中で氏は、これらのデザインがゲーム発売のかなり前に制作されていたことを明かしてくれました。実際には、プレイステーションが発売される頃、つまり初代『アーマード・コア』に関わる以前の段階で、すでにソニーから声がかかっていたそうです。
河森氏によるメカデザインが本作にとって大きな魅力であったことは言うまでもありませんが、それに見合うように、非常に制作費がかかっていると思われるオープニングムービーも用意されていました。
これらのオープニング映像は海外でも高く評価されましたが、私自身は日本版をプレイしていたため、地域ごとに使用されている楽曲が異なることを、かなり後になってから知りました。
日本版ではFeederの「Shade」が使用されていましたが、ヨーロッパ版ではCastの「Dreamer」が採用されていました。両バンドともイギリス出身であるにもかかわらず、なぜ変更されたのかは今でもよく分かりません。なお、アメリカ版ではLoudmouthの「Fly」が使用されています。
私は日本版の音楽、そしてゲーム内BGMにも強い思い入れがありますが、現在ではCastの「Dreamer」が使われたヨーロッパ版のオープニングが、最もお気に入りだと感じています。
それから、忘れる前に触れておきたいのですが、オメガブーストのパイロットであるレスター中尉を演じている声優の名前はグレッグ・ファンクと言い、その名前自体がとてもクールだと思っています。
印象的なプロモーションと、静かなレガシー
『オメガブースト』の発売前後には、日本とアメリカの両方で、非常に印象に残る楽しいテレビCMが制作されていました。日本では、おばあさんが空を飛びながら害虫を噴射で退治する内容のCMがあり、アメリカでは、遊園地のアトラクションに乗せられて気分が悪くなってしまう警察官が登場するCMが放送されていました。当時のゲーム広告が、いかにカラフルで自由な発想に満ちていたかを思い出すと、今でも楽しい気持ちになります。
イギリスでは、音楽雑誌のいくつかでも本作が取り上げられていました。これは、イギリスの有名ロックバンドの楽曲が大きくフィーチャーされていたことに加え、『グランツーリスモ』シリーズを手がけたポリフォニー・デジタルが開発を担当していたことも、大きな理由だったのだと思います。
また、『オメガブースト』は、私の身近な友人たちの中でも比較的知られており、日本での発売から約半年後にイギリス版が発売されると、実際にプレイした人も少なくありませんでした。
しかし、それから年月が経つにつれ、『オメガブースト』が徐々に忘れられていってしまったことを、私はとても残念に感じています。一般的な認知の面だけでなく、現在ではポリフォニー・デジタルの公式サイトにすら本作が掲載されていないという点も、寂しさを感じる理由の一つです。
それでもなお、私はこのゲームが今こそ再評価されるべき作品であり、現行のゲームハード向けに、現代的に進化した新作が制作されることを心から願っています。
海外におけるアニメ人気の大幅な高まりや、国際的なゲーム市場が日本発の作品を広く受け入れるようになっている現状を考えると、再び「ブースト」をかける余地は、十分にあると感じています。
オリー氏とともに「ロボゲー」を作ることに興味のあるスタジオや団体は、この記事の末尾にある氏のプロフィールから個別に問い合わせていただけますと幸いです。






