多量のマスキングで大変な塗装―組説カラーガイドの色分け判別が難しい
「ADFX-10F」は白一色でなく、明度や色味が違う白が複数使われています。カラーガイドではホワイトが3色、ライトグレーが3色、グレーが2色の合計7色で主要部分を構成。色の管理や制作時間を考慮し、近い色を推察して色を揃えて塗装しました。
塗装は始めに構造が複雑なエンジン部から開始。黒サーフェイサーを下地にエアインテーク内部とウェポンベイ内を「C316 ホワイト FS17875」で、吸気ファンを「ガンメタサフ」で塗装。エンジン部と推力偏向ノズルは「C61焼鉄色」で塗っています。加えて、ノーズユニットのエンジン部にも黒サフを下地に「C61焼鉄色」を塗りました。
マスキングが必要なエンジン部分を塗装したら、合わせ目や隙間が目立つ裏面を中心に溶きパテを用いて埋めました。また合わせ目消しを効率的にするために、溶きパテを隙間に散布したあと溶剤で拭き取る方法を使用し、表面のディテールを必要以上に削る事無く作業速度を向上しています。
合わせ目消しをある程度行い段差や線が目立たなくなったら塗装です。まずエアインテークとエンジン部をマスキングテープで保護したら、全体を「サーフェイサー1500グレー」で全体を塗ります(サフは光源による透け防止と塗料定着のため)。その次にパネルラインや影が目立ちそうなところへ「C33つや消しブラック」を吹き、陰影を強調し立体感を強く引き出す事が出来る技法の“シャドウ吹き”を行います。
続いて、白部の塗装を行います。前述の通り白とグレーを合わせて7種類ほどあることに加え、塗料の調合を管理しきれないことから近い色を探し出し、そのまま使用しました。部分塗装に当たる、RAW-F機首裏面と主翼先端に相当する部分を「GX1クールホワイト」で、RAW-Fパイロン部とノーズユニットエンジン近くをタミヤの「LP-39レーシングホワイト」で、RAW-F表面の排気口部分を「C61 焼鉄色」で塗装。
一部マスキングをしたらRAW-Fエンジン部カバーやRAW-Fの翼部分、そしてノーズユニット接続部近くを「C315グレーFS16440」で塗装し、全体に備えて再び塗装面を保護します。細かな塗装を終え、全体を「ガンダムカラー MSホワイト」で塗ると大体のイメージに近づきます。
塗装時には、シャドウ吹きを行った黒部分が微妙に透けるよう薄めに調合し、ベタ塗りにならないように気を付けました。全てを塗りおえたらマスキングを剥がし、スミ入れを行い、最後にデカールを貼り付けて完成です。
手を加えるほど魅力的になる1/144「ADFX-10F」
塗装において1/144「ADFX-10F」は、綺麗に仕上げようとすると、広範囲に及ぶ合わせ目の処理や複数の白とグレーを用いて塗装する必要のある若干難易度の高さを感じるプラモデルですが、完成した時のビジュアルは魅力的です。
パネルラインのディテールも細かく1/144スケールを感じさせないほど繊細に造型されているために、素組みで部分塗装+スミ入れで仕上げてみても満足感を得られるキットでしょう。さらに、新たに書き起こされた「ADFX-10F」の設定も巻末に付属していることから、ファンアイテムとしての魅力も十分です。
一方で、組み立て説明書の塗装図は小さい写真で説明されているために微妙な色の違いを判別しにくく、読解に時間がかかります。加えて、「ADFX-10F」にはUAVが付属しないために若干の物足りなさを感じることや、価格も6,000円(税抜き)とフルプライスのゲーム1タイトルに届きそうになるほどなのが少し気になるところ。
しかしながら、価格に比例してディテールも細かくなり、ノーズユニットとRAW-Fの二機分が付属しているとも考えられるため、若干の価格の高さを感じるものの許容できるところにあると思えます。
・シリーズを重ねるごとに向上しているディテール
・巨大な機体のため1/144スケールでも巨大感を味わえる
・ユニットごとに付属する支柱
・新規に書き起こされた「ADFX-10F」の設定
悪い点
・価格が若干割高に感じる
・塗装図の写真が小さく、微妙な色の差を判別しにくい(ライトグレー2とホワイト1がどこで分割されるのか判別出来ない)