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なぜ今頃!?『マリオカート8 デラックス』追加コースが発売される理由を任天堂の戦略から紐解く

『マリオカート8 デラックス』の有料追加コンテンツが2022年2月10日配信の「Nintendo Direct 2022.2.10」にて発表されました。しかし、本作は約5年も発売されたタイトル、なぜ今頃なんでしょうか。

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なぜ今頃!? 『マリオカート8DX』追加コースが発売されるわけ
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マリオカート8 デラックス コース追加パス [Nintendo Direct 2022.2.10]

我が家では、9歳の娘、4歳の息子と休日に遊ぶゲームの1つに、ニンテンドースイッチの『マリオカート8 デラックス』があります。4歳の息子は的確な操作はほぼ無理ですが、“Joy-Conハンドル”をセットしてあげて、傾きで操作できるジャイロ、コースアウトしないように補助するアシスト、勝手に進むオートアクセルにしてあげれば、車を運転している雰囲気抜群で喜んで遊びます。

さて、そんな『マリオカート8 デラックス』ですが、なんとここに来てまさかの有料追加コンテンツが、2022年2月10日配信の「Nintendo Direct 2022.2.10」にて発表されました。しかもその規模がとんでもない。歴代の『マリオカート』シリーズに登場したコースがリメイクされて実装されるのですが、2022年3月18日から配信を開始して、2023年末まで、約2年をかけて8コースずつを6回に分けて配信し、合計48コースを追加するというのです。

元々『マリオカート8 DX』は48コースが遊べて、この時点でシリーズ最多でした。さらに48コース追加ということは、シリーズ最多を倍にするという話ですから、大変なことです。しかも、『マリオカート8 デラックス』は2017年4月に発売されたゲームです。ニンテンドースイッチ初期のゲームなんですね。それが約5年もたってこの規模の追加コースを、さらに2年かけて行うという、ちょっと常識外れな話なわけです。

さて、なんで今頃、しかもこれほど大規模の追加コンテンツを配信するんでしょうか。解説してみたいと思います。

■めちゃくちゃ売れている

『マリオカート8 デラックス』(公式サイト)より

まず、単純に『マリオカート8 デラックス』はめちゃくちゃ売れています。日本で1番売れているニンテンドースイッチのタイトルは『あつまれ どうぶつの森』なんですが、ワールドワイドで見ると、『マリオカート8 デラックス』が1番で、2021年12月末時点でなんと4,335万本。これは任天堂歴代でも『スーパーマリオブラザーズ』を抜いて『Wiiスポーツ』に次ぐ2位となります。

しかも、ただ売れてるだけじゃないんですね。さらに重要なのは“売れ続けている”ということです。実は、任天堂が決算資料で発表している2021年4月から12月の売上で見ても、全世界で770万本と恐ろしく売れています。任天堂のソフトの中では1170万本売れた『ポケットモンスター ブリリアントダイヤモンド・シャイニングパール』に次いで2番目。

もう1度確認しますが、5年前の2017年に発売されたソフトがですよ、別に昨年大規模なアップデートがあったわけでもなんでもなく、新作タイトルのトップクラス級に売れているわけです。

■追加コンテンツの勝算

『マリオカート8 デラックス』(公式サイト)より

ここまで話すと、『マリオカート8 デラックス』が発売から5年もたった今頃追加コンテンツを発売しても問題ないだろう、ということはお分かりだと思います。まずソフトがめちゃくちゃに売れているということで、これは追加コンテンツを売る土台がしっかりしている、ということが言えます。すでにソフトを持っている人がまずはターゲットなわけで、そのターゲット数はとんでもなく多いのです。

次に、アクティブユーザーの数。本来5年も前であればたくさん売れているソフトであっても実際に遊び続けている人の数は少なくなっているはずです。しかし、『マリオカート8 デラックス』は昨年の販売本数も圧倒的に多いわけで、アクティブユーザーが少ないわけはありません。

さらに言えば冒頭でお話したように、今でも家族で遊んでいるという人は、そんなに珍しくはないと思われます。ファミリー層に人気があるゲームは、ゲーマーが発売日に買って集中的にやりこむような遊び方に比べて、長期に渡って遊ばれる傾向にあります。

■任天堂の基本戦略と『マリオカート8 デラックス』の追加コンテンツ

『マリオカート8 デラックス』(公式サイト)より

この追加コンテンツの料金は48コースすべてダウンロードできる『マリオカート8 デラックス コース追加パス』という形で発売されて、税込み2,500円となります。また、単体で購入する方法の他に、『ニンテンドースイッチオンライン +追加パック』に加入することでも遊べるようになります。『あつまれ どうぶつの森 ハッピーホームパラダイス』に続いて、『マリオカート8 デラックス』の追加コースも加えることで、『Nintendo Switch Online + 追加パック』の価値を高めていく戦略です。

任天堂は「任天堂IPに触れる人口の拡大」を基本戦略に掲げ、ニンテンドーアカウントをその中心的な役割に位置づけています。さらにはニンテンドーアカウントを土台として付加価値を投入し、ユーザーとの接点を強化していきたいということで、昨年リリースした『Nintendo Switch Online + 追加パック』の価値を高めていくことは、任天堂の基本戦略に関わる重要な部分です。この流れにニンテンドースイッチ最高のビッグタイトルとなっている『マリオカート8 デラックス』をもってきた、というわけなんですね。

5年も前に発売されたソフトを今頃持ち出して、2年もかかる大規模有料追加コンテンツを用意する、という言い方をすると、なにか異様とも思えるんですが、累計では1番、昨年だけでもニンテンドースイッチで2番目に売れている現役バリバリのタイトルを使って、任天堂の基本戦略を推し進める為に『Nintendo Switch Online + 追加パック』の付加価値を高める大規模有料コンテンツを投入してきた、と考えると、タイミングもばっちりでなるほどと思えるんではないでしょうか。

『マリオカート8 デラックス』は元々はWiiUで発売されたソフトで、WiiUでの追加コンテンツを最初から収録してニンテンドースイッチ用にリメイクした作品でした。WiiU用の『マリオカート8』が発売されたのは2014年5月、約8年も前です。このタイトルが現役で、しかもこれから2年間の追加コース配信を通して、10年近くかけてやっと完成していくことで任天堂の基本戦略に寄与していく、というように考えると、なんだかすごい話に思えますね。


なぜ今頃!? 『マリオカート8DX』追加コースが発売されるわけ

《田下広夢》
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