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海外業界誌がスクウェア・エニックスに聞く!『Crystal Tools』国産エンジンの秘密

以前からホワイトエンジンの名前で呼ばれ、今年のGDCでお披露目されたスクウェア・エニックスのコモン開発プラットフォーム、クリスタルツールス([b]Crystal Tools[/b])。そのGDCでも講演された村田琢氏に、日本国内外の事情にも通じているGamasutraが、海外なら

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以前からホワイトエンジンの名前で呼ばれ、今年のGDCで[url=http://www.gamespark.jp/modules/news/index.php?p=5134]お披露目された[/url]スクウェア・エニックスのコモン開発プラットフォーム、クリスタルツールス([b]Crystal Tools[/b])。海外からも熱い注目を集めるファイナルファンタジー13(Final Fantasy XIII)を始め、なかなか新しい情報の出てこないスクウェア・エニックスの次世代大作タイトル群ですが、その基礎となる土台作りは現在も着々と進行している模様。

スクウェア・エニックスで研究開発部長を務められ、GDCでも講演された村田琢氏に、開発者向けの専門誌Game Developerを発行し、日本国内外の事情にも通じているお馴染みGamasutraが、海外ならではの視点でインタビューしたその内容が先週公開され、国産ゲームエンジン誕生の内幕が多くの海外サイトで紹介されました。今日はその全文を一気にどうぞ。


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[size=x-small]海外からも大きな注目を集めた、E3の発表からそろそろ丸2年。気になる発売日は一体……
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[b]Gamasutra: [/b]まず始めに、ご自身の経歴からお聞かせいただけますか?


Taku Murata: スクウェアに入社してから、Secret of Mana(※SFCで発売された聖剣伝説2)と、続編の……こちらで発売されたのかわからないのですが、聖剣伝説3をやりました。Final Fantasy TacticsとVagrant Storyでは、リードプログラマーを、PlayOnlineの時はディレクター、Final Fantasy XIIではテクニカルスーパーバイザーです。


[b]Gamasutra: [/b]Square Enixにおける内部エンジンの名前を、White EngineからCrystal Toolsに変更しようと決めたのは、どのような理由からでしょうか?


Taku Murata: 実はWhite Engineという最初の名前は、我々が単にコードネームのようにして使っていたんです。それで、昨年の9月に最初のバージョン1.0をリリースしました。この時になって、公式にエンジンの名前を決めようとしたのですが、何か我々の会社を反映したものにしたいと思いました。

それがつまり、『クリスタル』です。たくさんの異なった色合いを含んでいるので、その意味も込めて。クリスタルには、私達の会社そのものであるかのような響きがあります。



[b]Gamasutra: [/b]ゲームエンジンの開発は、どのようなものだったのでしょうか?まず、完全にスクラッチから起こされたのでしょうか。そうでないとしたら、他になにかベースとなるものがあったのでしょうか?


Taku Murata: 実のところ、既にあった何の部品も使いませんでした。基本的にどれも自分達の経験に基いて、ゼロから始めたのです。これまでの経験から役に立つとわかっていたものを選び出すようにして、私達は優れた知識や経験を全部、ひとつのゲームエンジンへ一緒に加えていきました。



[b]Gamasutra: [/b]Square Enixにとって、ゲームエンジンを開発するにあたり最も重要な点はどこだったのですか?今後Square Enixが出すゲームに合わせ、多目的なエンジンを作られたのでしょうか。


Taku Murata: 実際私達は、全てのゲームに使える基盤を作ろうとは考えませんでした。全てをカバーするのではなく、そのベースをカバーすること。ですから、他のツールに対応したプラグインを使うこともできるようになっています。開発するタイトルに合わせて、エンジンに含まれていないものは自分で付け加えることも可能です。





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[b]Gamasutra: [/b]マルチプラットフォームに対応するということは、いつの時代もひとつの挑戦です。現代の開発システムにおいて、そうした困難へどのように対処されたのでしょうか?


Taku Murata: 本当のところ、PS3のSPUと360のマルチコアについては既に最適化されてあります。本当に問題なのは、VRAMのサイズなんです。ですがVRAMのサイズは、テクスチャの大きさを調整することでなんとかなりますから、対処することは可能なのです。

そうした意味においては、技術的になにもPS3から手を付けなくてはならないと騒ぎ立てることはないと私は思っています。PS3はとてもパワフルで拡張性のあるマシンですから、コンバート作業を正しく行う限りにおいては、それが問題になることはないはずです。



[b]Gamasutra: [/b]日本における企業の多くが、技術的な面で日本のゲーム業界が後れを取っているのを感じるとおっしゃっていました。なかでも、そういった技術に関するPCの進歩と発展はどれも海外からやってきて、そうしたサポートも英語だというわけです。しかし、このエンジンはかなりハイエンドで、今のところ日本の企業においてこれは貴重な存在にも思えます。この点については如何ですか?



Taku Murata: PS3が立ち上がるまでの間、360とPS3に関してそれは事実でしょう。当時それまでの経験や、あるいはPCマーケットにおける基盤が日本になかったため、日本の技術開発が遅れを取っていたかもしれないということには同感です。ですが、あれから状況は変わりました。

今日、特に日本的な表現手法においては、『ゲーム中に、ウチらほとんどなんでもできちゃうね』といったところまで、PCのアーキテクチャやテクノロジーが進歩したと感じています。

言葉の壁については、確かに未だ難問です。コミュニケーション面についてはそうした課題を抱えていますが、技術に関してなら遅れを取っていると私は思いません。そうした問題は恐らく克服したか……あるいは、もうその点は通り過ぎてしまったのではないでしょうか。




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[b]Gamasutra: [/b]次の質問ですが、Unreal Engineをライセンスされた理由について聞かせてください。


Taku Murata: 特定の海外市場、欧米のマーケットを念頭に置いていたので、Unreal EngineをThe Last Remnant(ラストレムナント)のために使いました。ゲームエンジンというものは、マーケットやクリエイターの文化や哲学が反映されたものだと私は考えているのです。

実際のところ、我々が全てのタイトルにCrystal Toolsを使うと言うつもりはありません。もちろん、Final Fantasyを作るのにCrystal Toolsは理想的で、申し分ないものです。しかし、他の作品については、他のエンジンを使った方が良いこともあり得えます。

そうした意味において、別の方法を使うという選択肢は常にあるのです。もちろんそれは、Crystal ToolsがFinal Fantasyしか作れないという意味ではありませんが。



[b]Gamasutra: [/b]このエンジンが特に日本人の考え方に根差しているというお話について、もうちょっと詳しく聞かせてください。それは、開発のパイプラインとかワークフローに関してということでしょうか?

Taku Murata: それが、とても日本的であると言うべきではないかもしれません。あまりに漠然としていますから。それはつまり、とてもスクウェア的だということです。

Final Fantasyの大規模な開発から我々が得た全ての経験が、このエンジンに注ぎ込まれているということなのです。



[b]Gamasutra: [/b]英語が中心の海外エンジンに対して、日本のデベロッパが苦労したことを思えば、Epicがアメリカでしているように、Crystal Toolsを他のデベロッパへライセンスされたりするお考えはないのでしょうか?


Taku Murata: 選択肢として検討はしています。ですが、現時点においてドキュメント類の準備やサポートのコストを考えた場合、それが不可能だとは思いませんが……現時点において、そうしたことは行っていません。




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[b]Gamasutra: [/b]では将来に関して、仮に技術をライセンスすることになるとしたら、あなた方が恐らくは、日本で最初の企業にあたることでしょう。現時点において、そうした事が受け入れられるとお考えですか?つまり、日本ではこれまで、自分達の技術をドアの外に出してシェアするというやり方は大変に困難だったと聞いています。



Taku Murata: 以前に比べたら、状況は変わりました。Koeiは、実際にDynasty Warriors(三国無双)のエンジンを(NBGIの)ガンダム無双にも使っています。CapcomのMT Frameworkも、私はライセンスするのではないかと思っています。状況は変わりました、我々が最初の一人というわけではありません。



[b]Gamasutra: [/b]こうした変化は、なぜ現れたとお考えですか?こうしたことはどれもごく最近、ここ2〜3年のことだと思うのです。


Taku Murata: これは私の個人的な見解ですが、以前は自分達の技術をシェアすることなく自分達のためだけに使ってきました。そんな風にして、安全策を続けてきたのです。

ですが最近になって、特に次世代ゲーム機のためには、開発者同士の間で技術的な情報を共有する重要性に気がつきました。欧米のゲーム業界がPCに強いバックグラウンドを持っていたので、こうした点において彼らは強力でした。日本の開発者達も、恐らくはそれを理解したのでしょう。




[b]Gamasutra: [/b]社内で自分達のエンジンを作ることに比べ、他社からライセンスを受けることの利点は、どこにあるとお考えですか?西洋の業界でさえ、これについては多くの議論があるところです。

Taku Murata: それは、既にあるものを買った方が明らかに早いです。買うのは簡単ですし、恐らくは自分達で作るより安く済むことでしょう。

内部開発されたツールを使うメリットは、要するに……私達がCrystal Toolsを開発したのは、これまでのFinal Fantasyシリーズから得た経験のノウハウを全部活かしたかったからです。優れた経験をみんな入れておきたかったんです。それがつまり、こうしたツールのメリットです。



[b]Gamasutra: [/b]既存のライセンスの場合、それを実際どのように使い、どう開発工程に組み込むかのところで、難しい面があるようにお考えということでしょうか?つまり手に入れるのは早いけれども、あなた方にとってそれを上手く役立たせるのは難しいと。

Taku Murata: それこそ、Square EnixにとってCrystal Toolsがなにより親しみやすいエンジンである理由なのです。




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当初のWindows PCやPS3、Xbox360に加え、現在はWiiまでをターゲットにした、まさに次世代のFFシリーズを作るための純国産エンジン、Crystal Tools。

GDC当時の質疑応答で明らかにされていた話もありますが、海外と日本の置かれた環境の違いや、初めてのゲームエンジン開発の内幕を率直に語られていて、いよいよ変わり始めた日本のゲーム開発の様子を窺い知ることができます。

本格的な作業が始まってから、昨秋のファーストリリース完成までは約1年でたどり着いたということで、現在はまずゲームの完成に全力投球といった感じですが、一昔前まで日本のゲーム業界では想像も出来なかった、FFシリーズのために生まれたクリスタルなゲームエンジン。いずれ光の戦士達から召還獣まで、プレリュードの向こうからは様々な可能性も飛び出してきそうです。
[size=x-small](ソース:[url="http://www.gamasutra.com/php-bin/news_index.php?story=18246"]Gamasutra: "Q&A: Square Enix's Murata Talks Crystal Tools, Unreal Engine Initiatives"[/url])[/size] [size=x-small](イメージ: [url="http://www.flickr.com/photos/abriael/2294355207/"]Flickr[/url])[/size]



 
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《Miu》
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