
様々なアーケードゲームを開発・提供しているexA-Arcadiaは、文化庁が運用する裁定制度を利用して『ヴァンガードプリンセス』を原作に開発中の『ヴァンガードプリンセスR』に関して、「正規の権利に基づき、万全の体制で開発・提供」していることを主張。メディア向けリリースを通じて、同IPを原作にゲーム等を販売・開発している海外企業eigoMANGAとの関係を一切否定しました。しかし、同社との過去のトラブルや、その過程で起こした行動については言及していません。
exAはゲームを万全の体制で開発・提供も、過去の行動は説明せず

『ヴァンガードプリンセス(ヴァンガードプリンセス 先陣の姫君)』とは、2009年にスゲノトモアキ(SUGE9)氏が公開したフリーソフトの対戦格闘ゲームです。
2011年8月より同氏のブログの更新が途絶えていたものの、その翌年にアメリカのeigoMANGAが本作を原作とした英語対応の『Vanguard Princess』(以下、旧海外版)を販売開始。旧海外版については、発売当初から客観的に原作者スゲノ氏が許諾を出した証拠は確認されておらず、原作ゲームに使われたツール「2D格闘ツクール2nd.」を改造し、規約違反の疑いも持たれていました。
そして時が経ち2023年、exA-Arcadiaの販売代理業務をしている株式会社Show Me Holdingsが『ヴァンガードプリンセス』の著作権者・著作権継承者を捜索し、2024年には『ヴァンガードプリンセスR(以下、exA版)』が発表されました。
このexA版についてはスゲノ氏の関与は不明なものの、日本の文化庁が運用する孤児著作物(著作権者の行方がわからない著作物)に対する「裁定制度」(各種手続きと供託金の提出をもって国が該当の著作物の利用を一時的に認める制度)を通して開発が行われています。


しかし、発表から間もなくexA版のYouTube上トレイラーが“eigoMANGA”による“著作権の申し立て”により削除され、後日には旧海外版のYouTube上トレイラーが“exA-Arcadia”による“著作権の申し立て”で削除。さらに、eigoMANGAがスマホ向けに開発していた『Vanguard Princess Mobile』(以下、新海外版)のKickstarterページがShow Me Holdingsによる“著作権の申し立て(DMCA)”で削除されました。両社が互いの『ヴァンガードプリンセス』に関するコンテンツを著作権侵害として削除し合っていた形であり、本件は海外でも報じられています。
後に両社はそれぞれトレイラー等を再公開し、以降は互いに言及することはありませんでしたが、2025年9月9日にexA-Arcadiaが製品の予約開始とロケーションテストの実施に併せて、メディア向けリリースを公開しました(記事公開時点でロケーションテストは終了)。

リリースでは、exA-ArcadiaはeigoMANGAとは一切関係がなく、ライセンスアウト(利用許諾)等の取引は一切行なっていないほか、同社によるゲーム利用を含む活動の適法性には関与していない旨を主張。exA版が“正規の権利に基づき、万全の体制で開発・提供”されていることを説明しました。

裁定制度を利用している点から、exA-Arcadiaが『ヴァンガードプリンセス』のIPを所持していないと思われるものの、“著作権者または正式な代表者でなければ提出できない”著作権の申し立てをYouTubeで出した件や、KickstarterページでDMCAを提出した件については触れられていません(※本来はYouTubeで著作権の申し立てを行える立場ではなかった可能性はeigoMANGAにも言える)。
また、Kickstarterページでは著作権侵害の説明として、Show me HoldingsならびにexA-Arcadiaが裁定制度を利用している旨を記載しています。裁定制度は“著作物(元の作品)の利用を認めるものであり、その権利を申請者に与えるものではない”ため、なぜDMCAの説明に本制度を持ち出したのかは意図が一切不明です。様々な疑惑が渦巻いているeigoMANGAに対し、exA-Arcadiaは開発・販売に関しては客観的に正当性が確認できるものの、これら過去の行動は謎に包まれたままとなっています。
Game*Spark編集部ではexA-Arcadiaに対し、“スゲノ トモアキ氏とは連絡が取れなかったのか”、“トレイラー削除の件の認知”、“著作権の申し立てが正式なものか”、“著作権の申し立て説明に、裁定制度を利用した旨を記載した意図”などを問い合わせています。一部質問は2024年時点で既に同社に複数回問い合わせていましたが、執筆時点でも一切の返答は得られていません。
なお、eigoMANGAに関する様々な疑惑やその検証については弊誌記事「無断販売の疑い抱えるeigoMANGA、懲りずに新版『ヴァンガードプリンセス』早期アクセス告知―裁定制度・ツクール規約・米国著作権法から疑惑を改めて検証」をご確認ください。
※UPDATE(2025/09/22 20:53):当初記事にて掲載していたBEEP通販ページのスクリーンショット、ならびにその補足文である「BEEPの『ヴァンガードプリンセスR』販売ページより。裁定制度に則り、国内販売のみとなっている様子。」に関して、裁定制度とは関係なくexA-Arcadia製品の多くが国内正規代理店(KVClab、BEEP)にて日本限定販売と記載されていることを確認したため、スクリーンショットと補足文を削除しました。SNSでのご指摘ありがとうございました。なお、それ以外の部分は記事執筆時点の調査情報に基づいたものとなっています。















