KONAMIは4月15日にSteam向けに対戦ミステリーシミュレータ『CRIMESIGHT(クライムサイト)』を発売しました。
本作ではゲーム世界観の制作にイシイジロウ氏を迎え、シャーロック・ホームズを研究している北原尚彦氏がシャーロック・ホームズのテキスト監修をするなど、濃厚な世界観と極上のミステリーがゲーム内で繰り広げられます。
今記事では本作を一足先に実際に編集部内で行った対戦プレイの様子をお届け。そこには1手1手に頭を悩ませる推理の奥深さと「対戦ミステリーシミュレータ」とジャンル名が定められたのにも納得のゲーム性が表現されていました。
CRIMESIGHTとは
舞台は今から約50年後になる2075年の未来。ネットワークが発達した世界で、未来の凶悪犯罪を予測し事前に防ぐシステムが構築された結果、世界の凶悪犯罪の発生率は90%減少していました。
しかし、そのシステムが防ぎきれない凶悪犯罪が原因で世界が破滅する未来が予測されます。その破滅を防ぐ為にシステムは原因を推理・特定することに特化したAI「Sherlock」を生み出します。
旧世代の小説に登場する稀代の名探偵の名を冠したAIはその原因を追求していく中、事件の中心として暗躍するAI「Moriarty」の存在に気づき、かくして数多の推理勝負を繰り広げた二人の戦いが、ネットワークが発達した未来で再演されることになります。
いわゆる「人狼ゲーム」の進化版
さて、本作のプレイヤーの役割は先程紹介したAI「Sherlock」もしくは「Moriarty」のアシスタントとなり、それぞれの目的を達することに尽力を注ぐことです。作品のジャンルとしては、いわゆる人狼ゲームと呼ばれる正体隠匿系に属します。
ゲームは最小2人、最大4人で遊ぶことができます。そしてどちらの陣営も、マッチの舞台となる屋敷にシステムとしてプレイヤーと共に侵入。これから発生する殺人の「予測現場」で、お互いが屋敷内にいる登場人物を操作していくことになります。
「Shelock」陣営であれば舞台となる屋敷の中に存在する「ポーン(駒)」の中から無作為で選ばれる「ターゲット」を時間内まで同様に無作為に設定される「キラー」によって殺害されないこと。もしくは状況証拠によって「キラー」を確定させることができれば勝利。逆に「Moriarty」陣営は時間内にターゲットを殺害すれば勝利となります。
ただし、それぞれの陣営によって見える情報や「ポーン」の操作条件が大きく異なっています。
まずいわゆる村側となる「Sherlock」陣営。こちらは屋敷に存在する全てのキャラクターを操作することができます。屋敷内には沢山の探索箇所が存在するので、探索することで様々なアイテムやギミック(凶器や食料、配電盤、隠し通路など)を発見すること可能です。1回の手番で動かせるポーンの数はプレイヤーの数で変動しますが、「Sherlock」陣営の方が「Moriarty」陣営より必ず1手以上は多く動かせる様になっています。
ただし、「Sherlock」陣営は誰が「ターゲット」で誰が「キラー」なのかは最初の段階では不明です。また、「キラー」が「ターゲット」を殺害するには「キラーが凶器を所有している」「キラーとターゲットが同じエリア(同じ場所)にいる」「その部屋(壁と扉で仕切られている空間)にキラーとターゲット以外存在しない」という3つの条件を満たさなければいけません。
その様な条件を満たす行動が発生しそうか、あるいは発生しに行かせる様な状況を作り出しているプレイヤーを確認し、「Moriarty」陣営の意図を潰していくよう行動していく必要があります。
なお、プレイ中は「このポーンをこう動かす」等、簡単かつ大事なコミュニケーションが非常に取りやすいようUIが作り込まれています。なので、お互いに自身の意図を伝えることで操作の競合を起こしづらくなっています。
ただし、「Moriarty」陣営にも自身の意図が伝わってしまい、裏をかかれる危険性も存在します。その為、このプレイヤーが「Moriarty」ではないかと推理した際には特定のプレイヤーだけコミュニケーションを送らないようにすることも可能です。このような機能を駆使して、上手く味方同士で連携を取りましょう。
また、日付が変わるタイミング(3ターンに1度)の時に「Sherlock」の特殊能力により「ターゲットの周囲3マス以内にキラーが存在するか否か」を教えてくれます。これにより多くの情報が得られるので、上手く利用していきましょう。
ただ、同時に大量の情報が一気に溢れて入ってくるので混乱する人も多いでしょう。そのような人向けに、それぞれのポーンにカーソルを合わせるだけで、ありえる可能性(そのポーンをターゲットと仮定した場合に、誰がキラーとなり得るのか)をわかりやすく図示してくれます。
また、AI自身もプレイヤーに今の可能性や状況をわかりやすく解説してくれます。現状を簡潔に纏めて整理してくれるので、プレイヤーは推理に専念できるのが非常にありがたいポイント。流石稀代の人物をモチーフにしたAIですね。
全てを見通す力で未来の殺人を現実に
さて、一方の「Moriarty」陣営。基本操作は「Sherlock」と何も変わりません。しかし、「Moriarty」陣営しか持ち合わせていない力がいくつかあります。
1つは屋敷のどこに凶器と食料が存在しているか、「Moriarty」陣営は全て把握しています。特に凶器は殺害に必要ですし、食料は1日の終わりに無いと「ポーン」の行動範囲が狭まります。なのでキラーであるポーンにはしっかりそのあたりを早めに持たせたいところ。ちなみに、凶器は赤、食料は緑の光点で表示されており、「凶器でも食料でもないもの」はオレンジの光点となります。
そしてもう1つが「優先権」。「Sherlock」陣営と「Moriarty」陣営が同じキャラクターを操作しようとした場合、「Moriarty」陣営の操作が必ず優先されます。その為、重要な局面において「Moriarty」陣営は必ず意図した動きを「ポーン」に与えられるということです。
ただし、操作が競合した場合「Sherlock」陣営にもポーンの操作を優先されたことは把握されます。そして、ここが重要なのですが、「Moriarty」陣営は「ターゲット」に指定されているポーンを自身で一切動かすことができません。その為、競合が発生すると「Sherlock」陣営にそのポーンが「少なくともターゲットではないこと」が筒抜けになります。その点に関しては注意が必要でしょう。
突発的な「事故」ともう一つの「AI」
さて、本作で舞台になる屋敷では時に予測不可能な出来事が発生します。それが「野犬」と「ガス漏れ」です。「野犬」はターンごとに色んな場所へと徘徊し、ポーンを見つけると襲いかかり「負傷」させます。「ガス漏れ」は特定の部屋がガスで充満するイベントです。その部屋に入ってターンが終了すると「野犬」と同様、ポーンが負傷してしまいます。
ポーンは「負傷」「空腹」などのデバフが発生すると1ターンに移動できる距離が減少。デバフを2つ抱えてしまうと「瀕死」となり、移動する距離がさらに減少すると共に、視界を失います。こうなると犯行の阻止が困難になるので、「Sherlock」陣営はターゲットやキラーではないポーンに対してはデバフを解消していくように動く必要があります。逆にキラーの疑いが濃いのであれば、わざとデバフを与えることで、ターゲットが殺害されるリスクを大きく減少させることができるでしょう。
そして、本作には「Moriarty」陣営に協力する第3のAI「Irene」が存在します。これは人狼ゲームで言う狂人に該当します。「Irene」は「Moriarty」と同様、誰がターゲットで誰がキラーか最初から理解しています。勝利条件も「Moriarty」と同様です。しかも、プレイヤーの誰が「Moriarty」で誰が「Sherlock」かも理解しています。(これは「Moriarty」も同様です)
「Irene」の能力は秘密の暗号、つまり「Moriarty」にしか見えないコミュニケーションチャットを送ることが可能です。これにより、二人で結託し行動を起こせます。また「Sherlock」同士の行動が重なった場合、どちらの行動を実施するかは完全なランダムとなるのですが、「Irene」は「Sherlock」の信号を偽造しており、ポーンを動かす時は「Sherlock」と同様の動作をします。この為、「Sherlock」は「Irene」の制御とバッティングした際、それが「Irene」のものであるかどうかを検知できません。これを利用して、「Irene」は「Sherlock」陣営の行動を妨害できます。
ただし、「Irene」は他のAIよりポーンを一度に動かせる数が少なく、館に何が置かれているかの情報も食料2つまでしか把握していません。(これは「Sherlock」も同様です) 。また「Moriarty」と同様、ターゲットのポーンを自分から動かすこともできません。制限も多く、コミュニケーションを必要以上に使いこなす必要がありますが、上手くハマれば難攻不落の推理AI「Sherlock」を出し抜くキーパーソンになり得るでしょう。
なお、突発イベントや「Irene」の有無は部屋によって調整可能。慣れていない内は突発イベントなどはオフにして、より複雑な推理や不確定要素を楽しみたくなった時に追加してみると、より深いミステリー体験を味わうことができるでしょう。
見知らぬ人と思考を重ねる、向き合う快感
本作『CRIMESIGHT』はボイスチャットを使用しなくても遊べるよう、UIが非常に洗練されています。その為、見知らぬ人と時には協力し、時には出し抜く遊びを気軽に体験できる仕組みがしっかり組み込まれている印象でした。もちろん、会話しながら遊ぶと面白さが「上乗せ」されるのですが、ゲームの本質的な部分に会話が必須ではないため、言語が異なる海外のプレイヤーとも十分に推理や騙しあいを楽しむことができます。
推理ゲームということで、時には難解な状況を短い時間で思考しなければならない等、簡単なゲームとは言えない面もあります。しかし推理ゲームが大好きな人、あるいは気心がしれた友人がいる人同士で遊べるなら本作は非常におすすめです。個性豊かなAI達が短時間ながら濃密な「ミステリー」をプレイヤーに届けてくれるでしょう。