Steamタグは「RPG」「物語性」などから始まって「超人間主義」「リメイク」など、本当に様々。その中にはなんだか胸が躍る「女性主人公」というタグも存在しています。強い女性を主人公とした作品はもちろん、いわゆる“紳士向け”な作品にもこのタグがついており、バリエーション豊かな「女性主人公ゲーム」ラインナップをチェックできます。そこで本記事では、筆者の偏見と独断に満ちたチョイスで「女性主人公」タグのおすすめゲームをチョイスしました。
『溶鉄のマルフーシャ』
『溶鉄のマルフーシャ』は2021年8月27日にリリースされたシューティングゲーム。PCのみでなく、今後はコンソール版リリースも予定されています。そんな本作で語られるのは、ディストピア世界で繰り広げられる少女たちの物語。主人公の「マルフーシャ」をはじめ、個性的な少女たちが繰り広げる絶望に溢れた世界は必見です。
かくいう筆者は本作の大ファン。世間的な評価では「バッドエンドばかり」と言われていますが……本来戦場に立つべきでなかった「普通の少女たち」が戦禍に巻き込まれていくという展開が、本作において命の価値を浮き彫りにしていきます。
良質なディストピア作品とは架空の世界で人間性を問うていくもの。こういったジャンルで“第二の主役”と言っても過言ではないのが「世界そのもの」です。その点においても『溶鉄のマルフーシャ』はプレイヤーの心をがっちりとつかんで離しません……が、ネタバレとなりえるので割愛します。
平凡な(銃の才能もあった)パン屋の少女が徴兵され、各々別々の人生を歩んできた少女たちと出会い、どうしようもなく絶望的な現実と抗っていく。「バッドエンド多し」と言われる本作ですが、俗にいう“タイトル回収”もあわさった「トゥルーエンド」も存在しています。未見の方はぜひチェックを。
そしてトゥルーエンドから続く『溶鉄のマルフーシャ』続編も制作中とのことです。本作ファンは大いに期待しましょう。
『Muse Dash』
さて、突然ですが筆者はリズムゲームが大の苦手。音楽好きではあるのですが、リズム感が絶望的にないのです。ですので、いわゆる音ゲーにはわずかながらの苦手意識が……。それは可愛い女の子が多く出ている本作『Muse Dash』でも同じでした。
本作は2019年6月20日にリリースされたタイトル。結構前から販売されているタイトルとあって、すでにプレイされてる方も多いことでしょう。しかし筆者が手に取ったのは2022年に入ってから。「女性主人公」的な作品が好きではあるのですが、正直なところ「リズムゲームで女の子が出てもなぁ……」と考えていました。
しかしそのイメージは、実際にプレイしてみると途端に覆ることに。選択できるキャラクターたちにそれぞれ特殊効果が用意されていたりと、登場人物に愛着の湧きやすいシステムを採用していました。追加で用意されている楽曲も魅力的で、プレイを開始してすぐにDLCを購入してしまいました。
悲しいかな筆者には本ジャンルをやりこめる腕前がないのですが……シンプルな操作システムで、初心者向けリズムゲーとしても優秀でしょう。しかしそれ以上に、可愛い女の子がわちゃわちゃしていて、カジュアルにプレイしてみても楽しいのがオススメしたいポイントです。
セクシー&キュートでセンス溢れる世界観がウリと言える本作。ポップな絵柄が気に入ったのなら遊ぶ価値はあるでしょう。「可愛い女の子は好きだけどリズムゲームだから期待値が薄い」と思って敬遠している方にこそ手に取ってみてほしいタイトルですね。
『メタリックチャイルド』
本作の主人公は、正確に言うと主要キャラの“ロナ”を見つめる俯瞰視点である「プレイヤー」であって、厳密には女性主人公ではないかもしれません。しかしSteamタグに「女性主人公」とつけられていることから、少々無理矢理にピックアップしてみました。プレイヤーの主観はロナではありませんが、主役となるのはあくまで機械の少女「ロナ」なので良いでしょう。なにより彼女の一挙手一投足が可愛らしい……!
ローグライトアクションゲームの本作では、無垢なアンドロイドであるロナの活躍が描かれます。彼女の生みの親であるアイリーン博士とともに人類に反逆するロボットの仲間たち、そして人の味方であろうとするロナがぶつかっていくストーリーです。
ロナの魅力は、メカだから繰り出せる豪快なアクションとその可愛らしい体格や精神のアンバランスさ。メカ少女の魅力全開といった雰囲気ですね。
話は少し逸れますが、ロボットを創作物で初めて描いたのはチェコの小説家、カレル・チャペックです。人に作られた「ロボット」が反乱を起こすという作品を描きました。
しかし「アイ・ロボット(われはロボット)」「鋼鉄都市」シリーズを作り、有名な「ロボット工学三原則」を考え出した作家、アイザック・アシモフは同氏の「ロボットの反逆」というテーマを強く否定します。いわく、「人間が作り出した存在が悪意を持って人間に害を為すはずがない」という理屈なのだそう。
「ロボット工学三原則」のような理論があればそういった感覚は妄想であり、初めてのロボット(とアシモフが仮定した)フランケンシュタインの怪物にイメージを引っ張られている「フランケンシュタイン・コンプレックス」と批判したのです。
しかし、アシモフも小説家。「鋼鉄都市」シリーズでは「人類とロボットの関係性」を極限まで追い求めます。ゲームでそういった文脈に乗っているのは、代表的なところで『ロックマン』シリーズなど。本作『メタリックチャイルド』も、そういった人間とロボットの在り様に切り込んでいる一作でしょう。
さて、それで何を言いたいのかというと「人間に反乱するロボットも、人間に希望するロボットも最高だぜ!」ということ。さらに少女要素があればギャップも増してなお良し! ロボットの反乱と、人類を守るために走るロナ……そんなストーリーもふくめてオススメです。
『SIGNALIS』
“女性主人公もの”も様々で、ただ「かわいい系」「セクシー系」のビジュアルであればいいというわけでもありません。そして「ホラーは女性主人公の方がいい!」というのが筆者の持論。『SIGNALIS』の主人公はかなりセクシーなアンドロイドですが、それはあくまで一要素に過ぎません。
個人的には安直に性的差異を強調したくはないのですが、それでも創作物において「女性」というイメージが作風を強調していくことはあると断言できます。『SIGNALIS』は絶妙な不安をもたらす恐怖がウリ。女性主人公であるからこそ物語の魅力が引き立っている作品です。
真綿で首を締められていくかのような世界で、女性型アンドロイド(技術者レプリカ)エルスターらを主軸に、心・精神が揺さぶられる内容となっています。
『閃乱カグラ PEACH BEACH SPLASH』
本シリーズは完全に“紳士向け”に特化したシリーズ。本作の方向性は一部のゲーム史……ハードコアゲーマーではなく、オタク史に名を残すことでしょう。ハードコアゲーマー向きとは思えない本作をピックアップした理由は、まず文豪・山田風太郎をはじめとした「忍法帖」シリーズでの奇天烈なくのいち忍法の流れを受け継いだ文化的ゲーム……とかは関係なく、単に筆者が好きだからです。
日本のエンタメ作品では、忍者/くのいち系キャラクターがよくセクシーに描かれます。実際の忍者は諜報員であり、ガマガエルなどを出す存在ではなく……くのいちが色仕掛けをしたという事実もありません。しかしこと娯楽作品では、一定の需要をもって発展してきたアングラな文化とも言えます。
でも、どんなに理由をつけても本作を勧める理由は「紳士向けだから」。筆者が本シリーズから『閃乱カグラ PEACH BEACH SPLASH』をピックアップした理由は、忍者とかそんなのあんまり関係なく女の子が水着姿だからですね。
少なくとも攻めに攻めたシリーズであることは間違いない『閃乱カグラ』。良いものです……。
今回はインディー作品を中心に紹介する形となってしまいましたが、「女性主人公」という点で語るなら『アトリエ』シリーズなども絶対に見逃せません。もちろん、可愛い女の子たちの活躍がみられるゲームはSteam販売作品のみではなく、たとえば買い切りスマホゲーム『ダンジョンスクワッド』やPS4などで展開した『GRAVITY DAZE』も挙げられます。今回は「女性主人公」タグからピックアップしてみましたが、キャラクターの背景や設定で大きく印象が変わるジャンルを探るのもひとつの楽しみ方。たまには普段押してみないタグで作品を検索してみるのも面白いかもしれませんよ。