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【特集】コンソール版発売の19世紀街づくりシム『アノ1800』で知る「オランダが野球強豪国」の理由

エンジンが電気を生産し、エンジンが人や物資を運び、エンジンが新しい製品を生み出す時代……。

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【特集】コンソール版発売の19世紀街づくりシム『アノ1800』で知る「オランダが野球強豪国」の理由
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19世紀街づくりシム『アノ1800(Anno 1800)』のPS5及びXbox Series X/S向けコンソール版が、3月16日に発売されます。

19世紀は、科学技術が飛躍的に発展した100年です。1801年1月1日、現在のイギリスにつながるグレートブリテン及びアイルランド連合王国が成立。19世紀を科学力で牽引する国の登場です。

化石燃料を使用する強力なエンジンは、人々の生活を大きく変えました。エンジンが電気を生産し、エンジンが人や物資を運び、エンジンが新しい製品を生み出す時代の到来です。それは同時に、欧米諸国が海外領土から様々な原料を輸入していたことを意味します。

その名残は、今の時代にもはっきり見て取ることができます。

プロ野球選手輩出地域「キュラソー島」

この記事を執筆している時点で、WBCのオランダ代表が敗退してしまったというニュースが舞い込んできました。

野球というものは最後までどうなるか分からない競技で、それ故に優勝候補のチームが早々にグラウンドを去ってしまうこともあるのですが……そう、野球のオランダ代表は世界的に見ても強いチームで、メジャーリーガーも揃っています。

同じヨーロッパの国であるチェコの代表チームは殆どが兼業選手なのに、なぜオランダにはプロ選手がたくさんいるのか。それはオランダ本国ではなく、海外領土の選手が主力だからです。

日本で長らく活躍したウラディミール・バレンティン選手や、オランダ代表のヘンスリー・ミューレンス監督(日本では「ミューレン」と呼ばれていた元ヤクルトの選手。気難しい野村克也監督がその人格を大絶賛した人物)はキュラソー出身です。ベネズエラの北約60kmの位置にある島で、今に至るまでオランダ領です。

つまり、バレンティン選手もミューレン監督もオランダ人。しかしカリブ海地域では野球が盛んなため、メジャーリーグで活躍する選手もオランダ領から輩出されているということです。

ラム酒も石油も新世界から

『アノ1800』は、その世界が「旧世界」「新世界」に分かれています。

これは決してファンタジー的な意味合いではなく、旧世界とはヨーロッパ、新世界とはアメリカ大陸やカリブ海地域を指す呼び方でした。キュラソーはもちろん新世界です。

たとえば、砂糖はサトウキビから作る食品ですが、これはヨーロッパでは生産できない作物です。従ってカリブ海地域でサトウキビのプランテーションを作り、精製糖やラム酒を生産してそれをヨーロッパに持っていく……ということが19世紀まで広く行われていました。

20世紀に入ると、農産物に代わって油田が「金の卵」になります。石油はエンジンを動かすためには欠かせない燃料です。それは莫大な利権となり、旧世界の大国が貪欲に手を伸ばしていた状態が70年代のオイルショックの頃まで続きました。

いずれにせよ、19世紀の科学的発展は新世界からもたらされる商品が支えていたと言っても過言ではないでしょう。

よく分かる実体経済の構造

『アノ1800』をプレイしてみると、発電所というものがいかに人類の生活を変革してしまったのかがよく分かります。

それまで数人がかりでやっていた作業が、電気の力によりたったひとりでできるようになりました。より規模を大きくすれば、電気設備のある1つの工場の生産力は電気のない3つの工場のそれに等しい……ということでもあります。ではその分だけ労働者は楽になるかというと、決してそうでもありません。

たとえば真鍮の生産が3倍になれば、真鍮から作ることのできる他のものもたくさん生産できるようになります。たくさん作れば作るほど儲かる仕組みをその国が確立したのなら、労働者に休養の暇はありません。

そして大量生産された製品を売り続けるとしたら、巷の庶民もある程度の経済力を持たせてやる必要が出てきます。みんながみんな貧乏のままでは、実態経済に悪影響が出てしまうわけです。『アノ1800』はそのあたりをよく再現していて、農民から労働者、労働者から職人、職人から技師、技師から投資家……というような「住民出世システム」を実装しています。もっとも、全員が全員投資家では働く人がいなくなってしまうため、アッパーやアッパーミドルを支えるロウアーミドル、ワーキングクラスの住民も残さなければなりません。

あんまこんなこと書いたらまずいかもしれないけど、なんで人間の世に「貧富の格差」というものがあるのかよく分かるよな……。

デタラメ新聞を発行しよう!

そしてこのゲームのもうひとつの醍醐味といえば、新聞です。

我が領土の住民が読む新聞は、発行前に権力者即ちプレイヤーが確認することも可能。住民の幸福度を下げるような記事は取り下げ、「我々は地上の楽園に住んでいる!」というようなプロパガンダを載せる選択肢も用意されています。

プレイヤーが経営する島は、単刀直入に言えば植民地です。植民地には民主主義などというものがなく、反発する者は権力で踏み潰せます……と書きたいところですが、あまり暴政を敷くと大規模なストライキが発生し、島内の施設が破壊されてしまうということも。

さらに「電気がある」ということも絶対的に良いことではなく、発電所や工場から排出される黒煙が大気汚染をもたらします。汚染された都市に住みたいと考える人はいないため、強引な工業化が島の過疎化につながる可能性もあります。このあたりに気をつけながら、木々の緑と海の青を尊重するのが本作の攻略法です。


『アノ1800 コンソールエディション』はPS5/Xbox Series X|S向けに3月16日より発売中。ゲーム本編とDLC「3つの装飾パック」がセットになったデラックスエディションも用意されています。また、UbisoftストアおよびEpic GamesストアではPC版も配信中です。


アノ1800コンソールエディション -PS5
¥4,318
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
《澤田 真一》

ゲーム×社会情勢研究家です。 澤田 真一

「ゲームから見る現代」をテーマに記事を執筆します。

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