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『Ghostwire: Tokyo』マレビト解説「髪姫」―都市伝説3つはどう結びついたか?“孤独”が鍵に

本作の渋谷の街は都市伝説や妖怪だらけ!

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『Ghostwire: Tokyo』マレビト解説「髪姫」―都市伝説3つはどう結びついたか?“孤独”が鍵に
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ベセスダ・ソフトワークスよりPC/PS5向けに発売中のアクションアドベンチャー『Ghostwire: Tokyo』。東京・渋谷を舞台に人間が消失した怪事件を、主人公の「暁人」と相棒の霊「KK」が“二心同体”となって立ち向かう物語が描かれます。

本作の特筆すべき部分はなんといっても、ゲーマーにもSNSなどで話題になったその世界観。リアルな雰囲気の日本を描いたゲーム内の渋谷の地には、有名な都市伝説・幽霊・妖怪などがモチーフになった「マレビト」が出没し、暁人とKKに襲いかかってきます。Game*Sparkではゲーム内の小ネタを解説する記事も掲載中です。

短期シリーズとなる本企画では、その中でも、一見より多くの要素を内包する、「マレビト」に関する元ネタを細かく考察しながらクローズアップしてご紹介。元々複数の怪異が元ネタになっている「マレビト」ですが、その組み合わせや来歴を見ることで、本作のこだわり抜かれた世界観を支える部分へと迫っていきます。第一回はマレビト・髪姫です。

髪姫は3つの怪異の集合体か?

髪姫はゲームの中盤くらいから登場するマレビト。一般的な影法師などのマレビトに比べると耐久力が高く、暁斗を発見すると大きな口だけの顔を剥き出しにして迫ってくる強敵です。データベースでは“家族や友達から切り離された孤独から生まれたマレビト”と説明されています。

髪姫の見た目の特徴は、何と言ってもその白い服と赤いジャンパースカート。これは一般的な「トイレの花子さん」のイメージする姿に酷似しているため、基本的なモチーフはここから来ているのだと思われます。

また、下半身がないその姿は「テケテケ」を強くイメージさせます。また、インサイドの考察記事のコメントも寄せられていますが、目がないその顔や名前にもついている長い“髪”、赤い服などから怪異「アクロバティックサラサラ」のイメージが混じっているかも知れません。

次項からはこの3つの怪異について解説していきます。

超有名都市伝説「トイレの花子さん」

学校の怪談などで全国で伝えられる怪異「トイレの花子さん」は、今や誰もがその名を聞いたことがあるのではないでしょうか。最もポピュラーな話としては、学校の女子トイレの個室をノックして「花子さん」に呼びかけると返事があるというものです。

返事があってからのバリエーションも豊富です。一番穏やかなのは、誰も居ないはずなのに返事があるというパターン。過激なものになると、一緒に遊ぼうと遊び方を指定したらそれに由来した殺され方をする、天井から血の雨が降り注ぐ、便器に吸い込まれるなどのパターンもあります。過激なパターンの多くは「カミくれ」「青い髪赤い髪」「赤いちゃんちゃんこ」など、他の有名な都市伝説と混合されているものが多い印象です。

「トイレの花子さん」の歴史は古く、1940年代には岩手県でトイレに出てくる「花子さん」の話が登場しています。ただし、この岩手県の花子さんはトイレの中にいる人間に話しかけてくるため、厳密には今の花子さんとはパターンが異なります。大きく話題になったのは1990年代の学校の怪談ブームで、そこから多くの書籍やアニメなどにも登場しています。

花子さんが怪異となった経緯には諸説ありますが、その多くが「トイレで殺された花子さんが死後トイレに住み着く幽霊になった」と言うものです。また、花子さんの類似パターンとして男子トイレの「太郎くん」や家族がいるという話も残されています。

『Ghostwire: Tokyo』ではコレクタブルアイテムとして「花子さんの包丁」も存在しています。これは花子さんの怪談パターンのひとつに「花子さんにおままごとで遊ぼうと言うと包丁で刺してくる」というものがあるのですが、花子さん誕生のパターンに「不審者(や親)に追いかけられトイレで包丁で刺されて死んだ」という悲しい物語もあります。

服装的にはやはり花子さんを思わせる。

高速移動の恐怖!「テケテケ」

「テケテケ」は一般的に下半身が無い、上半身だけの女性の怪異とされています。怪談のパターンとしては声をかけられて追いかけてくるものが多く、鎌などの刃物を持って襲いかかってくる話もあります。現在はほとんど女性型の怪異ですが、古くは男性型の報告もあったようです。

特徴的なのは移動する際に“テケテケ……”という音を立ててくるというもの。多くの場合、下半身がないため腕や肘だけで這い回ってくる音で、それが名前の由来になっていると言われています。そのほか、這って歩くのではなく空を浮いて追いかけてくるパターンもあります。

いずれの場合もテケテケは速く動くのが特徴で、それを逆手に取って「テケテケは急に曲がれないので曲がり角まで逃げれば助かる」と言った回避策が用意されていることもあります。また、特定の言葉をかけることで退散すると言った回避策もあるようです。

その誕生経緯は主に2つの説があります。ひとつは「冬の北海道で電車に轢かれて体が切断されたが、あまりの寒さで血管が凍りついてしばらく苦しんでいた」というもの。北海道のトンネルには通過中にバックミラーを覗くと追いかけられると言った怪談もあるようです。

もうひとつは1980年代に沖縄で語られていた「下半身のない少年の幽霊」が変化して伝わったというものです(「テクテク」と呼ばれることも)。オカルトに詳しい吉田悠軌氏などは、沖縄発祥説を唱えています。

下半身がない。

『Ghostwire: Tokyo』の髪姫は下半身がなく、這うような動きをする、空を浮いて行動してくるなど、いくつかの共通点が見られます。ただし都市伝説のように圧倒的に速く動くということはありません。

インターネットで広まった「アクロバティックサラサラ」

「アクロバティックサラサラ」は2008年頃からインターネットで広まった都市伝説で、比較的近年に登場しています。赤い服を着ている、背が大きい、腕が傷だらけ、目玉が無く黒い穴が空いているなどの特徴のほか、とても長いサラサラの髪の毛がその名前の由来になっているようです。

行動パターンとしては、高層ビルや崖から飛び降りる、電車や車の移動中に突然現れるなど、名前のアクロバティックに恥じないような奇怪な行動を取るとされています。また、目を付けられた人は家まで追いかけられるなど、同時期に誕生した「八尺様」と似た行動を取ることもあるようです。

その正体は、福島県のとある高層ビルで「身籠ったものの恋人に逃げられた女性が、赤ん坊を抱えて飛び降り自殺して怪異となった」と言われていて、赤い服は血の色であること、なぜかその遺体には目玉が無かったなどの話があります。

『Ghostwire: Tokyo』の髪姫との共通点というと、まず目につくのはその長い髪の毛です。他のモデルと思われる「花子さん」はおかっぱ頭が特徴で「テケテケ」に関する髪の毛の特徴はあまり見られません。髪姫のロングヘアーは見た目でも特徴的なため、おそらく同じく髪が特徴の「アクロバティックサラサラ」の要素が含まれているのではないかと思われます。

サラサラ髪の毛。

ただし下半身がないため、そこまで高身長ではありません。とは言えゲーム内ではかなり迫力があるサイズなので、もし下半身があったらと思うと恐ろしいですね。

腕に傷はないですね。
眼はありません。顔怖い。

なぜこの3つの都市伝説が合体したのか?

ここまで3つの都市伝説を簡単に解説してきました。もちろん各種ともまだまだ豊富なパターンがあり、語りきれていない部分も多いですが一般的な要素の紹介と思っていただければ幸いです。では、なぜ髪姫が「花子さん」「テケテケ」「アクロバティックサラサラ」の複合的な存在なのかという点について、筆者なりの考えをまとめていこうと思います。

この3つの都市伝説の共通点として、誕生の経緯の孤独のエッセンスがあります。「トイレの花子さん」はトイレで死んだ(殺された)女性であり、「テケテケ」は列車事故で切断されて苦しみ抜いた女性(北海道説)、「アクロバティックサラサラ」は恋人に捨てられて飛び降り自殺した女性というものです。

髪姫のデータベース情報には“家族や友達から切り離された孤独から生まれたマレビト”とあります。髪姫には「孤独のエッセンスがある女性」という特徴があるのです。トイレに住み着き家族にも会えない「トイレの花子さん」をベースに、その誕生に「孤独のエッセンスがある女性」2つの有名都市伝説を混ぜ込んだのが髪姫なのではないでしょうか。

ちなみに『Ghostwire: Tokyo』には、自由に探索できる場所として「学校」が存在していません。そのため「トイレの花子さん」が登場する学校のトイレがなく、彼女が本来登場しやすいであろう場所が本作にはありません(花子さん自体は学校以外のトイレに出るパターンもありますが……)。そのため、花子さんは花子さんで神出鬼没の他の都市伝説を間借りしているのかも知れませんね。


『Ghostwire: Tokyo』はPC/PS5向けに配信中です。

検証のために色々試したらコンビニに監禁できた髪姫。

参考文献
「日本現代怪異事典」笠間書院 著・朝里樹
「現代の民話」 中公新書 著・松谷みよ子
「ピアスの白い糸 日本の現代伝説」 白水社 池田 香代子/大島 広志/高津 美保子/常光 徹/渡辺 節子・編著


《Mr.Katoh》

酒と雑学をこよなく愛するゲーマー Mr.Katoh

サイドクエストに手を染めて本編がなかなか進まない系。ゲーマー幼少時から親の蔵書の影響でオカルト・都市伝説系に強い興味を持つほか、大学で民俗学を学ぶ。ライター活動以前にはリカーショップ店長経験があり、酒にも詳しい。好きなゲームジャンルはサバイバル、経営シミュレーション、育成シミュレーション、野球ゲームなど。日々のニュース記事だけでなく、ゲームのレビューや趣味や経歴を活かした特集記事なども掲載中。

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