
先日、『アーマード・コア』シリーズへの独自の視点からの言及をきっかけに、多くの日本人から「ロボゲー・ロボアニメ詳しすぎな外国人」として知られるようになったオリー・バーダー氏。実は、氏はゲームやアニメを中心として日本サブカルを海外に長年伝えてきた記者であり、様々なタイトルにかかわってきたゲームクリエイターでした。
弊誌の取材に対して、そんな氏がこぼした最近の悩みと言えば「ロボゲーを作らせてくれるスタジオが見つからない!」ということなのだそう。そこで、本稿では、氏の文章を通じて、氏のもつ「ロボゲー・ロボアニメ」への視点や美学の一端をお伝えしていきたいと思います。
日本に移り住んで以来、私は「Forbes」誌をはじめとする媒体のために、おそらく百人ほどのクリエイターの方々にインタビューしてまいりました。その中でも特に、出渕裕氏・ブライアン・フラウド氏のお二人は、私の育った場所と不思議なご縁で結ばれており、そのお話を皆さまと共有できればと思い、筆をとりました。
もちろん、本稿にはメカゲームにまつわるお話も関わってまいりますので、どうか最後までお付き合いいただけますと幸いです。
出渕氏との出会い
さて、2018年のことですが、幸運にも出渕裕氏にお話を伺う機会をいただきました。出渕氏は、私にとって最も敬愛するメカデザイナーのお一人であり、卓越したアニメーション監督でもいらっしゃいます。また、真に特筆すべきは、油彩による美しい絵画を描かれる、本当の意味での芸術家でいらっしゃるという点です。
私は以前から、出渕氏の作品には、ベル・エポック期を代表する芸術様式の一つである「アール・ヌーヴォー」の影響があるのではないかと考えておりました。自然主義的な世界観と芸術を融合させたその様式は、氏の作風とどこか通じるものがあるように感じていたのです。
ところが、実際にその点についてお尋ねしたところ、出渕氏は「いいえ」とお答えになり、むしろ大きな影響を受けたのは、イギリスのアーティストであるブライアン・フラウド氏とアラン・リー氏の作品であるとお話しくださいました。
このお話を伺ったとき、私は大きな喜びを覚えました。というのも、私は「ダーククリスタル」や「ラビリンス」を観て育ち、特にブライアン・フラウド氏の作品を心から敬愛していたからです。
インタビューが終わった後、出渕氏が貴重なお時間を割いてくださったことに深く感謝したのはもちろんのことですが、さらに氏はご親切にもご自身の地元をご案内くださいました。その温かいお心遣いは、今でも強く印象に残っております。

ブライアン・フラウド氏の芸術についてのインタビュー
その約一年後の2019年、私はNetflixによる新作シリーズ「ダーククリスタル: エイジ・オブ・レジスタンス」について、ブライアン・フラウド氏にインタビューさせていただく機会を得ました。もちろんその際、出渕裕氏がフラウド氏の作品を深く敬愛しているということも、ぜひお伝えしたいと考えておりました。
フラウド氏はイギリスにお住まいのため、インタビューはSkypeを通じて行われました。実際にお話ししてみると、とても朗らかで親しみやすい方で、大変楽しい時間を過ごさせていただきました。出渕氏への影響についてお話ししたところ、フラウド氏は大変喜んでくださり、同時に身に余ることだと謙遜もされていました。
インタビューが終わる間際、フラウド氏は私を呼び止め、「イギリスのどちらのご出身ですか」とお尋ねになりました。
イギリスでは、話し方のアクセントが、その人がどこで育ったかを示す非常に明確な手がかりになります。いわば英国人に備わった“第六感”のようなもので、フラウド氏も私のアクセントからそれを感じ取られたようでした。

そこで私は、「ハンプシャー州の、ほとんど知られていない小さな村の出身です」とお答えしたところ、フラウド氏は笑われました。
というのも、私が育った村の名前はハートリー・ウィントニーというのですが、なんとフラウド氏も同じ村で育っていらしたのです。
それだけではありません。フラウド氏はその村の学校に通われており、その学校は、私が育った家の文字通りすぐ隣にありました。
さらに、子どもの頃の休み時間には、自然を愛していたフラウド氏は村に出て、古くからある樫の大木を写生していたそうです。
つまり、私が子どもの頃に遊び回っていたあの木々こそが、フラウド氏の芸術にインスピレーションを与え、そして巡り巡って出渕氏の創作にも影響を与えていたということになります。
まるで中つ国にありそうで、実在する小さな村
少し背景をご説明いたしますと、ハートリー・ウィントニーは、ハンプシャー州にある非常に古い村です。最古の記録は12世紀頃にまでさかのぼり、村のあちこちには歴史ある建物が点在しています。また、「コモン」と呼ばれる広大な共有地があり、そこには数多くの樫の大木が立ち並んでいます。
これらの樫の木々は、もともと1807年にイギリス海軍の戦艦建造のために植えられたものですが、長い年月を経て、いまでは村の風景そのものを形作る存在となっています。
ちなみに余談ではございますが、私は大学の休暇中、村に二軒あるパブのうちの一軒でバーテンダーとして働いていたこともあります。しかし、この話は本題から少し逸れてしまいますね。

ここでお伝えしたい大切な点は、この村そのものが非常に古く、自然に満ちており、どこを見ても不思議な形をした古い樫の木が立っているということです。
ですから、若き日のフラウド氏が、あのような魔法的で幻想的なイメージを生み出すようになったとしても、決して不思議ではありません。そして、彼のファンタジー作品が私にとってどこか懐かしく感じられる理由も、そこにあるのだと思います。
それは、私にとって「故郷」の風景そのものだからです。
「オーラ・ファンタズム」とヴェルビン
私が最も愛してやまないメカアニメの一つは、間違いなく「聖戦士ダンバイン」です。出渕裕氏に本作についてお話を伺っただけでなく、富野由悠季監督や宮武一貴氏にもインタビューさせていただく機会に恵まれました。
その中でも、出渕氏が手がけられたスピンオフ作品の一つが「オーラ・ファンタズム」です。
本書はB-CLUBの特別企画アートブックであり、「オーラバトラー」シリーズの一冊として刊行されました。ちょうど「ダンバイン」のOVAが制作された頃に発売され、そのOVAにおいても出渕氏がデザインを担当されています。
書籍の中では、初期のオーラバトラー各機に対する出渕氏によるリファインデザインが掲載されており、その中でもひときわ印象に残ったのがヴェルビンでした。

ヴェルビンは、テレビアニメ版に登場したビルバインを、より優雅かつ洗練された姿へと昇華させた素晴らしいデザインでした。
初めてその姿を目にしたとき、私は直感的にこの機体を愛してしまいました。そして今なら、その理由がわかります。あの造形には、どこか故郷を思わせるものがあったのです。
そのヴェルビンが『スーパーロボット大戦T』、さらに『スーパーロボット大戦Y』にも登場したとき、私は当然のことながら大いに心躍らせました。すべてのミッションを圧倒する存在へと育て上げたのは、言うまでもありません。

また、ROBOT魂版のフィギュアはもちろんのこと、さらに大型のMETAL BUILD超合金も購入いたしました。いまでは私のコレクションの中でも、とりわけ特別な存在となっています。
本稿を書いたのは、日本のクリエイターが常に国境を越えてインスピレーションを求めているということをお伝えしたかったからでもあります。しかしそれ以上に、メカという独自で素晴らしい文化や、一人の芸術家が樫の木を描いて育ったという物語を通じて、私たちが思いがけないかたちでつながっているということを共有したかったのです。
そして次回のコラムでは『スーパーロボット大戦』シリーズについて取り上げる予定ですが、その前に、この物語をお伝えしておきたいと思いました。なぜ私があの作品群をこれほどまでに愛しているのか、その文化的背景をご理解いただく一助となれば幸いです。
オリー氏とともに「ロボゲー」を作ることに興味のあるスタジオや団体は、この記事の末尾にある氏のプロフィールから個別に問い合わせていただけますと幸いです。










