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DFM Cerosコーチの“次の一手”とは?『LoL』プロプレイヤーからのキャリア転向で目指すもの【インタビュー・前編】

プロゲーミングチームのコーチっていったい何をしているの?昨年の『Worlds』の舞台裏や、今年の『LJL』注目選手、新規加入選手の印象なども聞いてみました。

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DFM Cerosコーチの“次の一手”とは?『LoL』プロプレイヤーからのキャリア転向で目指すもの【インタビュー・前編】
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2022年2月6日、プロゲーミングチーム「DetonatioN FocusMe」『リーグ・オブ・レジェンド』部門に所属するCerosさんは、「LJL2022 Spring」から選手としての登録を辞めることを発表しました。あわせて公開された映像では、Cerosさんは9年間におよぶDFMでの出来事を振り返りながら、これからは同チームの“コーチングスタッフ”として活動していくことを明らかにしました。

Game*Sparkは、DFM所属選手へのコーチングやe-Sportsコミュニティーにかかわる新たな一歩目を踏み出したCerosさんにインタビューを実施。「プレイヤー」とは異なる「コーチ」としての動き方や、現在の『LoL』プロシーンについて話を訊きました。



新たな一歩目を踏み出すCerosの「コーチング」、そして現在の『LoL』プロシーンとは


ーーコーチの活動は選手と比べて伝わりにくいところがあると思います。改めてコーチの活動について教えてください。

DFM Cerosコーチ(以下、Ceros) 重要度でいうと選手とあまり変わらないですね。チーム全体で見てみると、選手の強さも重要なんですが、コーチが変わることによって成績が良くも悪くもなります。非常に重要なポジションです。

「コーチ」という名前から、“選手に色々教えることが仕事”というイメージを持たれる方も多いと思います。 その認識は少し間違っていて、チェスや将棋で例えるなら、選手が「駒」でコーチ陣が「プレイヤー」となります。選手という駒を使ってチームを作り上げるのがヘッドコーチで、僕はそれを補佐する役割を担っています。

ーー選手として活動していた時に、コーチが変わって戦術やチームの方向性が大きく変わった経験はありましたか?

CerosYangコーチとKazuコーチに関しては、壇上に立っているコーチが変更する度にチームの方向性を皆で話し合っていたので、大きな変化はありませんでした。それ以前は違いがありましたね。コーチによって大切にしていることが異なっていて、コーチが変われば練習方針や基準となる行動や方向性が変わっていました。

ーーCerosコーチが大切に思っていることは何ですか。

Ceros一番大切だと思っているのは……言葉にするのは難しいのですが「チームとして正しい選択肢を取れていたかどうか」ですね。『LoL』で勝つためにはいろいろな要素があるんです。選手一人ひとりのフィジカルの強さに加えて、チームとしてどう動くのかというマクロ(戦術)の部分など、考えなければならないことがたくさんあります。その中でも、一番重要かつ難しいことは「試合の都度正しい選択肢をとること」なんですよね。

極論、選択肢を間違えなければ試合に勝てるので、ひとつひとつの選択肢をチーム全体で考えて答えを出して、なおかつ共有できているかを大切にしています。

ーーその試合の勝敗だけではなく、勝っていても正しい選択ができたかを見ているということでしょうか。

Cerosフィードバックは勝利した試合でも行います。LJL(League of Legends Japan League)のレギュラーシーズンは比較的勝つことができています。たとえ戦績が良くても、フィードバックを怠ると成長の効率が悪くなると思っているので、しっかり試合全体の内容を見ていますね。

ーーコーチへの転向を考え始めたのはいつごろからでしょうか。また、コーチ転向を決めるきっかけなどはありましたか。

Ceros「いつからコーチになるか」というのは、あまり考えていませんでした。まず、自分にとっての「選手としてのモチベーション」が低下していることを感じて引退という選択肢が出てきました。選手を引退した先で何をするか考えたときに、コーチというポジションがDetonatioN FocusMeが勝つために一番貢献できるなと考えて選択しました。

ーーコーチ以外に、他のプランやキャリアなどは考えていましたか。

Ceros今ではコーチをしながらOPENRECやYouTubeでの配信活動や動画投稿をしているので、もし僕がコーチにならなかったら、恐らく動画投稿やストリーミングが主になっていたと思います。他であれば、いわゆるストリーマーやYouTuberという道が一番現実的な選択肢だと思っていますね。

ーー2022年の競技シーンが始まりましたが、前シーズンでコーチを行っていた時と比べて、視点や考え方など変わった点はありましたか。

Ceros去年からAria選手に対してのコーチングやチーム全体に対するフィードバックを行っていたので、正直言うと2021年とあまり変わりないですね。去年の延長という感覚です。

ーーCerosコーチは具体的にどのようなフィードバックを行っていますか。

Cerosいろいろなことをしているのですが、メインとしては、チーム単位でのマクロのフィードバックです。海外のトップチームの動きとDFMの動きを比較して「こういう基準で動いたほうがいいんじゃない?」と話していますね。今シーズンであれば、LCK(韓国地域の1部リーグ)のチーム「T1」が全勝しているので特に注意深く動きを見ています。

ーー海外地域で特に参考にしているリーグはありますか。

CerosやはりLCKやLPL(中国地域の1部リーグ)、LEC(ヨーロッパ地域の1部リーグ)等はレベルが高いので、参考にしたい部分は多いです。基本的にコーチの仕事の大半を占めるのは、海外の試合を観て研究することなんです。僕の場合はLCKとLPLをメインで見ていて、KazuコーチやGismoさんはLECやLCSなども含めて全体的に見ています。チャンピオンの選択やマクロの部分も含めて、参考になることが多いですね。

ーー選手として海外リーグの試合を観ていた時とコーチとして試合を観る時で視点は変わりましたか。

Ceros変わる部分はたくさんありますね。僕の役割はミッドでしたので、選手時代はレーンがどういったマッチアップになっているか、どんな動きをしているかを中心に見ていました。コーチはすべてのレーンの動きを俯瞰して見なければいけないので、そういう意味では選手時代とコーチとしてでは試合の見え方が全然違います。

ーーCerosコーチが行ったYaharong選手とAria選手へのコーチングの違いはなんでしょうか。

CerosYaharong選手は手がかからないというか……LCKプレイヤーだったこともありますが、基本ができていると感じました。Aria選手はフィジカルを前面に押し出してプレーする選手でしたが、Yaharong選手はスマートにチーム全体の動きを見て、今自分が何をすべきかを常に考えて動くタイプのプレイヤーですね。

ーー昨年のWorldsではPlay-InとGroup stageでメタが大きく変わりましたが、その時のコーチとしてどんな印象が残っていますか。

Ceros正直に言うと対応はできませんでした。ユーミサポートは僕らにとっていきなり本番で出てきたピックで、それまでスクリムにもいなかったんです。本番でいきなり出されて、ほとんど練習する合間もなくて、練習する時間がない中で選択を迫られました。ユーミを使う練習もユーミをカウンターする練習も無かったので、その状態で色々チーム内で話し合いましたね。対応できなかったので……ひたすら話し合いましたね。

ーー今もメタやポケットピックに対する対策などはしていますか。

CerosLJLの場合は、相手のプレイヤーの事をある程度把握しているので、予想を立てやすいです。事前準備として「この人のチャンピオンプールはこんな感じで……」と準備しているので今のところ驚くようなことはないですね。本番で驚くようなピックをされたら……Kazuコーチと選手に何とかしてもらうしかないです(笑)。

ーー引退表明動画の中で「ファンとの交流を増やしていきたい」という発言がありましたが、今取り組んでいたり、今後どうしていきたいといった目標はありますか。

Ceros今までは、選手として練習に全力を注いでいました。ファンとの交流を増やすために、まずはYouTubeへの動画投稿を始めたのが大きな1歩です。今はまだ新しい生活サイクルに適応できていないので、なかなか時間の確保が難しいのですが、ストリーミング活動も増やしていきたいと思います。あとは、選手としてLJLに出場していた時は、なかなかシーズン中のイベントに出演することはできなかったのですが、今は少し余裕があるのかなと思っているので、イベントなどに出たいなと思っています。

ーーでは、今シーズンのお話をお伺いしたいと思います。世界的に見ても、ミッドレーンでは多くのチャンピオンが採用されていますが、今のミッドについてどのように思っていますか。

Ceros他人事のようですが、ミッドのプレイヤーには難しいシーズンだなと思いますね。結構珍しく新しいチャンピオンがどんどん発掘されています。強化されたアーリもメタになりましたし、ベイガーなんかも見られました。特に最近の数週間は、メタの変遷が激しくて、その分新しいチャンピオンに練習を割かないといけないので、大変だなと感じています。

ーーCerosコーチの解説動画やパッチノート動画等を拝見しているのですが、個人的に注目されているチャンピオンはいますか。

CerosT1のFaker選手やIGのRookie選手がメタじゃないときでもニーコをプレイしていた印象があるので、強化を受けてピックされるかどうか注目しています。個人的には「サイオンMID」も可能性としてはゼロではないのかなと思います。ただ何とも言えないですね。今シーズンは特に、メタになったりならなかったりと流れが早い部分はあるので。

ーー今回LJL全出場チームと試合を終えてコーチから見た感想や総評はありますか。

Ceros一番脅威になりそうなのはSengoku Gamingかなという印象です。LJLの試合を全体的に見て、総合力で一番高そうだと感じているので要注意しています。

ーー注目している選手等はいらっしゃいますか。

Ceros個人単位で見るとFlawless選手ですかね。Flawless選手は昔LCKに所属していて、キャリー(試合を勝利に導く)していた印象がありますし、実際LJLでも試合を動かすプレーをしているので脅威になるかなと感じています。

ーーどういった基準や感覚で相手選手を脅威に感じますか。

Ceros試合を見ていて「上手い!」と思うかどうかですね。特にジャングラーの方だとなんとなく「この選手はこういった考えで動いている」のが目に見えるポジションなんです。アクションの判断基準が見るポイントになりますね。

なので、なんとなくチャンピオンの動きをみると「このタイミングでこの人はこういうコールをしているんだろう」と分かるんです。その中でも、ゲームに勝つためのアクションを起こす可能性が高そうだなと思うのがFlawless選手でした。

ーー現時点でDFMは全勝(インタビュー時8勝0敗)ですが、シーズン開始前はこの結果は予想できましたか。それとも苦戦すると予想していましたか。

Cerosもちろん勝つ自信はありましたが、メンバーが二人変わったこともあり、蓋を開けてみるまでわからなかったので……自信と不安が半々ぐらいでした。それでもLJLのDay 1、Day 2のパフォーマンスを見てみると安心して見ていられるなという思いがありましたね。

『LoL』ってすごくメンタル状態がパフォーマンスにかなり影響するので、スクリムのパフォーマンスが本番のパフォーマンスに直結するとは限りません。今年のメンバーは本番に弱いかどうかという懸念はありました。一周してみて、全然その辺は大丈夫だなと思ったので今は安心して試合を見ていられますね。



後日掲載するインタビュー後編では、Cerosさんの「ゲーマー」としての側面にフォーカス。Cerosさんが『LoL』と出会うまでのエピソードや“皇帝”という異名について、さらにプロプレイヤーとして活動するまでの経緯、今後の目標についてのインタビューをお届けします!


《Closter1um》
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