Game*Sparkレビュー:『ウォッチドッグス レギオン』 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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Game*Sparkレビュー:『ウォッチドッグス レギオン』

七ヶ月という長めの延期を経て発売された、ハッキングを駆使して監視社会と戦うオープンワールド型アクションシリーズ最新作『ウォッチドッグス レギオン』のレビューをお届けします。

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「デッドセック(Dedsec)」の一員となりハッキングを駆使して監視社会と戦うオープンワールド型アクションゲームシリーズ最新作『ウォッチドッグス レギオン』が、七ヶ月という長めの延期を経てようやく発売されました。公式サイトでも打ち出されている「誰にでもになれる」というキャッチコピーの通り、シナリオ内で予め設定されている重要人物以外なら誰でも操作できるというリクルートシステムが、発売前から話題を集めていました。

事前情報で提示されたコンセプトのおもしろさや(ロンドンらしい)UKパンク色強めな赤黒基調のアートワークのかっこよさなどは個人的にどストライクで好みでしたし、先行体験会でのプレイ感も中々好感触だったので、筆者としても本作にはなかなか期待をかけていました。メインストーリーをクリアした今の正直な感想としては「期待通りの大傑作ではないが、UBIのゲームらしく普通にある程度は楽しめる作品」という印象です。ここからは、そういう印象に至った細部を色々掘り下げていくこととしましょう。なお、今回のレビューにはPC版を使用しています。

「誰にでもなれる」リクルートシステム

まずは「リクルートシステム」について述べていきます。本作では街中にいるすべてのNPCをデッドセックの味方に引き入れ、操作できます。チュートリアルが終わり一番最初にプレイする工作員を選択したあとは、「リクルートシステム」でデッドセックの味方を増やしていき、状況に応じて使い分けていくことがゲームの重要なキーになります。

「リクルートシステム」を実現するため、街の人間には(おそらくある程度の法則性はありながらもランダムに)職業やスキルなどが割り当てられています。基本オープンワールドゲームのNPCは使いまわし、かつ一期一会の存在ですが、ちょっとフレーバーが加わるだけでグッとリアルな存在に感じますし、意味なく通行人の情報を収集しているだけでも人間観察的な楽しさがあります。普通のゲームではまず注目されることのないNPCであっても、例えば「目出し帽を大量購入している忍び足が得意な無職」という属性が与えられたとたん、味わいのある存在として見えてくるから不思議ですよね。

デッドセック工作員として役立つスキルばかりではなく、ときにデメリットのあるスキルを持った人がいるところもユーモラスで面白かったです。「デメリットを持ったキャラクターばかりを集めてしばりプレイしよう」的な、自分なりのプレイスタイルを構築しやすいところも優れています。

特にプレイ開始~序盤部あたりまで、リクルートシステムには無類の楽しさがありました。しかしゲームなのである程度仕方のないことですが、キャラクターのスキルやデメリットにはバリエーションの限界があり、またミッションなどで「使える」「強い」スキルとなると更に少数なため、徐々に新鮮さや楽しさが目減りしていってしまう点はかなり残念でした。一部のスキルが強いために、効率的にプレイしようとすると使用キャラが自ずと数名に固定されていくかと思います。

最初は非常にワクワクさせられるリクルートシステムですが、ロンドン市民の多くが似たようなスキルセットかつ似たようなグラフィックの存在であることに気づくまで、そう時間はかかりません。ストーリー上で喋るセリフなども(当たり前ですが)テンプレート化されていきますし、勧誘ミッションも数パターンしかないので、よっぽど脳内設定がうまい人でないかぎりプレイヤーキャラクターに愛着も湧きづらいのではないかと思います。

また、ないものねだりかもしれませんが、デッドセック同士で協力するシチュエーションがあまりに少ないのも不満点です。たとえば「潜入に特化したスパイで情報を盗み帰ってくると、そこに逃走用ドライバーが待機していてくれて一緒に逃げることができる」、というような仲間同士のシナジーが存在しないため、どれだけ仲間が増えてもあんまり変わらないように感じられてしまいます。このあたりは現在未実装のマルチプレイモードで補完される部分もあるのでしょうか?

と、不満点めいたものも述べてしまいましたが、それはこの「リクルートシステム」が大きな可能性を秘めたものであることの裏返しでもあります。プロモーションの通り、本作の最も大きな特徴かつ最も面白い部分なのは間違いないでしょう。というか、「リクルートシステム」がなかったら本作はかなり凡庸なゲームだったと思います。

オープンワールド・ハッキングアクション

本作のジャンルは『グランド・セフト・オート』シリーズに代表されるようなオープンワールドアクションゲームで、今までの『ウォッチドッグス』シリーズと同様に、ハッキングによって街中のものを操作できます。例えば車をハッキングしてあらぬ方向に走行させたり、監視カメラをハッキングして自分がこれから侵入する建物の内部を探るというようなことです。

といっても今作は(リクルートシステムのために)操作キャラクターが必ずしもハッカーではないので、『ウォッチドッグス』シリーズ特有のギークっぽい世界観は特に前作に比べると薄れているように感じられました。「ハッキングできるもの」や「ハッキングでできること」の種類も(おそらくは意図的に)あまり多くはないです。

街中には無数のコレクタブルアイテムや達成目標が存在し、ハッキングを駆使してパズルっぽく目的に接近する寄り道/やり込み要素になっています。このあたり、非常に「UBIのゲームらしい」やり込み要素なので、同社のゲームをよく遊んでいるプレイヤーにとっては「また似たようなゲームやってるな……」と感じさせるものなのですが、何故かプレイし続けてしまう魔力のようなものがあります。

抑圧された地区を解放する要素もあるのですが、解放ミッションの多くがドローン中心であったり自動車レースであったりちょっと独特なプレイ感を持っている点が面白かったです。

ストーリーやテーマ性、キャラクターについて

『ウォッチドッグス レギオン』は発表当時ブレグジットの騒動真っ只中だったこともあり、非常に強い現実とのリンクを想起させましたが、実際発売された本作のプロットはどちらかといえば荒唐無稽SFスパイフィクションといった趣で、そういう「重たさ」はほとんど感じられません。

物語冒頭部、謎のハッカー集団(?)であるゼロデイにハメられたデッドセックはテロリストの首謀者に仕立て上げられ、社会的な信用を完全に失ってしまうことになるのですが、これはこの間発売されたゲーム『Marvel's Avengers』とほぼ完全に同じ導入なので、ちょっと驚きました。全てを失ってテロリスト扱いされているという崖っぷちの状況から立ち上がるのが「アベンジャーズ」のようなスーパーヒーロー集団ではなく、民衆であるというのは非常に感動的です。

(「アベンジャーズ」に登場するジャーヴィスのように)本作には味方としてスーパーAIである「バグリー」が登場します。バグリーはイギリスのAIらしく(?)皮肉屋で魅力的なキャラクターですし、ゲーム内で行われる作戦のほとんど全てを彼が考えているため非常に優秀です。

本作は「誰にでもなれる」というゲームの性質上、主人公が主体的な意思をもって能動的にストーリーを動かすことができないため、バグリーは実質的な主人公なのかもしれません。本作においてプレイヤーはバグリーの構想を、肉体を持たない彼の代わり「実行」するための存在だとも言えるでしょう。

本作は悪役のキャラ造形も面白く、強い存在感を放っています。特にAI企業「ブレカ・テック」のCEOであるスカイ・ラーセンはなかなか強烈なキャラクターで、彼女の家に行くくだりは多くのプレイヤーの印象に残るでしょう。ちょっと近未来で実現するとは思えないようなトンデモ技術を用いるため、本作のSF感を五段階ぐらい引き上げて荒唐無稽にしている最大の原因だとも言えますが、筆者個人としてはその荒唐無稽さも本作の美点だと考えています。

本作物語の後半部には、いくつかのツイスト、つまり「どんでん返し」が用意されています。ここではその詳細について語りませんが、個人的にはあまり好きなタイプの「どんでん返し」でなかったため、少々失望しました。ゲームを通じてやってきたことが全て水泡に来しかねないタイプの展開ですし、黒幕の真意も抽象的で正直なにがしたいんだかよくわからなかったです。伏線やヒントはきちんとあったので、フェアなものではあると思います。

問題点

今まで述べてきたものとは別に、本作には致命的な問題点が存在しています。それは多すぎるバグです。オープンワールドゲームでバグが発生するのはある程度しょうがないことですが、本作は「ある程度」を超えてかなりバグが多い作品です。NPCが壁に向かって歩き出してワープしたり、自動車が突如消失したりなど、変な挙動をするのは日常茶飯事ですし、隠れているだけで何もしていないのに、目標物が勝手に爆発してミッションクリアになったりなど、よくわからない現象にプレイ中何度も遭遇しました。

後半部は難易度が高く長いミッションも多くなりますが、ミッション途中でゲームが応答しなくなり画面が真っ暗になるというようなことも数回ありました。そしてその度に少々長めの戻し作業が発生するため、正直心が折れかけたりもしました。筆者の個人的な環境の問題かとも思いましたが、Twitterやネットニュースなどで同様の症状の方が多く存在することがわかりました。早急なパッチが望まれます。

また「お金の使い道」が少ないのもちょっとした不満点です。ゲーム内でのお金の使いみちは主に衣服なのですが(武器スキンも購入可能です)、筆者個人としてはキャラクターそれぞれに私服があることも個性に感じられるため、あまり衣服をいじろうという気になりませんでした。もちろん衣服のきせかえを楽しめるプレイヤーも多いでしょうが、そうでないプレイヤーのために、もうちょっとお金の使い道の選択肢があってもよいのでは?とはどうしても思ってしまいます。

あと最後に、字幕の改行タイミングが最悪なのも大きな不満点です。上のスクショを見てもらうと、言わんとすることが分かっていただけるかと思います。

良い点

本作は意欲的なゲームです。「リクルートシステム」という大きな実験を行っており、ある程度はそれが面白いことを証明しています。またアートワークもカッコよく、やり込み要素などもオープンワールドアクションゲームとして平均点以上の面白さはあります。

しかし問題点も多いために、現状で手放しで薦められるわけではないのも確か。「リクルートシステム」が持つポテンシャルは非常に高いので、個人的にはこの路線であと何作か遊んでみたいなと思います。『アサシン クリード』が二作目で化けたように、本作にも化ける余地があると筆者は強く感じています。


総評:★★★

良い点

・意欲的なリクルートシステム
・バグリーをはじめとした魅力的なキャラクター
・UKパンクっぽくカッコいいアートワーク

悪い点

・まだまだリクルートシステムのバリエーションが不足しているように感じられる
・多すぎるグリッチ
・字幕の改行タイミング


《文章書く彦》
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