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少女の精神世界を旅するアクションADV『GRIS』プレイレポート!幻想的で芸術的なグラフィックと演出に圧倒される

芸術的に美しいグラフィックと演出、そしてパズル要素もあるアクションアドベンチャーゲーム『GRIS』のプレイレポートをお届けします。ただの雰囲気ゲームではない、しっかりとしたアクション性のあるゲームです。

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少女の精神世界を旅するアクションADV『GRIS』プレイレポート!幻想的で芸術的なグラフィックと演出に圧倒される
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!注意!本記事にはゲームのネタバレ表現が含まれています。



芸術的に美しいグラフィックと演出、そしてパズル要素もあるアクションアドベンチャーゲーム『GRIS』のプレイレポートをお届けします。

本作の開発はNomada Studio、配信はDevolver Digitalで、Steamとニンテンドースイッチにて12月13日に配信されました。Nomada StudioはAAAゲーム開発の経験があるAdrian Cuevas氏とRoger Mendoza氏、そしてアーティストConrad Roset氏によるスペインのインディーデベロッパー。本作がデビュー作となります。ゲームの特徴はなんと言ってもConrad Roset氏による水彩画のような美しいイラストレーション。プレイヤーを幻想的で芸術的な世界へ誘ってくれます。

またDevolver Digitalは見下ろし型シューティング『Hotline Miami』シリーズや爽快FPS『Serious Sam』シリーズ、2択ADVゲーム『Reigns』シリーズ、いろいろな意味で話題のサバイバルゲーム『SCUM』など、独特で尖ったゲームを数多く配信していることで有名なアメリカの大手パブリッシャー。独特な世界観を持つ『GRIS』とは、ある意味出会うべくして出会ったといったところでしょうか。

『GRIS』トレイラー

本作のジャンルは2Dアクションアドベンチャーゲーム。パズル要素も多く用意されており、ジャンプアクションなどそれなりにコントロール技術も必要になってきます。ただし、本作に「死」はありません。前回プレイレポートをしたローグライクアクションゲーム『BELOW』で即死トラップを踏んでは最初からやり直しというのを繰り返していたため、筆者的には良い癒しにもなります。

タイトルにある『GRIS』とは、主人公である少女の名前のこと。グリスは何かつらい体験をして、それによって自分自身の精神世界に迷いこんでしまいます。内なる世界を冒険して成長し、やがて新たな自分の世界を創り出していきます。ちなみにスペインの画家にファン・グリス(Juan Gris)という有名な人物がいて、色彩溢れるキュピズム画を多く残しています。ゲームが進むに従ってどんどん色鮮やかになっていく画面は、ファン・グリスの作品群を思わせます。本作とファン・グリスが関係あるかは分かりませんが、ゲームでありながらアート性を重視した本作に似つかわしいタイトルと感じられます。さっそくプレイしていきましょう。

色の失われた世界


オープニングムービー

ゲームを開始すると、少女グリスが石でできた手のひらの上で歌を歌っています。この巨大な手が何なのかは、まだここでは説明がなされません。というよりも、このゲームはストーリーに関するテキストがいっさいありません。画面情報から物語を推測していく非言語タイプのゲームです。

グリスは歌の途中で声が出なくなります。やがて足場であった石の手が崩れ、グリスは空を落下していきます。このとき、空の色が次々と変化していくところにも注目です。


地表に落ちたグリス。先程まであった周囲の色はすべて失われてしまっています。青春を謳歌していた少女が、何かしらの辛い体験によって精神を崩壊させ(つまり崩れたあの石の手は少女自身)、色も形もない世界へと放り出されてしまったというメタファーでしょうか。

気力もなくなり、グリスはうなだれます。ここから操作可能になりますが、横移動しかできません。また任意のボタンを押した途端、グリスは座りこんでしばらく動かなくなってしまいます。移動以外のアクションはさせてくれないようです。

走ったりジャンプすることができるようになったグリス

うつむいたままひょこひょこ歩きでしばらく進んでいくと、背景がだんだんと形作られてきました。グリスは声が出ないことを嘆きながらも、意を決したように走り出します。失意の中、現状に立ち向かう勇気が出たようです。Aボタンでジャンプもできるようになり、アクションゲームらしくなってきました。

先へ進むと、一本線だけだった背景はどんどん複雑になっていき、白だけだった色に黒が加わってモノトーンの世界へと変化します。グリスがこれから新たな世界を作っていくことの暗示でしょう。このあたりは実際にプレイしてみることを強くオススメします。できればXboxコントローラなど、振動機能の付いたパッドの使用を推奨。このゲームは視覚的な美しさだけでなく、グリスとともに歩むという「体験」が重視されています。プレイ動画を見るだけでは伝わらないものがありますので、ぜひとも。

色を取り戻すグリス



背景の描画は複雑になってきましたが、まだ全体的に寂しい感じです。画像左側にある白く丸いものは実績解除用のアイテム。実績欄を見ると「形見」と書いています。「どうやって取るんだ?」みたいな場所に配置されていて、取るには結構頭を悩ますことでしょう。取らなくてもゲームクリアは可能なので、クリア後の楽しみに残しておいてもいいかもしれません。


画像上部に見える光る球体ですが、先程と違って、こちらはクリアに必要なものです。他のゲームでいうところのいわゆる「鍵」の役割。所定の数を集めなければ先へ進めない場面が先々に出てきます。グリスのジャンプでは届かないので、まわりこんで上から取りましょう。ちょうどこの先に斜塔があります。


斜塔の上まで登っていくと、巨大なエイのようなものが画面を横切っていきました。本作ではこのようなフレーバー的な幻想生物が多く登場し、独特の世界観を形成しています。それらを眺めるだけでも結構楽しいものがあります。また空間の広さの演出やカメラワークも丁寧で、ゲームをやっているというよりはアートを見ているかのような気分にさせられます。

「赤」を取り戻したグリス

光る球体を回収し、先へ進んでいくグリス。やがてオープニングで足場だった巨大な手が登場。手に乗ったとたん、グリスが宙に浮かび上がり、辺りの景色に「赤」が加わりました。このように色を取り戻していくのも、ゲームの目的のひとつです。色が加わるたびに背景の色彩はどんどん豊かになっていきます。

赤の世界



「赤」を取り戻したグリス。先程のモノトーンの画像と比較すれば、どれだけ変わったかがわかります。ここは長い坂になっていて、グリスがその上を勢いよく滑っていきます。急に爽快アクションになり、なぜか名作アクションゲーム『ストライダー飛竜』を思い出しました。本作はアクションゲームとしても緩急があり、飽きさせない作りになっています。


さらに進むと、背景ももはやアート作品。画面に見えるプロペラですが、風が吹くとちゃんと回ります。ゲームはこのように動的表現もできるので、静止画と違った新たな芸術の可能性が見られます。美しいイラストの中を走り回っている感じが心地いいですね。ちなみにこのあたりは定期的に強風が吹き、食らうと吹き飛ばされてしまいます。


しばらく行くと、先へ進めなくなりました。光る球体が必要なので、マップを探索して回収。また戻ると、球体が空中に配置されて点と線がつながり、橋に変わります。ゲームではこのように球体を集めることで道を開いていきます。

新たな力を獲得するグリス



先程の空中の橋から先へ行くと、ちょっとしたビックリ演出があります。これも実際にプレイして体験してみてください。さらに進むと強風はますますひどくなってきて、前進するのも困難に。この強風に負けない力が欲しいところです。


謎の建物にたどり着き、グリスはついに能力を身に付けました。画面下に「Xボタンを長押し」と出てきます。ちなみに文字が出るのはこの手の操作説明だけで、先程も述べたようにストーリー関連のテキストはいっさいありません。


Xボタンを長押しすると……!?なにやら服が箱のようなものに変形しました。ス〇ーク?いや、顔が上からわずかに突き出ていますね。これが新たな力のようです。移動速度は遅いですが、このまま歩けます。そして重量が増えたおかげか、箱状態なら強風が吹いても吹き飛ばされなくなりました。女の子にとって嬉しい能力かどうかは微妙なところですが、これで強風にも負けない力を手に入れました。


ジャンプからの箱変形で、崩れかかった岩場もその重量を生かして粉砕することができるようになりました。だいぶたくましくなってきたグリス。この後もさまざまな能力を身に着け、立ちはだかる困難を切り開いていくことでしょう。この先はあなた自身がプレイしてみてください。

ただの「雰囲気ゲーム」ではない「アクションADV」


本作のプレイ前の印象は、正直「芸術性を前面に押し出した雰囲気ゲーム」といったものでした。アクションや謎解きはおまけ的なもので、あくまでビジュアル面を重視したゲームかと思っていたのですが、エンディングまでプレイして印象がだいぶ変わりました。タイミングを要求されるジャンプや困難な足場など、アクションゲームとしてもしっかりと作られた作品です。ボス敵のようなものも登場します。

また謎解きに関しても頭を悩ませるパズル性を持っていて、「どうやったらいいんだ?」と悩まされる場面でいろいろ思考錯誤してみて、「ああ、分かった!」といった気持ちのよい気付きがあります。特にグリスの獲得していく能力が、このアクション性・パズル性と上手く組み合わさって良い相乗効果を出しています。ビジュアル抜きにしても、ゲームとしてクオリティの高い作品です。


そして、後半へ行けば行くほど色彩豊かになっていく世界は、グリスの心の変化をも表しています。アクションも増えていき、ジャンプしていただけの序盤とはまったく別物のゲームになります。このだんだんと変化していく過程は、やはり実際にプレイして体験して欲しいところ。ちなみに筆者はゲームを始めてから先が気になり、そのまま一気にエンディングまでクリアしてしまいました。寄り道しながらで、プレイにかかったのはだいたい4時間ほど。ゲームとしては短編の部類ですが、名作映画を見たような充実感があり、遊んでよかったと思える作品でした。ぜひグリスとともにこの幻想的な精神世界を旅してみてください。

製品情報


    『GRIS』


    開発・販売:Nomada Studio、Devolver Digital
    対象OS:Windows
    通常価格:1,730円
    サポート言語:日本語、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語
    Steamストアページ:https://store.steampowered.com/app/683320/GRIS/
《渡辺仙州》

歴史・シミュ・ボドゲ好き 渡辺仙州

主に中国ものを書いている作家。人生の理念は「知られていない面白いもの」を発掘・提供すること。歴史・シミュレーションゲーム・ボードゲーム好きで、「マイナーゲーム.com」「マイナーゲームTV」を運営中。著書に「三国志」「封神演義」「西遊記」「封魔鬼譚」(偕成社)、「文学少年と運命の書」「天邪鬼な皇子と唐の黒猫」(ポプラ社)、「三国志博奕伝」(文春文庫)など。

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