Game*Sparkレビュー:『ドンキーコング バナンザ』 『マリオ』ではなく『ドンキーコング』だからこそできる新たな3Dプラットフォーマー | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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Game*Sparkレビュー:『ドンキーコング バナンザ』 『マリオ』ではなく『ドンキーコング』だからこそできる新たな3Dプラットフォーマー

『オデッセイ』チームによる“『ドンキーコング』の再解釈”といえる新しいアクションゲーム体験を実現していました。

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Game*Sparkレビュー:『ドンキーコング バナンザ』 『マリオ』ではなく『ドンキーコング』だからこそできる新たな3Dプラットフォーマー
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『スーパーマリオ オデッセイ』がニンテンドースイッチでリリースされてから約8年。そろそろ3D『マリオ』の新作が出てほしいと思っていた人は多いかもしれませんが、実際に発表されたのはなんと3D『ドンキーコング』でした。

リマスターやリメイクなどはあったものの、完全新作といえる『ドンキーコング』のタイトルは、Wii U『ドンキーコングトロピカルフリーズ』以来約11年ぶりとなります。『ドンキーコング バナンザ』は、長らく待たれていた『オデッセイ』チームによる3Dプラットフォーマーの最新作であるのと同時に、しばらく休眠状態にあった『ドンキーコング』IPの再始動でもあるという、ちょっと特殊な作品となっているのです。

『ドンキーコング』の新作を長らく待ち望んでいた人にとっても、『オデッセイ2』を待っていたという人にとっても注目すべき一作である『ドンキーコング バナンザ』のレビューをお届けします。

『ドンキーコング』だからこそできるアクション

本作の最大のフィーチャーは、やはりあらゆる地形が破壊可能な豪快なアクションが展開される部分でしょう。このゲームのほぼすべてのシステムとステージは、この地形破壊を前提に設計されており、ドンキーコングの体躯を活かした豪快なアクションが楽しめるようになっています。

ドンキーコングができるアクションは、基本的には「なぐる」、「掴む」に集約されます。そのほかにも「ローリング」ができたり、破片でスケボーができたりとさまざまなアクションがありますが、ゲームにおいて最重要となるベースはこの2つ。

『スーパーマリオ64』をやったことがある人なら、3D『マリオ』の系譜にあるといえる本作に「なぐり」があることに懐かしさを感じるかもしれませんが、ぶっちゃけほとんど機能していなかった『マリオ64』のなぐりとは違い、ドンキーコングはこのなぐりでズカズカと地形を破壊していきます。

なぐりは「正面」、「下方向」、「上方向」に行うことができるのですが、それぞれデフォルトでYボタン、Bボタン、Xボタンと、別々のボタン割り振られているというなんとも独特なキーアサイン。なぐりだけで3ボタンも使っているのには驚きますが、これは本作で自由自在に地形を殴ってまわるために必要だったことが実際に操作しているとわかります。このゲームを遊んでいる時、地面を攻撃したい時、天井を攻撃したい時はかなり頻繁にやってくるのです。

なぐりを気持ちよくするための徹底ぶりは異様なほどで、材質一つ一つに飽きのこない効果音が用意されていることはもちろん、壊れるまでの回数や破壊される範囲、エフェクトの納得感、壁に入るヒビのテクスチャーのバリエーションや、破壊した時の破片の残り方、そしてHD振動2まで、目に耳に気持ちいい破壊の手触りの良さは抜群です。

そしてもう一つの重要なアクションである「掴み」。これは目の前にある壁や地面をつかんで、その破片を持って投げたり、殴ったり、スケボーをしたりといったアクションに派生させることができます。

地形破壊は、必然的にこの世界のほぼ全ての材質に意味を持たせることに繋がっています。材質による硬さの違いは敵や地形への攻撃力にも影響するほか、ものによっては爆発するなどの特殊な効果を発揮することも。それらを剥がしてプレイヤーがさまざまな形で利用できることは、コンセプトとしっかりマッチしているだけでなく、任天堂らしい多彩な遊びを生み出すことにも寄与していました。

ゲームが進むと、ドンキーコングは「バナンザ変身」という能力を手に入れ、「シマウマ」の姿になったり、「ダチョウ」の姿になったりと様々な形態に変身できるようになります。

アクションゲームでは、変身によるアクションの味変はよくみられる手法です。『マリオ』シリーズで「ファイアマリオ」に変身したり、『スーパードンキーコング2』で「ラトリーに大へんしん」したりと任天堂作品でも多く見られます。バナンザ変身の特徴は、それらの変身と比較してアクションの幅がかなり広めに取られていることです。通常状態でできたアクションはほぼそのまま行え、各変身特有のアクションはそれに追加される形になっています。

たとえば、「シマウマバナンザ」は素の走りが早くなるという付加価値を持っている上、通常状態で「ローリング」のアクションにあたるZLボタンを長押しすると「チャージダッシュ」が行えるようになります。足が速いために崩れる足場のギミックを渡り切ることができるというのがステージ攻略における特徴になっています。

「ダチョウバナンザ」は、ZRの長押しにより空中を少しだけ飛ぶことができます。その後、飛行は滑空状態に移行。上昇気流といったギミックを活用して高い場所に昇ったり、遠くの足場に渡ったりしやすくなります。

こういった「バナンザ変身」はいくつもあり、特に終盤やクリア後にかけてはこれらを総動員して遊ぶことになります。変身は一定時間の経過でゲージが0になると解除されてしまうのですが、ゲージを溜めるためのアイテムを集めるのは容易なので、上手く立ち回れば変身を維持し続けることも可能です。

地形破壊が前提になっている本作のアクションは、『スーパーマリオ オデッセイ』や『アストロボット』といった既存のタイトな3Dプラットフォーマーとは異なる遊びを実現しており、3Dプラットフォーマーのサブジャンルといえるような新たなフォーマットを築いたように思います。あえて操作をシンプルにまとめている『マリオ』シリーズと違って、使うボタン数も多く、『ドンキーコング』らしくコアなゲーマーでも満足できるアクションを実現していました。

開発元には『オデッセイ2』を作ればいいという選択肢があったにもかかわらず、あえて『ドンキーコング』を採用することでしっかりと今までと異なるアクションゲームに仕上げたという点はやはり評価したい部分です。

リニアとノンリニアの使い分け

上述したようなアクションが存分に活かせるのは、やはり優れたステージがあってこそ。本作のステージは、主に3つの効果を狙ったものに分けられると思います。

1つは、破壊と探索を楽しめるひらけた構成の箱庭的なフィールド。ズカズカと地形を破壊しまくったり、破片スケボーを楽しんだりといった本作のアクションを思う存分楽しむことができます。その過程であちこちをウロウロしながら、各地に隠されたさまざまな収集物を入手していきます。

しかし、ほとんどの地形が破壊可能である分、アイテム集めは少し大味なものと言えるかもしれません。一応、ほとんどのアイテムには想定された導線が用意され、秩序立てて配置されているのですが、「ソナー」というアクションで壁の向こうにある隠されたアイテムを見つけ出すことができるため、導線を無視して発見する場面のほうが多いです。

もちろん、それこそが本作の想定しているノンリニア部分での遊びであり、さまざまな場所に収集物が埋まっているのをズカズカと破壊して発見していくことは、本作のもつ「炭鉱夫」的なテーマともマッチしています。破壊しまくる探索に新鮮な楽しさを感じるか、漫然としていると感じるかは意見が分かれるかもしれません。

2つ目は、ストーリー進行で行くことになるある程度リニアにデザインされたフィールド。破壊不可能な壁や、空中庭園的なステージデザインによってある程度行ける場所が制限された領域です。開発元の想定したタイトで3Dプラットフォーマーらしいデザインや、新たなアイデアが光る遊びが高い純度で味わえる部分であり、このゲームで一番充実した体験を提供してくれます。

リニアな領域とノンリニアな領域は同じフィールド上にありますが、その境界にはグラデーションがあります。ストーリー進行で行くことになるリニアな場所を楽しんでいる中で、気になった場所を発見してノンリニアの領域に戻り、ノンリニアの領域からいつの間にかリニアの領域に戻っていたというサイクルがありえます。

これは『スーパーマリオ オデッセイ』でも採用されていたレベルデザイン手法だと思いますが、『ドンキーコング バナンザ』は地形破壊が可能なぶん、ノンリニアなフィールドにおける行動の自由度が高まっています。そのため、ノンリニアな領域の地形やオブジェクト、アクションをうまく活用した、リニアな領域をまたいだシーケンスブレイクなどもしやすくなりました。ゲームでズルをする楽しさを許容するというのはスイッチ世代以降の任天堂作品の特徴でもあります。

3つ目は、メインのフィールドからは独立したステージとなる「試練」と呼ばれる領域です。これはフィールドの各地に点在する試練の入口から入ることができるエリアであり、基本的には完全にリニアなステージを突き進み、クリアを目指すことになります。『スーパーマリオ オデッセイ』や『スーパーマリオ サンシャイン』で土管などから行くことができる「ミニコース」と基本的には同じものであり、旧来の任天堂らしい緻密なデザインやアイデアが光ります。

任天堂は、『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の成功以降、他のシリーズでもノンリニアで選択肢の多い遊びを模索しはじめた面があります。しかし、もともと任天堂作品が持っていた、リニアな遊びにおける緻密さが失われていくことに筆者としては懸念がありました。

本作では、スイッチ世代で培ったノンリニアな遊びを楽しめつつも、旧来の任天堂らしい緻密でリニアな遊びも存分に味わうことができます。筆者としては、あらためて振り返ってみて「結局リニアな部分が一番面白かったな」と感じており、ノンリニアな部分の大味さは序盤は特に顕著なため、飽きが発生しうる危険性をはらんでいるように思います。

ですが、後半にかけて遊びの幅が増えてくると、このゲームは加速度的に面白くなっていきます。特に終盤にかけては、これまでに得た「バナンザ変身」を存分に活用することになるステージや、新たなアイデアの材質やギミック、そして歯ごたえのあるボスなどが増えてくるため、エンディングまで非常に充実した体験を楽しむことができました。

全体的を通してゆるやかに難易度が上がっていく『オデッセイ』と比較して、ストーリー上の特定のポイントからグッと難易度が上がるような階段状の難易度曲線になっており、しっかりと歯ごたえを演出できていたのも秀逸な部分だったと感じています。

ほとんど新規IP、だけど『ドンキーコング』

『ドンキーコング バナンザ』が出る前、最終作だった『トロピカルフリーズ』は、海外では『Donkey Kong Country』シリーズ、つまりSFC『スーパードンキーコング』と同じシリーズとして展開されています。

『スーパードンキーコング』オマージュなステージも

『スーパードンキーコング』といえば、レア社が開発した名作2Dアクションゲームシリーズです。アーケードの『ドンキーコング』を大胆に再解釈し、ジャングルを中心とした世界観や高難易度なアクションの印象をシリーズにもたらしました。やはり、『ドンキーコング』といえばこのシリーズだというイメージの人は多いでしょう。

久々の新作となる『ドンキーコング バナンザ』は、そういった『スーパードンキーコング』のエッセンスを取り入れつつも、それとは別にアーケードの『ドンキーコング』の持つ現代都市のイメージも取り入れ、その上で独自のアートやキャラクター、世界観を築き上げた、新たなフォーマットの『ドンキーコング』となっています。

本作のUIやライティングにおいて特徴的に使われているシアンとピンクのコントラストはアーケード『ドンキーコング』の鉄骨とはしごのカラーから影響を受けていることが公言されていますが、それが3D空間に落とし込まれた時の色使いはこれまでにない印象を与えています。ボスが登場する時にハイコントラストな背景とシャドウによるインパクトある画面効果が入るなど、アートや演出はこれまでの『ドンキーコング』の文脈とは大きく異なる印象をうけます。

冒険の中で幾度も出会うことになる「ワレルヤの民」は特に目新しさを感じるキャラクターです。壊されても復活する謎の体を持つ彼らは、地形破壊のシステムがあるからこそ生まれたようなデザインであり、『マリオ』とも『ドンキーコング』とも違う雰囲気を持っています。地下を舞台に「星の中心」へどんどんと下っていくというストーリーの中で、神秘性とコミカルさの両面を持ち合わせており、本作の独自性を象徴するキャラクターになっていました。

相棒となる「ポリーン」も、アーケード『ドンキーコング』の「レディ」時代からの歴史を持つキャラクターでありながら、13歳という年齢設定によりほとんど新キャラのような立ち回りを見せてくれます。『スーパーマリオ オデッセイ』にて、『スーパーマリオ』シリーズでは初となるボーカル曲を披露してくれた「ポリーン」の文脈もあり、本作でも「バナンザ変身」にてバンバンボーカル曲を歌ってくれます。

シネマティックでは、より豊かになったフェイシャル表現で「ポリーン」や「ドンキーコング」のアニメーションを描いています。カートゥーンなアートを活かしたダイナミックな表現はアニメ映画のようで、特に「ポリーン」が日本語のフルボイスで喋るのはやはり任天堂作品としては新鮮でした。

このように、全体として「新生ドンキーコング」といえるような挑戦を数多くしている一方で、ファンサービスと言える要素もかなりふんだんに盛り込まれており、開発元の『ドンキーコング』への愛をしっかりと感じさせます。なかには、“ちょっとやり過ぎ”と言えるぐらいのものも。このあたりは是非自分の手でプレイして、いろいろと見つけてみてください。

本作でここまで“やりたい放題”なアートや演出、アクションが見られたのは、ある意味で『ドンキーコング』が長らく休眠していたからこそなのかもしれません。『オデッセイ』チームによる『ドンキーコング』の再解釈ともいえる本作は、地形破壊をベースとした豪快なアクションを、任天堂らしい緻密なレベルデザインと多彩なギミックの中に見事に落とし込んだ傑作3Dプラットフォーマーに仕上がっていました。

Game*Spark レビュー 『ドンキーコング バナンザ』 ニンテンドースイッチ2 2025年7月26日

『ドンキーコング』を再解釈した新たなアクションとアート―次世代の任天堂のクリエイティブを感じさせる傑作3Dプラットフォーマー

GOOD

  • 『マリオ』じゃないからこそできる豪快かつ多彩なアクション
  • 緻密に遊びがデザインされたリニア部分のステージ
  • 終盤にかけてどんどんアイデアが面白くなる“材質”を活かしたギミックの数々
  • 『ドンキーコング』を再解釈した新たなアートと演出

BAD

  • ノンリニア部分での地形破壊は人によっては漫然とした体験に感じるかも



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(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
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ライター:お茶缶,編集:みお


ライター/ミンナニ ナイショダヨ お茶缶

任天堂タイトル中心に、けど色々手を出すゲーム好きな人。ベストゲームは『ゼルダの伝説 時のオカリナ』。

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編集/取材も執筆もたくさんやる、半ライター半編集 みお

ゲーム文化と70年代の日本語の音楽大好き。2021年3月からフリーライターを始め、2025年4月にGame*Spark編集部入り。

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