賛否両論の出来!?家族との再会を目指す『Somerville』は幻想的な美が待ち受ける2.5DパズルADVだった【プレイレポート】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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賛否両論の出来!?家族との再会を目指す『Somerville』は幻想的な美が待ち受ける2.5DパズルADVだった【プレイレポート】

ローポリゴンながら美しいビジュアル表現は魅力だが、実際のゲームプレイには疑問が残るところも。

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賛否両論の出来!?家族との再会を目指す『Somerville』は幻想的な美が待ち受ける2.5DパズルADVだった【プレイレポート】
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2022年11月15日にリリースされた『Somerville』。本作の舞台設定はSFテイストで、「宇宙からの侵略者によって離れ離れにさせられた家族を探し出しに行く」という物語が繰り広げられます。

ジャンルとしては2.5Dパズルアドベンチャーとなっており、横移動のみならず奥行きも存在するレベルデザインが用いられ、パズルとしては「液体化させる能力」を駆使して進む形になります。

そんな本作は、『LIMBO』と『INSIDE』を手がけたPlaydeadの元共同創設者のDino Patti氏と、「Ninja Theory」にいたアニメーターChris Olsen氏が共同で興した新スタジオ「Jumpship」による処女作でもあります。本稿ではライター個人の忌憚なき意見としてインプレッションをお届けいたします。

『Somerville』物語の導入

本作のストーリーは、早速「宇宙人の侵略」から語られていきます。深夜に家族とテレビをみていて眠りこけていたところ大爆発の音が聞こえ、外に出るとモノリスのようなものが浮かんでおり、宇宙船らしきものが飛び交っている様子。

とにかく地下に潜って攻撃が収まるのを待ちますが、地下に宇宙船が突き刺さります。そして宇宙人とおぼしき人物が手を伸ばしてきて、それに触れた主人公たる父親は、意識を喪失してしまうことに。目覚めたときには家族の姿はなく、彼は散り散りになった妻と子どもを探すため、終末世界に旅立ちます。

そして、父親は宇宙人の手に触れてから「特定の物質は腕で溶かせる」という特殊能力を身につけてしまいます。これを駆使してパズルアドベンチャーに挑んでいくことになるのです。

なお本作にはテキストによる説明文はいっさいなく台詞もありません。

プレイヤーは2.5Dのマップでパズルを解きながら進んでいきます。プレイ開始時から扱えるボタンはオブジェクトなどに働きかける「インタラクションボタン」と「能力ボタン」の2つ。先述のように左右だけでなく“奥行き”もあるレベルデザインで「終末世界」を進み、家族との再会を目指していきます。「2.5D」はいまやポピュラーなビジュアルスタイル/システムであり、Steamのタグでも頻繁に見かけるキーワードとなりました。なお、本作ではカメラの回転はできません。

実際のゲームプレイは難易度高め

見かけ上は影の位置にいるのだから解けそうなはずなのに

本作はいっさいヒントが出ないためジャンル初心者にはとっかかりにくい作品なのですが、そもそものパズルの難易度が高めです。

最初に「主人公である父親の子供を操作するパート」をプレイすることになるのですが、これが今後の操作方法を学ぶチュートリアルを担っているのかと思いきやそうでもない。実際のパズルは「とにかくスイッチを見つけて、トロッコを回転させて、物質を溶かしながら道を進む」など、スタートとして煩雑な印象です。

問われるプレイアビリティ

暗い画面でどこをどういけばいいのか。

どう操作すればいいのか分かりにくく、パズルでもない場面でも詰みそうになるのは悪印象でした。インタラクト(オブジェクトなどを調べたり、働きかけたりすること)する場所が分からないことが多々あり、本作の「多くを語らない」とも言えるスタイルは“ただの説明不足”という風に感じてしまいました。

特にカメラがヒキのときに顕著なのですが、洞察力より視力が重要になるシーケンスは、本作のようなゲームには必要ないでしょう。そもそも操作性が悪く、一度掴んだものを離してしまうことが多々ありました。

箱から取り出すことに四苦八苦する。

操作性が悪いため、パズルの解法も混乱を招きがちです。たとえば、「トロッコを操作する」がパズルの解き方となるような場面で肝心のトロッコを掴めないことが頻発し、プレイヤーと“正解のアクション”の距離が、システム的な都合によって無為に引き離されてしまうのです。そうなると、もちろん「別の解法があるのかな?」と迷子になります。プレイヤーが難しいパズルに挑戦したいと思っていても、この設計は問題になるでしょう。

ゲームプレイに変化が訪れるのは、後半になってから「液体を固体にできる能力」を得てからです。これによりあらたなるパズルが出現し、視覚的にもおもしろみが生まれています。

「賛否両論」な評価が集まっている一作

一撃死も多い。

本作のSteamレビューは2022年11月22日(火)時点で、「賛否両論」となっています。『LIMBO』や『INSIDE』というバックボーンはあるものの、筆者としても「賛も否もあるゲーム」という印象です。

本作は優れたアートを持ちながら、操作性の悪さ、出来が良いとはいえないパズルの連続など、不満点も少なからず存在しています。しかしながら、操作性のアップデートやヒント機能(言葉でなくてもヒントは出せるはず)などが追加されれば、「賛否両論」も一時的な評価に過ぎないかもしれません。本作はプレイアビリティさえ高ければ、思わず低評価から“かばいたくなる”ような作品なのです。その驚きのエンディングまで辿り着いたプレイヤーであれば、同様の印象を抱いてくれるかもしれません。

しかしながら秀逸なナラティブデザイン

謎の軍らしきもの。

先述のとおり本作には台詞がないため、状況は画面内の雰囲気から読み解くしかありません。この体験自体は優れていて、たとえば「謎の人物がプレイヤーの味方をしてくれる」なんてシーンも、台詞なしで実現しているのです。家族との絆がみられるシーンに至っては豊かなアニメーションによって表現されていて、本作の美点であると感じられました。長くて6時間程度で終わるコンパクトさも褒められる点でしょう。

流麗なビジュアル

青く溶かす要素が非常に美しい

本作はローポリゴンな描き方によって独自のビジュアル体験をもたらしています。情報量が少ないにもかかわらず美しく、ただ素朴に「綺麗だな」と思えるシーンが多いところは、やはり本作の長所であると言えます。


Steamレビューも賛否両論、本稿も賛否両論で怯んでしまうかもしれませんが、もし「Xbox Game Pass」などを利用しているのであれば、一度はプレイしてみてほしい作品であるのは間違いありません!『LIMBO』『INSIDE』のようなインディーゲームの流れを汲んだ作品でしたが、筆者もできる限り誠実にゲームをプレイし、書くべきことを書き切ったつもりです。それでは、れっつはばないすげーむ!


《SHINJI-coo-K(池田伸次)》

FPSとADVを偏愛しつつネトゲにも造詣のあるフリーライター SHINJI-coo-K(池田伸次)

「Game*Spark」誌に寄稿しつつも「IGN JAPAN」誌と「GAMERS ZONE」誌にも寄稿。「インサイド」誌にも寄稿歴あり。今はなき「Alienware Zone」誌や「週刊Steam」誌にも寄稿していたフリーライター。 そしてヒップホップビートメイカー業も営む音楽家兼ゲームライターの兼業家。通称シンジ。

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